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七百二十六話 完勝
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鈍い音が……会場に響いた。
「尊敬に値します」
試合中だというのに、相手を評する言葉を呟いたフローレンス。
その直後、左拳がライホルト・ギュレリックの腹を穿つ。
「っ!!!!!?????」
貫くことはなかった。
だが、見た目から肉や骨だけではなく、中までやられているのが解るほど、凹んでいた。
「っ!! そこまで!!!! 勝者、フローレンス・カルロストっ!!!!!!」
「ぬっ、ぐっ…………くっ!!!!!!」
まだ自分は戦える。
そう伝える為に、即座に立ち上がろうとしたが、体が言う事を訊かず……立ち上がれなかったライホルト・ギュレリックは自身の敗北を認めた。
「ふっふっふ、なんだ……随分と、負けず嫌いなところがあるんだな」
「そ、そうみたいだね。あれって……多分、相打ちになることを想定してたんだよ、ね?」
「そうだろうな。あまりにも流れがスムーズだった。とはいえ、それはそれでこれはこれ。あの一撃で押せるなら、押したいとは思ってただろうな」
フローレンスはライホルトが最後に振り下ろした斬撃に合わせて、右拳のアッパーを放った。
結果は、相打ち。
ライホルトの大剣は弾かれ……フローレンスの右拳は砕けると、とまではいかずとも、攻撃として使えるかは怪しい状況に追い込まれた。
しかし、まだ残っている左拳を即座に叩きこみ、勝負を終わらせた。
「フローレンス、結構体技も様になってたね……もしかして、誰かの影響を受けた感じ?」
「さぁ、どうだろうな。ただ、中途半端に向き合ってないのは確かだろうな」
自慢抜きにして、アラッドはまだ自分には及ばないと思っている。
だが……同時に、悪くないと思ったのも事実。
「何はともあれ、良き戦いだったのは間違いない」
アラッドは二人に賞賛の拍手を送った。
直ぐにそれは伝播し、会場で観客していた数少ない者たちも二人に賞賛の拍手を送った。
(やはり、既に精霊同化を完全に完成させてたか。今のあいつを、どう崩すか…………)
称賛の拍手は送った。
今回に限っては、味方でありチームメイトとも言える。
しかし、アラッドは直ぐに精霊同化を完成させたフローレンスをどう崩すかを考え始めていた。
「やっぱり最終的にはフローレンスさんが勝利しましたね。これで……僕たちの完全勝利、ですね」
アッシュはただ……思った事を口にしただけである。
代表戦は全てで三戦三勝。
アッシュは結果的に、相手に敗北を認めさせた形。
アラッドは戦闘中に明確な死のリスクを感じ取った、それは間違いない。
フローレンスは判断は間違い、場外まで吹き飛ばされ、頭から血を流すという決して小さくないダメージを負った。
それらの戦闘内容を考えれば、圧勝とは言えない。
圧勝とは言えないが……三戦の内、敗戦と引き分けが一つもなく、三試合全て勝利した。
それは紛れもない事実であり、アルバース国王側の完全勝利と言えなくもなかった。
「まぁ……そうだな。次戦ったらどうなるかは解らないがな」
ナルターク王国側の人間に気を遣った言葉で返すアラッド。
普段はクールで冷静なアッシュだが……もう完全に仕事が終わったモードに入っていた彼の口は、非常に緩かった。
「僕はそうなるでしょうね。ある程度対策が立てられますから、今度は負けるかもしれません。でも、だからこそ、あぁいった手札を手に入れようと頑張りました。ただ、アラッド兄さんの場合、クロを呼んでないじゃないですか」
「そ、それはそうだな」
「フローレンスさんも、最初から光の精霊を召喚して、精霊同化を使用していれば……お相手の方も最初から全力で戦っていたとしても結果は変わらないでしょう」
「…………それも、否定出来ないな」
事実であると、断言出来てしまう。
フローレンスが場外まで吹き飛ばされてしまってのは、間違いなく精霊同化を使用していなかったから。
たらればの話になってしまうが、仮に精霊同化を使用していればどうにか出来たと、アラッドは自身を持って断言出来る。
「ですよね。とはいえ、だからなんだという話ではあると思いますけど」
「……アッシュ、大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。ただ、ここ最近は錬金術よりも強くなることに時間を使っていたので、少しストレスが溜まっていたのかもしれません」
「そうか…………ふっふっふ、それは仕方ないかもしれないな」
なんとなく、気持ちが理解出来てしまう為、そう思っても口にはするなと言えなかった。
「っと、帰って来たみたいだな」
治療を受け、すっかり頭部の出血痕も消えていた。
「「フローレンス様!!!!」」
当然ながら、フローレンスを敬愛している二人がダッシュで向かい、強烈なハグをかます。
「ふふ、二人とも私は大丈夫ですよ」
「も、申し訳ありません」
「謝る必要はありませんよ。二人を心配させてしまう姿を見せてしまった自覚はありますから」
二人の頭を撫でながら、こちらに向かってくるアラッドたちに顔を向ける。
「情けない姿をみせてしまいましたね」
「ありゃあ、対戦相手の岩男を褒めるところだ。精霊同化を使っていなかったとはいえ、聖光雄化を使っている状態でも、お前が強い事に変わりはない。それに……あの一撃は、実に見事だったからな」
あの一撃がどの一撃を指しているのか解る。
言葉を全て見れば、自分も褒められていることは解る筈だが、ほんの少し……フローレンスは対戦相手であったライホルト・ギュレリックに嫉妬してしまった。
「尊敬に値します」
試合中だというのに、相手を評する言葉を呟いたフローレンス。
その直後、左拳がライホルト・ギュレリックの腹を穿つ。
「っ!!!!!?????」
貫くことはなかった。
だが、見た目から肉や骨だけではなく、中までやられているのが解るほど、凹んでいた。
「っ!! そこまで!!!! 勝者、フローレンス・カルロストっ!!!!!!」
「ぬっ、ぐっ…………くっ!!!!!!」
まだ自分は戦える。
そう伝える為に、即座に立ち上がろうとしたが、体が言う事を訊かず……立ち上がれなかったライホルト・ギュレリックは自身の敗北を認めた。
「ふっふっふ、なんだ……随分と、負けず嫌いなところがあるんだな」
「そ、そうみたいだね。あれって……多分、相打ちになることを想定してたんだよ、ね?」
「そうだろうな。あまりにも流れがスムーズだった。とはいえ、それはそれでこれはこれ。あの一撃で押せるなら、押したいとは思ってただろうな」
フローレンスはライホルトが最後に振り下ろした斬撃に合わせて、右拳のアッパーを放った。
結果は、相打ち。
ライホルトの大剣は弾かれ……フローレンスの右拳は砕けると、とまではいかずとも、攻撃として使えるかは怪しい状況に追い込まれた。
しかし、まだ残っている左拳を即座に叩きこみ、勝負を終わらせた。
「フローレンス、結構体技も様になってたね……もしかして、誰かの影響を受けた感じ?」
「さぁ、どうだろうな。ただ、中途半端に向き合ってないのは確かだろうな」
自慢抜きにして、アラッドはまだ自分には及ばないと思っている。
だが……同時に、悪くないと思ったのも事実。
「何はともあれ、良き戦いだったのは間違いない」
アラッドは二人に賞賛の拍手を送った。
直ぐにそれは伝播し、会場で観客していた数少ない者たちも二人に賞賛の拍手を送った。
(やはり、既に精霊同化を完全に完成させてたか。今のあいつを、どう崩すか…………)
称賛の拍手は送った。
今回に限っては、味方でありチームメイトとも言える。
しかし、アラッドは直ぐに精霊同化を完成させたフローレンスをどう崩すかを考え始めていた。
「やっぱり最終的にはフローレンスさんが勝利しましたね。これで……僕たちの完全勝利、ですね」
アッシュはただ……思った事を口にしただけである。
代表戦は全てで三戦三勝。
アッシュは結果的に、相手に敗北を認めさせた形。
アラッドは戦闘中に明確な死のリスクを感じ取った、それは間違いない。
フローレンスは判断は間違い、場外まで吹き飛ばされ、頭から血を流すという決して小さくないダメージを負った。
それらの戦闘内容を考えれば、圧勝とは言えない。
圧勝とは言えないが……三戦の内、敗戦と引き分けが一つもなく、三試合全て勝利した。
それは紛れもない事実であり、アルバース国王側の完全勝利と言えなくもなかった。
「まぁ……そうだな。次戦ったらどうなるかは解らないがな」
ナルターク王国側の人間に気を遣った言葉で返すアラッド。
普段はクールで冷静なアッシュだが……もう完全に仕事が終わったモードに入っていた彼の口は、非常に緩かった。
「僕はそうなるでしょうね。ある程度対策が立てられますから、今度は負けるかもしれません。でも、だからこそ、あぁいった手札を手に入れようと頑張りました。ただ、アラッド兄さんの場合、クロを呼んでないじゃないですか」
「そ、それはそうだな」
「フローレンスさんも、最初から光の精霊を召喚して、精霊同化を使用していれば……お相手の方も最初から全力で戦っていたとしても結果は変わらないでしょう」
「…………それも、否定出来ないな」
事実であると、断言出来てしまう。
フローレンスが場外まで吹き飛ばされてしまってのは、間違いなく精霊同化を使用していなかったから。
たらればの話になってしまうが、仮に精霊同化を使用していればどうにか出来たと、アラッドは自身を持って断言出来る。
「ですよね。とはいえ、だからなんだという話ではあると思いますけど」
「……アッシュ、大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。ただ、ここ最近は錬金術よりも強くなることに時間を使っていたので、少しストレスが溜まっていたのかもしれません」
「そうか…………ふっふっふ、それは仕方ないかもしれないな」
なんとなく、気持ちが理解出来てしまう為、そう思っても口にはするなと言えなかった。
「っと、帰って来たみたいだな」
治療を受け、すっかり頭部の出血痕も消えていた。
「「フローレンス様!!!!」」
当然ながら、フローレンスを敬愛している二人がダッシュで向かい、強烈なハグをかます。
「ふふ、二人とも私は大丈夫ですよ」
「も、申し訳ありません」
「謝る必要はありませんよ。二人を心配させてしまう姿を見せてしまった自覚はありますから」
二人の頭を撫でながら、こちらに向かってくるアラッドたちに顔を向ける。
「情けない姿をみせてしまいましたね」
「ありゃあ、対戦相手の岩男を褒めるところだ。精霊同化を使っていなかったとはいえ、聖光雄化を使っている状態でも、お前が強い事に変わりはない。それに……あの一撃は、実に見事だったからな」
あの一撃がどの一撃を指しているのか解る。
言葉を全て見れば、自分も褒められていることは解る筈だが、ほんの少し……フローレンスは対戦相手であったライホルト・ギュレリックに嫉妬してしまった。
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