630 / 1,044
六百二十九話 形や感情は違うけど
しおりを挟む
リバディス鉱山の最寄り街に着く前の街で、アラッドはシルフィーに手紙を送った。
ただ一方的な手紙ではなく、返事を求める内容。
(アッシュは強い……センス、才能は間違いなくずば抜けてる。ただ……自分の行動でモンスターを生み出してしまうのか……そういうった事に関しては、多分鈍いんだよな)
鈍感系主人公……とはまた違う存在。
恋愛そのものに興味がない。
今のところ、どれだけ異性と関わろうとも友人止まり。
それはアッシュが意識的にそうしてるのではなく、何か……アッシュの心境に変化をもたらす程の人物でなければ、まず自分が関わってる人物はそういう存在なのだと認識すらしない。
「弟君に手紙を送ったの?」
「いや、妹の方に送った」
「もしかして、アッシュ君は手紙とかだと面倒になってあんまり細かく書かない感じ?」
「そんな事はないと思うが……鈍いところがあるからな。正確に聞くなら、妹のシルフィーの方が良い…………そのシルフィーの方が、少し心配ってのもあるけどな」
ずば抜けたメンタルと向上心を持っていると聞いていたため、二人はアラッドの言葉を聞いて思わず首を傾げる。
「何故、シルフィーさんの方が心配なんだい?」
「どうにかしてアッシュと関りを持とうと考えれば、まずシルフィーと関わるのが攻略方法としてはセオリーだろ」
「それはそうだけど…………もしかして、振られた怒りや悲しみの矛先がシルフィーさんに向くと?」
「双子の妹だから、バカみたいな疑いは持たれることはおそらくない。シルフィーにとってはアッシュもいずれ完全に越えたい存在だからな……ただ、失恋に関しての怒り? とかは振った相手か協力してくれた相手とかに向きやすいんじゃないかと思ってな」
そもそもシルフィーはアッシュに興味を持った相手に対し、誰彼構わず協力することはない。
シルフィーもアッシュは錬金術に熱中してこそアッシュだと思っている部分があり、アラッドの様に下手に異性に対して興味を持ってもらおうとは思わない。
ただ……自分の眼でしっかりと見て、この人物になら……とりあえずアッシュに関する情報を教えても構わないと思うことはある。
「……そういえば、そんな逆恨み? かなんかが原因で酒場が崩壊したって事件を聞いたことがあるかも」
「酒場が崩壊って……そこの店主にとっては、完全にとばっちりだな」
ガルーレの聞き間違いではなく、それは本当に起こった事件。
学園が崩壊するなんて事はあり得ないが……狂う、もしくは気持ちが突き抜けたバカは、場所を選ばずやらかす。
「とりあえず、俺としてはアッシュの方も心配だが、相談されてるかもしれないシルフィーの方も心配なんだよ」
「良いお兄ちゃんだね~。けどさ、アラッドの弟と妹なんだから、当然侯爵家の人間じゃん」
「そうだな。因みに二人の母親の方も立派な血統だ」
「だったら尚更、そんな人物にバカな真似をしようなんてなるの? アッシュ君とシルフィーちゃんが悪意を持って何かしたわけじゃないんでしょ。こう……掲げる正義? 正当性みたいなのが皆無じゃん」
ガルーレが何を言いたいのか解かる。
異世界人であるアラッド……英二にとっても、本当に良く解る。
ただ……冒険者という職に就いている以上、よくよく自分の人生を振り返れば、その疑問は直ぐに解ける。
「あれだよ、ガルーレ。これまでの冒険者人生の中で……命を懸けて強敵に挑んだことがあるだろ」
「何度もあるね。もしかしたら死ぬかもって思った戦いもあった」
「それと同じだ」
「……どういう事???」
「戦闘職についていない一般人からすれば、負ける可能性があるなら逃げれば良いじゃん……そう思うはずだ」
「ま、まぁ……それは確かにそうかも」
戦闘や夜の戦闘もそれなりに好きなアマゾネス。
一般常識とはやや離れた位置に存在する種族だが、他種族の常識というのも……ある程度は理解出来る。
「形というか、感情は違う。善悪とかそこら辺も違うだろう。でも、リスクを無視して己の意志を貫き通す。そういった部分は同じだ……俺も、過去に学園内で同級生から襲われたことがある」
「ま、マジ?」
「大マジだ」
「喧嘩を売られたとかじゃなくて」
「文字通り襲われた。そいつはいけないお薬を服用してた。俺との埋まらない差をそれで埋めて、俺という気に入らない異物を殺したかったんだろうな」
その生徒の親の爵位はフールより下であるため、明らかに無謀過ぎる行動。
そんな事はその生徒も解っていた筈だが……それでも止まらなかった。
「っと、そうなると学園長の方にも一応手紙を送っておいた方が良さそうだな」
貴族であってもそう簡単にパロスト学園の学園長に直接手紙を送ることは出来ないが、差出人があのアラッドであれば話は別。
実際に手紙を受け取り、全てを読んだ学園長はアラッドの気にし過ぎ……と一蹴することはなく、似た様な前例があるため真剣にそういった問題が発展しないように対策を講じた。
ただ……対策を講じたからといって、絶対に何も起こらないかどうかは……誰にも解らない。
ただ一方的な手紙ではなく、返事を求める内容。
(アッシュは強い……センス、才能は間違いなくずば抜けてる。ただ……自分の行動でモンスターを生み出してしまうのか……そういうった事に関しては、多分鈍いんだよな)
鈍感系主人公……とはまた違う存在。
恋愛そのものに興味がない。
今のところ、どれだけ異性と関わろうとも友人止まり。
それはアッシュが意識的にそうしてるのではなく、何か……アッシュの心境に変化をもたらす程の人物でなければ、まず自分が関わってる人物はそういう存在なのだと認識すらしない。
「弟君に手紙を送ったの?」
「いや、妹の方に送った」
「もしかして、アッシュ君は手紙とかだと面倒になってあんまり細かく書かない感じ?」
「そんな事はないと思うが……鈍いところがあるからな。正確に聞くなら、妹のシルフィーの方が良い…………そのシルフィーの方が、少し心配ってのもあるけどな」
ずば抜けたメンタルと向上心を持っていると聞いていたため、二人はアラッドの言葉を聞いて思わず首を傾げる。
「何故、シルフィーさんの方が心配なんだい?」
「どうにかしてアッシュと関りを持とうと考えれば、まずシルフィーと関わるのが攻略方法としてはセオリーだろ」
「それはそうだけど…………もしかして、振られた怒りや悲しみの矛先がシルフィーさんに向くと?」
「双子の妹だから、バカみたいな疑いは持たれることはおそらくない。シルフィーにとってはアッシュもいずれ完全に越えたい存在だからな……ただ、失恋に関しての怒り? とかは振った相手か協力してくれた相手とかに向きやすいんじゃないかと思ってな」
そもそもシルフィーはアッシュに興味を持った相手に対し、誰彼構わず協力することはない。
シルフィーもアッシュは錬金術に熱中してこそアッシュだと思っている部分があり、アラッドの様に下手に異性に対して興味を持ってもらおうとは思わない。
ただ……自分の眼でしっかりと見て、この人物になら……とりあえずアッシュに関する情報を教えても構わないと思うことはある。
「……そういえば、そんな逆恨み? かなんかが原因で酒場が崩壊したって事件を聞いたことがあるかも」
「酒場が崩壊って……そこの店主にとっては、完全にとばっちりだな」
ガルーレの聞き間違いではなく、それは本当に起こった事件。
学園が崩壊するなんて事はあり得ないが……狂う、もしくは気持ちが突き抜けたバカは、場所を選ばずやらかす。
「とりあえず、俺としてはアッシュの方も心配だが、相談されてるかもしれないシルフィーの方も心配なんだよ」
「良いお兄ちゃんだね~。けどさ、アラッドの弟と妹なんだから、当然侯爵家の人間じゃん」
「そうだな。因みに二人の母親の方も立派な血統だ」
「だったら尚更、そんな人物にバカな真似をしようなんてなるの? アッシュ君とシルフィーちゃんが悪意を持って何かしたわけじゃないんでしょ。こう……掲げる正義? 正当性みたいなのが皆無じゃん」
ガルーレが何を言いたいのか解かる。
異世界人であるアラッド……英二にとっても、本当に良く解る。
ただ……冒険者という職に就いている以上、よくよく自分の人生を振り返れば、その疑問は直ぐに解ける。
「あれだよ、ガルーレ。これまでの冒険者人生の中で……命を懸けて強敵に挑んだことがあるだろ」
「何度もあるね。もしかしたら死ぬかもって思った戦いもあった」
「それと同じだ」
「……どういう事???」
「戦闘職についていない一般人からすれば、負ける可能性があるなら逃げれば良いじゃん……そう思うはずだ」
「ま、まぁ……それは確かにそうかも」
戦闘や夜の戦闘もそれなりに好きなアマゾネス。
一般常識とはやや離れた位置に存在する種族だが、他種族の常識というのも……ある程度は理解出来る。
「形というか、感情は違う。善悪とかそこら辺も違うだろう。でも、リスクを無視して己の意志を貫き通す。そういった部分は同じだ……俺も、過去に学園内で同級生から襲われたことがある」
「ま、マジ?」
「大マジだ」
「喧嘩を売られたとかじゃなくて」
「文字通り襲われた。そいつはいけないお薬を服用してた。俺との埋まらない差をそれで埋めて、俺という気に入らない異物を殺したかったんだろうな」
その生徒の親の爵位はフールより下であるため、明らかに無謀過ぎる行動。
そんな事はその生徒も解っていた筈だが……それでも止まらなかった。
「っと、そうなると学園長の方にも一応手紙を送っておいた方が良さそうだな」
貴族であってもそう簡単にパロスト学園の学園長に直接手紙を送ることは出来ないが、差出人があのアラッドであれば話は別。
実際に手紙を受け取り、全てを読んだ学園長はアラッドの気にし過ぎ……と一蹴することはなく、似た様な前例があるため真剣にそういった問題が発展しないように対策を講じた。
ただ……対策を講じたからといって、絶対に何も起こらないかどうかは……誰にも解らない。
126
お気に入りに追加
6,129
あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる