上 下
647 / 1,012

六百四十六話 逃がすか!!!

しおりを挟む
「……ここら辺、もしかして新しくできた道かな」

「ん~~~~……そうかもしれないな」

「ワゥ!!!!」

「ん? やっぱりスティームの言う通りなのか、クロ」

「ワゥ」

「そっか。なら、ここは本当に新しくできた道なんだろうな」

今日も今日とてアラッドの採掘がメインとなりつつあり、剛柔の探索はついでになってきている三人。

とはいえ、アラッドも含めて自分たちの最終的な目標は剛柔のゲットということは忘れてない。

「新しくできた道、ねぇ……それなら、ちょっとは期待したいわね」

「だな~~…………っと、気になるところ発見」

……やはりアラッドは採掘にしか興味が向いてないかもしれない。

気になる場所を発見し、頑丈なツルハシで削って削って削り、鉱石の姿が見えてきたら丁寧に採っていく。

「っし、お待たせ」

「本当に手慣れたものね~~~」

「子供の頃から同じことをやってたからな」

「……改めて聞くと、やっぱりちょっとおかしいよね、それ」

「ちょっとおかしい件に関しては俺本人も自覚してるよ」

ちょっとどころではないが、色々とおかしい事に関しては言葉通り本人も自覚、理解している。

(良い鉱石も手に入ってきたな…………どうせなら、久しぶりに完全に遊びでキャバリオンを造ってみるか? それなりに良い素材は揃っている……なにより、轟炎竜の素材は使ってみたい)

先日、まさかの一件で火竜ではなく轟炎竜と戦うことになったアラッド。

そしてクロと共に討伐し……解体して得た素材の一部は実家に……ハーフドワーフのリンに送った。

それでも、アラッドの手元には多くの素材が残っている。

(いや、轟炎竜の素材を使うなら、もう少し質の高い鉱石を使った方が良いか? 遊びとはいえ、折角のAランクモンスターの素材を無駄にはしたくないしな)

ここ最近、ミスリル鉱石を手に入れたアラッドだが……轟炎竜の素材を十全に活かすとなれば、やや量が足りない。

「っ…………揺れた、か?」

「ん~~~~……かもしれないわね。もしかしたら、ワームとかのモンスターが移動してるのかもね」

鉱山内ではよくある話だが、崩落の危機も否定出来ない。

「崩落、とか大丈夫だよね」

「ここは半ダンジョン化した鉱山だろ。多少無理に人が掘ったとしても、特に問題はないと思うぞ」

確証があるわけではないが、アラッドたちが軽く集めた情報の中に、これまでにリバディス鉱山が崩落したという情報は一つもなかった。

「…………どうやら、ガルーレの予想が合ってたみたいだな」

ただし、ワーム以上の個体が迫ってきていた。
加えて……その数は一体ではない。

「「「ッ!!!!」」」

殆ど同時、予想していた通り、ワーム以上のモンスターが……合計で三体現れた。

「「……逃がすカァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」」

「っ!!??」

三体の内、一体のモンスターの姿……纏う空気を把握した二人の眼の色が一瞬で変わった。

スティームは即座に赤雷を纏い、双剣を抜剣。
そしてアラッドは……三体がボスモンスターに分類されるモンスターであれば逃げない可能性が高いにも関わらず、オリハルコンの糸をそこら中に張り巡らせ、完全に逃げ道を塞いだ。

そこまで二人が眼の色を変えるほど必死になるモンスターは……そう、前回うっかり逃げられてしまった白蛇、ソルヴァイパーである。

別のソルヴァイパーではないのか?
そう思うかもしれないが……二人には解る。
そもそも半ダンジョン化した地帯には、モンスターを生み出す能力はなく、周囲のモンスターを引き寄せる効果しかない。

「わぉ! あんな荒々しいスティーム、初めて見るわね! それで、アラッド……私は、あっちの黒いのを相手しても良いかしら」

「そっちの黒いの……ディーマンバとは戦ったことがあるから良いぞ。俺はこっちの赤い奴と戦る」

「オッケー! んじゃ、いくわよ!!!!!!!」

アラッドたちの目の前に現れたモンスターは白蛇、炎蛇、黒蛇の三体。

二体は以前二人が遭遇したソルヴァイパーとディーマンバ。
そして最後の一体はプロミネンスコブラ。

二体と同じくBランクのモンスターであり、火を扱う珍しい個体。
Bランクモンスターが三体と、ボスとしては申し分ない戦力。

「「…………」」

ただ、三人それぞれロックオンした大蛇を倒すことに集中し過ぎた為か……クロとファルはすっかり空気となっていた。

「………………ワフゥ」

一応、主人が展開したオリハルコンの糸に振れたクロ。
頑張れば切り裂けるが……主人が何のためにこれほど頑丈な檻を展開したのか、前回白雷を習得したソルヴァイパーを逃がしてしまった事をクロはなんとなく覚えていた。

「ワフゥ~~~」

「クルルゥ……」

今回は自分たちがすることは何もないと悟った二体。

あの中に入ろうとする命知らずはいないと思わなくもないが、それでもここが普段冒険している場所とは違うことを把握している二体は関係無いモンスターが割って入ってこないかの警戒を始めた。

しかし、結果として三人の戦いが終わるまで余計な邪魔をしに来るモンスターは一切現れなかった。
しおりを挟む
感想 465

あなたにおすすめの小説

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...