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六百五十四話 来るなら絞り取るまで
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(スティームの言う通り、こいつの能力は知られると面倒な連中に付け狙われそうだな。でも、エスペラーサ家もこの能力のことを知れば…………あの兄ちゃんはともかく、実家エスペラーサ家はどうなんだ?)
アマル・エスペラーサはおそらく動かない。
誓約書などを書いてもらった訳ではないが、アラッド本人の勘がそう言っている。
しかし、この能力を知れば……剛柔は私たちの元にあるべきだ!!!! と、英雄を生み出したエスペラーサ家が吠えるかもしれない。
だが……ここでアラッドは一つ、仮説を思い付いた。
(まてよ、そもそもこの能力をエスペラーサ家の人間は知ってるのか? 剛柔は今は亡きエルスさんが使っていた名剣。その名剣は何世代前のもの…………これを知ってたら、あの兄ちゃんだけではなく、もっとエスペラーサ家が総出で探してるのではないか?)
アラッド自身の愛剣として、渦雷という特別な魔剣、進化する剣がある。
そういった魔剣は過去に例があり、元々は付いていなかった能力が付与されるという例もある。
(もしそうなら……そこまで心配する必要はなさそうだな)
かつての英雄、エルス・エスペラーサが扱っていたからこそ、その様な効果が新たに付与された。
であれば、ここまで驚きの効果が付与されているのにも納得。
しかし……そう思うと、余計にエスペラーサ家の人間に知られてはならないと思ってしまう。
(とはいえ、こいつの内容を知られたら、その名剣剛柔には我が祖先、エルス・エスペラーサの魂が宿っている!!!! 故に、それは我らエスペラーサ家の人間が所有すべきだ!!!! なんて暴論をぶん投げてきそうだ)
勿論、アラッドとしてはまともにキャッチボールをするつもりはなく、それほど欲しいのであれば……剛柔に釣り合う代償を良いし、なおかつ自分と決闘を知ろと伝える。
エスペラーサ家はアラッドと同じ武芸に優れた侯爵家。
だからこそアマルの様な実力のある若手もおり、更にその上の実力者も存在する。
アラッドと言えど、油断していては圧倒され、何も出来ずに終わってしまう可能性もないとは言えない。
ただ、アラッドはエスペラーサ家にはアマル以上の実力者がいるだろうと予想しており、仮にそれらの人物たちと決闘を行うのであれば……決して容赦するつもりはない。
つまり……渦雷、迅罰を使用し……なんならエスペラーサ家の人間を相手に剛柔を使い、当然の様に狂化を使用して戦う。
「アラッド、そんな難しい顔してどうしたの?」
「エスペラーサ家の人間がこの力をしったら、やっぱり耳を持たない連中と同じ状態になるのかと思ってな」
「酒場で話しかけてきたアマルさんはまともそうに見えたけど……」
「あの兄ちゃんは……そうだな。是非ともそうならないでほしい。それでも、他の連中までそうなのかは解らん」
アラッドは侯爵家の令息であり、スティームは他国ではあるが伯爵家の令息。
冒険者として活動している令息の中で、その家柄はまさにトップクラス。
本人たちは冒険者活動にあまり家柄を持ち込みたくないと思っているが、それはそれでこれはこれ。
他人がどう見るかは、その者たちの勝手である。
しかし、エスペラーサ家はアラッドの実家と同じく侯爵家。
名声だけで言えばほぼソロで暴風竜ボレアスを討伐したフールの名声が上ではあるが、家全体の名声でいえば……おそらく負けていない。
「けど、仮に何かしら仕掛けてくるなら、しっかり貰うまでだ」
「アラッド……ちょっと顔が怖いよ」
「顔が怖いの元からだ。ほっとけ」
確かに元から少々怖い顔ではあるが、そうではない……そうではない怖さがあるのだ。
「そ、それは本当か!!!!」
「はい……冒険者たちから得た、確かな情報です」
「っ…………そう、か」
共に活動をしていたエスペラーサ家に仕える騎士から、たった今アラッドたちが剛柔を手に入れたという報告を受けた。
「…………どうやって手にしたか、解りますか」
「情報によると、あの三人組はリバディス鉱山の新たなエリアで突然現れた三体の大蛇を討伐したようです」
白蛇のソルヴァイパー、炎蛇のプロミネンスコブラ、黒蛇のディーマンバ。
三体のBランクを討伐してから間もなく揺れが起こったと、アラッドたちはギルドに伝えた。
浅く捉えるのであれば、その三体は半ダンジョン化したリバディス鉱山が引き寄せた最下層のボスに当たる存在だった。
加えて、スティームが一人で討伐したソルヴァイパーは、以前彼と従魔のファルが狩り逃がしてしまった白雷を使用するソルヴァイパーだった。
三体のBランクモンスター……そのうちの一体は色を持つ属性魔法を使用した。
まさにラスボスとして申し分ない強さを持っている。
ギルドとしてはまだまだ解き明かしたい情報はあれど、そういった何故という疑問が浮かび上がる部分に関して情報を提示してくれた三人には感謝している。
ただ………………ギルドも、あの一件は知ってはいたものの、ダメもとでギルドの方で剛柔を買い取らせてくれないかと尋ねた。
当然、魔力と闘志を揺らめかせながら……笑顔でアラッドはノーと答えた。
アマル・エスペラーサはおそらく動かない。
誓約書などを書いてもらった訳ではないが、アラッド本人の勘がそう言っている。
しかし、この能力を知れば……剛柔は私たちの元にあるべきだ!!!! と、英雄を生み出したエスペラーサ家が吠えるかもしれない。
だが……ここでアラッドは一つ、仮説を思い付いた。
(まてよ、そもそもこの能力をエスペラーサ家の人間は知ってるのか? 剛柔は今は亡きエルスさんが使っていた名剣。その名剣は何世代前のもの…………これを知ってたら、あの兄ちゃんだけではなく、もっとエスペラーサ家が総出で探してるのではないか?)
アラッド自身の愛剣として、渦雷という特別な魔剣、進化する剣がある。
そういった魔剣は過去に例があり、元々は付いていなかった能力が付与されるという例もある。
(もしそうなら……そこまで心配する必要はなさそうだな)
かつての英雄、エルス・エスペラーサが扱っていたからこそ、その様な効果が新たに付与された。
であれば、ここまで驚きの効果が付与されているのにも納得。
しかし……そう思うと、余計にエスペラーサ家の人間に知られてはならないと思ってしまう。
(とはいえ、こいつの内容を知られたら、その名剣剛柔には我が祖先、エルス・エスペラーサの魂が宿っている!!!! 故に、それは我らエスペラーサ家の人間が所有すべきだ!!!! なんて暴論をぶん投げてきそうだ)
勿論、アラッドとしてはまともにキャッチボールをするつもりはなく、それほど欲しいのであれば……剛柔に釣り合う代償を良いし、なおかつ自分と決闘を知ろと伝える。
エスペラーサ家はアラッドと同じ武芸に優れた侯爵家。
だからこそアマルの様な実力のある若手もおり、更にその上の実力者も存在する。
アラッドと言えど、油断していては圧倒され、何も出来ずに終わってしまう可能性もないとは言えない。
ただ、アラッドはエスペラーサ家にはアマル以上の実力者がいるだろうと予想しており、仮にそれらの人物たちと決闘を行うのであれば……決して容赦するつもりはない。
つまり……渦雷、迅罰を使用し……なんならエスペラーサ家の人間を相手に剛柔を使い、当然の様に狂化を使用して戦う。
「アラッド、そんな難しい顔してどうしたの?」
「エスペラーサ家の人間がこの力をしったら、やっぱり耳を持たない連中と同じ状態になるのかと思ってな」
「酒場で話しかけてきたアマルさんはまともそうに見えたけど……」
「あの兄ちゃんは……そうだな。是非ともそうならないでほしい。それでも、他の連中までそうなのかは解らん」
アラッドは侯爵家の令息であり、スティームは他国ではあるが伯爵家の令息。
冒険者として活動している令息の中で、その家柄はまさにトップクラス。
本人たちは冒険者活動にあまり家柄を持ち込みたくないと思っているが、それはそれでこれはこれ。
他人がどう見るかは、その者たちの勝手である。
しかし、エスペラーサ家はアラッドの実家と同じく侯爵家。
名声だけで言えばほぼソロで暴風竜ボレアスを討伐したフールの名声が上ではあるが、家全体の名声でいえば……おそらく負けていない。
「けど、仮に何かしら仕掛けてくるなら、しっかり貰うまでだ」
「アラッド……ちょっと顔が怖いよ」
「顔が怖いの元からだ。ほっとけ」
確かに元から少々怖い顔ではあるが、そうではない……そうではない怖さがあるのだ。
「そ、それは本当か!!!!」
「はい……冒険者たちから得た、確かな情報です」
「っ…………そう、か」
共に活動をしていたエスペラーサ家に仕える騎士から、たった今アラッドたちが剛柔を手に入れたという報告を受けた。
「…………どうやって手にしたか、解りますか」
「情報によると、あの三人組はリバディス鉱山の新たなエリアで突然現れた三体の大蛇を討伐したようです」
白蛇のソルヴァイパー、炎蛇のプロミネンスコブラ、黒蛇のディーマンバ。
三体のBランクを討伐してから間もなく揺れが起こったと、アラッドたちはギルドに伝えた。
浅く捉えるのであれば、その三体は半ダンジョン化したリバディス鉱山が引き寄せた最下層のボスに当たる存在だった。
加えて、スティームが一人で討伐したソルヴァイパーは、以前彼と従魔のファルが狩り逃がしてしまった白雷を使用するソルヴァイパーだった。
三体のBランクモンスター……そのうちの一体は色を持つ属性魔法を使用した。
まさにラスボスとして申し分ない強さを持っている。
ギルドとしてはまだまだ解き明かしたい情報はあれど、そういった何故という疑問が浮かび上がる部分に関して情報を提示してくれた三人には感謝している。
ただ………………ギルドも、あの一件は知ってはいたものの、ダメもとでギルドの方で剛柔を買い取らせてくれないかと尋ねた。
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