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七百九話 違うところに眼が行く
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「……どうやら、アッシュの相手は高等部の上級生みたいだな」
観客席に到着したアラッドたち。
リングには先にナルターク王国側の代表が立っていた。
「彼女の名前はリエラ・カルバトラ。高等部の三年生です」
護衛の魔術師の内、一人がアラッドたちの傍に付き、解説を始めた。
ちなみに国王はナルターク王国の国王と共に観戦すると決めており、アルバース国王としてはアラッドも隣において観戦したかったが、それではアラッドたちが落ち着いて観戦できないだろうと思い、諦めた。
「こちらの王都で行われた学生同士のトーナメントで優勝した生徒です」
「やはり、そういった実績を持つ人物が出ますよね」
「彼女は前回のトーナメントで準優勝しており、実力は既に学生レベルを越えているという噂です」
「……噂通りかと」
遠目から見ただけであり、失礼がないように、面倒事に発展しないようにアラッドは鑑定を使っていない。
それでも、自信満々な表情でリングに立っているリエラ・カルバトラが本当の意味で実力者だと感じ取った。
「アラッドの言う通り彼女、自信満々な表情通り、本当に強いね……だからこそ、アッシュ君がどうやって彼女を倒すのか、気になるね」
「そうだな……俺も気になるよ」
少し遅れてアッシュが登場。
(……緊張は、してないっぽいな。ただ、何と言うか…………逆に緊張感が完全にすっぽ抜けてないか???)
緊張し過ぎてないことは良い事だが、緊張感が全くないのは、それはそれであまりよろしくない。
(そりゃ俺みたいに何百回もモンスター戦ったり、強い奴とバチバチに戦ってきてないだろうけど……さすがに目の前にいる相手が学生っていう枠を考えれば、圧倒的に強いってことは解るよな)
少し……ほんの少しだけ、アラッドの中に弟を心配する気持ちが生まれた。
「あなたが私の対戦相手、なのよね?」
「えぇ、そうです。よろしくお願いします」
「あら、随分と礼儀正しいのね。良い事だわ」
(……巨乳好きな人って、こういう人が好きなのか?)
リエラはガルーレやフローレンスに負けず劣らずの美人令嬢。
しかし、アッシュも一応性別はオス……男子学生ということもあり、その美貌よりも先に一瞬、爆乳の方に意識が吸い寄せられた。
(この学生が……いえ、この子が本当に私の対戦相手なの?)
そしてリエラもややダウナー気味ではあるが、しっかりと父親と母親の血を受け継ぎ……美男子と言えるアッシュの顔よりも先にその身長や体格に目が行き……その後にまだ幼さが残る顔へと移った。
リエラの身長は百七十センチを超えており、一般的な女性と比べれば、間違いなく長身。
それに対してアッシュは……身長はまだ百六十程度。
現在中等部の二年生ということを考えれば、これから父フールや兄であるアラッドと同じく長身になる可能性は十分にある。
しかし……現時点で、対戦相手であるリエラよりも身長が低いのは間違いなかった。
「ところであなた、戦えるのよね?」
対戦相手に、初対面の相手に中々失礼な言葉である。
己の強さにプライドを持つ学生であれば、多少なりとも表情に怒りが現れるだろう。
「えぇ、戦えますので安心してください」
(……この子、もしや中等部の学生?)
大正解である。
普通であれば、中等部の学生が相手となれば……まずは嘗めているのかと怒りが湧き上がる。
しかし真の強者であれば、では何故国の学生代表として中等部の学生が選ばれたのか考え……単純明快な結論に至り、納得する。
リエラにはその結論に至るだけの頭を持ち合わせているが、予想以上に対戦相手である学生から……戦意や闘志が感じられなかった。
「二人とも、それ以上の会話は試合が終わった後で」
「はい」
「……そうですね」
「よし。それでは、これより学生枠の代表戦を始める。どちらかが気を失うか、ギブアップするか、戦闘不能の状態に追い込まれれば、そこで試合終了だ」
審判の確認に、二人とも頷く。
「では………………始めっ!!!!!!」
審判の男が気合の入った開始の声を上げた。
次の瞬間…………リングの上に、獣が現れた。
「ああああああアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!!!!!」
「なっ!!!???」
リエラはまずアッシュの力を確かめようと、出方を見極めようと構えていた。
それが完全に悪手だった気付くには……遅すぎた。
「っ!!!??? あ、アラッド! もしかして、あれって」
「…………違う。あれは、狂化じゃない」
観客席から試合開始の様子を見ていたスティームたちは……アラッドも含めて、開始直後アッシュに驚きを隠せなかった。
「えっ!? マジなの!!!??? どう見ても、狂化にしか思えないんだけど!!」
「そう思うのも解るが……違う。あれは狂化を発動してない」
実際に狂化というリスキーな技を使う使用者だからこそ、狂暴化し……まさに獣の如く攻め続けるアッシュが、狂化を使っていないと解る。
だが……どういった手札を切ったのか、アラッドですら直ぐに答えに至らなかった。
観客席に到着したアラッドたち。
リングには先にナルターク王国側の代表が立っていた。
「彼女の名前はリエラ・カルバトラ。高等部の三年生です」
護衛の魔術師の内、一人がアラッドたちの傍に付き、解説を始めた。
ちなみに国王はナルターク王国の国王と共に観戦すると決めており、アルバース国王としてはアラッドも隣において観戦したかったが、それではアラッドたちが落ち着いて観戦できないだろうと思い、諦めた。
「こちらの王都で行われた学生同士のトーナメントで優勝した生徒です」
「やはり、そういった実績を持つ人物が出ますよね」
「彼女は前回のトーナメントで準優勝しており、実力は既に学生レベルを越えているという噂です」
「……噂通りかと」
遠目から見ただけであり、失礼がないように、面倒事に発展しないようにアラッドは鑑定を使っていない。
それでも、自信満々な表情でリングに立っているリエラ・カルバトラが本当の意味で実力者だと感じ取った。
「アラッドの言う通り彼女、自信満々な表情通り、本当に強いね……だからこそ、アッシュ君がどうやって彼女を倒すのか、気になるね」
「そうだな……俺も気になるよ」
少し遅れてアッシュが登場。
(……緊張は、してないっぽいな。ただ、何と言うか…………逆に緊張感が完全にすっぽ抜けてないか???)
緊張し過ぎてないことは良い事だが、緊張感が全くないのは、それはそれであまりよろしくない。
(そりゃ俺みたいに何百回もモンスター戦ったり、強い奴とバチバチに戦ってきてないだろうけど……さすがに目の前にいる相手が学生っていう枠を考えれば、圧倒的に強いってことは解るよな)
少し……ほんの少しだけ、アラッドの中に弟を心配する気持ちが生まれた。
「あなたが私の対戦相手、なのよね?」
「えぇ、そうです。よろしくお願いします」
「あら、随分と礼儀正しいのね。良い事だわ」
(……巨乳好きな人って、こういう人が好きなのか?)
リエラはガルーレやフローレンスに負けず劣らずの美人令嬢。
しかし、アッシュも一応性別はオス……男子学生ということもあり、その美貌よりも先に一瞬、爆乳の方に意識が吸い寄せられた。
(この学生が……いえ、この子が本当に私の対戦相手なの?)
そしてリエラもややダウナー気味ではあるが、しっかりと父親と母親の血を受け継ぎ……美男子と言えるアッシュの顔よりも先にその身長や体格に目が行き……その後にまだ幼さが残る顔へと移った。
リエラの身長は百七十センチを超えており、一般的な女性と比べれば、間違いなく長身。
それに対してアッシュは……身長はまだ百六十程度。
現在中等部の二年生ということを考えれば、これから父フールや兄であるアラッドと同じく長身になる可能性は十分にある。
しかし……現時点で、対戦相手であるリエラよりも身長が低いのは間違いなかった。
「ところであなた、戦えるのよね?」
対戦相手に、初対面の相手に中々失礼な言葉である。
己の強さにプライドを持つ学生であれば、多少なりとも表情に怒りが現れるだろう。
「えぇ、戦えますので安心してください」
(……この子、もしや中等部の学生?)
大正解である。
普通であれば、中等部の学生が相手となれば……まずは嘗めているのかと怒りが湧き上がる。
しかし真の強者であれば、では何故国の学生代表として中等部の学生が選ばれたのか考え……単純明快な結論に至り、納得する。
リエラにはその結論に至るだけの頭を持ち合わせているが、予想以上に対戦相手である学生から……戦意や闘志が感じられなかった。
「二人とも、それ以上の会話は試合が終わった後で」
「はい」
「……そうですね」
「よし。それでは、これより学生枠の代表戦を始める。どちらかが気を失うか、ギブアップするか、戦闘不能の状態に追い込まれれば、そこで試合終了だ」
審判の確認に、二人とも頷く。
「では………………始めっ!!!!!!」
審判の男が気合の入った開始の声を上げた。
次の瞬間…………リングの上に、獣が現れた。
「ああああああアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!!!!!」
「なっ!!!???」
リエラはまずアッシュの力を確かめようと、出方を見極めようと構えていた。
それが完全に悪手だった気付くには……遅すぎた。
「っ!!!??? あ、アラッド! もしかして、あれって」
「…………違う。あれは、狂化じゃない」
観客席から試合開始の様子を見ていたスティームたちは……アラッドも含めて、開始直後アッシュに驚きを隠せなかった。
「えっ!? マジなの!!!??? どう見ても、狂化にしか思えないんだけど!!」
「そう思うのも解るが……違う。あれは狂化を発動してない」
実際に狂化というリスキーな技を使う使用者だからこそ、狂暴化し……まさに獣の如く攻め続けるアッシュが、狂化を使っていないと解る。
だが……どういった手札を切ったのか、アラッドですら直ぐに答えに至らなかった。
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