スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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六百三十二話 色々と違う

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「っと、見えてきたね。あそこが噂の半ダンジョン化したリバディス鉱山だよ」

道中、数回ほどモンスターに襲われるも瞬殺しながら比較的短時間で目的の冒険地に到着。

「当然と言えば当然だが、デカいな」

鉱山を見たことがない訳ではない。
実家の領地にも鉱山は存在する。

それでも……アラッドの目には明らかに異なる存在として映っていた。

「鉱山…………鉱山?」

「スティームも同じ感覚みたいだな。半ダンジョン化してるからか、普通の鉱山に見えないよな」

「ん~~~……私も同じというか、ダンジョンに潜ったことがあるから、寧ろ既視感に近いかも」

何はともあれ、その違和感や既視感にビビる三人ではない。

挑もうとしている他の冒険者達から向けられる視線を無視し、今回はスタンダードな入り口から中へ入る。

「ッ…………これが、異なる空間に入った感覚、か?」

「そうだね~。ダンジョンの入り口から中に入った時の感覚と大体一緒かな」

リバディス鉱山の中に入ると……そこは、いたって普通の光景が広がっていた。

話に聞いていたダンジョン内の光景とは違い、過去にアラッドが探索したことがある実家の鉱山の内部と同じく、一つのまとまった空間があるわけではなく、上も下も繋がっている。

(普通の鉱山の内部と変わらない…………でも、明らかに感覚は違う)

本当に面白い空間だと思いながらゆっくり進んでいくと、一体のゴブリンが現れた。

上位種でもなければ、この面子に対してゴブリンが襲い掛かってくることはまずない。

「ギャギャギャッ!!!!!」

しかし、どこで拾ったのか石斧を振りかざしながら勢い良く飛び掛かる。

「ワゥ」

「ギべっ!!!???」

とはいえ、やはりたかがゴブリン。
クロが前足を振り下ろすと、あっさり地面にプレスされて死亡。

「……ゴブリンにしては、勢い良く襲い掛かって来たな」

「それもダンジョンの特徴ね。基本的にダンジョン内のモンスターは探索者を相手を発見したら逃げずに襲ってくるの。面倒に感じる時もあるけど、悪くない設定? よね」

半ダンジョン化したリバディス鉱山では内部でモンスターが生まれるという現象はないが、鉱山に引き寄せられ住み着くようになったモンスターはガルーレの説明通り、敵を前にして逃げる事が少なくなり……ついでにモンスター同士で争わなくなる。

「そうだな。悪くない……退屈しなくなる要素ではあるな。ただ、気になることがある」

「私に答えられることなら答えるよ」

「ダンジョンにはボス部屋、ボスモンスターというのが存在するのだろ。なら、この半ダンジョン化した鉱山内では、どういった扱いになるんだ?」

「あぁ~~~~…………それはまた難しい質問ね」

ダンジョンを探索した経験はあれど、半ダンジョン化した場所を攻略するのは初めてであり、聞きかじった知識しかない。

「一応、そういった感じのモンスターはいるらしいけど、普通に移動してるし、ここで? って感じる場所に居ることもあるっぽいよ」

「移動する……でも、半ダンジョン化した場所からは出ないという事は、縄張りと決めた範囲だけ動くということか」

「もしかしたらそんな感じなのかもね」

全員、まだどういった空間なのか正確には解っておらず、考察しながら探索を進めていく。

すると探索から数十分後、二体のガーゴイルが現れた。

「片方は私が貰おうかな」

「それじゃ、もう片方は僕が貰うよ」

「分かった。それじゃ、見張りは任せてくれ」

石の悪魔、ガーゴイル。
石化のブレスなどを吐いたりはしないが、得物を操り宙を飛ぶ怪物。
見た目以上の堅さを有しており、Cランクの中でも厄介さは上位に位置する個体。

加えて、鉱山内での戦いはガーゴイルの方が慣れており、Cランクのモンスターを倒したことがあるからといって油断していると、手痛いダメージを食らってしまうケースが多いが……そんな心配は、二人に全く必要なかった。

(俺がこんな事を言うのはあれだが、モンスターも襲撃を仕掛けた相手に、遊ばれるのは……色々とストレスを感じそうだな)

感情があるモンスターであれば、相手の表情からなんとなく……敵対者が何を考えているのかが解る。

なので……数分も戦いが続けば、自分たちが遊ばれているという事になんとなく気付き始める。

「「ッ!!!!!」」

遊ばれていると気付けば、怒りを抱くのが必然。
強烈な一撃をお見舞いしようとするが、二人はあっさりと感情の起伏を見抜き、カウンターを叩き込み……そこで戦闘終了。

「はは! やっぱりこういう場所でそれなりに戦える相手との戦闘も良いね!!!」

「同感だね」

試合とは違い、確実に敵対する相手は殺意を持って挑んでくる。

ガルーレは元からそういった相手との戦闘も好みであり、スティームは……アラッドと出会って共に行動するようになってから一皮むけたのか、相手によってではあるが、楽しむ余裕が生まれていた。

(まっ、モンスターはモンスターで好き勝手に生きてるんだ。それも致し方ないってやつだろう)

次の遭遇時はアラッドが前に出て戦い、完勝。

結局その日はただ半ダンジョン化したリバディス鉱山を楽しむだけで終わったが、アラッドはそんな一日も悪くないと思った。
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