691 / 1,012
六百九十話 剝いでないよ?
しおりを挟む
「そういえばアラッド、さっきソルさんとルーナさんと戦ったって言ったけど、どんな感じで戦ったんだ?」
「言ってなかったか?」
「おぅ、そこまではまだ聞いてないぜ」
「…………まぁ、隠す内容でもないか」
糸という武器だけに負けた。
聞く人によっては、彼女たちを侮り……嗤う者が現れるかもしれない。
しかし、元はソルが吹っ掛けてきた喧嘩。
アラッドがそこまで気にする義理はなかった。
「そういう流れになるだろうとは思っていたが、ちょっとイラついたというか……糸だけで戦って、その場から一歩も動かずに勝とうとしたんだ」
「…………はっ!!!!????」
リオは自身が将来進む進路の中に、黒狼騎士団を候補に入れているため、ソルとルーナのタッグに関しては多少知識があった。
(……そ、そっか。アラッドはギリギリとはいえ、Aランクモンスターを倒せるだけの力があるって考えれば……いやで、でも糸だけで……しかもその場から一歩も動かず、だろ…………はっ!!!!????)
心の中でもう一度盛大に驚くリオ。
だが、その驚きゆえに変な顔になってしまうのも無理はない。
「……え、エリザ先輩。リオ先輩があんなに驚くほど、凄い事? なんですか」
シルフィーにとって、アラッドは最強格の一人として認識している。
身内以外にも多くの猛者がいることは解っているが、それでもその猛者たちにもアラッドが負けるイメージが湧かない。
なので先輩であるエリザに、リオが何故あそこまで驚いているのか尋ねた。
「勿論ですわ。確か……アラッドが相手をした二人は、タッグであればBランクモンスターを倒せる実力を有していた筈……そんな二人を相手に素でであればまだしも、糸だけで……しかもその場から動かずというのは……」
「………………あっ!!!! アラッド、もしかしてお前…………あの技を使ったのか!!??」
「リオ、あの技とはどの技だ? さすがにどの技のことを言ってるのか解らない」
「ほら、あれだよ……かなり前に、パーティーで絡んで来たバカがいただろ。そいつに使った技だよ」
「パーティーで……社交界の場で絡んで来たバカ、か……………………あぁ~~、あの時か」
「「???」」
首を傾げるスティームとガルーレに、アラッドは十年ほど前の子供たちだけの社交場で何が起こったのかを話した。
すると、スティームはやや引いており、逆にガルーレは大爆笑。
「あ、あはははははは!!! あ、アラッドの糸って、そんな事まで、出来るんだね……あっはっはっは!!! だ、だめ。お、お腹が痛すぎる!」
「あ、アラッド……その、結局のところ、二人との試合でそれを、使用したの?」
「いや、使ってないぞ。ただ、俺が生み出した糸を彼女たちの服に絡ませて引っ張って転ばせたりはしたがな。さすがにイラついたとはいえ、面倒なファン心理……信者心理ゆえに喧嘩を吹っ掛けてきただけだからな」
「そ、そっか」
「けどよ~、アラッド。もし身内が馬鹿にされてたら、観客に他の騎士たちがいたとしても、容赦なく剥ぐいでたんじゃねぇのか?」
友人だからこそ、アラッドの逆鱗が何なのかある程度把握しているリオ。
意地悪な質問であると解りつつも、どうするのか気になった。
「フローレンスの奴がいたってなると…………そういう倒し方よりも、本当に何もさせずに倒したかもな」
「大剣による攻撃や、攻撃魔法を発動させる時間を与えないってことか」
「大体そんなところだ。それだけ自分たちが無力なのか思い知らせようとした……かもしれないな」
仮定の話であるため、他にもやり方はある。
ただ、さすがに他の騎士たちがいる前で素っ裸にするなど、ド畜生で鬼畜な真似をしようとは思わない。
「なるほどね~~~。でもさ、やっぱり使用する武器糸と魔力? だけで、その場から一歩も動かずに倒したんだろ。その戦いでアラッドの糸がヤバいってことは身に染みて解ったんだろうけど、結局心がバキバキに折れたって点は変わらないんじゃないか?」
「加えてその場から一歩も動かなかった、か…………リオの言う通り、数日……十日は立ち直れないぐらい折れたかもしれないな」
「さぁ、どうだろうな。向こうから売ってきた喧嘩だ。俺は俺の戦りたいように戦っただけ。フローレンスも特に不満そうな顔はしてなかった。それに、自分たちが女神? って敬意を持ち、崇める存在がいるんだ。そんな存在に慰められれば、直ぐに復活するだろ」
「……そうでしょうか」
アラッドの言いたい事は解る。
しかし、マリアはそこまでフローレンスが自ら喧嘩を売り、返り討ちにされた人物に優しくするとは思えなかった。
「私は……フローレンスさんは、アラッドさんに対して並ではない思いを持っている様に思います」
「友人以上の思いを持っている、ということですの?」
「そこまでは解りません。しかし、本気の戦いでなくとも、軽く手合わせできるかもしれない。それ楽しみに期待していたと考えると……逆にアラッドさんに反抗的? な態度を取ったお二人に説教するのかと、思いました」
「フローレンスさんが説教ねぇ………………それって、一部の行き過ぎたファン? たちからすればご褒美? ってやつじゃねぇの???」
この場にそういったファンの心理に詳しい者は多くないが、詳しくないからこそ強くも否定出来ず……妙な沈黙が生まれてしまった。
「言ってなかったか?」
「おぅ、そこまではまだ聞いてないぜ」
「…………まぁ、隠す内容でもないか」
糸という武器だけに負けた。
聞く人によっては、彼女たちを侮り……嗤う者が現れるかもしれない。
しかし、元はソルが吹っ掛けてきた喧嘩。
アラッドがそこまで気にする義理はなかった。
「そういう流れになるだろうとは思っていたが、ちょっとイラついたというか……糸だけで戦って、その場から一歩も動かずに勝とうとしたんだ」
「…………はっ!!!!????」
リオは自身が将来進む進路の中に、黒狼騎士団を候補に入れているため、ソルとルーナのタッグに関しては多少知識があった。
(……そ、そっか。アラッドはギリギリとはいえ、Aランクモンスターを倒せるだけの力があるって考えれば……いやで、でも糸だけで……しかもその場から一歩も動かず、だろ…………はっ!!!!????)
心の中でもう一度盛大に驚くリオ。
だが、その驚きゆえに変な顔になってしまうのも無理はない。
「……え、エリザ先輩。リオ先輩があんなに驚くほど、凄い事? なんですか」
シルフィーにとって、アラッドは最強格の一人として認識している。
身内以外にも多くの猛者がいることは解っているが、それでもその猛者たちにもアラッドが負けるイメージが湧かない。
なので先輩であるエリザに、リオが何故あそこまで驚いているのか尋ねた。
「勿論ですわ。確か……アラッドが相手をした二人は、タッグであればBランクモンスターを倒せる実力を有していた筈……そんな二人を相手に素でであればまだしも、糸だけで……しかもその場から動かずというのは……」
「………………あっ!!!! アラッド、もしかしてお前…………あの技を使ったのか!!??」
「リオ、あの技とはどの技だ? さすがにどの技のことを言ってるのか解らない」
「ほら、あれだよ……かなり前に、パーティーで絡んで来たバカがいただろ。そいつに使った技だよ」
「パーティーで……社交界の場で絡んで来たバカ、か……………………あぁ~~、あの時か」
「「???」」
首を傾げるスティームとガルーレに、アラッドは十年ほど前の子供たちだけの社交場で何が起こったのかを話した。
すると、スティームはやや引いており、逆にガルーレは大爆笑。
「あ、あはははははは!!! あ、アラッドの糸って、そんな事まで、出来るんだね……あっはっはっは!!! だ、だめ。お、お腹が痛すぎる!」
「あ、アラッド……その、結局のところ、二人との試合でそれを、使用したの?」
「いや、使ってないぞ。ただ、俺が生み出した糸を彼女たちの服に絡ませて引っ張って転ばせたりはしたがな。さすがにイラついたとはいえ、面倒なファン心理……信者心理ゆえに喧嘩を吹っ掛けてきただけだからな」
「そ、そっか」
「けどよ~、アラッド。もし身内が馬鹿にされてたら、観客に他の騎士たちがいたとしても、容赦なく剥ぐいでたんじゃねぇのか?」
友人だからこそ、アラッドの逆鱗が何なのかある程度把握しているリオ。
意地悪な質問であると解りつつも、どうするのか気になった。
「フローレンスの奴がいたってなると…………そういう倒し方よりも、本当に何もさせずに倒したかもな」
「大剣による攻撃や、攻撃魔法を発動させる時間を与えないってことか」
「大体そんなところだ。それだけ自分たちが無力なのか思い知らせようとした……かもしれないな」
仮定の話であるため、他にもやり方はある。
ただ、さすがに他の騎士たちがいる前で素っ裸にするなど、ド畜生で鬼畜な真似をしようとは思わない。
「なるほどね~~~。でもさ、やっぱり使用する武器糸と魔力? だけで、その場から一歩も動かずに倒したんだろ。その戦いでアラッドの糸がヤバいってことは身に染みて解ったんだろうけど、結局心がバキバキに折れたって点は変わらないんじゃないか?」
「加えてその場から一歩も動かなかった、か…………リオの言う通り、数日……十日は立ち直れないぐらい折れたかもしれないな」
「さぁ、どうだろうな。向こうから売ってきた喧嘩だ。俺は俺の戦りたいように戦っただけ。フローレンスも特に不満そうな顔はしてなかった。それに、自分たちが女神? って敬意を持ち、崇める存在がいるんだ。そんな存在に慰められれば、直ぐに復活するだろ」
「……そうでしょうか」
アラッドの言いたい事は解る。
しかし、マリアはそこまでフローレンスが自ら喧嘩を売り、返り討ちにされた人物に優しくするとは思えなかった。
「私は……フローレンスさんは、アラッドさんに対して並ではない思いを持っている様に思います」
「友人以上の思いを持っている、ということですの?」
「そこまでは解りません。しかし、本気の戦いでなくとも、軽く手合わせできるかもしれない。それ楽しみに期待していたと考えると……逆にアラッドさんに反抗的? な態度を取ったお二人に説教するのかと、思いました」
「フローレンスさんが説教ねぇ………………それって、一部の行き過ぎたファン? たちからすればご褒美? ってやつじゃねぇの???」
この場にそういったファンの心理に詳しい者は多くないが、詳しくないからこそ強くも否定出来ず……妙な沈黙が生まれてしまった。
137
お気に入りに追加
6,106
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。
リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。
そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。
そして予告なしに転生。
ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。
そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、
赤い鳥を仲間にし、、、
冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!?
スキルが何でも料理に没頭します!
超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。
合成語多いかも
話の単位は「食」
3月18日 投稿(一食目、二食目)
3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!
公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。
転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。
Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった後、異世界に転生した高校生、鬼島迅。
そんな彼が生まれ落ちた家は、貴族。
しかし、その家の住人たちは国内でも随一、乱暴者というイメージが染みついている家。
世間のその様なイメージは……あながち間違ってはいない。
そんな一家でも、迅……イシュドはある意味で狂った存在。
そしてイシュドは先々代当主、イシュドにとってひい爺ちゃんにあたる人物に目を付けられ、立派な暴君戦士への道を歩み始める。
「イシュド、学園に通ってくれねぇか」
「へ?」
そんなある日、父親であるアルバから予想外の頼み事をされた。
※主人公は一先ず五十後半の話で暴れます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる