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六百九十話 剝いでないよ?
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「そういえばアラッド、さっきソルさんとルーナさんと戦ったって言ったけど、どんな感じで戦ったんだ?」
「言ってなかったか?」
「おぅ、そこまではまだ聞いてないぜ」
「…………まぁ、隠す内容でもないか」
糸という武器だけに負けた。
聞く人によっては、彼女たちを侮り……嗤う者が現れるかもしれない。
しかし、元はソルが吹っ掛けてきた喧嘩。
アラッドがそこまで気にする義理はなかった。
「そういう流れになるだろうとは思っていたが、ちょっとイラついたというか……糸だけで戦って、その場から一歩も動かずに勝とうとしたんだ」
「…………はっ!!!!????」
リオは自身が将来進む進路の中に、黒狼騎士団を候補に入れているため、ソルとルーナのタッグに関しては多少知識があった。
(……そ、そっか。アラッドはギリギリとはいえ、Aランクモンスターを倒せるだけの力があるって考えれば……いやで、でも糸だけで……しかもその場から一歩も動かず、だろ…………はっ!!!!????)
心の中でもう一度盛大に驚くリオ。
だが、その驚きゆえに変な顔になってしまうのも無理はない。
「……え、エリザ先輩。リオ先輩があんなに驚くほど、凄い事? なんですか」
シルフィーにとって、アラッドは最強格の一人として認識している。
身内以外にも多くの猛者がいることは解っているが、それでもその猛者たちにもアラッドが負けるイメージが湧かない。
なので先輩であるエリザに、リオが何故あそこまで驚いているのか尋ねた。
「勿論ですわ。確か……アラッドが相手をした二人は、タッグであればBランクモンスターを倒せる実力を有していた筈……そんな二人を相手に素でであればまだしも、糸だけで……しかもその場から動かずというのは……」
「………………あっ!!!! アラッド、もしかしてお前…………あの技を使ったのか!!??」
「リオ、あの技とはどの技だ? さすがにどの技のことを言ってるのか解らない」
「ほら、あれだよ……かなり前に、パーティーで絡んで来たバカがいただろ。そいつに使った技だよ」
「パーティーで……社交界の場で絡んで来たバカ、か……………………あぁ~~、あの時か」
「「???」」
首を傾げるスティームとガルーレに、アラッドは十年ほど前の子供たちだけの社交場で何が起こったのかを話した。
すると、スティームはやや引いており、逆にガルーレは大爆笑。
「あ、あはははははは!!! あ、アラッドの糸って、そんな事まで、出来るんだね……あっはっはっは!!! だ、だめ。お、お腹が痛すぎる!」
「あ、アラッド……その、結局のところ、二人との試合でそれを、使用したの?」
「いや、使ってないぞ。ただ、俺が生み出した糸を彼女たちの服に絡ませて引っ張って転ばせたりはしたがな。さすがにイラついたとはいえ、面倒なファン心理……信者心理ゆえに喧嘩を吹っ掛けてきただけだからな」
「そ、そっか」
「けどよ~、アラッド。もし身内が馬鹿にされてたら、観客に他の騎士たちがいたとしても、容赦なく剥ぐいでたんじゃねぇのか?」
友人だからこそ、アラッドの逆鱗が何なのかある程度把握しているリオ。
意地悪な質問であると解りつつも、どうするのか気になった。
「フローレンスの奴がいたってなると…………そういう倒し方よりも、本当に何もさせずに倒したかもな」
「大剣による攻撃や、攻撃魔法を発動させる時間を与えないってことか」
「大体そんなところだ。それだけ自分たちが無力なのか思い知らせようとした……かもしれないな」
仮定の話であるため、他にもやり方はある。
ただ、さすがに他の騎士たちがいる前で素っ裸にするなど、ド畜生で鬼畜な真似をしようとは思わない。
「なるほどね~~~。でもさ、やっぱり使用する武器糸と魔力? だけで、その場から一歩も動かずに倒したんだろ。その戦いでアラッドの糸がヤバいってことは身に染みて解ったんだろうけど、結局心がバキバキに折れたって点は変わらないんじゃないか?」
「加えてその場から一歩も動かなかった、か…………リオの言う通り、数日……十日は立ち直れないぐらい折れたかもしれないな」
「さぁ、どうだろうな。向こうから売ってきた喧嘩だ。俺は俺の戦りたいように戦っただけ。フローレンスも特に不満そうな顔はしてなかった。それに、自分たちが女神? って敬意を持ち、崇める存在がいるんだ。そんな存在に慰められれば、直ぐに復活するだろ」
「……そうでしょうか」
アラッドの言いたい事は解る。
しかし、マリアはそこまでフローレンスが自ら喧嘩を売り、返り討ちにされた人物に優しくするとは思えなかった。
「私は……フローレンスさんは、アラッドさんに対して並ではない思いを持っている様に思います」
「友人以上の思いを持っている、ということですの?」
「そこまでは解りません。しかし、本気の戦いでなくとも、軽く手合わせできるかもしれない。それ楽しみに期待していたと考えると……逆にアラッドさんに反抗的? な態度を取ったお二人に説教するのかと、思いました」
「フローレンスさんが説教ねぇ………………それって、一部の行き過ぎたファン? たちからすればご褒美? ってやつじゃねぇの???」
この場にそういったファンの心理に詳しい者は多くないが、詳しくないからこそ強くも否定出来ず……妙な沈黙が生まれてしまった。
「言ってなかったか?」
「おぅ、そこまではまだ聞いてないぜ」
「…………まぁ、隠す内容でもないか」
糸という武器だけに負けた。
聞く人によっては、彼女たちを侮り……嗤う者が現れるかもしれない。
しかし、元はソルが吹っ掛けてきた喧嘩。
アラッドがそこまで気にする義理はなかった。
「そういう流れになるだろうとは思っていたが、ちょっとイラついたというか……糸だけで戦って、その場から一歩も動かずに勝とうとしたんだ」
「…………はっ!!!!????」
リオは自身が将来進む進路の中に、黒狼騎士団を候補に入れているため、ソルとルーナのタッグに関しては多少知識があった。
(……そ、そっか。アラッドはギリギリとはいえ、Aランクモンスターを倒せるだけの力があるって考えれば……いやで、でも糸だけで……しかもその場から一歩も動かず、だろ…………はっ!!!!????)
心の中でもう一度盛大に驚くリオ。
だが、その驚きゆえに変な顔になってしまうのも無理はない。
「……え、エリザ先輩。リオ先輩があんなに驚くほど、凄い事? なんですか」
シルフィーにとって、アラッドは最強格の一人として認識している。
身内以外にも多くの猛者がいることは解っているが、それでもその猛者たちにもアラッドが負けるイメージが湧かない。
なので先輩であるエリザに、リオが何故あそこまで驚いているのか尋ねた。
「勿論ですわ。確か……アラッドが相手をした二人は、タッグであればBランクモンスターを倒せる実力を有していた筈……そんな二人を相手に素でであればまだしも、糸だけで……しかもその場から動かずというのは……」
「………………あっ!!!! アラッド、もしかしてお前…………あの技を使ったのか!!??」
「リオ、あの技とはどの技だ? さすがにどの技のことを言ってるのか解らない」
「ほら、あれだよ……かなり前に、パーティーで絡んで来たバカがいただろ。そいつに使った技だよ」
「パーティーで……社交界の場で絡んで来たバカ、か……………………あぁ~~、あの時か」
「「???」」
首を傾げるスティームとガルーレに、アラッドは十年ほど前の子供たちだけの社交場で何が起こったのかを話した。
すると、スティームはやや引いており、逆にガルーレは大爆笑。
「あ、あはははははは!!! あ、アラッドの糸って、そんな事まで、出来るんだね……あっはっはっは!!! だ、だめ。お、お腹が痛すぎる!」
「あ、アラッド……その、結局のところ、二人との試合でそれを、使用したの?」
「いや、使ってないぞ。ただ、俺が生み出した糸を彼女たちの服に絡ませて引っ張って転ばせたりはしたがな。さすがにイラついたとはいえ、面倒なファン心理……信者心理ゆえに喧嘩を吹っ掛けてきただけだからな」
「そ、そっか」
「けどよ~、アラッド。もし身内が馬鹿にされてたら、観客に他の騎士たちがいたとしても、容赦なく剥ぐいでたんじゃねぇのか?」
友人だからこそ、アラッドの逆鱗が何なのかある程度把握しているリオ。
意地悪な質問であると解りつつも、どうするのか気になった。
「フローレンスの奴がいたってなると…………そういう倒し方よりも、本当に何もさせずに倒したかもな」
「大剣による攻撃や、攻撃魔法を発動させる時間を与えないってことか」
「大体そんなところだ。それだけ自分たちが無力なのか思い知らせようとした……かもしれないな」
仮定の話であるため、他にもやり方はある。
ただ、さすがに他の騎士たちがいる前で素っ裸にするなど、ド畜生で鬼畜な真似をしようとは思わない。
「なるほどね~~~。でもさ、やっぱり使用する武器糸と魔力? だけで、その場から一歩も動かずに倒したんだろ。その戦いでアラッドの糸がヤバいってことは身に染みて解ったんだろうけど、結局心がバキバキに折れたって点は変わらないんじゃないか?」
「加えてその場から一歩も動かなかった、か…………リオの言う通り、数日……十日は立ち直れないぐらい折れたかもしれないな」
「さぁ、どうだろうな。向こうから売ってきた喧嘩だ。俺は俺の戦りたいように戦っただけ。フローレンスも特に不満そうな顔はしてなかった。それに、自分たちが女神? って敬意を持ち、崇める存在がいるんだ。そんな存在に慰められれば、直ぐに復活するだろ」
「……そうでしょうか」
アラッドの言いたい事は解る。
しかし、マリアはそこまでフローレンスが自ら喧嘩を売り、返り討ちにされた人物に優しくするとは思えなかった。
「私は……フローレンスさんは、アラッドさんに対して並ではない思いを持っている様に思います」
「友人以上の思いを持っている、ということですの?」
「そこまでは解りません。しかし、本気の戦いでなくとも、軽く手合わせできるかもしれない。それ楽しみに期待していたと考えると……逆にアラッドさんに反抗的? な態度を取ったお二人に説教するのかと、思いました」
「フローレンスさんが説教ねぇ………………それって、一部の行き過ぎたファン? たちからすればご褒美? ってやつじゃねぇの???」
この場にそういったファンの心理に詳しい者は多くないが、詳しくないからこそ強くも否定出来ず……妙な沈黙が生まれてしまった。
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