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五百六十五話 なんでも食べる
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「っと、こりゃ…………多分、バイキングタイガーだな」
探索を始めて昼過ぎ、二人の前に以前スティームが一人で討伐したホワイトタイガーよりも一回り大きく、鋭い牙が特徴的なバイキングタイガーが現れた。
「ガァアアアアッ!!!!」
「……食われたら、一巻の終わりだな」
バイキングタイガーはホワイトタイガーと同じくBランクのモンスターだが、戦力はバイキングタイガーが完全に勝っている。
(噛みつきも恐ろしいが、そもそもの身体能力も恐ろしい……こいつも、木竜がいなくなったから暴れてるのか?)
Bランクの中でも最上位に位置する戦闘力を持つ暴食虎。
その咬合力から繰り出される噛みつきはAランククラスの攻撃力に匹敵する。
「ねぇ、アラッド。こいつとは、僕たちが戦っても、良いかな」
「ん~~~~……解った。でも、次は俺だからな」
「うん、解った。いくよ、ファル!!!」
「キィエエエエエッ!!!!」
次、強敵と遭遇した場合は自分が相手をすることを条件に、バイキングタイガーとの戦闘をスティームとファルに譲った。
(俺たちが、か……頭は冷静みたいだし、そこまで心配する必要はないか)
バイキングタイガーは途轍もない偏食家であり、地面であろうが木であろうが……鉄であってもバキバキにかみ砕き、消化してしまう。
優れたタンクであっても、受け方を間違えれば自慢の盾をガブっと食われてしまう。
そして……厄介な能力があり、それは自身が取り込んだ何かの効果を自身の体に表すことが出来る。
(さて、こいつは何を取り込んでるのか……)
バイキングタイガーは戦闘を始めて一分弱、スティームとファルを強敵だと認め、爪や牙に風を纏い始めた。
「っ!! ぴったりな、能力だね!!!!」
鋭い牙と強い顎だけが武器ではなく、ネコ科の獣らしく四肢から生える爪も十分過ぎる脅威。
同じCランクの冒険者であっても、スティームでなければ今頃あっさりと食べられてしまっているだろう。
加えて、スティームでも赤雷を纏っていない状態であれば、防戦一方になっていてもおかしくない。
(できれば、赤雷は、使いたくないんだけど、どうしようか、な!!!)
赤雷、加えて万雷を使わずに勝ちたい。
自身を成長させるには切り札を使わずに切り抜けるべき……という考えは、確かに間違っていない。
赤雷という特殊な雷と、万雷という超特別な武器。
どちらもスティームの武器なので実戦という状況を考えれば卑怯もクソもないのだが、この戦意を経て成長出来るかは微妙なところ。
(ん~~~……やっぱり、こっちかな)
腹が決まったスティームは相棒であるファルに視線を送る。
「っ……キィィイイエエエエエアアアアアアアアッ!!!!!!」
主人の意図を汲み取ったファルは上空からフェザーラッシュに加え、ウィンドランスを連続で発射。
そして最後は広範囲の風のブレスを放った。
バイキングタイガーはその気になれば魔法すら食べられ、風を纏う事が出来るバイキングタイガーにとっては、寧ろ好物と言えるかもしれないが……前進に風を纏えていない以上、魔力を纏ったフェザーラッシュは無視出来ない。
加えて、風のブレスなどは一部だけ食べれば解決する攻撃ではなく、それらの連撃で少なからずダメージを受けた。
「ありがとう、ファル」
飛ばす羽全てに魔力を纏い、最後のブレスも相まって大きく魔力を消費したファル。
「ッ!!!! ガルルゥアアアアア゛ア゛ア゛!!!!!」
「疾ッ!!!!!!!」
依然としてストームファルコンも厄介な対象ではある。
しかし、知らない何かを纏った人間の危険度がバイキングタイガーの中で跳ね上がり、全てを無視して片方の人間だけに意識を集中させた。
(あそこまでファルが意識を集中させても尚、即座にスティームだけに意識を全集中させられるのは……流石野性の、獣の勘ってところか。まぁ……それでも、ワンテンポ遅かったがな)
バイキングタイガーが意識をスティームだけに向けた時には、既に片足が半分ほど斬り裂かれていた。
「っ!? ッ、アアアアアアアアッ!!!!!」
激痛を堪えながらも牙を……爪を動かすが、五秒後には完全に動けない状況にまで追い込まれ……最後は脳天に刃を突き刺され、絶命。
「ふぅ~~~~……及第点、かな」
「お疲れ様。戦況が悪い方向に傾くことはなかったんだし、及第点と言うほど低くはないんじゃないか?」
「僕としては、ファルと一緒に戦うということもあって、赤雷と万雷を使わずに勝ちたかったんだよ。でも、やっぱりまだ足りなかったね」
少し離れた場所から観ていたアラッドからすれば、切傷はそれなりに多いが、それでも致命傷といえる攻撃を食らうことなく戦況を進め、声に出すことなく考えを共有し、チャンスを逃すことなく仕留めた……それらの内容を考えると、やはり及第点とは思えない。
それ以上の戦績だと断言するアラッドだが……スティームの目指す目標は、変わらずアラッドの隣に立つに相応しい冒険者になること。
その目標に到達するには、この程度の結果で満足していられなかった。
探索を始めて昼過ぎ、二人の前に以前スティームが一人で討伐したホワイトタイガーよりも一回り大きく、鋭い牙が特徴的なバイキングタイガーが現れた。
「ガァアアアアッ!!!!」
「……食われたら、一巻の終わりだな」
バイキングタイガーはホワイトタイガーと同じくBランクのモンスターだが、戦力はバイキングタイガーが完全に勝っている。
(噛みつきも恐ろしいが、そもそもの身体能力も恐ろしい……こいつも、木竜がいなくなったから暴れてるのか?)
Bランクの中でも最上位に位置する戦闘力を持つ暴食虎。
その咬合力から繰り出される噛みつきはAランククラスの攻撃力に匹敵する。
「ねぇ、アラッド。こいつとは、僕たちが戦っても、良いかな」
「ん~~~~……解った。でも、次は俺だからな」
「うん、解った。いくよ、ファル!!!」
「キィエエエエエッ!!!!」
次、強敵と遭遇した場合は自分が相手をすることを条件に、バイキングタイガーとの戦闘をスティームとファルに譲った。
(俺たちが、か……頭は冷静みたいだし、そこまで心配する必要はないか)
バイキングタイガーは途轍もない偏食家であり、地面であろうが木であろうが……鉄であってもバキバキにかみ砕き、消化してしまう。
優れたタンクであっても、受け方を間違えれば自慢の盾をガブっと食われてしまう。
そして……厄介な能力があり、それは自身が取り込んだ何かの効果を自身の体に表すことが出来る。
(さて、こいつは何を取り込んでるのか……)
バイキングタイガーは戦闘を始めて一分弱、スティームとファルを強敵だと認め、爪や牙に風を纏い始めた。
「っ!! ぴったりな、能力だね!!!!」
鋭い牙と強い顎だけが武器ではなく、ネコ科の獣らしく四肢から生える爪も十分過ぎる脅威。
同じCランクの冒険者であっても、スティームでなければ今頃あっさりと食べられてしまっているだろう。
加えて、スティームでも赤雷を纏っていない状態であれば、防戦一方になっていてもおかしくない。
(できれば、赤雷は、使いたくないんだけど、どうしようか、な!!!)
赤雷、加えて万雷を使わずに勝ちたい。
自身を成長させるには切り札を使わずに切り抜けるべき……という考えは、確かに間違っていない。
赤雷という特殊な雷と、万雷という超特別な武器。
どちらもスティームの武器なので実戦という状況を考えれば卑怯もクソもないのだが、この戦意を経て成長出来るかは微妙なところ。
(ん~~~……やっぱり、こっちかな)
腹が決まったスティームは相棒であるファルに視線を送る。
「っ……キィィイイエエエエエアアアアアアアアッ!!!!!!」
主人の意図を汲み取ったファルは上空からフェザーラッシュに加え、ウィンドランスを連続で発射。
そして最後は広範囲の風のブレスを放った。
バイキングタイガーはその気になれば魔法すら食べられ、風を纏う事が出来るバイキングタイガーにとっては、寧ろ好物と言えるかもしれないが……前進に風を纏えていない以上、魔力を纏ったフェザーラッシュは無視出来ない。
加えて、風のブレスなどは一部だけ食べれば解決する攻撃ではなく、それらの連撃で少なからずダメージを受けた。
「ありがとう、ファル」
飛ばす羽全てに魔力を纏い、最後のブレスも相まって大きく魔力を消費したファル。
「ッ!!!! ガルルゥアアアアア゛ア゛ア゛!!!!!」
「疾ッ!!!!!!!」
依然としてストームファルコンも厄介な対象ではある。
しかし、知らない何かを纏った人間の危険度がバイキングタイガーの中で跳ね上がり、全てを無視して片方の人間だけに意識を集中させた。
(あそこまでファルが意識を集中させても尚、即座にスティームだけに意識を全集中させられるのは……流石野性の、獣の勘ってところか。まぁ……それでも、ワンテンポ遅かったがな)
バイキングタイガーが意識をスティームだけに向けた時には、既に片足が半分ほど斬り裂かれていた。
「っ!? ッ、アアアアアアアアッ!!!!!」
激痛を堪えながらも牙を……爪を動かすが、五秒後には完全に動けない状況にまで追い込まれ……最後は脳天に刃を突き刺され、絶命。
「ふぅ~~~~……及第点、かな」
「お疲れ様。戦況が悪い方向に傾くことはなかったんだし、及第点と言うほど低くはないんじゃないか?」
「僕としては、ファルと一緒に戦うということもあって、赤雷と万雷を使わずに勝ちたかったんだよ。でも、やっぱりまだ足りなかったね」
少し離れた場所から観ていたアラッドからすれば、切傷はそれなりに多いが、それでも致命傷といえる攻撃を食らうことなく戦況を進め、声に出すことなく考えを共有し、チャンスを逃すことなく仕留めた……それらの内容を考えると、やはり及第点とは思えない。
それ以上の戦績だと断言するアラッドだが……スティームの目指す目標は、変わらずアラッドの隣に立つに相応しい冒険者になること。
その目標に到達するには、この程度の結果で満足していられなかった。
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