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六百八十六話 遊んでは、いなかった
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「ッ…………凄い事は、解っていたが……彼は、こんな事も出来たんだな」
「正直驚きが強いね。彼女たちは、二人でならBランクのモンスターにも勝てる力があるんだったよね」
「みたいだな。けど……いや、バカにしちゃのは解ってるんだが…………」
見学している騎士たちは、決して馬鹿ではない。
ソルとルーナが女性だからといって、バカにすることはない……だが、それでも目の前で行われている戦闘を観る限り、本当に二人でBランクモンスターを討伐出来る力があるのかと疑いたくなる。
「「はぁ、はぁ、はぁ」」
「もう終わりにするか」
「んな訳、ないだろ!!!!!!!」
「まだ……終わらない」
まだ戦闘続行の意志はある。
それを確認したアラッドは警戒を解くことなく……彼女たちの攻撃に備える。
(ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるな!!!!! こんな、こんな……こんな事があって、たまるかッ!!!!!!!!)
心の中で全力で吼える。
怒りを撒き散らし、それを力に変える。
(アラッドも……中々えぐいことするね)
(そういう力を持ってるのは知ってたけど、ここまで完封出来るのは……結構びっくりね)
騎士たちと同じく、離れた場所から観戦しているスティームとガルーレは、ほんの少しだけソルとルーナのことが可哀想に思えた。
何故なら……アラッドを相手に、二人は試合開始時から一歩その場から動かせていなかった。
(どう近づいても、死角から糸が迫る。魔力を纏えばある程度対処出来るみたいだけど、糸に魔力を纏わせればそれも意味無い)
(糸が魔力を纏ったら、反応は解るようになるけど……アラッドの魔力量は、本職が魔法使いなんじゃないのって疑いたくなる程多い。それに、魔力を纏った糸の中に普通の糸を混ぜてる? 視界を邪魔するには有効打かも。ていうか、もしかしてちょいちょい糸の……質? を変えてる???)
アラッドのスキル、糸にはスレッドチェンジという、糸の質を変える技がある。
粘着性、弾力性がある糸に帰るだけではなく、鋼鉄製の糸に変えることも出来る。
以前、マジットの鉄拳に纏わせた特別製の糸ではなくとも、その半分の強度がある糸を何十も同時に使えば……魔力を纏わせずとも、脚を引っかけることが出来てしまう。
(ッ!! 焦ったら……焦ったら、負ける。でも、焦らないと……このままじゃ!!!!)
ルーナはソルと違い、アラッドを試合開始時から一歩も動かせていない状況に対し、猛烈な焦りを感じていなかった。
淡々と自分の役割を果たしていくが……全く上手く攻められない。
(少しでも油断すると、直ぐに攻められる……頭の中、どうなってるの!!??)
アラッドは一人ではなく、二人を相手にしている。
当然ながら、後衛でソルをサポートしようと、隙あらば強烈な一撃を放とうとするルーナにも注意しなければならない。
今のところ大胆な攻撃は仕掛けていない。
ただ、鉄の糸……針と呼べなくない武器を一度に数十本飛ばし、ルーナの動きを妨害していた。
鉄の針とはいえ、魔力を纏っていなければ、魔力の結界を張っていればどうにか出来る。
しかし、魔力を纏う、もしくは結界を張っていなければ地味に嫌なダメージを食らってしまう。
「っ!!?? くっ、本当に……厭らしい!!」
加えてアラッドは鉄の糸を飛ばすだけではなく、普通の位置をこっそりと動かし、ルーナの服と繋げて引っ張る。
踏ん張ることに集中していれば問題無いが、アラッドを倒すことが目的である限り、踏ん張ることだけに集中し続ける訳にはいかない。
(狂化を使わせることは難しいと思っていましたが、あの手痛いダメージを食らってしまった糸にこれほどの力があったとは……本当に多彩で繊細で……芸術的。元々剣技や体技と同時に魔法を扱うのが得意と聞いていましたが、それが出来ればあぁいった戦い方をするのも難しくはないということですね)
今でもフローレンスは覚えている。
自分の腕が、急に自分を殴ってきたことを。
非常に……非常に気持ち悪かった。
自分の体の一部であるのに、自分の意思とは関係無く動き、自分を殴ってきた。
(…………もしかして、あの試合の決定打となったの力でわざと? 絶対にあり得ないとは言えませんが……それでも、あの表情を見る限り……遊んでいる、というわけではなさそうですね)
アラッドの事を全て知っている、などとストーカー染みたことは言えない。
それでも……自分を倒した猛者が今この場で、遊んでいる様には思えなかった。
そんなフローレンスの推測は当たっていた。
「っ!? ぐっ、ぅらああああああッ!!!!!」
(避けた、か。あんまり頭で考えるタイプじゃないところを考えると、野性の勘か? 何はともあれ、やっぱり油断出来ないな)
なるべくその場から動かない。
そして糸だけで倒す。
アラッドは自ら縛りを行い、それを実行。
最初こそ、達成するのにそこまで難しくないと考えていた。
それでも……試合開始直後は罠に引っ掛かって盛大に顔面から地面に激突したが、そこは有望株の騎士と魔法使い。
縛り通りに戦って勝つには、かなりの集中力が必要な獣になった。
ただ、二人にとっては絶望的な情報があり、アラッドの魔力量はまだ半分を切っていなかった。
「正直驚きが強いね。彼女たちは、二人でならBランクのモンスターにも勝てる力があるんだったよね」
「みたいだな。けど……いや、バカにしちゃのは解ってるんだが…………」
見学している騎士たちは、決して馬鹿ではない。
ソルとルーナが女性だからといって、バカにすることはない……だが、それでも目の前で行われている戦闘を観る限り、本当に二人でBランクモンスターを討伐出来る力があるのかと疑いたくなる。
「「はぁ、はぁ、はぁ」」
「もう終わりにするか」
「んな訳、ないだろ!!!!!!!」
「まだ……終わらない」
まだ戦闘続行の意志はある。
それを確認したアラッドは警戒を解くことなく……彼女たちの攻撃に備える。
(ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるな!!!!! こんな、こんな……こんな事があって、たまるかッ!!!!!!!!)
心の中で全力で吼える。
怒りを撒き散らし、それを力に変える。
(アラッドも……中々えぐいことするね)
(そういう力を持ってるのは知ってたけど、ここまで完封出来るのは……結構びっくりね)
騎士たちと同じく、離れた場所から観戦しているスティームとガルーレは、ほんの少しだけソルとルーナのことが可哀想に思えた。
何故なら……アラッドを相手に、二人は試合開始時から一歩その場から動かせていなかった。
(どう近づいても、死角から糸が迫る。魔力を纏えばある程度対処出来るみたいだけど、糸に魔力を纏わせればそれも意味無い)
(糸が魔力を纏ったら、反応は解るようになるけど……アラッドの魔力量は、本職が魔法使いなんじゃないのって疑いたくなる程多い。それに、魔力を纏った糸の中に普通の糸を混ぜてる? 視界を邪魔するには有効打かも。ていうか、もしかしてちょいちょい糸の……質? を変えてる???)
アラッドのスキル、糸にはスレッドチェンジという、糸の質を変える技がある。
粘着性、弾力性がある糸に帰るだけではなく、鋼鉄製の糸に変えることも出来る。
以前、マジットの鉄拳に纏わせた特別製の糸ではなくとも、その半分の強度がある糸を何十も同時に使えば……魔力を纏わせずとも、脚を引っかけることが出来てしまう。
(ッ!! 焦ったら……焦ったら、負ける。でも、焦らないと……このままじゃ!!!!)
ルーナはソルと違い、アラッドを試合開始時から一歩も動かせていない状況に対し、猛烈な焦りを感じていなかった。
淡々と自分の役割を果たしていくが……全く上手く攻められない。
(少しでも油断すると、直ぐに攻められる……頭の中、どうなってるの!!??)
アラッドは一人ではなく、二人を相手にしている。
当然ながら、後衛でソルをサポートしようと、隙あらば強烈な一撃を放とうとするルーナにも注意しなければならない。
今のところ大胆な攻撃は仕掛けていない。
ただ、鉄の糸……針と呼べなくない武器を一度に数十本飛ばし、ルーナの動きを妨害していた。
鉄の針とはいえ、魔力を纏っていなければ、魔力の結界を張っていればどうにか出来る。
しかし、魔力を纏う、もしくは結界を張っていなければ地味に嫌なダメージを食らってしまう。
「っ!!?? くっ、本当に……厭らしい!!」
加えてアラッドは鉄の糸を飛ばすだけではなく、普通の位置をこっそりと動かし、ルーナの服と繋げて引っ張る。
踏ん張ることに集中していれば問題無いが、アラッドを倒すことが目的である限り、踏ん張ることだけに集中し続ける訳にはいかない。
(狂化を使わせることは難しいと思っていましたが、あの手痛いダメージを食らってしまった糸にこれほどの力があったとは……本当に多彩で繊細で……芸術的。元々剣技や体技と同時に魔法を扱うのが得意と聞いていましたが、それが出来ればあぁいった戦い方をするのも難しくはないということですね)
今でもフローレンスは覚えている。
自分の腕が、急に自分を殴ってきたことを。
非常に……非常に気持ち悪かった。
自分の体の一部であるのに、自分の意思とは関係無く動き、自分を殴ってきた。
(…………もしかして、あの試合の決定打となったの力でわざと? 絶対にあり得ないとは言えませんが……それでも、あの表情を見る限り……遊んでいる、というわけではなさそうですね)
アラッドの事を全て知っている、などとストーカー染みたことは言えない。
それでも……自分を倒した猛者が今この場で、遊んでいる様には思えなかった。
そんなフローレンスの推測は当たっていた。
「っ!? ぐっ、ぅらああああああッ!!!!!」
(避けた、か。あんまり頭で考えるタイプじゃないところを考えると、野性の勘か? 何はともあれ、やっぱり油断出来ないな)
なるべくその場から動かない。
そして糸だけで倒す。
アラッドは自ら縛りを行い、それを実行。
最初こそ、達成するのにそこまで難しくないと考えていた。
それでも……試合開始直後は罠に引っ掛かって盛大に顔面から地面に激突したが、そこは有望株の騎士と魔法使い。
縛り通りに戦って勝つには、かなりの集中力が必要な獣になった。
ただ、二人にとっては絶望的な情報があり、アラッドの魔力量はまだ半分を切っていなかった。
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