スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
672 / 1,058

六百七十一話 聞く度に燃える

しおりを挟む
「でも、あれだね。ブッキングしてもひとまず相手に先手を譲るのは、アラッドにしては珍しいね」

「筋を通す……って堅い話ではないと思いますけど、変に揉めたくはないんで」

実家に為にあれこれと、一応考えているアラッドではあるが……全面的にブッキングしてしまった相手に譲るという考えはなく、そういった強い意思などもあって結局は揉めているのが殆ど。

(そういえば、ちょっと有名になってた山賊を討伐するために、ギルドに自分たちで何とかするので、手出し無用でお願いしますって頼んだ件……どうなったんだろうな)

スティームを連れて実家に帰った際、二人は互いの従魔と共に集めた情報の中から、Bランクのモンスターを従魔として従える山賊へ殴り込むため……一応山賊の根城から一番近い街の冒険者ギルドに話を通した。

冒険者ギルドの職員やトップとしては、特に理不尽な要求をしてくることなく、自分たちだけで悩みの種である盗賊を討伐してくれるというのは正直、非常に嬉しい話だった。

だが、現場で動く冒険者たちにとっては、プライドが踏みにじられた感覚に近かった。

「そうかそうか……うん、アラッドぐらい強い若者なら、それぐらい余裕のある精神でいてくれた方が、組織の人たちは嬉しいだろうな」

平民出身の冒険者が理不尽な理由で貴族の冒険者に絡めば、当然ギルドにとって胃が痛くなる件へと発展する。

だが貴族の冒険者が貴族出身を理由にクソ偉そうな態度を取っていた場合……それはそれで冒険者同士が争う原因となるので、ギルド的には多少の謙虚さを覚えてほしい。

「さっ、友人たちは中にいるよ」

訓練場に到着すると、奥から聞き覚えのある者たちの気合が入った声が聞こえてくる。

「ふぅ~~~~。少し休憩、って……あ、アラッド。アラッドじゃないか!!」

「よぅ、ベル。久しぶりだな。最後に会った時より、ちょっと筋肉が付いたんじゃないか?」

「技術だけに頼る訳にはいかないからね……って、そうじゃなくてだよ。アラッド、急にどうしたんだい。いや、勿論久しぶりに会えたことは嬉しいんだけどさ」

ベルが真っ先に気付き、その後に次々アラッドというパロスト学園の生徒に置いて、一番のビッグネームの登場にわらわらと人が集まってくる。

「久しぶりじゃねぇから、アラッド!!!!」

「元気そうだな、リオ。おっ、ルーフ。なんだか顔色良くなってるな」

「ははは、ベルと同じ様な感じで……食いトレ? っていうのを最近頑張ってるんだ」

「良いじゃないか。いや、辛いとは思うが食えるようになって良い筋肉を付けられるようになれば、今より強くなれるのは間違いないぞ」

わらわらと集まってくる中には当然、男の友人だけではなく女の友人もいる。

「久しぶりですねアラッド。あなたの暴れっぷりは私たちの耳にもしっかり入ってますわ!」

「あ、暴れっぷりって、ちょっと言葉が悪いんじゃないか、エリザ嬢」

「あら~~、アラッドさんは冒険者になってから、一度も同業者の方とぶつかっていないのですか~~」

「うぐっ! マリア嬢……速攻で痛いところを突かないでくれ」

「あなたに喧嘩を売る人がいるのね」

「喧嘩というか……そうだな。割と世の中、立場とか関係無く自分の意見をぶつけてくる人はいるんだよ、ヴェーラ嬢」

友人という事もあり、彼ら彼女たちは偶に王都の冒険者たちに聞きに行くほど、アラッドがどの様な活躍をしているのか気になっており……その活躍を聞くたびに闘志を燃やし、訓練に……偶に遠征して、なんだかんだでベルたちも暴れている。

「久しぶりだな、アラッド」

「あぁ……久しぶりだな、レイ嬢。元気にしてたか?」

「当然だ。寧ろ有り余っている」

「本当にその通りなんだよ、アラッド。レイは最近教師たちと模擬戦を行う機会が多いからね。僕たちもうかうかしてられないってわけだよ」

あっはっは! と笑うアレクだが、実際に模擬戦をしたことがあるレイは断言出来る。
あなたはそこまで心配しなくて良いのではないかと。

レベル五十五であり、王都の教師の中でも超トップクラスの戦闘特化教師。

基本的に学生が死ぬ気で挑んでも勝てる相手ではない。

「ところで、そちらの二人は今アラッドがパーティーを組んでいる冒険者か?」

「そうだよ。こっちはスティーム。ギーラス兄さんと同じ騎士団で働いてる同僚の弟だ」

「どうも、スティーム・バリアスティーです。ホットル王国出身の貴族で、今は縁あってアラッドと共に冒険してます」

本人の自己紹介で、レイたちは色々と納得した。

貴族として生きてきたからこそ、貴族出身の者と、そうでない者の雰囲気の違いがある程度解る。
レイたちは間違いなくスティームが貴族だと気付いていたが、歳が近いはずの実力者を全く見たことがないことに、強い疑問を持っていた。

しかし、スティームが他国の貴族出身と知り、直ぐに疑問は解消された。

「それでこっちは「ど~も~~!! スティームと同じで縁あって一緒に行動してる冒険者で、アラッドの彼女で~~~すあぃった~~~~~~~っ!!!!!!!???????」おいこら、何とんでもない嘘付いてるんだ」

……ベルたちはとにかく、アマゾネスらしき冒険者は、非常にテンションが高い人物だということは理解した。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...