624 / 984
六百二十三話 その強さを信用する
しおりを挟む
ジャブ、ストレート、前蹴り、フック、ハイキック、肘鉄、裏拳、膝……あらゆる五体の武器を叩き込んで叩き込んで……互いに分厚く感じる壁を叩き続ける。
(本当にっ、強いねッ!!!!!!)
偶々、自分の意志ではないとはいえ、切り札であるペイズ。サーベルスを発動してしまった。
詫びと言ってはあれだが、魔力は使用していない。
ただ……それは現時点で、アラッドも同じ状態。
身体強化などのスキルは使用しているが、それでもガルーレと同様に魔力は使用していない。
(これなら、素直に武道家を、名乗って良いレベルよ!!!)
アマゾネスは種族的に、ただ野性の本能を生かして戦うのを得意とする種族ではあるが、旅を得て里に戻って来た猛者たちは、それだけでは真の強者に敵わないと知っている。
そんな強者たちに技術も叩きこまれて来たサーベルス。
態度や言動に服装、それらの様子から品とは少々縁遠いかもしれないが、技術という点に関しては侮れない腕を有している。
だが……切り札を使用しても、倒せないレベルに到達している人物が、目の前にいる。
正直、倒せなかったとしても仕方ないという気持ちはある。
それでも同じ条件であれば、せめて彼に切り札を使わせたい。
なんなら、糸という暗殺者寄りの武器? を使ってくれても良いと思っていた。
「どうした! ペースが落ちてきたんじゃないか!?」
「まだまだぁああああ!!!!!」
しかし、アラッドはおそらく自分と同じ種類の笑みを浮かべながら、同じく己の五体に秘めた武器を用いて、己を倒しに来る。
(ッ!! 最高だよ!!!!!!!!)
変わらず好戦的過ぎる笑みを浮かべて攻撃を仕掛けてくるアラッド。
それを再確認したガルーレの思考から……狂化を使わせたいという、余計な雑念が消えた。
ただ……意識が消え、連撃が加速されたからといって、戦況の反転を許す程アラッドは甘くない。
「せやッ!!!!!!!!」
「っ!!??」
渾身の右ストレートが繰り出された瞬間……アラッドは左膝から蹴りが飛んでくるのを警戒しながら半身になり、両腕でガルーレの腕をキャッチ。
そのまま一本背負いの体勢に入る。
(こいつは、マズい!!!!!!)
ただの投げではなく、型が存在する投げ技だと瞬時に悟り、食らえばノックアウトになると本能が理解した。
ガルーレはブリッジの要領で先に地面に足を付き、強烈な衝撃から備えようとした。
「がっ、はっっっ!!!???」
しかし、予定通りのその衝撃から逃れることは出来なかった。
ブリッジのタイミングが遅れて足を付けなかった?
そうではなく、ただアラッドが一歩背負いをしていれば……ガルーレの取った行動は上手くいっていた。
だが、約五分ほど……ガチで打撃戦を行っていたアラッドはガルーレが突然の投げにも対処して来ると、その潜在能力、センスを信用していた。
だからこそ……ただ背負って投げるのではなく、左脚を大きく後ろに引いて……ガルーレが予想していたタイミングよりも早く地面に叩きつけた。
アラッドが腕だけではなく体全体で投げたことで、背中に強烈な衝撃を受けたガルーレ。
「悪いが、これで終わりだ。納得してくれるか?」
背中に強い衝撃を受けたガルーレの肺から空気が強制的に追い出され……時間にして約二秒ほど固まってしまった。
それで意識が途切れなかったガルーレは既に起き上がって入るものの、その二秒の間にアラッドが止めを刺せたのは事実。
「っ…………はぁ~~~~、そうだね。私の負けだよ。負け負け。ったく、本当に噂通りの強さだったね」
「褒めてくれるのは嬉しいが、直ぐに回復した方が良い」
「っ!!?? は、ははは。確かに、そうだね」
試合が終了したのを確認して駆け付けたスティームからポーションを受け取り、一気に飲み干し……怪我は直ぐに回復した。
「たは~~~~、助かったよ」
「どういたしまして」
最初に入った良い一撃……ガルーレの本能がペイズ・サーベルスを発動させてしまった蹴りに加えて、打撃戦の中でアラッドの攻撃をガードした腕や脚にも多くの青痣ができていた。
「アラッド、君もちゃんと飲みなよ」
「あいよ」
だが、それは今回の試合に勝利したアラッドも同じ。
クリーンヒットと呼べる一撃こそ食らっていないが、紙一重……とはならず、切傷となってしまった傷は多く、打撃をガードしていた部分に青痣が生まれており、決して無事、無傷……パーフェクトゲームと言える勝利ではなかった。
「ふぅ~~。予想外の展開ではあったが、本当に楽しめた。ありがとう」
「こっちこそ、無理を聞いてもらって嬉しかったよ。本当にありがとね」
試合が終わり……やっぱり狂化を使わせてみたかったという思いが蘇るも、ガルーレの興味は既に次の人物に移っていた。
「それじゃ、今度は君と戦りたいかな!!」
「へっ……僕ですか?」
「当然じゃない! 君も話題の一人だからね!!」
アラッドと共に行動をするようになった……アルバース王国の人間ではない冒険者。
そんな人物がアラッドと共に行動しているというだけでも話題になるが、彼はしっかりと話題に絡んでいる人物であり、強者を好むガルーレとしては是非とも戦ってみたい戦闘者だった。
(本当にっ、強いねッ!!!!!!)
偶々、自分の意志ではないとはいえ、切り札であるペイズ。サーベルスを発動してしまった。
詫びと言ってはあれだが、魔力は使用していない。
ただ……それは現時点で、アラッドも同じ状態。
身体強化などのスキルは使用しているが、それでもガルーレと同様に魔力は使用していない。
(これなら、素直に武道家を、名乗って良いレベルよ!!!)
アマゾネスは種族的に、ただ野性の本能を生かして戦うのを得意とする種族ではあるが、旅を得て里に戻って来た猛者たちは、それだけでは真の強者に敵わないと知っている。
そんな強者たちに技術も叩きこまれて来たサーベルス。
態度や言動に服装、それらの様子から品とは少々縁遠いかもしれないが、技術という点に関しては侮れない腕を有している。
だが……切り札を使用しても、倒せないレベルに到達している人物が、目の前にいる。
正直、倒せなかったとしても仕方ないという気持ちはある。
それでも同じ条件であれば、せめて彼に切り札を使わせたい。
なんなら、糸という暗殺者寄りの武器? を使ってくれても良いと思っていた。
「どうした! ペースが落ちてきたんじゃないか!?」
「まだまだぁああああ!!!!!」
しかし、アラッドはおそらく自分と同じ種類の笑みを浮かべながら、同じく己の五体に秘めた武器を用いて、己を倒しに来る。
(ッ!! 最高だよ!!!!!!!!)
変わらず好戦的過ぎる笑みを浮かべて攻撃を仕掛けてくるアラッド。
それを再確認したガルーレの思考から……狂化を使わせたいという、余計な雑念が消えた。
ただ……意識が消え、連撃が加速されたからといって、戦況の反転を許す程アラッドは甘くない。
「せやッ!!!!!!!!」
「っ!!??」
渾身の右ストレートが繰り出された瞬間……アラッドは左膝から蹴りが飛んでくるのを警戒しながら半身になり、両腕でガルーレの腕をキャッチ。
そのまま一本背負いの体勢に入る。
(こいつは、マズい!!!!!!)
ただの投げではなく、型が存在する投げ技だと瞬時に悟り、食らえばノックアウトになると本能が理解した。
ガルーレはブリッジの要領で先に地面に足を付き、強烈な衝撃から備えようとした。
「がっ、はっっっ!!!???」
しかし、予定通りのその衝撃から逃れることは出来なかった。
ブリッジのタイミングが遅れて足を付けなかった?
そうではなく、ただアラッドが一歩背負いをしていれば……ガルーレの取った行動は上手くいっていた。
だが、約五分ほど……ガチで打撃戦を行っていたアラッドはガルーレが突然の投げにも対処して来ると、その潜在能力、センスを信用していた。
だからこそ……ただ背負って投げるのではなく、左脚を大きく後ろに引いて……ガルーレが予想していたタイミングよりも早く地面に叩きつけた。
アラッドが腕だけではなく体全体で投げたことで、背中に強烈な衝撃を受けたガルーレ。
「悪いが、これで終わりだ。納得してくれるか?」
背中に強い衝撃を受けたガルーレの肺から空気が強制的に追い出され……時間にして約二秒ほど固まってしまった。
それで意識が途切れなかったガルーレは既に起き上がって入るものの、その二秒の間にアラッドが止めを刺せたのは事実。
「っ…………はぁ~~~~、そうだね。私の負けだよ。負け負け。ったく、本当に噂通りの強さだったね」
「褒めてくれるのは嬉しいが、直ぐに回復した方が良い」
「っ!!?? は、ははは。確かに、そうだね」
試合が終了したのを確認して駆け付けたスティームからポーションを受け取り、一気に飲み干し……怪我は直ぐに回復した。
「たは~~~~、助かったよ」
「どういたしまして」
最初に入った良い一撃……ガルーレの本能がペイズ・サーベルスを発動させてしまった蹴りに加えて、打撃戦の中でアラッドの攻撃をガードした腕や脚にも多くの青痣ができていた。
「アラッド、君もちゃんと飲みなよ」
「あいよ」
だが、それは今回の試合に勝利したアラッドも同じ。
クリーンヒットと呼べる一撃こそ食らっていないが、紙一重……とはならず、切傷となってしまった傷は多く、打撃をガードしていた部分に青痣が生まれており、決して無事、無傷……パーフェクトゲームと言える勝利ではなかった。
「ふぅ~~。予想外の展開ではあったが、本当に楽しめた。ありがとう」
「こっちこそ、無理を聞いてもらって嬉しかったよ。本当にありがとね」
試合が終わり……やっぱり狂化を使わせてみたかったという思いが蘇るも、ガルーレの興味は既に次の人物に移っていた。
「それじゃ、今度は君と戦りたいかな!!」
「へっ……僕ですか?」
「当然じゃない! 君も話題の一人だからね!!」
アラッドと共に行動をするようになった……アルバース王国の人間ではない冒険者。
そんな人物がアラッドと共に行動しているというだけでも話題になるが、彼はしっかりと話題に絡んでいる人物であり、強者を好むガルーレとしては是非とも戦ってみたい戦闘者だった。
129
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる