641 / 992
六百四十話 何年もは居られない
しおりを挟む
「解ってはいたいが、中々見つからないもんだな」
剛柔の探索を始めて約十日が経過。
アラッドたちはそれなりに強いモンスターと戦うことは出来るが、それでも剛柔に繋がるであろう手掛かりは一切無く……ついでに発見確率は低いが、ダンジョンの醍醐味とも言える宝箱も一回も見つけられていない。
「簡単に見つかったら、何十年も未発見ってことはないだろうからね」
「仕方ないってやつね~~。でも、私は色んなモンスターと戦えて結構楽しいけどね」
「そうだな、それに関しては同意だ」
半ダンジョン化したリバディス鉱山では新たにラミア、ロックバードにガーゴイル、ゴーレムなどといったモンスターと遭遇し、全員がそれなりに満足出来る戦いを体験出来ていた。
「そういえば、アラクネと戦ったのは今回が初めてだったな」
「悲鳴が聞こえたと思ったらねぇ~~。まっ、一種の怖さがあるモンスターだし、糸にぐるぐるに巻かれて食料にされるとか最悪の運命だからね」
蜘蛛の下半身に女性の上半身が付いている疑う余地がない異形の存在。
上半身の女性が人間の女性らしい訳でもないため、まさにモンスター。
「僕達があの声に気付けて良かったね」
「そうだな。聞こえた冒険者によっては、姿だけ確認して逃げるたかもしれない。まぁ、自分の……自分たちの命が最優先というのは決して間違ってはいないがな」
アラッドたちがアラクネに襲撃されたパーティーの悲鳴を聞きつけ……到着した時にはアラクネの毒で全員眠らされていたが、最終的にはガルーレとスティームのタッグが討伐。
眠らされていた四人が起きないため、クロが背負いながらもしやと思いながら周囲を歩き回ると……糸でぐるぐる巻きにされ、衰弱していた冒険者たちを発見。
アラッドたちが救出したことで事なきを得たが……発見しなかったら、アラクネに食われる云々以前に栄養失調などで死んでいてもおかしくなかった。
「でもあれだよね、アラクネを倒しても宝箱は出現しなかったよね」
「そうね~。戦ってた時、ちょっと期待してたんだけどね~~……現実は甘くないってことね」
「そうなるね……けどさ、あのアラクネを倒しても宝箱が出現しなかったら、仮にちゃんとしたダンジョンが生まれてたら……あれぐらいのモンスターが普通に現れてもおかしくない難易度のダンジョンだったことだよね」
スティームが何を言いたいのか解る二人は……何故、何故ちゃんとしたダンジョンが生まれなかったんだ、とどこにぶつければ良いのか解らない悔しさを顔に浮かべる。
「本当に………………本当に、そうだな」
「半ダンジョン化の方が凄く珍しいんだけど……やっぱりあれかな。剛柔が影響してるのかも」
「半ダンジョン化という珍しい現象が起きてることを考えれば、そういう結論に至るのが当然、か」
まだ全ての通路を通っていない三人だが、それでもそれなりに動き続け……探し続けた。
アラクネ以外のBランクモンスターを討伐したが、それでも剛柔に繋がる手掛かりは手に入らない。
「……リバディス鉱山が半ダンジョン化したという事は、だ……まだ、リバディス鉱山は成長してるんだったよな」
「半ダンジョン化した場所に関しては情報が乏しいけど、リバディス鉱山は誰かが掘って新しく道をつくらなくても、いつの間にか新しい道が出来てるってことがあるみたいだね」
「えっと……もしかして、剛柔を手に入れるには私たちがどれだけ探索しても、意味がないってこと?」
ガルーレが零した言葉に、アラッドとスティームは……何も返せなかった。
「ちょ、ちょっと~~~、何か言ってよ!」
「す、すまん。ただ、なぁ……情報が少ないから断定は出来ないが、本当に見つけるとしたら……数年は必要になるかもしれないなと思って」
「絶対ってわけじゃないんだけどね」
数年……中々の年数であり、今度はガルーレの方が返す言葉が出てこなかった。
「……………………ごめん、あれだね。本当に……ちょっと上手く言葉が出てこなくなるね」
「理解してくれたようでなによりだ。とはいえ、スティームの言う通り半ダンジョン化したダンジョンに関して情報が少ない。そもそも、そこにかつての英雄が使ってた名剣がおそらくある……というのも、普通ではない状況だ」
必ずしも、剛柔を見つけられるまで、最低でも数年かかるという訳ではない。
ただ……それも仮定の話ではある。
「もしかしたら、リバディス鉱山には何かが足りないのかもしれない」
「足りない? ……それは、本当のダンジョンになるために足りない何かがあるってこと?」
結果としてリバディス鉱山が消え……鉱山タイプのダンジョンになり、五十階層や六十階層のとある一室……通称ボス部屋と呼ばれる場所に存在する強大なモンスターを倒し……初回に限り、ボスモンスターを倒すことで現れる宝箱の中に剛柔が入っている。
なんて仮定の流れであれば、一応納得出来なくもない。
「可能性としての話だがな」
剛柔を探すのに何年も必要ない……という希望的観測。
しかし、スティームとガルーレもそういった話を続けるのは寧ろ楽しく、事前に購入していたお菓子とアラッドが淹れた紅茶を飲みながら夕食時まで延々とあーでもないこーでもないと話し続けた。
剛柔の探索を始めて約十日が経過。
アラッドたちはそれなりに強いモンスターと戦うことは出来るが、それでも剛柔に繋がるであろう手掛かりは一切無く……ついでに発見確率は低いが、ダンジョンの醍醐味とも言える宝箱も一回も見つけられていない。
「簡単に見つかったら、何十年も未発見ってことはないだろうからね」
「仕方ないってやつね~~。でも、私は色んなモンスターと戦えて結構楽しいけどね」
「そうだな、それに関しては同意だ」
半ダンジョン化したリバディス鉱山では新たにラミア、ロックバードにガーゴイル、ゴーレムなどといったモンスターと遭遇し、全員がそれなりに満足出来る戦いを体験出来ていた。
「そういえば、アラクネと戦ったのは今回が初めてだったな」
「悲鳴が聞こえたと思ったらねぇ~~。まっ、一種の怖さがあるモンスターだし、糸にぐるぐるに巻かれて食料にされるとか最悪の運命だからね」
蜘蛛の下半身に女性の上半身が付いている疑う余地がない異形の存在。
上半身の女性が人間の女性らしい訳でもないため、まさにモンスター。
「僕達があの声に気付けて良かったね」
「そうだな。聞こえた冒険者によっては、姿だけ確認して逃げるたかもしれない。まぁ、自分の……自分たちの命が最優先というのは決して間違ってはいないがな」
アラッドたちがアラクネに襲撃されたパーティーの悲鳴を聞きつけ……到着した時にはアラクネの毒で全員眠らされていたが、最終的にはガルーレとスティームのタッグが討伐。
眠らされていた四人が起きないため、クロが背負いながらもしやと思いながら周囲を歩き回ると……糸でぐるぐる巻きにされ、衰弱していた冒険者たちを発見。
アラッドたちが救出したことで事なきを得たが……発見しなかったら、アラクネに食われる云々以前に栄養失調などで死んでいてもおかしくなかった。
「でもあれだよね、アラクネを倒しても宝箱は出現しなかったよね」
「そうね~。戦ってた時、ちょっと期待してたんだけどね~~……現実は甘くないってことね」
「そうなるね……けどさ、あのアラクネを倒しても宝箱が出現しなかったら、仮にちゃんとしたダンジョンが生まれてたら……あれぐらいのモンスターが普通に現れてもおかしくない難易度のダンジョンだったことだよね」
スティームが何を言いたいのか解る二人は……何故、何故ちゃんとしたダンジョンが生まれなかったんだ、とどこにぶつければ良いのか解らない悔しさを顔に浮かべる。
「本当に………………本当に、そうだな」
「半ダンジョン化の方が凄く珍しいんだけど……やっぱりあれかな。剛柔が影響してるのかも」
「半ダンジョン化という珍しい現象が起きてることを考えれば、そういう結論に至るのが当然、か」
まだ全ての通路を通っていない三人だが、それでもそれなりに動き続け……探し続けた。
アラクネ以外のBランクモンスターを討伐したが、それでも剛柔に繋がる手掛かりは手に入らない。
「……リバディス鉱山が半ダンジョン化したという事は、だ……まだ、リバディス鉱山は成長してるんだったよな」
「半ダンジョン化した場所に関しては情報が乏しいけど、リバディス鉱山は誰かが掘って新しく道をつくらなくても、いつの間にか新しい道が出来てるってことがあるみたいだね」
「えっと……もしかして、剛柔を手に入れるには私たちがどれだけ探索しても、意味がないってこと?」
ガルーレが零した言葉に、アラッドとスティームは……何も返せなかった。
「ちょ、ちょっと~~~、何か言ってよ!」
「す、すまん。ただ、なぁ……情報が少ないから断定は出来ないが、本当に見つけるとしたら……数年は必要になるかもしれないなと思って」
「絶対ってわけじゃないんだけどね」
数年……中々の年数であり、今度はガルーレの方が返す言葉が出てこなかった。
「……………………ごめん、あれだね。本当に……ちょっと上手く言葉が出てこなくなるね」
「理解してくれたようでなによりだ。とはいえ、スティームの言う通り半ダンジョン化したダンジョンに関して情報が少ない。そもそも、そこにかつての英雄が使ってた名剣がおそらくある……というのも、普通ではない状況だ」
必ずしも、剛柔を見つけられるまで、最低でも数年かかるという訳ではない。
ただ……それも仮定の話ではある。
「もしかしたら、リバディス鉱山には何かが足りないのかもしれない」
「足りない? ……それは、本当のダンジョンになるために足りない何かがあるってこと?」
結果としてリバディス鉱山が消え……鉱山タイプのダンジョンになり、五十階層や六十階層のとある一室……通称ボス部屋と呼ばれる場所に存在する強大なモンスターを倒し……初回に限り、ボスモンスターを倒すことで現れる宝箱の中に剛柔が入っている。
なんて仮定の流れであれば、一応納得出来なくもない。
「可能性としての話だがな」
剛柔を探すのに何年も必要ない……という希望的観測。
しかし、スティームとガルーレもそういった話を続けるのは寧ろ楽しく、事前に購入していたお菓子とアラッドが淹れた紅茶を飲みながら夕食時まで延々とあーでもないこーでもないと話し続けた。
116
お気に入りに追加
6,090
あなたにおすすめの小説
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる