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五百四十四話 もしいたら向かう
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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ~~~~~」
「お疲れさん。エリナ、ありがとな」
「お安い御用です」
アラッドがリン作である迅罰を……スティームが万雷を手にしてから二か月弱、二人は度々新しい得物を使い慣らす為に模擬戦を行っていた。
(アラッド様は当然として、スティーム様の成長には驚かされましたね……正直、お二人がこれ以上お強くなられると、結界を維持するのは私だけでは厳しそうですね)
普段と変わらないクールな表情ではあるもの、二人が模擬戦を行っている最中…………エリナの内心は冷や汗ダラダラだった。
なんせ、先程まで時間を限定した状態とはいえ、アラッドを狂化を……スティームは赤雷を使用した状態で模擬戦を行っていた。
専用のリングの上で戦っていなければ、間違いなく地面が禿げ上がっていた。
「こいつの扱いも、結構慣れてきたな。そっちはどうだ、スティーム」
「ん~~……まだ五割か四割ってところかな。こっちは双剣なのにまだまだアラッドの攻撃には完全に対応出来てないからね」
「はっはっは! 俺だってまだまだ成長中ってことだ」
確かにアラッドはまだまだ成長中と言え、まだダイヤモンドの原石が完成されているとは言えない。
だが、技術の向上といった面ではここ数か月、スティームの方が大きく成長していた。
「負けたられないね……ところでアラッド、暖かくなってから何処へ行こうか決めてるのかい?」
「……そういえば全く考えていなかったな」
学園でのあれこれを終え、実家を出て冒険者として活動する日々は本当に楽しい。
しかし、実家でスティームやガルシア、エリナたちと共に過ごす日々もまた別の楽しさがある。
「そうだなぁ……出来れば、迅罰やスティームの万雷の力を試せる相手と戦いたい、って思いはある」
「同意だね。でもそうなると……雷獣クラスのモンスターが相手じゃないと試せないかな。まっ、アラッドが先に譲ってくれるならBランクのモンスターでも良いんだけどね」
二人と……クロとファルとであれば、Aランクという災害クラスのモンスターが相手でも倒せるという自信はある。
ただ、まだまだ自分が弱いという事実から眼を背けてはおらず、スティームとしてはファルの力も借りず、Bランクのモンスターをソロで倒したいという目標がある。
「んじゃ、ちょっとギルドに行ってそこら辺調べてみるか」
まだ本格的に活動するつもりではないが、情報を集めておいて損はない。
寧ろ、丁度良いモンスターがそこまで離れていない距離に生息しているのであれば、それなりに寒い今の時期であってもそこへ向かっても構わない。
「あっ、アラッドの兄貴!! スティームの兄貴も!!!」
冒険者ギルドへ入ると、併設されている酒場で昼飯を食べていたボルガンが即座に二人に気付き、食事の手を止めて勢い良く頭を下げた。
「そんな大げさに挨拶しなくて良いって」
「そういう訳にはいかないっすよ。お二人は兄貴なんで!!!」
「……そうか。好きにしてくれ」
全くもって何が兄貴だからなのか解らないが、アラッドはこれ以上その事に関して口にするのを止めた。
「ところで、もしかして今から依頼を受けるんすか?」
「いや、ちょっと情報集めに来ただけだ」
「ど、どんな情報を集めにきたんすか!!」
ランクに関してはアラッドとスティームの方が一つだけ上と、そこまで格差はないのだが……二人を兄貴と慕うボルガンからすれば、既にこうして話せるだけで嬉しすぎる存在。
「新しい武器を手に入れたんだが、最近ようやく扱いに慣れてきたというか、それなりに力を引き出せるようになってきたと思ってな。だから、その力を振るえるモンスターはいないかと思ってな」
「力試しってことっすね!!!」
「そんなところだ」
勝手にテンション上げ上げになっているボルガンを放っておき、受付嬢が待つカウンターへと向かう。
「すいません、ちょっと良いで「す、すいません! もう少しだけお待ちください!!」あ、はい」
既にアラッドとボルガンの会話を耳にしていた受付嬢は即座に届いている情報を確認し、二人が戦うに相応しいモンスターの情報を探し出す。
「し、Cランク冒険者たちを倒したゴブリンの群れと、ウグリール火山周辺で暴れ回っている二体の火竜、後は……ビーストテイマーと呼ばれているトップが率いる盗賊団などはどうでしょうか!!」
「………………」
詳細が記された洋紙を見て悩むアラッド。
(……個人的には、Cランク冒険者たちを倒したゴブリンの群れとウグリール火山周辺で暴れ回っている二体の火竜が気になるところだが、如何せんちょっと距離がな…………そうなると、この盗賊団の討伐が比較的動きやすい範囲に居る強敵か)
でも、しかし、どうせならと数分悩むも、結局前二つは却下となり、噂となる程度には強い盗賊団の討伐を討伐しようと決めた。
「ありがとうございます」
「いえ! これぐらい受付嬢として当然です!!!!」
「……無理しない程度に頑張ってください」
頑張るまだまだ自分と同じ若手の受付嬢にエールを送るつもりで軽く笑みを浮かべた。
「ッ!!! は、はい!!!」
だが、その笑みには大きな優しさが含まれており、ギャップと言うには十分な威力があった。
「…………アラッド、今の笑みは凶器になるから、あまりサラッと出さない方が良いよ」
「そんなあれだったか?」
自分では全き気付いないが、パーティーメンバーにそれは凶器だと告げられたため、気を付けよう……とは思うものの、先程の笑みに特に意図はないのでどうしようもなかった。
「お疲れさん。エリナ、ありがとな」
「お安い御用です」
アラッドがリン作である迅罰を……スティームが万雷を手にしてから二か月弱、二人は度々新しい得物を使い慣らす為に模擬戦を行っていた。
(アラッド様は当然として、スティーム様の成長には驚かされましたね……正直、お二人がこれ以上お強くなられると、結界を維持するのは私だけでは厳しそうですね)
普段と変わらないクールな表情ではあるもの、二人が模擬戦を行っている最中…………エリナの内心は冷や汗ダラダラだった。
なんせ、先程まで時間を限定した状態とはいえ、アラッドを狂化を……スティームは赤雷を使用した状態で模擬戦を行っていた。
専用のリングの上で戦っていなければ、間違いなく地面が禿げ上がっていた。
「こいつの扱いも、結構慣れてきたな。そっちはどうだ、スティーム」
「ん~~……まだ五割か四割ってところかな。こっちは双剣なのにまだまだアラッドの攻撃には完全に対応出来てないからね」
「はっはっは! 俺だってまだまだ成長中ってことだ」
確かにアラッドはまだまだ成長中と言え、まだダイヤモンドの原石が完成されているとは言えない。
だが、技術の向上といった面ではここ数か月、スティームの方が大きく成長していた。
「負けたられないね……ところでアラッド、暖かくなってから何処へ行こうか決めてるのかい?」
「……そういえば全く考えていなかったな」
学園でのあれこれを終え、実家を出て冒険者として活動する日々は本当に楽しい。
しかし、実家でスティームやガルシア、エリナたちと共に過ごす日々もまた別の楽しさがある。
「そうだなぁ……出来れば、迅罰やスティームの万雷の力を試せる相手と戦いたい、って思いはある」
「同意だね。でもそうなると……雷獣クラスのモンスターが相手じゃないと試せないかな。まっ、アラッドが先に譲ってくれるならBランクのモンスターでも良いんだけどね」
二人と……クロとファルとであれば、Aランクという災害クラスのモンスターが相手でも倒せるという自信はある。
ただ、まだまだ自分が弱いという事実から眼を背けてはおらず、スティームとしてはファルの力も借りず、Bランクのモンスターをソロで倒したいという目標がある。
「んじゃ、ちょっとギルドに行ってそこら辺調べてみるか」
まだ本格的に活動するつもりではないが、情報を集めておいて損はない。
寧ろ、丁度良いモンスターがそこまで離れていない距離に生息しているのであれば、それなりに寒い今の時期であってもそこへ向かっても構わない。
「あっ、アラッドの兄貴!! スティームの兄貴も!!!」
冒険者ギルドへ入ると、併設されている酒場で昼飯を食べていたボルガンが即座に二人に気付き、食事の手を止めて勢い良く頭を下げた。
「そんな大げさに挨拶しなくて良いって」
「そういう訳にはいかないっすよ。お二人は兄貴なんで!!!」
「……そうか。好きにしてくれ」
全くもって何が兄貴だからなのか解らないが、アラッドはこれ以上その事に関して口にするのを止めた。
「ところで、もしかして今から依頼を受けるんすか?」
「いや、ちょっと情報集めに来ただけだ」
「ど、どんな情報を集めにきたんすか!!」
ランクに関してはアラッドとスティームの方が一つだけ上と、そこまで格差はないのだが……二人を兄貴と慕うボルガンからすれば、既にこうして話せるだけで嬉しすぎる存在。
「新しい武器を手に入れたんだが、最近ようやく扱いに慣れてきたというか、それなりに力を引き出せるようになってきたと思ってな。だから、その力を振るえるモンスターはいないかと思ってな」
「力試しってことっすね!!!」
「そんなところだ」
勝手にテンション上げ上げになっているボルガンを放っておき、受付嬢が待つカウンターへと向かう。
「すいません、ちょっと良いで「す、すいません! もう少しだけお待ちください!!」あ、はい」
既にアラッドとボルガンの会話を耳にしていた受付嬢は即座に届いている情報を確認し、二人が戦うに相応しいモンスターの情報を探し出す。
「し、Cランク冒険者たちを倒したゴブリンの群れと、ウグリール火山周辺で暴れ回っている二体の火竜、後は……ビーストテイマーと呼ばれているトップが率いる盗賊団などはどうでしょうか!!」
「………………」
詳細が記された洋紙を見て悩むアラッド。
(……個人的には、Cランク冒険者たちを倒したゴブリンの群れとウグリール火山周辺で暴れ回っている二体の火竜が気になるところだが、如何せんちょっと距離がな…………そうなると、この盗賊団の討伐が比較的動きやすい範囲に居る強敵か)
でも、しかし、どうせならと数分悩むも、結局前二つは却下となり、噂となる程度には強い盗賊団の討伐を討伐しようと決めた。
「ありがとうございます」
「いえ! これぐらい受付嬢として当然です!!!!」
「……無理しない程度に頑張ってください」
頑張るまだまだ自分と同じ若手の受付嬢にエールを送るつもりで軽く笑みを浮かべた。
「ッ!!! は、はい!!!」
だが、その笑みには大きな優しさが含まれており、ギャップと言うには十分な威力があった。
「…………アラッド、今の笑みは凶器になるから、あまりサラッと出さない方が良いよ」
「そんなあれだったか?」
自分では全き気付いないが、パーティーメンバーにそれは凶器だと告げられたため、気を付けよう……とは思うものの、先程の笑みに特に意図はないのでどうしようもなかった。
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この子のおかげで作家デビューできました
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