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六百七十話 反骨心?
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「それにしても、アラッドがパーティーを組んで行動してるという話は本当だったんだな」
「スティーム・バリアスティ―です」
「アマゾネスのガルーレで~~す!!!」
「どうも。少しの間ではあるけど、アラッドの担任をしていたアレクだ……ふふ、なるほど。アラッドが興味を持つ原石って感じだね」
教師として視る眼も鍛えられたアレクから視て、二人がトーナメントに参加すれば面白い試合が増えると思えるほどの強さがあると把握。
とはいえ、本質的な部分までは解らないため、一番詳しいであろうアラッドに尋ねる。
「二人がトーナメントに参加した場合、どうなると思う?」
「俺の時の代の、ということですか?」
「そうだね」
「…………ガルーレはともかく。スティームが本気でトーナメントを勝ち抜くために動いたとしたら、レイ嬢とかとぶつかるまでは、しょぼい試合が続くかと」
「っ! どうやら視誤っていたようだね。そうか、確かスティーム君は赤雷を使うことが出来るんだったね」
「まだまだ未熟な身ではありますが」
本人は本当にまだまだ未熟……アラッドのライバルとは言えないと思っている。
それは確かにそうのか、というのは一旦置いておき、学生の大会において赤雷を扱える人物が出場した場合……アラッドの言う通り、本気で勝ち進もうとすればしょっぱい瞬殺劇が数回ほど繰り返される。
(赤雷を纏って死角に回れば一発……反応出来たとしても、二撃目、三撃目を上手く処理できるか…………いや、相当厳しいだろうな)
実際にその速さを体験したことがあるアラッドだからこそ、学生が赤雷を纏ったスティームに対応出来るイメージが湧かない。
(アレク先生の頭に浮かんだ生徒が俺やフローレンス、レイ嬢や……あの準決で戦ったイケメン先輩なら、そう思ってしまうか?)
先程ガルーレはともかくと口にしたアラッドだが、ガルーレが追い込まれた場合……ペイズ・サーベルスが自動で発動され、痛みを感じない身体能力爆増の戦闘民族、アマゾネスが襲い掛かってくる。
人によっては、トラウマになってもおかしくない。
「……スティーム君の場合は、アラッドが隣にいるから、そう思ってしまうのかな」
「どうでしょうか。ただ、アラッドと出会えなければ、同じ時を過ごしても今ほど強くはなれなかったかと」
「ふっふっふ、そうかそうか。良かった良かった。アラッド、冒険者としても上手くやれてるみたいだな」
「えっと……あの、自分で言うのはおかしいかもしれないですけど、全部完璧にやれてるわけじゃないですよ」
元担任が褒めてくれるのは嬉しい。
当然嬉しいのだが……おそらく噂でそこしか知らない、だから褒められるというのは、どこかモヤモヤ感を感じる。
「他の冒険者とぶつかったり、とかか? 学園で生活している間もそういう事はあっただろ。なんなら、初日から思いっきりぶつかっていたじゃないか。今更でそれぐらいで驚かないよ」
「それはそうかもしれませんけど……実は」
アラッドはぽろぽろと、これまでの冒険の最中に起こった出来事を話し始めた。
初っ端の出来事から、アレクのにこやかフェイスが崩れ、そのまま元に戻ることはなかった。
「う、うん。なるほどね。僕が思ってた以上に衝突してたみたいだね……ただ、侯爵家の令息であるアラッドに真正面から喧嘩を売った……ギルという名前だったかな? その子はあれかな。自殺願望でもあったのかな」
アラッド、スティーム。貴族出身の二人は、アレク・ランディードが思わずそう尋ねてしまう理由がよく解る。
ガルーレも冒険者としての活動年数がベテランとは言えないが、決してペーペーのひよこ程短くはないため、なんとなく解る。
「俺たちは貴族側なのでそう考えてしまいますが、まず関わり合うことがない平民からすれば、とりあえず凄いのかもしれないけど、どこがどう凄いのか具体的に解らないのでしょう」
「関りがないからこそ、ね…………うん、そこは解る。解るよ。たださ……アラッドは見た目がまず強いし、雰囲気なんて学生の頃から歳不相応な圧があった。仮にそこら辺が上手く解らない冒険者であっても、さすがに君の従魔のクロに喧嘩を売ってはいけない、という事ぐらいは解る筈だよね?」
ブラックウルフ状態のクロ……であっても、まずルーキーが喧嘩を売ってはいけない相手であるのは間違いない。
しかし、普段の姿……パッと見で巨狼だと解るクロなど、視る眼がなくとも喧嘩を売ってはいけない相手である。
そんなモンスターを従魔として従えているアラッドに、ルーキーが喧嘩を売る……立場は当然として、考え方や価値観など違う部分が多い存在であることは理解している。
ただ……基本的に生きたい、生き残りたい……そういった生物としての本能的な部分は同じだと思っていた。
「それはぁ……そのぉ……何と言うか」
「あれじゃないの。偉そうな貴族なんかに負けたくない!!! って闘争心が強過ぎたんじゃない?」
「そう、それだ!! アレク先生、そういう感じです」
「な、なるほど。反骨心、が非常に強いということだね…………」
過去にアラッドに強い嫉妬、嫉みなどの負の感情を持つ生徒がいけないお薬に手を出した件を思い出し……一応納得出来たアレクだった。
「スティーム・バリアスティ―です」
「アマゾネスのガルーレで~~す!!!」
「どうも。少しの間ではあるけど、アラッドの担任をしていたアレクだ……ふふ、なるほど。アラッドが興味を持つ原石って感じだね」
教師として視る眼も鍛えられたアレクから視て、二人がトーナメントに参加すれば面白い試合が増えると思えるほどの強さがあると把握。
とはいえ、本質的な部分までは解らないため、一番詳しいであろうアラッドに尋ねる。
「二人がトーナメントに参加した場合、どうなると思う?」
「俺の時の代の、ということですか?」
「そうだね」
「…………ガルーレはともかく。スティームが本気でトーナメントを勝ち抜くために動いたとしたら、レイ嬢とかとぶつかるまでは、しょぼい試合が続くかと」
「っ! どうやら視誤っていたようだね。そうか、確かスティーム君は赤雷を使うことが出来るんだったね」
「まだまだ未熟な身ではありますが」
本人は本当にまだまだ未熟……アラッドのライバルとは言えないと思っている。
それは確かにそうのか、というのは一旦置いておき、学生の大会において赤雷を扱える人物が出場した場合……アラッドの言う通り、本気で勝ち進もうとすればしょっぱい瞬殺劇が数回ほど繰り返される。
(赤雷を纏って死角に回れば一発……反応出来たとしても、二撃目、三撃目を上手く処理できるか…………いや、相当厳しいだろうな)
実際にその速さを体験したことがあるアラッドだからこそ、学生が赤雷を纏ったスティームに対応出来るイメージが湧かない。
(アレク先生の頭に浮かんだ生徒が俺やフローレンス、レイ嬢や……あの準決で戦ったイケメン先輩なら、そう思ってしまうか?)
先程ガルーレはともかくと口にしたアラッドだが、ガルーレが追い込まれた場合……ペイズ・サーベルスが自動で発動され、痛みを感じない身体能力爆増の戦闘民族、アマゾネスが襲い掛かってくる。
人によっては、トラウマになってもおかしくない。
「……スティーム君の場合は、アラッドが隣にいるから、そう思ってしまうのかな」
「どうでしょうか。ただ、アラッドと出会えなければ、同じ時を過ごしても今ほど強くはなれなかったかと」
「ふっふっふ、そうかそうか。良かった良かった。アラッド、冒険者としても上手くやれてるみたいだな」
「えっと……あの、自分で言うのはおかしいかもしれないですけど、全部完璧にやれてるわけじゃないですよ」
元担任が褒めてくれるのは嬉しい。
当然嬉しいのだが……おそらく噂でそこしか知らない、だから褒められるというのは、どこかモヤモヤ感を感じる。
「他の冒険者とぶつかったり、とかか? 学園で生活している間もそういう事はあっただろ。なんなら、初日から思いっきりぶつかっていたじゃないか。今更でそれぐらいで驚かないよ」
「それはそうかもしれませんけど……実は」
アラッドはぽろぽろと、これまでの冒険の最中に起こった出来事を話し始めた。
初っ端の出来事から、アレクのにこやかフェイスが崩れ、そのまま元に戻ることはなかった。
「う、うん。なるほどね。僕が思ってた以上に衝突してたみたいだね……ただ、侯爵家の令息であるアラッドに真正面から喧嘩を売った……ギルという名前だったかな? その子はあれかな。自殺願望でもあったのかな」
アラッド、スティーム。貴族出身の二人は、アレク・ランディードが思わずそう尋ねてしまう理由がよく解る。
ガルーレも冒険者としての活動年数がベテランとは言えないが、決してペーペーのひよこ程短くはないため、なんとなく解る。
「俺たちは貴族側なのでそう考えてしまいますが、まず関わり合うことがない平民からすれば、とりあえず凄いのかもしれないけど、どこがどう凄いのか具体的に解らないのでしょう」
「関りがないからこそ、ね…………うん、そこは解る。解るよ。たださ……アラッドは見た目がまず強いし、雰囲気なんて学生の頃から歳不相応な圧があった。仮にそこら辺が上手く解らない冒険者であっても、さすがに君の従魔のクロに喧嘩を売ってはいけない、という事ぐらいは解る筈だよね?」
ブラックウルフ状態のクロ……であっても、まずルーキーが喧嘩を売ってはいけない相手であるのは間違いない。
しかし、普段の姿……パッと見で巨狼だと解るクロなど、視る眼がなくとも喧嘩を売ってはいけない相手である。
そんなモンスターを従魔として従えているアラッドに、ルーキーが喧嘩を売る……立場は当然として、考え方や価値観など違う部分が多い存在であることは理解している。
ただ……基本的に生きたい、生き残りたい……そういった生物としての本能的な部分は同じだと思っていた。
「それはぁ……そのぉ……何と言うか」
「あれじゃないの。偉そうな貴族なんかに負けたくない!!! って闘争心が強過ぎたんじゃない?」
「そう、それだ!! アレク先生、そういう感じです」
「な、なるほど。反骨心、が非常に強いということだね…………」
過去にアラッドに強い嫉妬、嫉みなどの負の感情を持つ生徒がいけないお薬に手を出した件を思い出し……一応納得出来たアレクだった。
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