スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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五百九十話 安心感

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(なんだ、これ…………なるほど、とはならないんだが)

何故自身の後ろに並んでいた人たちの気配が割けていったのか……半分納得し、半分は変な状況にしないでくれとツッコミたくなった。

「あれって、水蓮のメンバーだよな」

「だな……最後の調整を終えたって感じか?」

「結構若い連中が多いけど、俺らより全然強いんだよな……まっ、あの火竜を二体とも倒してくれるってんなら、そりゃありがてぇけどよ」

彼等に向けられる視線は……おおよそアラッドたちと同じ。
若いのに強い。そんな彼らに嫉妬の目が向けられるのは、もはや常識。

だが、彼らの中には頼りになりそうなベテランの冒険者も何人かいる。
そういった組み合わせもあってか、二体の火竜を本当に倒してくれそうだという安心感もあった。

(タイミングが悪い、そう割り切るしかないか)

仕方ない……といった思いを顔に出さないようにグッと堪え、極力無視し……彼らの進路方向と被らないように避けてギルドの外へ向かう。

「「「「「…………」」」」」

幾人かのメンバーが二人に視線を向けるも、いきなり声を掛けてくるようなことはなく、何かを期待していた者たちは隠さずため息を吐いた。

「あれが水蓮のメンバーか……」

「アラッド的には、どう思う?」

「火竜に勝てるか否かか?」

「勿論」

パッと見ただけなので、詳しい部分までは当然解らない。

だが、おおよその実力は解らなくもない。

「…………状況は、雷獣の時と似そうだな」

「ふ~~~~ん? 僕は……割といけるんじゃないかなって思ったな」

雷獣と火竜はかなり戦闘スタイルが異なる。

しかし、今回は火竜というBランクが二体……総合的な戦闘力に限れば、クソイケメン優男先輩たちが戦った雷獣よりも確実に上である。

そんな事はスティームも解っているが、クソイケメン優男先輩たちとの時とは違い、明らかに連携度に差がある。

「つまり、どう足掻いても俺たちの出番はないと」

「むっ……個人的には欲しいけど、多少自分たちより強い敵が相手でも、それを何とかしてしまう安定感? があるんだよね」

スティームも戦えるなら、自分が火竜と戦いたい。

だが、彼らからはどっしりとした強さを感じさせられた。

「それに、火竜が相手と解って派遣されたメンバーなら、絶対に火竜対策が出来てるよね」

「まぁ、そうだろうな。逆にしてなかったらある意味びっくりなんだが……」

アラッドも大体スティームと同じく、寄せ集めのメンバーでは出せない大木の様な安定感を感じさせられた。

だが……そういった安定感よりも気になった人物がいた。

(あの先頭を歩いていた女性冒険者は……明らかに水系の攻撃を使う雰囲気じゃなかったよな?)

雰囲気だけで決めつけるのは良くない。
そんな事は重々承知している。

しかし、そう思ったのは単純な雰囲気や見た目からのの推測ではない。

「いや、結局俺たちの出番がないであろうことは間違いなさそうだな」

「やっぱりそうだよねぇ~~~」

「どうせなら、水蓮のメンバーが火竜の討伐を終えた後に、模擬戦してもらえませんかって声を掛けてみるか?」

火竜とは戦えなかった。

ただ、二人としては火竜を倒せる人物には興味がある。
主力となった人物と戦えるのであれば、発散できなかった戦闘欲も解消される。

「……なしではない、かな。僕も火竜を倒せる彼らの実力は気になる。でもさ……多分、それは良くない選択肢だと思う」

「関係の悪化に繋がるからか?」

「残念なことにね。僕は……全員に勝てるかは解らない。でもさ……多分、アラッドは全員に勝てるでしょ」

仮に……本当に水蓮のメンバーと模擬戦を行うとなった際、スティームは赤雷を使うつもりはない。
アラッドも……よほどの決闘でもない限り、狂化を使うつもりはない。

二人とも切り札を易々と使はない。
そうなった場合、スティームはまだ……一流にはギリ及ばない。
故に、模擬戦という形であれば、勝てない面子もいる。

しかし、アラッドは素の身体能力でも既に一流の域に達している。
おそらくレベルだけならアラッドよりも上の者はいるが、中身は負けている。

「……多分、勝てるだろうな」

「渦雷や迅罰も使わなくてもいけるでしょ」

「互いに一般的な武器を使用して戦うというルールなら……多分、負けないとは思う」

「二体の火竜には勝った。でも、同時期にウグリールに訪れていた冒険者に模擬戦とはいえ、完敗。派遣されていたメンバーの全員が勝てなかった……それ、同業者たちが耳にしたらどう思う?」

「試合に勝って勝負に負けた、ってのはちょっと違うな。まぁ……とりあえず、笑うだろうな」

冒険者はゲスい話題が好きな者が多い。

寧ろ、そういう話を嫌いな者の方が少ない。

「でしょ。そうなれば後はもう解るよね」

「解ってしまうな………………大人しく、情報を集めるしかないってことだな」

気になる人物はいた。
火竜の討伐後、彼らに試合を申し込んでみるというのは半分冗談だったが、確かに気になる人物がいた。

(多分……あの女性冒険者が、キーマンなんだろうな)
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