スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
682 / 1,058

六百八十一話 解らない態度

しおりを挟む
久しぶりに出会った人物に対して「げっ!!!!!!」という、明らかに失礼な態度を取るアラッド。

だが……アラッドの隣にいるスティームとガルーレの反応は全く違っていた。

(こ、この人がアラッドをあと一歩のところまで追い詰めた、フローレンス・カルロスト…………えっ、アラッドってこんな美しい人に好かれてるのにめんどくさがってる……って言うか、今げっ!! って言った!!!???)

(うわぁ~~~~。これはヤバいと言うか…………うん、ヤバいね。超語彙力下がっちゃってるけど、本当にそれぐらいヤバい美人さんだね。しかも超強いってのが、もう雰囲気から解る……ていうか、アラッドってこの人が苦手なんだっけ? ちょっと意味不明過ぎじゃないの?)

二人とも、まず最初の感想は容姿に関するものだった。

美しいと……彼女を表すのであれば、その言葉だけで十分。
足りないと叫ぶ信者もいるかもしれないが、まずその言葉はマストであった。

そして次に、何故アラッドはこんな人物に興味を持たれているにもかかわらず、会うのが面倒、億劫と思っているのか解らない。
その詳細に関しては一応聞いている。聞いてはいたが……それでも、彼女が持つ要素を考えた場合……そこまで気にすることなのかと、つい首を傾げてしまう。

「……そうですね。お久しぶりです」

「王都に居るという事は、冒険者枠として代表戦に参加するのですね」

「国王陛下からの頼みとあっては、基本的に断れないでしょう」

相変わらずフローレンスはにこやかな笑みを浮かべている。

解る者が見れば、その笑みが普段から浮かべてるデフォルトの笑みではなく、心の底から楽しんでいる笑みだと解る。

それに対し……アラッドも同じく、解る者が見れば本当に鬱陶しく思っている苦い表情を浮かべていることが解る。

「んじゃ、失礼します。代表戦ではお互いに頑張りましょう」

一応エールは送った。
それで十分だろうと思い、早足で去ろうとするが……そっと、片手を握られてしまった。

「久しぶりに会えたのです。お茶でもしませんか」

「…………」

全令息……とは言い過ぎかもしれない。少なくとも、アラッドの弟であるアッシュはそこまで興味がない。

ただ、殆どの令息たちがその手に握られたら……と夢見る手が、今アラッドという一人の冒険者の手を握っている。

現在この場にはアラッド、スティーム、ガルーレ。
フローレンスと現在所属している騎士団の関係者しかいない。

他の者たちがいれば……よからぬ噂が立っていたかもしれない。

「……とりあえず、逃げないんで話してもらっても良いですか」

「分かりました」

離れる手に、アラッドは特に惜しむことなく大きなため息を吐いた。

「お前ぇ……いったい何なんだよ」

「ん?」

大きなため息を吐いたアラッドに対し、フローレンスと共に女性の一人、ガルーレと同族だと言われたら信じてしまう様な女性騎士がアラッドを睨む。

「何なんだと言われてもな……どう答えれば良いのか、いまいち解らないな」

「チッ!!!! フローレンス姐さんに話しかけられといて、その態度は何なんだってって言ってんだ」

(そういう事か。これだから……こういのを、女神属性が付いてる、もしくはアイドル特性が付いてるって言えば良いのか?)

再度大きなため息を吐きそうになるが、場の空気を読んでギリギリ止めた。

「なんだって言われても困る。俺は別にフローレンス・カルロストのファンや信者じゃない」

「そうですね。アラッドは……ライバル、でしょうか?」

アラッドの強さを意識している人物たちからすれば、中々に喧嘩を売る内容の発言であり……少なくとも、この場に居るスティームは「そこは譲れない」と言いたいところだが……ぐっと飲み込むしかなかった。

「姐さん、本当にこいつが?」

(そりゃファンや信者からしたらとりあえず疑いたいだろうな。つか、姉さん……じゃなくて、文字的には姐さん…………って呼んでるよな?)

相変わらずどこに行っても、その強さは健在なのだと把握。

「少なくとも、私はアラッドに一度も負けました……手加減された状態で」

「「っ!!!???」」

フローレンスの傍にいる二人は、とてもその言葉が信じられず、アラッドに向ける眼には様々な感情が浮かんでいた。

「手加減って……あぁ、あれか…………さっきその件に関して、クロの力も俺の力だと認めたからな。確かに、否定は出来ないか」

「あの状態は、半覚醒とでも言うべきでしょうか。途中で新たな力を手に入れられたにもかかわらず、私は負けました」

「最後は気迫で押し切った様なものですけどね」

「それが、私の弱さだった。それだけですよ」

「…………はぁ~~~~~~。茶でしたね。分かりました、行きましょうか」

「ふふ、ありがとうございます」

普通は男側が「誘ってくれてありがとうございます」と言うべきなのだが、二人の関係上……この光景が正しいと言えた。

(ん~~~~~……アラッド、後ろの爆弾はどうするのかな)

フローレンスの付き添いで来ていた戦士タイプと魔法職タイプの女性たちは、完全にアラッドに対して刺々しい意味でロックオンしていた。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...