615 / 985
六百十四話 望んでいたシチュエーション
しおりを挟む
スティームとファル対ソルヴァイパーの戦闘が始まってから既に五分以上が経過。
今のところ……開幕当初から変わらず、スティームとファルのタッグが攻め続けている。
形としては攻めている側が優勢に思えるが、スタミナという点に関して、スティームはファルやソルヴァイパーに劣る。
ただ……今回に限っては延々と防御に時間を費やしているソルヴァイパーの精神面がガリガリと削られていた。
これまで戦ってきたどの人間との戦いよりも……先程まで争っていたディーマンバとの戦いよりも、神経が削れる厳しい戦闘と断言出来る。
加えて、ただ敵の猛攻が絶えず苦しいだけではなく、もう一人と一体が自分を逃さないように構えている。
おそらく……現在己が戦っている敵よりも強い一人と一体。
まさに絶望的と言える状況ではあるが……臆病で逃走癖があるソルヴァイパーであっても、己の命を放り出そうとは思わず、まだ……まだ、スティームとソルヴァイパーの攻撃に耐え続ける。
だが、どれだけ耐え続けても、反撃の糸口……もしくは逃げる隙が生まれない。
ほぼ全力で動き続けていることを考えれば、そろそろスティームのスピードが落ちてきてもおかしくないのだが……今のスティームはランナーズハイの状態に近く、疲れを感じることなく双剣を振るい、戦場を駆け続ける。
未だソルヴァイパーの防御力は堅牢と呼べる状態だが……それでも徐々に切傷が増えてきた。
「ハァアアアアア゛ア゛ア゛!!!!!」
今がチャンスだと思い、更に加速。
このまま肺がどうなろうと構うものかと、これまでの戦闘で与えた切傷に向けて更に斬撃を刻む。
「ッ!!!???」
同じく動き続けているソルヴァイパーだが、こちらは自身の体力や魔力の減り具合を常に気にしており、正直なところ……速攻で逃げだしたい。
今はもう、これまで通り動き続けてきた反復によってなんとか攻撃を捌けてるだけの状態。
(殺れる……まだソルヴァイパーはそれなりの魔力を有してるが、それでも視たところ…………ここから逆転出来る手はないはず)
これまでの経験によって行われる防御技術は相変わらず厄介なことに変わりはないが、スティームにはまだ見せていない奥の手がある。
アラッドはこの時点で、友の勝利を確信した。
(うん…………これ、以上は、もう無意味な、やり取りだね)
全能感を体験しながら双剣を振るうも、これまでの戦闘で培ってきた堅牢な防御は少しずつしか攻略出来ない。
結局は魔力切れを狙う形で勝負が終わる……そんなイメージが思い浮かぶも、それはスティームが望む決着ではなかった。
「ファル!!!」
「ッ! キィエエエエエエエッ!!!!!」
主人の糸を読み取ったファルは両翼から放たれる羽の弾幕と風のブレスを同時に発射。
後に下がるか、それとも前に出て躱すか……どちらにしろ、次の行動は限定される。
そして一部だけ羽が地面に刺さらない道が生まれ、次の瞬間……赫い線が通った。
(殺ったな)
アラッドはもう完全に決まったと思った。
全身に赤雷を纏って強化し、双剣にも赤雷を纏って切れ味を超強化。
その状態では、どれだけ堅いソルヴァイパーの防御技術も意味をなさい。
大きく切り裂かれて絶命。
絶命に至らずとも、大量の血を流す致命傷となり、あと一撃与えるだけで勝負は決まる……筈だった。
(ッ……この感じ、まさか)
そのまさかが起こり得た。
アラッドがトロールにクロを殺された時と似ているのか……自らの死を明確に感じ取ったソルヴァイパーは、ここにきて自身の本当の才能を開花させ……白雷を会得し、赤雷を纏ったスティームの斬撃に耐えた。
「おいおいおい……ここにきて、会得したのか」
ここにくるまで、隠し通してきた可能性も捨てきれないが、若干自身の状態に違和感を感じてるであろう素振りをするソルヴァイパーを見ると、今ここで会得したとしか思えない。
普通に考えれば……危機的状況であるのは間違いない。
アラッドとクロという戦力が後ろにいるとはいえ、白雷という力を得たことは……単なるパワーアップとは言えない。
まだ魔力量がギリギリではないことを考えれば、赤雷を利用した攻撃を全て対処されてもおかしくない。
だが……この状況こそ、スティームが望んでいた状態。
(全く…………良い顔するじゃないか、スティーム)
自身が望んでいたシチュエーションとなり、本当の勝負が今……ようやく始まる。
やや疲れは感じるも、まだまだ体は動く。
魔力もまだ赤雷を使用しながら動いても問題にはならない。
従魔であるファルも主人と同じく、堅牢な強敵がパワーアップしたことに対して一切臆することは無く、寧ろ歓喜していた。
今のソルヴァイパーなら……うっかり心臓を潰してしまう可能性を考慮しなくても構わない。
そう思わせるだけの圧が増した。
(いやぁ~~~、本当にここは良い特等席、だ…………はっ?)
「えっ?」
ほぼ同じタイミングで戸惑った二人。
何故なら……つい先程超絶パワーアップしたソルヴァイパーが……地面を掘って地中に潜り……そのまま全く関係がない方向へ向かってしまった。
今のところ……開幕当初から変わらず、スティームとファルのタッグが攻め続けている。
形としては攻めている側が優勢に思えるが、スタミナという点に関して、スティームはファルやソルヴァイパーに劣る。
ただ……今回に限っては延々と防御に時間を費やしているソルヴァイパーの精神面がガリガリと削られていた。
これまで戦ってきたどの人間との戦いよりも……先程まで争っていたディーマンバとの戦いよりも、神経が削れる厳しい戦闘と断言出来る。
加えて、ただ敵の猛攻が絶えず苦しいだけではなく、もう一人と一体が自分を逃さないように構えている。
おそらく……現在己が戦っている敵よりも強い一人と一体。
まさに絶望的と言える状況ではあるが……臆病で逃走癖があるソルヴァイパーであっても、己の命を放り出そうとは思わず、まだ……まだ、スティームとソルヴァイパーの攻撃に耐え続ける。
だが、どれだけ耐え続けても、反撃の糸口……もしくは逃げる隙が生まれない。
ほぼ全力で動き続けていることを考えれば、そろそろスティームのスピードが落ちてきてもおかしくないのだが……今のスティームはランナーズハイの状態に近く、疲れを感じることなく双剣を振るい、戦場を駆け続ける。
未だソルヴァイパーの防御力は堅牢と呼べる状態だが……それでも徐々に切傷が増えてきた。
「ハァアアアアア゛ア゛ア゛!!!!!」
今がチャンスだと思い、更に加速。
このまま肺がどうなろうと構うものかと、これまでの戦闘で与えた切傷に向けて更に斬撃を刻む。
「ッ!!!???」
同じく動き続けているソルヴァイパーだが、こちらは自身の体力や魔力の減り具合を常に気にしており、正直なところ……速攻で逃げだしたい。
今はもう、これまで通り動き続けてきた反復によってなんとか攻撃を捌けてるだけの状態。
(殺れる……まだソルヴァイパーはそれなりの魔力を有してるが、それでも視たところ…………ここから逆転出来る手はないはず)
これまでの経験によって行われる防御技術は相変わらず厄介なことに変わりはないが、スティームにはまだ見せていない奥の手がある。
アラッドはこの時点で、友の勝利を確信した。
(うん…………これ、以上は、もう無意味な、やり取りだね)
全能感を体験しながら双剣を振るうも、これまでの戦闘で培ってきた堅牢な防御は少しずつしか攻略出来ない。
結局は魔力切れを狙う形で勝負が終わる……そんなイメージが思い浮かぶも、それはスティームが望む決着ではなかった。
「ファル!!!」
「ッ! キィエエエエエエエッ!!!!!」
主人の糸を読み取ったファルは両翼から放たれる羽の弾幕と風のブレスを同時に発射。
後に下がるか、それとも前に出て躱すか……どちらにしろ、次の行動は限定される。
そして一部だけ羽が地面に刺さらない道が生まれ、次の瞬間……赫い線が通った。
(殺ったな)
アラッドはもう完全に決まったと思った。
全身に赤雷を纏って強化し、双剣にも赤雷を纏って切れ味を超強化。
その状態では、どれだけ堅いソルヴァイパーの防御技術も意味をなさい。
大きく切り裂かれて絶命。
絶命に至らずとも、大量の血を流す致命傷となり、あと一撃与えるだけで勝負は決まる……筈だった。
(ッ……この感じ、まさか)
そのまさかが起こり得た。
アラッドがトロールにクロを殺された時と似ているのか……自らの死を明確に感じ取ったソルヴァイパーは、ここにきて自身の本当の才能を開花させ……白雷を会得し、赤雷を纏ったスティームの斬撃に耐えた。
「おいおいおい……ここにきて、会得したのか」
ここにくるまで、隠し通してきた可能性も捨てきれないが、若干自身の状態に違和感を感じてるであろう素振りをするソルヴァイパーを見ると、今ここで会得したとしか思えない。
普通に考えれば……危機的状況であるのは間違いない。
アラッドとクロという戦力が後ろにいるとはいえ、白雷という力を得たことは……単なるパワーアップとは言えない。
まだ魔力量がギリギリではないことを考えれば、赤雷を利用した攻撃を全て対処されてもおかしくない。
だが……この状況こそ、スティームが望んでいた状態。
(全く…………良い顔するじゃないか、スティーム)
自身が望んでいたシチュエーションとなり、本当の勝負が今……ようやく始まる。
やや疲れは感じるも、まだまだ体は動く。
魔力もまだ赤雷を使用しながら動いても問題にはならない。
従魔であるファルも主人と同じく、堅牢な強敵がパワーアップしたことに対して一切臆することは無く、寧ろ歓喜していた。
今のソルヴァイパーなら……うっかり心臓を潰してしまう可能性を考慮しなくても構わない。
そう思わせるだけの圧が増した。
(いやぁ~~~、本当にここは良い特等席、だ…………はっ?)
「えっ?」
ほぼ同じタイミングで戸惑った二人。
何故なら……つい先程超絶パワーアップしたソルヴァイパーが……地面を掘って地中に潜り……そのまま全く関係がない方向へ向かってしまった。
112
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる