スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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五百四十一話 悪いカッコ良さ?

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「赤雷による落雷、か……それを広範囲に落とせるって考えると、確かに恐ろしいな」

「使用する状態を間違えると、うっかり死んじゃうかもしれないけどね」

「使用するなら……面倒な敵が大量に現れた時とかが一番良いかもな。まっ、何はともあれ凄い必殺技であることに変わりはない。広範囲の技では、おそらく俺は敵わないだろうな」

友の言葉に、それはあり得ないだろうといった表情を浮かべるスティーム。

しかし、アラッドの攻撃技をよく知っているガルシアたちは特に反論しなかった。

「……えっ、本当なの?」

「嘘なんてつく訳ないだろ。渦雷を使った斬撃刃であっても、おそらく及ばないな」

アラッドがそこまで断言出来る技を放つことが可能な双剣。
そんな武器を手に入れた事に感動を覚えると同時に……その力に頼り過ぎてはいけないと、胸に刻む。

「それじゃ、次はアラッド様の武器っすね」

もう一つの箱から取り出された武器は……ほぼ両刃の木刀のような形の逸品。

「ほぅ? 普通のロングソードじゃない感じ、だな」

「自分も最初は鋼鉄の剛剣・改と同じ様にロングソードを造ろうと思ったんですけど、なんか違うなと思って」

リンはアラッドが切り札として、渦雷という成長する武器を有しているのを知っている。

同じ性質の武器を持っていても損にはならない。
しかし、主人の考えや戦闘スタイルなどを考慮した結果……打撃にも特化した武器の方が良さそうだという結論に至った。

素材は鋼鉄の剛剣の欠片から雷獣、ストール、ドラゴンゾンビの骨などが使用されているため、非常に堅い。
加えて、欠けたとしても持ち主の魔力を吸収することによって再生が可能

「……鋼鉄の剛剣・改を素材にしてるからか、振りやすいな」

「ぼ、僕としては……アラッドが持ってるからか分からないけど、素振りの男が凄く怖く聞こえるかな」

通常のロングソード、双剣や刀の素振り音は、聞く者に鋭さを感じさせる。

当然、アラッドの技量、腕力で振ることによって、宙を裂く音は鋭い……鋭いのだが、裂く幅が通常の刀剣と比べて太いため、鋭さだけではなく鈍さを……重さを強く感じさせる。

「リン、こいつはなんて言う名前なんだ」

「迅罰、と名付けたっす」

「迅罰……迅罰、か」

頭の中に浮かんだのは、座禅を行う修行僧の方を叩く平たい棒。

(いや、でもこいつは……形状的にあの棒? って言うより、木刀に近いよな)

その木刀……木剣を持っているのは、圧が強めで怖めな顔の男。

(……こうやって肩に乗っけて、う〇こ座りすれば、完全にヤンキーだよな)

う〇こ座りまではしない。
そんな事はしないが……ついつい肩に刃? となる部分を乗せてしまう。

「か、かっけぇ……」

「お、俺もあれやりたい!!」

朝の運動、もしくは特訓を行うために出てきた子供たちはアラッドの姿を見て……どこかカッコ良さを感じた。

未成年なのに煙草を吸ったり酒を呑むことカッコイイと思ってしまう……とはまた少し違うかもしれないが、そういった感覚に近い感情を抱いていた。

「風と雷の属性が付与されてるんで、斬るのは斬るので問題無いっす」

「それでも、どっちかというとぶっ叩くのがメインの木剣……いや、鋼剣か。確かに、鋼鉄の剛剣・改のあれを引き継いでると言えるかもな」

「そう言ってもらえると嬉しいっす。それで、光属性や聖光属性は付与されてないんっすけど、レイスとかを祓うことが出来るっす」

「……ゾンビ系のモンスターとかに有効打を与えられるってことか?」

「そうっすね。ドラゴンゾンビの効果が反転した? って感じっす」

「そういう事もあるらしいから、別におかしい結果ではないか……ふふ、いちいち魔法で倒さなくて良いって考えると、嬉しい効果だな」

良い笑顔でもう何回か素振りを行うアラッド。

そこには居ない……決しておらず、ただただアラッドは空を斬っているだけなのだが、何故かスティームは思いっきりぶっ叩かれているレイスの幻影が見えた。

「にしても………………いや、嬉しい事には嬉しいんだが、まぁなんとも……ランクが上がったな」

迅罰のランクは八。

鋼鉄の剛剣・改は鋼鉄の剛剣のランク三から更に上がったが、初代を含めると合計で五つランクが上がっている。

「良い素材を使たので、当然の結果っす」

BランクやAランクモンスターの使ってそこまでの結果を出せなけば、それは寧ろリンにとって恥であった。

七であれば、ギリ……ギリ、及第点と言える結果。
しかし、それよりも低いランクであれば、地面に何度も頭を叩きつけながらアラッドに土下座すると決めていた。

(……こいつを普段の武器にするのは、ちょっと相手が可哀想か?)

敵対し、倒さなければならない相手に情けをかける必要などない。
そんなことは解りきっているが……ランク八である。

それは素人が振るっても凶悪な武器であることに変わりはない。

(とはいっても、折角頼んでリンが造ってくれた武器なんだ。使うのに慣れとかないとな。どうせなら、普段戦う時は体術や糸を使う様にしてみるか)

何はともあれ、二人とも新しい武器を手に入れたため……直ぐにでも実戦で使用したい衝動に駆られ、街の外へと向かった。
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