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六百七十三話 伝えないが吉
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「……とりあえず分かりました。分かりはしたんですが…………まず、代表に関してはレイ嬢に話が来たんですよね」
「そうだね。なんたって、今年のトーナメントで優勝したからね」
二年生にして学園のトップに君臨したレイ。
経歴だけで言えば、あのフローレンス・カルロストに並んだことになる。
「なら、代表はレイ嬢になるんじゃないんですか? アッシュが強いのは俺も知ってますが………………もしかしてアッシュ、餌に釣られてかなり頑張ったのか」
「そうですね。まんまと釣られて頑張りました」
「私とアッシュは直接戦った訳ではない。ただ、私は餌に釣られて頑張ったアッシュの成果を見た」
その光景を、レイははっきりと……鮮明に覚えている。
「代表として勝利を奪い取る。最重要項目であるそれを考えれば、アッシュが一番適していると考えて、私は辞退したんだ」
「なるほど。ちなみになんだがアッシュ、この件に関してシルフィーは知ってるのか?」
「いいえ、まだ伝えてません」
今では双子同士仲良くやっているが、一時仲が悪い時期があったシルフィーとアッシュ。
その内容を象徴する出来事を、アラッドは今でも覚えている。
「……伝えるタイミングはお前に任せる。後、アレク先生。この件を……ドラングの奴は、知ってるんですか」
「勿論知らないよ」
「で、ですよね」
アレクの言葉を聞いて、ホッと胸をなでおろすアラッド。
「彼は強くなってる。間違いなく強くなってるよ。ソロのトーナメントでは惜しくも準決勝でレイと当たってしまったからベストフォーという結果になったけど、あの頃より成長してるのは絶対だ。ただ……うん、さすがに今回の一件は色々と考えた上で伝えられないかなと思って」
「俺も、その方が良いと思います」
ドラングの最終目標を叶えるまでに、同い歳の兄であるアラッドをタイマン勝負で倒すという中間目標がある。
最終目標を叶えるまでの過程に……アッシュという弟の存在は影すらない。
そんな中、自分を差し置いてアッシュが学生代表に選ばれたとなれば、非常に面倒な事に発展するのは目に見えている。
「バレたら、やっぱり勝負しろって言われますかね」
「……そうだな。とりあえず勝負を仕掛けてくるだろう。けど、アッシュ……お前はそれを受ける気は全くないだろ」
「はい」
即答である。
ドラングはアラッドと違い、アッシュとの関りが殆どないと言っても過言ではない。
アラッドと同じく兄にあたる人物であることに間違いはないが、それでもアッシュからすればアラッドに強い嫉妬を持つ面倒な兄といった印象しかない。
そんな人物から急にタイマン勝負を申し込まれたところで、アッシュにとっては受けるメリットが全くないということもあり、受けるという選択肢はまずない。
仮にドラングがアッシュが受けても構わないと思う錬金術に使える素材を用意しようとしても……アラッドの様に大金を稼いでいる訳ではないため、ほぼ不可能。
「ドラングの奴がこれを知れば……憤死しそうだな」
「さすがにそれは……ないとは、言えないかな」
「でしょう。ちなみになんだがレイ嬢。成長したアッシュが今のドラングとタイマン勝負をした場合、どうなる」
「ドラングにはすまないが、十度やっても十回アッシュが勝つと思う」
「そ、そんなにか」
「……いや、十回ともアッシュが勝つのは言い過ぎたかもしれない。ドラングがアッシュのリズムを把握する出来れば勝てる可能性はあると思うが……それでも、難しいことには変わりないだろう」
訂正したが、ドラングがアッシュのリズムを把握出来なければ、十回やっても一度も勝てないと断言したも同然。
「……頑張ったんだな、アッシュ」
アラッドは戦闘よりも錬金術に強い興味を抱いているアッシュを、無理矢理戦闘の道に進ませようとは考えていない。
だが、アッシュの高い戦闘センスを知っていることもあり、そちらの方に興味を持って行動してくれるのは、それはそれで嬉しくある。
「アラッド、わざわざ王都に来たということは、推薦? を受けるのだな」
「……断るとか無理だろ」
一応、アラッドは今のところ候補に留まっている。
だが……国王自らの推薦とあっては、断れば国王自身はなんとも思わずとも、周りがどう思うかと考えると……胃が痛くなる。
そして今回、学生の代表枠として弟であるアッシュが出場するとなれば、兄として少しだけ心配という思いもあり、推薦を受けようという意志は固まった。
「それもそうか。ただ、騎士の代表枠にはおそらく……いや、絶対にフローレンスさんが参加する筈だぞ」
「解ってる……解ってる。もう、そこは仕方ないと諦めた」
今更ぐちぐち言っても仕方ないのは十分解っている為、子供の様に騒ぐことはない。
そして何故アッシュが代表になったのかという経緯を理解し終えたアラッドたちはレイたちと共に訓練場へと戻る。
すると、訓練場ではスティームとベルが……ガルーレとエリザがバチバチの模擬戦を行っていた。
「そうだね。なんたって、今年のトーナメントで優勝したからね」
二年生にして学園のトップに君臨したレイ。
経歴だけで言えば、あのフローレンス・カルロストに並んだことになる。
「なら、代表はレイ嬢になるんじゃないんですか? アッシュが強いのは俺も知ってますが………………もしかしてアッシュ、餌に釣られてかなり頑張ったのか」
「そうですね。まんまと釣られて頑張りました」
「私とアッシュは直接戦った訳ではない。ただ、私は餌に釣られて頑張ったアッシュの成果を見た」
その光景を、レイははっきりと……鮮明に覚えている。
「代表として勝利を奪い取る。最重要項目であるそれを考えれば、アッシュが一番適していると考えて、私は辞退したんだ」
「なるほど。ちなみになんだがアッシュ、この件に関してシルフィーは知ってるのか?」
「いいえ、まだ伝えてません」
今では双子同士仲良くやっているが、一時仲が悪い時期があったシルフィーとアッシュ。
その内容を象徴する出来事を、アラッドは今でも覚えている。
「……伝えるタイミングはお前に任せる。後、アレク先生。この件を……ドラングの奴は、知ってるんですか」
「勿論知らないよ」
「で、ですよね」
アレクの言葉を聞いて、ホッと胸をなでおろすアラッド。
「彼は強くなってる。間違いなく強くなってるよ。ソロのトーナメントでは惜しくも準決勝でレイと当たってしまったからベストフォーという結果になったけど、あの頃より成長してるのは絶対だ。ただ……うん、さすがに今回の一件は色々と考えた上で伝えられないかなと思って」
「俺も、その方が良いと思います」
ドラングの最終目標を叶えるまでに、同い歳の兄であるアラッドをタイマン勝負で倒すという中間目標がある。
最終目標を叶えるまでの過程に……アッシュという弟の存在は影すらない。
そんな中、自分を差し置いてアッシュが学生代表に選ばれたとなれば、非常に面倒な事に発展するのは目に見えている。
「バレたら、やっぱり勝負しろって言われますかね」
「……そうだな。とりあえず勝負を仕掛けてくるだろう。けど、アッシュ……お前はそれを受ける気は全くないだろ」
「はい」
即答である。
ドラングはアラッドと違い、アッシュとの関りが殆どないと言っても過言ではない。
アラッドと同じく兄にあたる人物であることに間違いはないが、それでもアッシュからすればアラッドに強い嫉妬を持つ面倒な兄といった印象しかない。
そんな人物から急にタイマン勝負を申し込まれたところで、アッシュにとっては受けるメリットが全くないということもあり、受けるという選択肢はまずない。
仮にドラングがアッシュが受けても構わないと思う錬金術に使える素材を用意しようとしても……アラッドの様に大金を稼いでいる訳ではないため、ほぼ不可能。
「ドラングの奴がこれを知れば……憤死しそうだな」
「さすがにそれは……ないとは、言えないかな」
「でしょう。ちなみになんだがレイ嬢。成長したアッシュが今のドラングとタイマン勝負をした場合、どうなる」
「ドラングにはすまないが、十度やっても十回アッシュが勝つと思う」
「そ、そんなにか」
「……いや、十回ともアッシュが勝つのは言い過ぎたかもしれない。ドラングがアッシュのリズムを把握する出来れば勝てる可能性はあると思うが……それでも、難しいことには変わりないだろう」
訂正したが、ドラングがアッシュのリズムを把握出来なければ、十回やっても一度も勝てないと断言したも同然。
「……頑張ったんだな、アッシュ」
アラッドは戦闘よりも錬金術に強い興味を抱いているアッシュを、無理矢理戦闘の道に進ませようとは考えていない。
だが、アッシュの高い戦闘センスを知っていることもあり、そちらの方に興味を持って行動してくれるのは、それはそれで嬉しくある。
「アラッド、わざわざ王都に来たということは、推薦? を受けるのだな」
「……断るとか無理だろ」
一応、アラッドは今のところ候補に留まっている。
だが……国王自らの推薦とあっては、断れば国王自身はなんとも思わずとも、周りがどう思うかと考えると……胃が痛くなる。
そして今回、学生の代表枠として弟であるアッシュが出場するとなれば、兄として少しだけ心配という思いもあり、推薦を受けようという意志は固まった。
「それもそうか。ただ、騎士の代表枠にはおそらく……いや、絶対にフローレンスさんが参加する筈だぞ」
「解ってる……解ってる。もう、そこは仕方ないと諦めた」
今更ぐちぐち言っても仕方ないのは十分解っている為、子供の様に騒ぐことはない。
そして何故アッシュが代表になったのかという経緯を理解し終えたアラッドたちはレイたちと共に訓練場へと戻る。
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