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六百五十七話 何の代表?
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「……すいません、個室を借りても良いですか」
「かしこまりました」
宿に戻るのも面倒だと思い、アラッドはギルドの個室を借りた。
ここなら誰かに見られることはなく、安心して手紙の封を開けられる。
ギルドも誰がアラッドに向けて手紙を送ったのかは知っているが、手紙の内容までは知らない。
「………………」
「アラッド、開けないの?」
「開けるよ。こうしてギルドを通して渡された手紙なんだ。知りませんでした、とは言えない」
では、受け取らなければよかったのでは?
その考えは全くもってナンセンスである。
そもそもそんな行動を取れば、ギルドからの苦情は必至。
手紙の送り主に関係して、実家にも迷惑が掛かる。
「え、えっとさ……アラッド、僕は見ない方が良いかな」
「……すまない。そうしてもらえると助かる」
「うん、分かったよ」
スティームは手紙の封を見ただけで、どこから届いたのかなんとなく把握。
自分は見ない方が良いだろう。そんなスティームの有難い気遣いに感謝するアラッド。
「ふ~~ん? それじゃ、私も見ないでおくね」
なんとなく流れに合わせ、ガルーレもスティームに合わせて後ろを向く。
「二人共ありがとう」
二人に感謝の言葉を伝え、アラッドはゆっくりと封を開き、手紙を取り出し……一呼吸おいてから読み始めた。
「………………」
じっくり、ゆっくりと読み零しがないか、狂気はないものの普段の戦闘時より高い集中力で読み進めていく。
「…………ふぅ~~~~~~。二人とも、もう大丈夫だ」
「は~~い。それで、どんな内容だったの、って訊いても大丈夫な感じ?」
「簡単に言うと、王家からの打診だ」
「近衛騎士にならないかって感じの?」
「そういうのではない。そういった打診は学生時代に、既に断っている」
アラッドがその気になれば、直ぐにでも多数のオファーが届く。
それほどアラッドという青年の強さは広く知れ渡っている。
「? それじゃあ、なんの打診なの」
「……簡単に言うと、ちょっと国の代表になって戦ってくれないか、という内容だ」
「国の代表……どういう流れでそういう話になったのかは知らないけど、アラッドが選ばれるのは納得ね」
「っ!!??」
「そうだね。そういうのって、誰が選ばれても大抵は文句や不満が出るだろうけど、選ばれた人間がアラッドなら、不満はあっても表立って口に出せないと思うよ」
「っ!!!???」
国の代表として参加しい。
そこの部分だけを聞いた段階ではあるが、ガルーレとスティームもその点に関しておかしな点はないと、即断言した。
「二人共、もうちょい悩むものじゃないのか?」
「なんで悩むの? そりゃ私は冒険者として活動してきた中で出会った人しか知らないけど、アラッドは私が出会ってきた冒険者の中でもとびっきり輝いてるよ!!」
「僕も同じ感想だね。話題性とか、そういう部分もアラッドは十分あるからね。選ばれない理由はないだろうね」
「……そりゃどうも」
アラッドとしては迷惑千万といった内容ではあるが、パーティーメンバーであるスティームとガルーレは、まだ詳しく解っていないが、誇らしい気持ちになっていた。
「それで、具体的にどんな代表になったのか聞いても?」
「うちの国王が、久しぶりに親交がある国の国王と会ったらしいんだよ。最初こそ和やかなお茶会だったらしいんだけど、途中から自慢合戦に発展したらしい」
「権力者にありがちな流れだね」
貴族の当主、国王……そういった大人たちだけではなく、その子供たちである令息や令嬢、王子や王女たちも似た様な会話を良くする。
「その自慢話が、自国の有望な若手に変わったらしい」
「なるほどね~~~。そこでアラッドに白羽の矢? がたったわけだ」
「ご明察だ。有望な若手に関してだが、学生とまだ二十歳を越えていない冒険者と、新人騎士と言える三枠」
「アラッドはまだ二十歳を越えてない冒険者枠に選ばれたんだね」
「まだ確定ではない。国王陛下かも俺を気遣ってか、候補として考えているのがどうだろうか? と記してくれている」
そう……まだ確定ではないが、それでも文字とその文字を記した本人の考えが一致しているとは限らない。
国王陛下が直々に何かしらの候補として選んでくれた。
それは貴族出身の者であれば、この上なく名誉な事である。
ただ、このアラッドは純粋な貴族ではない。
平民の血が混ざっているという意味ではなく、この世界に染まっている人間ではない、という意味である。
魂は二十歳を越えておらず、碌に社会人経験のないクソガキ。
目の前の大きな課題に対して、やりがいがあるという感想の前に面倒という感想が浮かぶ。
故に……その精神は今も変わらず、手紙に書かれてある内容に関しての感想は、面倒である。
「でもさ、二十歳を越えてない冒険者の中でアラッドより強い人なんていなくない?」
「世の中は広いと言うだろ」
「アラッドの言う通り広いとは思うよ。まだ見ぬ未知の強者はいるだろうね。ただ、年齢を二十歳以下と限定すると……それこそ、別の大陸とかまで範囲を広げないと、見つからないと思うんだ」
「むぅ……」
友が自分の実力をそこまで褒めてくれるのは嬉しい。
そして別の大陸まで範囲を広げれば、それは完全にアルバース王国の人間ではない。
「…………とりあえず、行くしかないか」
手紙には、ひとまず久しぶりに会わないかと記されており、次の目標を見つけるよりも先に王都へ向かうことが確定した。
「かしこまりました」
宿に戻るのも面倒だと思い、アラッドはギルドの個室を借りた。
ここなら誰かに見られることはなく、安心して手紙の封を開けられる。
ギルドも誰がアラッドに向けて手紙を送ったのかは知っているが、手紙の内容までは知らない。
「………………」
「アラッド、開けないの?」
「開けるよ。こうしてギルドを通して渡された手紙なんだ。知りませんでした、とは言えない」
では、受け取らなければよかったのでは?
その考えは全くもってナンセンスである。
そもそもそんな行動を取れば、ギルドからの苦情は必至。
手紙の送り主に関係して、実家にも迷惑が掛かる。
「え、えっとさ……アラッド、僕は見ない方が良いかな」
「……すまない。そうしてもらえると助かる」
「うん、分かったよ」
スティームは手紙の封を見ただけで、どこから届いたのかなんとなく把握。
自分は見ない方が良いだろう。そんなスティームの有難い気遣いに感謝するアラッド。
「ふ~~ん? それじゃ、私も見ないでおくね」
なんとなく流れに合わせ、ガルーレもスティームに合わせて後ろを向く。
「二人共ありがとう」
二人に感謝の言葉を伝え、アラッドはゆっくりと封を開き、手紙を取り出し……一呼吸おいてから読み始めた。
「………………」
じっくり、ゆっくりと読み零しがないか、狂気はないものの普段の戦闘時より高い集中力で読み進めていく。
「…………ふぅ~~~~~~。二人とも、もう大丈夫だ」
「は~~い。それで、どんな内容だったの、って訊いても大丈夫な感じ?」
「簡単に言うと、王家からの打診だ」
「近衛騎士にならないかって感じの?」
「そういうのではない。そういった打診は学生時代に、既に断っている」
アラッドがその気になれば、直ぐにでも多数のオファーが届く。
それほどアラッドという青年の強さは広く知れ渡っている。
「? それじゃあ、なんの打診なの」
「……簡単に言うと、ちょっと国の代表になって戦ってくれないか、という内容だ」
「国の代表……どういう流れでそういう話になったのかは知らないけど、アラッドが選ばれるのは納得ね」
「っ!!??」
「そうだね。そういうのって、誰が選ばれても大抵は文句や不満が出るだろうけど、選ばれた人間がアラッドなら、不満はあっても表立って口に出せないと思うよ」
「っ!!!???」
国の代表として参加しい。
そこの部分だけを聞いた段階ではあるが、ガルーレとスティームもその点に関しておかしな点はないと、即断言した。
「二人共、もうちょい悩むものじゃないのか?」
「なんで悩むの? そりゃ私は冒険者として活動してきた中で出会った人しか知らないけど、アラッドは私が出会ってきた冒険者の中でもとびっきり輝いてるよ!!」
「僕も同じ感想だね。話題性とか、そういう部分もアラッドは十分あるからね。選ばれない理由はないだろうね」
「……そりゃどうも」
アラッドとしては迷惑千万といった内容ではあるが、パーティーメンバーであるスティームとガルーレは、まだ詳しく解っていないが、誇らしい気持ちになっていた。
「それで、具体的にどんな代表になったのか聞いても?」
「うちの国王が、久しぶりに親交がある国の国王と会ったらしいんだよ。最初こそ和やかなお茶会だったらしいんだけど、途中から自慢合戦に発展したらしい」
「権力者にありがちな流れだね」
貴族の当主、国王……そういった大人たちだけではなく、その子供たちである令息や令嬢、王子や王女たちも似た様な会話を良くする。
「その自慢話が、自国の有望な若手に変わったらしい」
「なるほどね~~~。そこでアラッドに白羽の矢? がたったわけだ」
「ご明察だ。有望な若手に関してだが、学生とまだ二十歳を越えていない冒険者と、新人騎士と言える三枠」
「アラッドはまだ二十歳を越えてない冒険者枠に選ばれたんだね」
「まだ確定ではない。国王陛下かも俺を気遣ってか、候補として考えているのがどうだろうか? と記してくれている」
そう……まだ確定ではないが、それでも文字とその文字を記した本人の考えが一致しているとは限らない。
国王陛下が直々に何かしらの候補として選んでくれた。
それは貴族出身の者であれば、この上なく名誉な事である。
ただ、このアラッドは純粋な貴族ではない。
平民の血が混ざっているという意味ではなく、この世界に染まっている人間ではない、という意味である。
魂は二十歳を越えておらず、碌に社会人経験のないクソガキ。
目の前の大きな課題に対して、やりがいがあるという感想の前に面倒という感想が浮かぶ。
故に……その精神は今も変わらず、手紙に書かれてある内容に関しての感想は、面倒である。
「でもさ、二十歳を越えてない冒険者の中でアラッドより強い人なんていなくない?」
「世の中は広いと言うだろ」
「アラッドの言う通り広いとは思うよ。まだ見ぬ未知の強者はいるだろうね。ただ、年齢を二十歳以下と限定すると……それこそ、別の大陸とかまで範囲を広げないと、見つからないと思うんだ」
「むぅ……」
友が自分の実力をそこまで褒めてくれるのは嬉しい。
そして別の大陸まで範囲を広げれば、それは完全にアルバース王国の人間ではない。
「…………とりあえず、行くしかないか」
手紙には、ひとまず久しぶりに会わないかと記されており、次の目標を見つけるよりも先に王都へ向かうことが確定した。
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