スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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六百六十四話 対、等?

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「ッ……ここ、は」

「おっ!!! ようやく起きたか!!! クラート!!!!」

アラッドから迅罰を借り、最後まで一人でグリフォンに挑み、見事討伐を成功させた英雄……クラート。

「あ、アンバスさん……ここは、ギルドの医務室、ですか」

「あぁ、そうだ。クラート、自分がぶっ倒れたところまでは覚えてるか?」

「は、はい。俺は、あの後……あっ!!!!!!」

「ぬおっ!!?? ま、待てクラート!! お前はまだ病み上がりなんだから、って……はぁ~~~~~。直ぐに走れるのは元気の証っちゅーことか」

何を思い出したのか、クラートは医務室から飛び出し、同業者たちの楽し気な声が聞こえるロビーへと向かった。

「おっ!! お前ら、英雄が目覚めたぞ!!!!!!!」

一人の冒険者がクラートが現れたことに気付き、全員が彼をもみくちゃにしながら褒めちぎる。

病み上がりの人間にはもう少し優しくしろ……と、ギルド職員たちはツッコミたかったが、あれが冒険者なのだという事は、もう嫌というほど解かっていた。

「あ、ありがとう。さ、酒なら後で呑むから、ちょっと待ってくれ!」

クラートは酒なら後で呑むと伝え、必死できょろきょろと周囲を見渡し……とある人物たちを探す。

「あっ!!!!」

そして端っこでエールを呑み、夕食を食べていたアラッドたちを発見し、猛ダッシュ。

「うぉっ!!?? どうも……無事、元気になったみたいですね」

「本当に、ありがとうございました!!!!!!!!」

驚異的な回復力だと驚いていると、誰に教わったのか……三人に対し、完璧すぎる土・下・座をするクラート。

「え、えっと、とりあえず頭を上げてくれないか?」

「そういう訳にはいかない!! あなた達は、俺の我儘を聞き入れていてくれた……感謝してもしきれない!!!!!!」

あそこで自分が……自分の力だけでグリフォンを倒さなければならなかった。
それはクラートにとって後悔のない選択だった。

アラッドにどこからどう見ても高ランクの武器を借りたとはいえ、それでも自分の力でグリフォンを討伐出来た感覚は覚えている。

一歩……前に進めた感覚が確かにある。
だが、それとこれとは別の話。
おそらく領民の誰か、もしくは門兵の誰かが今回の一件を偶々通りかかったアラッドに伝えてくれたお陰で、助っ人としてグリフォンと戦っていた自分の元に駆け付けてくれた。

そんな恩人とも言える相手に、助力は必要ないと口にしてしまった。
自分勝手で我儘にも程がある。

後悔があるなら、反省すれば良い……という話でもない。
こうして地面に頭を付けて謝らなければならない。

「……英雄、いや……クラート、って呼び捨てでも良いかな」

「勿論だ!」

「ありがとう。では、まず起き上がってくれ」

「えっ、いや……それは……」

「君は、英雄だ。頭を下げることも必要だが、英雄がいつまでも頭を下げ続けるのは良くない」

「っ……お言葉に、甘えさせ貰う」

恩人と思っている人物からそう言われては、クラートとしても立つしかなかった。

「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はアラッドだ、よろしく」

「僕はスティーム、よろしくね」

「私はガルーレよ! よろしく!!!」

「クラートだ。よ、よろしく…………あ、あのさ。アラッドって、その……あ、あのアラッドで、合ってる、のか?」

「多分、そのアラッドで合ってると思う」

俺と君はこれで対等だ。だから、いつまでも頭を下げ続けるのはおかしいよな?

そう言われた気がしたクラート。
実際、アラッド自身もそういったつもりで呼び捨てでも良いかと尋ねた。

だが……実際のところ、クラートからすれば……冒険者歴は自分の方が上であったとしても、冒険者としての格は断然アラッドの方が上だと感じていた。

「俺の事を知ってくれているのは嬉しいが、変に気を遣わないでくれると嬉しい」

「わ……解った。ただ、やっぱり驚くと言うか」

「それはこっちのセリフかな。本当に……良い背中を魅せてもらった」

「せ、背中?」

「あぁ、そうだ。クラートが寝ている間、色々と話を聞かせてもらったから、何故そう感じたのかも解った」

同僚たちが自分の事を、知らない間に恩人に伝えてしまっている事に多少の怒りを感じるものの、その恩人に褒められたと解ると……自然と頬が緩んでしまうもの。

「覚悟が宿っていたというか、強く……揺るぎない意志を感じた。男は漢に惚れる時があると言うが、俺はまさにそれを感じた」

「いや、そいつは褒め過ぎというか、ははは」

あまりにも最上級が過ぎる褒め言葉を貰い、照れを隠そうとしてエールを一気呑みするクラート。

だが、アラッドのどストレートな褒め言葉は決して冗談、大袈裟ではなく……心の底から出た、感じた本音である。

「褒め過ぎ、なんてことはない。俺は……普通なら、我儘を無視して止め、俺たちがグリフォンの相手をしていた。でも……あの背中に惚れて、その選択肢は俺の中から無くなった」

「そう、だったのか」

「そして君は見事、あそこから一人で脅威であるグリフォンを討伐した…………まさに、英雄の背中だった」

「………………」

褒める時は特に何かを隠すことなく、超ストレートに褒める。

自分の事を褒められて嬉しくない者はいないだろうが……ここまで真っ直ぐ、面と向かって褒めちぎられると、照れるなという方が無理であった。
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