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六百八十一話 解らない態度
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久しぶりに出会った人物に対して「げっ!!!!!!」という、明らかに失礼な態度を取るアラッド。
だが……アラッドの隣にいるスティームとガルーレの反応は全く違っていた。
(こ、この人がアラッドをあと一歩のところまで追い詰めた、フローレンス・カルロスト…………えっ、アラッドってこんな美しい人に好かれてるのにめんどくさがってる……って言うか、今げっ!! って言った!!!???)
(うわぁ~~~~。これはヤバいと言うか…………うん、ヤバいね。超語彙力下がっちゃってるけど、本当にそれぐらいヤバい美人さんだね。しかも超強いってのが、もう雰囲気から解る……ていうか、アラッドってこの人が苦手なんだっけ? ちょっと意味不明過ぎじゃないの?)
二人とも、まず最初の感想は容姿に関するものだった。
美しいと……彼女を表すのであれば、その言葉だけで十分。
足りないと叫ぶ信者もいるかもしれないが、まずその言葉はマストであった。
そして次に、何故アラッドはこんな人物に興味を持たれているにもかかわらず、会うのが面倒、億劫と思っているのか解らない。
その詳細に関しては一応聞いている。聞いてはいたが……それでも、彼女が持つ要素を考えた場合……そこまで気にすることなのかと、つい首を傾げてしまう。
「……そうですね。お久しぶりです」
「王都に居るという事は、冒険者枠として代表戦に参加するのですね」
「国王陛下からの頼みとあっては、基本的に断れないでしょう」
相変わらずフローレンスはにこやかな笑みを浮かべている。
解る者が見れば、その笑みが普段から浮かべてるデフォルトの笑みではなく、心の底から楽しんでいる笑みだと解る。
それに対し……アラッドも同じく、解る者が見れば本当に鬱陶しく思っている苦い表情を浮かべていることが解る。
「んじゃ、失礼します。代表戦ではお互いに頑張りましょう」
一応エールは送った。
それで十分だろうと思い、早足で去ろうとするが……そっと、片手を握られてしまった。
「久しぶりに会えたのです。お茶でもしませんか」
「…………」
全令息……とは言い過ぎかもしれない。少なくとも、アラッドの弟であるアッシュはそこまで興味がない。
ただ、殆どの令息たちがその手に握られたら……と夢見る手が、今アラッドという一人の冒険者の手を握っている。
現在この場にはアラッド、スティーム、ガルーレ。
フローレンスと現在所属している騎士団の関係者しかいない。
他の者たちがいれば……よからぬ噂が立っていたかもしれない。
「……とりあえず、逃げないんで話してもらっても良いですか」
「分かりました」
離れる手に、アラッドは特に惜しむことなく大きなため息を吐いた。
「お前ぇ……いったい何なんだよ」
「ん?」
大きなため息を吐いたアラッドに対し、フローレンスと共に女性の一人、ガルーレと同族だと言われたら信じてしまう様な女性騎士がアラッドを睨む。
「何なんだと言われてもな……どう答えれば良いのか、いまいち解らないな」
「チッ!!!! フローレンス姐さんに話しかけられといて、その態度は何なんだってって言ってんだ」
(そういう事か。これだから……こういのを、女神属性が付いてる、もしくはアイドル特性が付いてるって言えば良いのか?)
再度大きなため息を吐きそうになるが、場の空気を読んでギリギリ止めた。
「なんだって言われても困る。俺は別にフローレンス・カルロストのファンや信者じゃない」
「そうですね。アラッドは……ライバル、でしょうか?」
アラッドの強さを意識している人物たちからすれば、中々に喧嘩を売る内容の発言であり……少なくとも、この場に居るスティームは「そこは譲れない」と言いたいところだが……ぐっと飲み込むしかなかった。
「姐さん、本当にこいつが?」
(そりゃファンや信者からしたらとりあえず疑いたいだろうな。つか、姉さん……じゃなくて、文字的には姐さん…………って呼んでるよな?)
相変わらずどこに行っても、その強さは健在なのだと把握。
「少なくとも、私はアラッドに一度も負けました……手加減された状態で」
「「っ!!!???」」
フローレンスの傍にいる二人は、とてもその言葉が信じられず、アラッドに向ける眼には様々な感情が浮かんでいた。
「手加減って……あぁ、あれか…………さっきその件に関して、クロの力も俺の力だと認めたからな。確かに、否定は出来ないか」
「あの状態は、半覚醒とでも言うべきでしょうか。途中で新たな力を手に入れられたにもかかわらず、私は負けました」
「最後は気迫で押し切った様なものですけどね」
「それが、私の弱さだった。それだけですよ」
「…………はぁ~~~~~~。茶でしたね。分かりました、行きましょうか」
「ふふ、ありがとうございます」
普通は男側が「誘ってくれてありがとうございます」と言うべきなのだが、二人の関係上……この光景が正しいと言えた。
(ん~~~~~……アラッド、後ろの爆弾はどうするのかな)
フローレンスの付き添いで来ていた戦士タイプと魔法職タイプの女性たちは、完全にアラッドに対して刺々しい意味でロックオンしていた。
だが……アラッドの隣にいるスティームとガルーレの反応は全く違っていた。
(こ、この人がアラッドをあと一歩のところまで追い詰めた、フローレンス・カルロスト…………えっ、アラッドってこんな美しい人に好かれてるのにめんどくさがってる……って言うか、今げっ!! って言った!!!???)
(うわぁ~~~~。これはヤバいと言うか…………うん、ヤバいね。超語彙力下がっちゃってるけど、本当にそれぐらいヤバい美人さんだね。しかも超強いってのが、もう雰囲気から解る……ていうか、アラッドってこの人が苦手なんだっけ? ちょっと意味不明過ぎじゃないの?)
二人とも、まず最初の感想は容姿に関するものだった。
美しいと……彼女を表すのであれば、その言葉だけで十分。
足りないと叫ぶ信者もいるかもしれないが、まずその言葉はマストであった。
そして次に、何故アラッドはこんな人物に興味を持たれているにもかかわらず、会うのが面倒、億劫と思っているのか解らない。
その詳細に関しては一応聞いている。聞いてはいたが……それでも、彼女が持つ要素を考えた場合……そこまで気にすることなのかと、つい首を傾げてしまう。
「……そうですね。お久しぶりです」
「王都に居るという事は、冒険者枠として代表戦に参加するのですね」
「国王陛下からの頼みとあっては、基本的に断れないでしょう」
相変わらずフローレンスはにこやかな笑みを浮かべている。
解る者が見れば、その笑みが普段から浮かべてるデフォルトの笑みではなく、心の底から楽しんでいる笑みだと解る。
それに対し……アラッドも同じく、解る者が見れば本当に鬱陶しく思っている苦い表情を浮かべていることが解る。
「んじゃ、失礼します。代表戦ではお互いに頑張りましょう」
一応エールは送った。
それで十分だろうと思い、早足で去ろうとするが……そっと、片手を握られてしまった。
「久しぶりに会えたのです。お茶でもしませんか」
「…………」
全令息……とは言い過ぎかもしれない。少なくとも、アラッドの弟であるアッシュはそこまで興味がない。
ただ、殆どの令息たちがその手に握られたら……と夢見る手が、今アラッドという一人の冒険者の手を握っている。
現在この場にはアラッド、スティーム、ガルーレ。
フローレンスと現在所属している騎士団の関係者しかいない。
他の者たちがいれば……よからぬ噂が立っていたかもしれない。
「……とりあえず、逃げないんで話してもらっても良いですか」
「分かりました」
離れる手に、アラッドは特に惜しむことなく大きなため息を吐いた。
「お前ぇ……いったい何なんだよ」
「ん?」
大きなため息を吐いたアラッドに対し、フローレンスと共に女性の一人、ガルーレと同族だと言われたら信じてしまう様な女性騎士がアラッドを睨む。
「何なんだと言われてもな……どう答えれば良いのか、いまいち解らないな」
「チッ!!!! フローレンス姐さんに話しかけられといて、その態度は何なんだってって言ってんだ」
(そういう事か。これだから……こういのを、女神属性が付いてる、もしくはアイドル特性が付いてるって言えば良いのか?)
再度大きなため息を吐きそうになるが、場の空気を読んでギリギリ止めた。
「なんだって言われても困る。俺は別にフローレンス・カルロストのファンや信者じゃない」
「そうですね。アラッドは……ライバル、でしょうか?」
アラッドの強さを意識している人物たちからすれば、中々に喧嘩を売る内容の発言であり……少なくとも、この場に居るスティームは「そこは譲れない」と言いたいところだが……ぐっと飲み込むしかなかった。
「姐さん、本当にこいつが?」
(そりゃファンや信者からしたらとりあえず疑いたいだろうな。つか、姉さん……じゃなくて、文字的には姐さん…………って呼んでるよな?)
相変わらずどこに行っても、その強さは健在なのだと把握。
「少なくとも、私はアラッドに一度も負けました……手加減された状態で」
「「っ!!!???」」
フローレンスの傍にいる二人は、とてもその言葉が信じられず、アラッドに向ける眼には様々な感情が浮かんでいた。
「手加減って……あぁ、あれか…………さっきその件に関して、クロの力も俺の力だと認めたからな。確かに、否定は出来ないか」
「あの状態は、半覚醒とでも言うべきでしょうか。途中で新たな力を手に入れられたにもかかわらず、私は負けました」
「最後は気迫で押し切った様なものですけどね」
「それが、私の弱さだった。それだけですよ」
「…………はぁ~~~~~~。茶でしたね。分かりました、行きましょうか」
「ふふ、ありがとうございます」
普通は男側が「誘ってくれてありがとうございます」と言うべきなのだが、二人の関係上……この光景が正しいと言えた。
(ん~~~~~……アラッド、後ろの爆弾はどうするのかな)
フローレンスの付き添いで来ていた戦士タイプと魔法職タイプの女性たちは、完全にアラッドに対して刺々しい意味でロックオンしていた。
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