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六百五十九話 間違いなく、その人
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今回の一件で、更に弟との仲が悪くなるかもしれない。
その可能性に肩を落としているアラッドに対し、ガルーレは特に何も考えることなく……特大の爆弾を投下した。
「ていうかさ、代表には学生枠と冒険者枠と若手騎士枠? があるんでしょ。それならさ、あの人……フローレンス・カルロストさんだっけ? あの人も参加するんじゃないの」
「ッ!!!!!!!!!!!」
まさに追い打ち、天然爆弾炸裂。
アラッドは七割は自分が選ばれるかもしれない冒険者代表枠に関して。
残りの三割は弟や友人が関わっているかもしれない、学生枠にしか意識が向いておらず、学生代表枠でフローレンスが参加する可能性に対して、頭の中に一欠片も浮かんでいなかった。
「………………」
「あ、アラッド……アラッド! 大丈夫!?」
「お、おぅ……大丈夫だ」
完全な不意打ちを食らったからか、決して小さくないダメージを受けたものの、メンタルブレイクというほどのダメージは負っていない。
ただ……もの凄い眉間に皺が寄せられている。
低ランクのモンスターが相手であれば、その睨みだけで失神させられそうである。
「あっはっは!!! おっかない顔~~~。そんなにフローレンスさんに会うのが嫌なの?」
「嫌だな」
ハッキリと断言したアラッド。
その顔が面白かったのか、再び大爆笑するガルーレ。
あのアラッドが、こうも大袈裟に拒否反応を示す様子は……面白さしか感じない。
「もしかしてだけど、アラッドはフローレンスさんのことが生理的に無理な感じ?」
「生理的に……とはまた違うな」
ゴキブリに対する感情と同じ、とはさすがに言えない。
そんな発言をしてしまえば、彼女のファンが黙っていない。
黙っていないが……結果として死屍累々の屍地獄が生まれてしまう。
「なんて言うか、言葉に表すのが難しいな。こう、物凄く個人的な感情、としか言えないな。生物的に、感情的に無理という相手ではない」
「ふ~~~ん? でもさ、超美人さんなんでしょ。アラッドの本能が騒めいたりしなかったの?」
「………………微妙なところだな」
フローレンスの全身をパッと思い出した結果……確かに、男の本能が刺激される。
しかし、アラッドの場合はそれよりも先に、相容れない何かが上回る。
「えぇ~~~、今の間は完全に興味はあったって感じじゃない?」
「戦闘者という意味では、興味はあると言える。あの戦い……土壇場で新たな切り札を手に入れた。土壇場でそういうことが出来るのも、強者たる所以……まだ未完成でホッとしたのは紛れもない事実だ」
それはそれ、これはこれ。
人間としてずっと苦手意識は消えないが、やはり一人の戦闘者としての興味は持ち続けている。
(あれから……もう一年以上は経ったか。元々精霊を召喚することが出来ていたのを考えれば、既に精霊同化を完璧に扱いこなせていてもおかしくない)
以前よりも完全な同化によって身体の能力は向上しているのか、継続時間は何秒なのか、気になるところが多々ある。
アラッドも冒険者として活動を始めてから更に強くなっているが、決勝戦で激闘を演じたフローレンス・カルロストが騎士になり、一つの目標を叶えたからといって、温い道を……環境を選ぶとは思えない。
「バトル脳だねぇ~~。案外、向こうはアラッドのことを気にかけてるかもしれないよ?」
「男避けとしてか?」
「それは私の想像だって」
「……そうであってほしいもんだな」
巻き込まれ、結果として利を得られるのが解っていても、まず面倒だという考えが浮かぶ。
「実際のところさ、アラッドはフローレンスさんから好意を伝えられたら、どうするんだい」
「スティーム、そんなの決まってるだろ。即断る」
やはり凄い、やはり面白い、やはりちょっとおかしい。
もしフローレンスから好意を伝えられたらどうする、という質問を投げたスティームとガルーレは同じ様な感想を抱いた。
二人は実際にフローレンス・カルロストの姿を見たことはない。
しかし、アラッドが美人であると、女性としての魅力は半端ではないと認めている。
加えて彼女は公爵家の令嬢。
侯爵家の令息からしても、嬉しさのあまり、その場で喜びの舞を踊ってもおかしくない。
そんな才色兼備の塊から好意を向けられても、この男はハッキリと即断ると口にした。
まだそこまで付き合いは長くないとは言えないが、二人には解る。
この男は思春期特有の照れ隠し故にのではなく、本気でフローレンスから好意を向けられても断ると口にしている。
「ふっふっふ。もう……本当に君は面白過ぎるよ、アラッド」
「そうか? 誰でも苦手な人とわざわざ仲良くなろうとは思わないだろ」
そのこと自体に間違いはない。
ただ、一応貴族社会に身を置いている侯爵家の令息が口にする言葉ではなく、同じ貴族社会に身を置いているスティームとしては……声を出して笑うなというのは無理な話だった。
(まだ完全にフローレンスさん関して知れてないけど……ここまででアラッドの意志がハッキリしていたとしても、果たしてフローレンスさんは簡単に諦めるのかな?)
まずフローレンスがアラッドに対して好意を持っていることが確認されていないため、色々と早計過ぎるが……想像すればするほど、いったいどんな展開になるのか楽しみで仕方なかった。
その可能性に肩を落としているアラッドに対し、ガルーレは特に何も考えることなく……特大の爆弾を投下した。
「ていうかさ、代表には学生枠と冒険者枠と若手騎士枠? があるんでしょ。それならさ、あの人……フローレンス・カルロストさんだっけ? あの人も参加するんじゃないの」
「ッ!!!!!!!!!!!」
まさに追い打ち、天然爆弾炸裂。
アラッドは七割は自分が選ばれるかもしれない冒険者代表枠に関して。
残りの三割は弟や友人が関わっているかもしれない、学生枠にしか意識が向いておらず、学生代表枠でフローレンスが参加する可能性に対して、頭の中に一欠片も浮かんでいなかった。
「………………」
「あ、アラッド……アラッド! 大丈夫!?」
「お、おぅ……大丈夫だ」
完全な不意打ちを食らったからか、決して小さくないダメージを受けたものの、メンタルブレイクというほどのダメージは負っていない。
ただ……もの凄い眉間に皺が寄せられている。
低ランクのモンスターが相手であれば、その睨みだけで失神させられそうである。
「あっはっは!!! おっかない顔~~~。そんなにフローレンスさんに会うのが嫌なの?」
「嫌だな」
ハッキリと断言したアラッド。
その顔が面白かったのか、再び大爆笑するガルーレ。
あのアラッドが、こうも大袈裟に拒否反応を示す様子は……面白さしか感じない。
「もしかしてだけど、アラッドはフローレンスさんのことが生理的に無理な感じ?」
「生理的に……とはまた違うな」
ゴキブリに対する感情と同じ、とはさすがに言えない。
そんな発言をしてしまえば、彼女のファンが黙っていない。
黙っていないが……結果として死屍累々の屍地獄が生まれてしまう。
「なんて言うか、言葉に表すのが難しいな。こう、物凄く個人的な感情、としか言えないな。生物的に、感情的に無理という相手ではない」
「ふ~~~ん? でもさ、超美人さんなんでしょ。アラッドの本能が騒めいたりしなかったの?」
「………………微妙なところだな」
フローレンスの全身をパッと思い出した結果……確かに、男の本能が刺激される。
しかし、アラッドの場合はそれよりも先に、相容れない何かが上回る。
「えぇ~~~、今の間は完全に興味はあったって感じじゃない?」
「戦闘者という意味では、興味はあると言える。あの戦い……土壇場で新たな切り札を手に入れた。土壇場でそういうことが出来るのも、強者たる所以……まだ未完成でホッとしたのは紛れもない事実だ」
それはそれ、これはこれ。
人間としてずっと苦手意識は消えないが、やはり一人の戦闘者としての興味は持ち続けている。
(あれから……もう一年以上は経ったか。元々精霊を召喚することが出来ていたのを考えれば、既に精霊同化を完璧に扱いこなせていてもおかしくない)
以前よりも完全な同化によって身体の能力は向上しているのか、継続時間は何秒なのか、気になるところが多々ある。
アラッドも冒険者として活動を始めてから更に強くなっているが、決勝戦で激闘を演じたフローレンス・カルロストが騎士になり、一つの目標を叶えたからといって、温い道を……環境を選ぶとは思えない。
「バトル脳だねぇ~~。案外、向こうはアラッドのことを気にかけてるかもしれないよ?」
「男避けとしてか?」
「それは私の想像だって」
「……そうであってほしいもんだな」
巻き込まれ、結果として利を得られるのが解っていても、まず面倒だという考えが浮かぶ。
「実際のところさ、アラッドはフローレンスさんから好意を伝えられたら、どうするんだい」
「スティーム、そんなの決まってるだろ。即断る」
やはり凄い、やはり面白い、やはりちょっとおかしい。
もしフローレンスから好意を伝えられたらどうする、という質問を投げたスティームとガルーレは同じ様な感想を抱いた。
二人は実際にフローレンス・カルロストの姿を見たことはない。
しかし、アラッドが美人であると、女性としての魅力は半端ではないと認めている。
加えて彼女は公爵家の令嬢。
侯爵家の令息からしても、嬉しさのあまり、その場で喜びの舞を踊ってもおかしくない。
そんな才色兼備の塊から好意を向けられても、この男はハッキリと即断ると口にした。
まだそこまで付き合いは長くないとは言えないが、二人には解る。
この男は思春期特有の照れ隠し故にのではなく、本気でフローレンスから好意を向けられても断ると口にしている。
「ふっふっふ。もう……本当に君は面白過ぎるよ、アラッド」
「そうか? 誰でも苦手な人とわざわざ仲良くなろうとは思わないだろ」
そのこと自体に間違いはない。
ただ、一応貴族社会に身を置いている侯爵家の令息が口にする言葉ではなく、同じ貴族社会に身を置いているスティームとしては……声を出して笑うなというのは無理な話だった。
(まだ完全にフローレンスさん関して知れてないけど……ここまででアラッドの意志がハッキリしていたとしても、果たしてフローレンスさんは簡単に諦めるのかな?)
まずフローレンスがアラッドに対して好意を持っていることが確認されていないため、色々と早計過ぎるが……想像すればするほど、いったいどんな展開になるのか楽しみで仕方なかった。
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