622 / 1,058
六百二十一話 強くなる環境は負けてない
しおりを挟む
(はぁ~~~~……解ってた。僕はまだまだだって解ってたけど……うん、やっぱり世の中は広いね)
自分より強い人間はごまんといる。
そんな事は実家を……自国を出る前から解っていた。
だが、目の前の戦いを観て更にそれを痛感。
両者ともスキルは使っておらず、魔力も使っていない。
故に強い衝撃を受けるのは早計では? と思うかもしれないが……先程まで同じ条件で戦っていたからこそ、素の身体能力や体術では敵わないと悟ることが出来る。
「ハッ!!!!」
「っと、ふんッ!!!!」
全体的に見れば……身体能力はアラッドの方が勝っている。
しかし、体術の技術だけを見ると、ややアラッドよりもガルーレの方が勝っていた。
(こいつは、驚いたな。剣技の次に体技が得意だと、思ってたんだが……このアマゾネスの女性、体技なら、俺よりも上か)
自分を強くすることにハマり、特訓バカと言えるほど特訓……実戦を繰り返してきたアラッド。
それ故に……どの武器の扱いも基本的に平均以上に達してはいるが、当然……センス、才がある者がアラッド以上に体技を磨き続けていれば、ある程度差に現れる。
「んっ!!!???」
「ふっ!!!!」
「がっ!!!!」
とはいえ、アラッドもアラッドで色々と考えながら特訓を積んできた。
アマゾネスは女性だけの戦闘民族。
体技だけではなく、あらゆる武器の使い手がおり……大抵が好戦的な性格をしている。
その好戦的な性格ゆえか……相手の攻撃を受け流すという技術は身に付けても、相手の力を利用して体勢を崩す、もしくはそのまま投げるといった発想に至らない。
アラッドはガルーレの右ストレートの威力を利用し、体勢を崩した直後に右足の蹴りを叩き込んだ。
「っと。はぁ~~~、あぶねぇあぶねぇ。なんだい、今の技は?」
しかし、寸でのところで左腕でガードすることに成功し、まだまだ戦闘は続行出来る。
「今戦ってる相手にわざわざ説明すると思うか?」
「はは! それもそうだね」
「まぁ……あれだ。ガルーレが感じたままの技だ」
アラッドは気分が良かったのか、わざわざヒントを与えた。
(まだスキルや魔力は使ってない……それでも、ここまで体技で戦える相手は、ガルシア以来か?)
己の体だけでの戦闘は、武器を使って戦う戦闘とはまた違う楽しさがある。
そんなもん、全く楽しくねぇよ!!! と断言する者もいるだろうが、アラッドはそれを楽しいと捉えられるタイプ。
「それじゃあ、続きをやろうか」
「良いねぇ……噂通り、熱いじゃん!!!!!」
一度アラッド戦ったことがある友人、エイリンからはどちらかと言えば戦闘が好きな性格の中でも、クールで冷静なタイプと聞いていた。
しかし、こうして実際に会って拳を交え、会話をしてみると……確かに冷静な部分もあるが、奥底には確かな灼熱を持つ強者だった。
「ぜぇええええああああああああああっ!!!!!!」
「ぅおおおおらああああああああああっ!!!!!!」
互いに縛りを設けているからか、やはりアラッドはガルーレの攻撃を全て見切り、回避することは出来ず、四割ほどはガードしなければ対応できない。
それは同じく縛りありの状態で戦っているガルーレも同じであり、アラッド以上に足や腕で打撃を防御している。
(制限ありとはいえ、同じ素手でここまで昂れる相手と戦えるなんて……しかも歳下!!!! 俄然、燃えるわ!!!!!!)
幼い頃から戦って戦う。とにかく戦う。
他の道に進む者もいるにはいるが、それでも同世代の中でも頭一つ抜けていたガルーレは、当然戦う道を選んだ。
更に強くなる為に里を離れ、見聞を広める為に冒険者となった。
里を出た時には既に色々と成熟していたため、屑から襲われることもあったが、それはそれで遠慮なく拳を振るって相手を潰せる絶好のチャンス。
偶に手強い屑もいるが……アマゾネスという里で生まると、貴族と同等の戦闘環境に恵まれる。
ガルーレと同じく世界を渡り歩いてから故郷に戻って来たアマゾネスともいるため、自分よりも強い相手との戦いという機会には困らない。
それでも数年間、旅と戦闘を続け……同じ同性代の冒険者の中では、頭三つか四つ程抜き出るほどまで強くなった。
偶に歳が近い者たちと手合わせもするが、同じ素手同士の戦いでは苦戦こそするが、ここ最近は負けなし。
だが……今、どう考えても自分の方が押されている。
魔力やスキルを使えば自分の方が上?
それらを使わず、同じ条件で戦っているのはアラッドも同じであり、そんなことは言い訳にもならない。
そもそも、そんな言い訳が頭に浮かぶことはない。
今ガルーレの頭の中は……歓喜一色。
狙っていたソルヴァイパーというBランクのモンスターと戦えなかったのは残念ではあるが、それでも今冒険者界隈で熱いスーパールーキーとこうして戦えている。
わざわざここまで来た甲斐があった断言出来る。
「シッ!!!!!!」
「ごばっ!!!???」
そう……これだけ、歳が近い者と戦えるのに……これで終わるなんて、非常に勿体ない。
そう思った瞬間、ガルーレの本能が動いてしまった。
自分より強い人間はごまんといる。
そんな事は実家を……自国を出る前から解っていた。
だが、目の前の戦いを観て更にそれを痛感。
両者ともスキルは使っておらず、魔力も使っていない。
故に強い衝撃を受けるのは早計では? と思うかもしれないが……先程まで同じ条件で戦っていたからこそ、素の身体能力や体術では敵わないと悟ることが出来る。
「ハッ!!!!」
「っと、ふんッ!!!!」
全体的に見れば……身体能力はアラッドの方が勝っている。
しかし、体術の技術だけを見ると、ややアラッドよりもガルーレの方が勝っていた。
(こいつは、驚いたな。剣技の次に体技が得意だと、思ってたんだが……このアマゾネスの女性、体技なら、俺よりも上か)
自分を強くすることにハマり、特訓バカと言えるほど特訓……実戦を繰り返してきたアラッド。
それ故に……どの武器の扱いも基本的に平均以上に達してはいるが、当然……センス、才がある者がアラッド以上に体技を磨き続けていれば、ある程度差に現れる。
「んっ!!!???」
「ふっ!!!!」
「がっ!!!!」
とはいえ、アラッドもアラッドで色々と考えながら特訓を積んできた。
アマゾネスは女性だけの戦闘民族。
体技だけではなく、あらゆる武器の使い手がおり……大抵が好戦的な性格をしている。
その好戦的な性格ゆえか……相手の攻撃を受け流すという技術は身に付けても、相手の力を利用して体勢を崩す、もしくはそのまま投げるといった発想に至らない。
アラッドはガルーレの右ストレートの威力を利用し、体勢を崩した直後に右足の蹴りを叩き込んだ。
「っと。はぁ~~~、あぶねぇあぶねぇ。なんだい、今の技は?」
しかし、寸でのところで左腕でガードすることに成功し、まだまだ戦闘は続行出来る。
「今戦ってる相手にわざわざ説明すると思うか?」
「はは! それもそうだね」
「まぁ……あれだ。ガルーレが感じたままの技だ」
アラッドは気分が良かったのか、わざわざヒントを与えた。
(まだスキルや魔力は使ってない……それでも、ここまで体技で戦える相手は、ガルシア以来か?)
己の体だけでの戦闘は、武器を使って戦う戦闘とはまた違う楽しさがある。
そんなもん、全く楽しくねぇよ!!! と断言する者もいるだろうが、アラッドはそれを楽しいと捉えられるタイプ。
「それじゃあ、続きをやろうか」
「良いねぇ……噂通り、熱いじゃん!!!!!」
一度アラッド戦ったことがある友人、エイリンからはどちらかと言えば戦闘が好きな性格の中でも、クールで冷静なタイプと聞いていた。
しかし、こうして実際に会って拳を交え、会話をしてみると……確かに冷静な部分もあるが、奥底には確かな灼熱を持つ強者だった。
「ぜぇええええああああああああああっ!!!!!!」
「ぅおおおおらああああああああああっ!!!!!!」
互いに縛りを設けているからか、やはりアラッドはガルーレの攻撃を全て見切り、回避することは出来ず、四割ほどはガードしなければ対応できない。
それは同じく縛りありの状態で戦っているガルーレも同じであり、アラッド以上に足や腕で打撃を防御している。
(制限ありとはいえ、同じ素手でここまで昂れる相手と戦えるなんて……しかも歳下!!!! 俄然、燃えるわ!!!!!!)
幼い頃から戦って戦う。とにかく戦う。
他の道に進む者もいるにはいるが、それでも同世代の中でも頭一つ抜けていたガルーレは、当然戦う道を選んだ。
更に強くなる為に里を離れ、見聞を広める為に冒険者となった。
里を出た時には既に色々と成熟していたため、屑から襲われることもあったが、それはそれで遠慮なく拳を振るって相手を潰せる絶好のチャンス。
偶に手強い屑もいるが……アマゾネスという里で生まると、貴族と同等の戦闘環境に恵まれる。
ガルーレと同じく世界を渡り歩いてから故郷に戻って来たアマゾネスともいるため、自分よりも強い相手との戦いという機会には困らない。
それでも数年間、旅と戦闘を続け……同じ同性代の冒険者の中では、頭三つか四つ程抜き出るほどまで強くなった。
偶に歳が近い者たちと手合わせもするが、同じ素手同士の戦いでは苦戦こそするが、ここ最近は負けなし。
だが……今、どう考えても自分の方が押されている。
魔力やスキルを使えば自分の方が上?
それらを使わず、同じ条件で戦っているのはアラッドも同じであり、そんなことは言い訳にもならない。
そもそも、そんな言い訳が頭に浮かぶことはない。
今ガルーレの頭の中は……歓喜一色。
狙っていたソルヴァイパーというBランクのモンスターと戦えなかったのは残念ではあるが、それでも今冒険者界隈で熱いスーパールーキーとこうして戦えている。
わざわざここまで来た甲斐があった断言出来る。
「シッ!!!!!!」
「ごばっ!!!???」
そう……これだけ、歳が近い者と戦えるのに……これで終わるなんて、非常に勿体ない。
そう思った瞬間、ガルーレの本能が動いてしまった。
161
お気に入りに追加
6,126
あなたにおすすめの小説


追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!
クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』
自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。
最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる