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六百三十三話 情報不足

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「お疲れ~~~い」

「お疲れ様」

「まぁ……今日は言うて遊んでたって感じだけどな」

ロンバルクに帰還後、素材を売却して速攻でギルドから出た三人はガルーレの意向で酒場で夕食を食べることになった。

「う~~ん、まぁ確かそんな感じだったわね~」

半ダンジョン化しているリバディス鉱山では、普段以上にモンスターから襲われたのは間違いないが、そのどれもがCランク以下。

アラッドとしては、授業の時間なのに担任が急に体育館に移動し、自由に遊んで良いぞ伝えられた感覚に近い。

「というか、やっぱりあれね。二人のお陰でその日のうちに街に戻られるのは本当に強いというか有難いよ」

「どういたしまして。けど、ガルーレも本気で走ればその日のうちにロンバルクまで戻るのは難しくないだろ」

「それはまぁ、無理じゃないよ。でも、仕事を終えた後にダッシュで街に戻るなんて超辛いじゃん。だから、クロに乗せてもらって帰るのは本当に最高だったよ」

これまで基本的にソロで活動し続けてきたガルーレ。
それはそれで気に入っているのだが、今日の体験でちょっと本気で従魔を手に入れてみようかなと考えた。

「……でもさ、目的のあれを探すなら、毎回街に戻るのはちょっと時間が勿体ないんじゃないかな」

「それはそうだな。俺としては特に急ぎの用とかないから、どちらでも構わないが」

「私はリバディス鉱山内で泊っても良いかなって思うよ。ダンジョンでの寝泊まり経験はあるし、その探索時に手に入れた結界を発動できるマジックアイテムも持ってるから」

結界を発動出来るマジックアイテムを持っているのは、流石Cランクの冒険者と言える。

アイテムバッグやポーチなどもそれなりに良いお値段がするが、野営時に安全性を確保し……あまり過信し過ぎるのも良くないが、場合によっては全員がぐっすりと睡眠を取れる最高のマジックアイテムである。

「準備が良いな……ところで、一つ訊いておきたいんだが、リバディス鉱山ではまだそれらしい場所、もしくはこいつがボスであろうモンスターは発見出来てないのか?」

「ん~~~~…………多分、発見出来てないんじゃないかな? 本当かどうか分からないけど、未だに鉱山の中が広がってる、もしくは鉱山自体が大きくなってるって噂もあるみたいだよ」

「……もしそうなら、凄いな。あれだろ、半ダンジョン化しているとはいえ、鉱山であることに変わりはないんだろ」

「らしいね」

「なら、街としては……ロンバルクを治める領主としては最高だな」

ダンジョンは生まれれば不安と得られる利益に対するウキウキが止まらない。

ただ、ダンジョンの発生など、それこそ神のみぞ知るといった事象。
得ようと思って得られる物ではない。

そんな中、鉱山半分とはいえダンジョン化した。
過去に多くの例がある訳ではなく、そこら辺を研究している学者たちも断言出来るほどの要素は揃っていないが、何かしらの要因が重なって半ダンジョン化が解けない限り、永遠に鉱石が採掘出来る。

かつての英雄、エルスが所有し、戦場で振るっていた剛柔が更に見つかりにくくなったものの、領地を経営している領主としては寧ろ半ダンジョン化は本当に有難い現象だった。

「鉱石を採掘し続けられるなら、本当に最高だね」

「ただ、俺たちの目的はあくまであの剣だ。本当にあるのかどうか疑わしい存在ではあるが、それでも気になるところがあれば積極的に探っていきたい」

「そうなると……やっぱり下に降りた方が良さそうね」

「ダンジョンだから、か?」

ダンジョン探索を経験したことがある者の言葉であれば、たとえ直感であろうともそれなりに信用出来るというもの。

「それもそうなんだけど、多分外から見える部分はもう殆ど探索されてると思うのよね~」

「……半ダンジョン化した場所がどういう仕組みで活動? してるのかは解らないが、ダンジョンの特性を持ってるというのを考えると、更に下へ広く……なっていってもおかしくはない、か」

「あまり深い場所だと崩落の危険性とか考えて行動しないと駄目だけど、半ダンジョン化してるならそこら辺をあまり考えなくても良いのかな」

あれこれ話し合うが、どこにあるのか……どうすれば剛柔が手に入るのかという結論には至らない。

ただ、冒険者らしく一番強いモンスターを倒せば、運良く宝箱が得られるんじゃないかという脳筋思考に落ち着くしかなかった。

(ん? ……他の客とは、視線の種類が違う奴らが近づいてきてるな)

四杯目のエールを呑んでいる最中ではあるが、まだ自分に向けられる視線、そこに含まれる感情に気付かない酔ってはいなかった。

「…………俺たちに、何か用か?」

視線の方向に顔を向けると、そこには五人の男女が立っていた。

(全員、それなりに戦えるみたいだな。それに……五人の内、三人は俺やスティームと同じ貴族か?)

この街に来てから、まだ問題を起こす様な真似はしていない。

問題は自分で起こさずとも向こうからやってくるという嫌な事実は理解しているものの、何故彼らが自分たちに負よりの感情を向けているのか……本当に解らなかった。
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