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五百五十六話 悩まないのが俺ら
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「ところで、一応クランマスターとして聞いておかないと駄目なんだけど、二人ともうちのクランに所属する気はあるかい?」
「すいません、ありません」
「嬉しい誘いですが、申し訳ありません」
食事中、ふと思い出したかのように伝えられた勧誘。
Aランクの冒険者に直接勧誘されるということはとても名誉な事であり、アルティーバで活動している冒険者であれば、大半は断れない。
それは勿論脅しが効いているからという理由ではなく、ハリスというクランマスターに……冒険者に強い憧れを持っているからである。
「ふふ、やっぱりそうだよね。君たちでなければ、少しは悩んでくれてもいいのにと思うけど……寧ろ、君たちの場合はその回答が自然だね」
勿論、ハリスとしては自身のクラン、緑焔に二人が加入してくれたら心底嬉しい。
だが……二人が誰かの下に付くタイプには到底思えず、仮に……本当に緑焔に加入したとしても、まず既に加入しているメンバーとの衝突が容易に想像出来てしまう。
「でも、二人はこれから何度も勧誘を受けると思うよ」
「……多分ですけど、騎士団からは勧誘されないと思います。以前、学園のトーナメントで優勝した際に誘いを受けましたが、その時に断っているので」
「へぇ~~~、そんな事があったんだ。そうだねぇ、騎士団としてもアラッド君みたいな即戦力は是非とも欲しいところだろうね」
「個人的に、ギーラス兄さんが騎士として活動しているんで、個人的にきっぱりと諦めていて欲しいと思います」
「ギーラス……ギーラスというと、風竜を一人で倒したという君のお兄さんか」
風竜を……亜竜ではない、正真正銘の属性持ちドラゴンをソロで倒した……ドラゴンスレイヤー。
討伐者であるギーラスの名は貴族界隈、騎士界隈だけではなく、冒険者界隈にも広がっていた。
「確か、黒炎を使って倒したらしいね……何故騎士という道を、と問うのは不躾というか、愚問だよね」
「そうですね。ギーラス兄さんは長男として、望んで当主になろうとしているので。騎士の道に進むのは至極当の流れですね」
「そうだよねぇ……でも、風竜をソロで倒すぐらいの実力を持っている人なら、どこかで共闘する機会もあるだろう……その時が楽しみだよ」
急な三人での朝食は無事に終了し、もし……緑焔のメンバーが迷惑を掛けるようなことがあれば、直ぐに伝えてくれた別れ際に伝えられた。
「ハリスさんみたいな人がトップなら、その下に付く人たちが僕らに変に迷惑を掛けることはないと思うけどな」
「さぁ……どうだろうな。ただ、ハリスさんの強さにだけ惹かれてる、もしくは惚れてる奴がいるかもしれないだろ」
「…………もしかして、嫉妬で変な絡まれ方をされるかもしれないって事?」
「……はっはっは!!! そうかもな……嫉妬かぁ。どういった嫉妬なのかは分からないけど、可能性としてはあるだろうな」
アラッドは楽し気な笑みを浮かべ、スティームはやや渋いを顔をしながらも二人は予定通りサンディラの樹海へと向かう。
先日まで探索した場所までサクッと走り、そこからはゆったりと……何かおかしな部分はないかと神経を尖らせながら歩く。
「それにしても、木竜を消す……別の空間に転移? させるなんて、いったいどんなマジックアイテムを使ったんだろうね」
「マジックアイテムは可能性の塊だからな。とはいえ、最低でもランク五……俺たちのリンに造ってもらった武器と同じぐらいのランクかもしれない」
「ら、ランク八のマジックアイテムか……うん、だとしたら納得出来るね」
「そう、納得は出来る。問題は、いつ、別次元に飛ばされたかもしれない木竜が戻ってくるか、だ……誰がやる?」
「ゴォォオオオアアアアアアアアッ!!!!」
二人の会話内容などが解るわけもなく、一体のオーガが大剣を振り回しながら襲撃。
「僕がやるよ」
「そうか……それじゃ、頼んだぞ」
「うん」
Cランク冒険者の中でも、上位に位置する冒険者であれば、同じCランクのモンスターを単独で倒すことは不可能ではない。
しかし……それはメインの武器を使っての話。
(ふふ、スティームの奴も……随分無茶をするようになってきたな)
スティームは高い身体能力とリーチが長い武器を扱うオーガを相手に、なんと素手で挑んでいた。
「シッ!!!!」
「っ!? ガァアアアッ!!!!」
(ガルシアさんや、レオナさんと比べれば……遅い!!!!)
スティームも決して身体能力が全体的に高いタイプではなく、パワーはアラッドより完全に劣っている。
それでも……アラッドの実家で休養中にも実戦訓練を行う機会があり、そこで一から体技を鍛えていた。
(赤雷ばかりに、頼っていられない!!!!!!)
雷は使うものの、オーガとの戦闘で赤雷を使うつもりは一切ない。
一撃で肉を、骨を砕けないのであれば何度でも拳を、脚を振るう。
「ガっ!!?? ギ、ァアアアアアアアッ!!!!!」
「遅い、よ」
半身で……最低限の動きで上段斬りを躱し、地面に刃がめり込んだ瞬間を見逃さず、引き抜くより前に刃を……手を踏み台して駆ける。
「うぉおおらあああああっ!!!!!!」
(わぉ……あれ、踏み台にしたのが手だけど、最後顔面に膝をぶち込んだから、流れ的にシャイニングウィザードになるのか?)
見事な体勢で叩きこまれ膝蹴りは頭蓋骨だけではなく、そのまま脳を破壊した。
「すいません、ありません」
「嬉しい誘いですが、申し訳ありません」
食事中、ふと思い出したかのように伝えられた勧誘。
Aランクの冒険者に直接勧誘されるということはとても名誉な事であり、アルティーバで活動している冒険者であれば、大半は断れない。
それは勿論脅しが効いているからという理由ではなく、ハリスというクランマスターに……冒険者に強い憧れを持っているからである。
「ふふ、やっぱりそうだよね。君たちでなければ、少しは悩んでくれてもいいのにと思うけど……寧ろ、君たちの場合はその回答が自然だね」
勿論、ハリスとしては自身のクラン、緑焔に二人が加入してくれたら心底嬉しい。
だが……二人が誰かの下に付くタイプには到底思えず、仮に……本当に緑焔に加入したとしても、まず既に加入しているメンバーとの衝突が容易に想像出来てしまう。
「でも、二人はこれから何度も勧誘を受けると思うよ」
「……多分ですけど、騎士団からは勧誘されないと思います。以前、学園のトーナメントで優勝した際に誘いを受けましたが、その時に断っているので」
「へぇ~~~、そんな事があったんだ。そうだねぇ、騎士団としてもアラッド君みたいな即戦力は是非とも欲しいところだろうね」
「個人的に、ギーラス兄さんが騎士として活動しているんで、個人的にきっぱりと諦めていて欲しいと思います」
「ギーラス……ギーラスというと、風竜を一人で倒したという君のお兄さんか」
風竜を……亜竜ではない、正真正銘の属性持ちドラゴンをソロで倒した……ドラゴンスレイヤー。
討伐者であるギーラスの名は貴族界隈、騎士界隈だけではなく、冒険者界隈にも広がっていた。
「確か、黒炎を使って倒したらしいね……何故騎士という道を、と問うのは不躾というか、愚問だよね」
「そうですね。ギーラス兄さんは長男として、望んで当主になろうとしているので。騎士の道に進むのは至極当の流れですね」
「そうだよねぇ……でも、風竜をソロで倒すぐらいの実力を持っている人なら、どこかで共闘する機会もあるだろう……その時が楽しみだよ」
急な三人での朝食は無事に終了し、もし……緑焔のメンバーが迷惑を掛けるようなことがあれば、直ぐに伝えてくれた別れ際に伝えられた。
「ハリスさんみたいな人がトップなら、その下に付く人たちが僕らに変に迷惑を掛けることはないと思うけどな」
「さぁ……どうだろうな。ただ、ハリスさんの強さにだけ惹かれてる、もしくは惚れてる奴がいるかもしれないだろ」
「…………もしかして、嫉妬で変な絡まれ方をされるかもしれないって事?」
「……はっはっは!!! そうかもな……嫉妬かぁ。どういった嫉妬なのかは分からないけど、可能性としてはあるだろうな」
アラッドは楽し気な笑みを浮かべ、スティームはやや渋いを顔をしながらも二人は予定通りサンディラの樹海へと向かう。
先日まで探索した場所までサクッと走り、そこからはゆったりと……何かおかしな部分はないかと神経を尖らせながら歩く。
「それにしても、木竜を消す……別の空間に転移? させるなんて、いったいどんなマジックアイテムを使ったんだろうね」
「マジックアイテムは可能性の塊だからな。とはいえ、最低でもランク五……俺たちのリンに造ってもらった武器と同じぐらいのランクかもしれない」
「ら、ランク八のマジックアイテムか……うん、だとしたら納得出来るね」
「そう、納得は出来る。問題は、いつ、別次元に飛ばされたかもしれない木竜が戻ってくるか、だ……誰がやる?」
「ゴォォオオオアアアアアアアアッ!!!!」
二人の会話内容などが解るわけもなく、一体のオーガが大剣を振り回しながら襲撃。
「僕がやるよ」
「そうか……それじゃ、頼んだぞ」
「うん」
Cランク冒険者の中でも、上位に位置する冒険者であれば、同じCランクのモンスターを単独で倒すことは不可能ではない。
しかし……それはメインの武器を使っての話。
(ふふ、スティームの奴も……随分無茶をするようになってきたな)
スティームは高い身体能力とリーチが長い武器を扱うオーガを相手に、なんと素手で挑んでいた。
「シッ!!!!」
「っ!? ガァアアアッ!!!!」
(ガルシアさんや、レオナさんと比べれば……遅い!!!!)
スティームも決して身体能力が全体的に高いタイプではなく、パワーはアラッドより完全に劣っている。
それでも……アラッドの実家で休養中にも実戦訓練を行う機会があり、そこで一から体技を鍛えていた。
(赤雷ばかりに、頼っていられない!!!!!!)
雷は使うものの、オーガとの戦闘で赤雷を使うつもりは一切ない。
一撃で肉を、骨を砕けないのであれば何度でも拳を、脚を振るう。
「ガっ!!?? ギ、ァアアアアアアアッ!!!!!」
「遅い、よ」
半身で……最低限の動きで上段斬りを躱し、地面に刃がめり込んだ瞬間を見逃さず、引き抜くより前に刃を……手を踏み台して駆ける。
「うぉおおらあああああっ!!!!!!」
(わぉ……あれ、踏み台にしたのが手だけど、最後顔面に膝をぶち込んだから、流れ的にシャイニングウィザードになるのか?)
見事な体勢で叩きこまれ膝蹴りは頭蓋骨だけではなく、そのまま脳を破壊した。
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