スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
536 / 1,052

五百三十五話 そこまでならオーケー

しおりを挟む
「「「「「「っ!!??」」」」」」

「そうか。まぁ、筋骨隆々な肉体を持ってるわけではないし、他種族とのハーフって訳でもねぇ。お前がそう思うのも無理はないだろう」

バカを止めようと動こうとしたベテラン冒険者、ギルド職員に待てのジェスチャーを送り、バカとの会話を続ける。

(悪くない筋肉を持ってるじゃないか。あれは……地道に鍛え上げなければ手に入らない体だ。俺に真正面から突っ掛かってくる時点でバカではあるんだが、それでもギルの様なアホ過ぎるバカって訳ではなさそうだ)

アラッドにとって……ただ絡んで来た相手が、自分の見た目に噂通りの実力を感じないといった理由で絡んでくるのであれば特に文句はなく、負の感情が湧き上がる事はない。

「だからといって、真正面から俺にそういう事を言うのは面白いけどな」

「自信があるって面だな」

「自信がなければ、こんなに堂々とした態度を取らないだろ。それはお前も同じだろ」

バカはその通りの言葉を返され、イラっとするのではなく……アラッドと同じくニヤッと笑った。

「おい、こいつ以外にも俺の実力……噂に疑問を持ってる奴はいないのか? 確かめたい、嘘だと思ってるなら出てこい。それであれこれ罰しようとか考えてないから、素直に出てこい」

数秒後、一人の女性冒険者が一歩前に出た。
それを皮切りにまた一人……また一人と自身の力に自信があるルーキーたちが前に出る。

最初のバカも含め……合計、十人。

「はっはっは!!!! やぱり冒険者はこうじゃなくちゃな、スティーム!!!!」

「うん、まぁ……そうだね」

闘技場での試合が盛んなレドルスでも同じような光景があったな~と思い……やや遠い目になるスティーム。

「っし、それじゃ……この場で掛かって来い」

「「「「「「「「「「……はっ?」」」」」」」」」」

「周りの椅子や机、床を潰さない程度に掛かって来いって言ってるんだ。来ないなら……こっちからいくぞ」

次の瞬間、最初のバカの腕を掴み、訓練場への入口へと軽く投げる。

「……はっ!!??」

バカが自分の身に何が起こったのか理解出来ない間に、次々と訓練場の入口へルーキーたちがぶん投げられ、結果として
十人のルーキーは無理矢理訓練場へと押しやられた。

「一応聞いておくけど、今の内の降参するやつはいるか?」

「はっ!!! 降参なんざする訳ねぇだろ!!!!!」

最初のバカと同じく、初っ端からその差を感じこそしたが、まだ十人の闘争心は全く折れていなかった。

「そうか。元気一杯ってことだな。それじゃ、纏めてかかって来い。勿論、武器を抜いて構わないぞ」

アラッドは素手の状態で一歩一歩近づいていく。

ルーキーたちの中には一対一の勝負を望む者がいるが、十人中六人が先程のやり取りで全員で戦うのが得策だと判断し、彼らは即席の連携とは思えないコンビネーションで仕掛ける。

(十人パーティーってのはあり得ない、よな? なのにこれだけしっかり連携が出来てるってことは、普段から一緒に訓練を行っている……もしくは、一緒に狩りを行う機会が多いってところか)

「ぅおおおらあああああッ!!!!!」

「ハッ!!!!!」

「せいやッ!!!!!!!」

「フレイムランス!!!!」

「ウィンドアロー!!!!」

複数の攻撃魔法が飛び交い、抜身の刃や鉄製の鈍器が遠慮なしに振るわれる中、アラッドは武器を抜くことなく全てを対処していた。

攻撃魔法には攻撃魔法をぶつけて相殺し、武器を振るう相手は攻撃を躱してからカウンター。
そして珍しく対人戦で流血させてしまわない程度に糸を使っていた。

故に、遠目から見ている者たちからは、不自然にルーキーたちが転ぶ、体勢を崩している様に思える場面があった。

「どうした!!?? もっと戦れるだろ!!!!」

「ったりめぇだッ!!!!!」

一対十という変則的過ぎる試合が始まってから数分、最初のバカも含めてルーキーたちはアラッドの噂が事実であると……少なくとも、自分たちが束になっても武器すら抜かせられないほど強いことが解かった。

この時点でアラッドに対する様々な疑問、感情は解消されたものの……だからといって、自ら挑んだ試合を投げ捨てられる程、彼らの心は脆くなかった。


(ん~~~……多分、皆僕よりも歳下だよね。それを考えると、皆アラッドの実力に疑問を抱いて絡みに行ってしまうぐらいには優秀だね。一人か二人は、実力だけならCランクに届いてもおかしくないレベルだ……コンビネーションも優れているから、Cランクのモンスター数体ぐらいなら倒せるかな?)

離れた場所から観戦しているスティームは冷静にルーキーたちの実力を観察していた。

ハッキリ言ってしまうと……勝負になっていないという戦況ではあるものの、それ相応の実力があるのだと把握。

(とはいえ……武器を使わずに倒したとなると、彼らの心は折れないかな?)

アラッドの噂では、全ての武器を抜いて強敵と戦っている。

一緒に行動しているスティームは魔法も体術も糸も敵対者にとって脅威となるな武器だと把握しているが、アラッドを全く知らない者からすれば、今回の結末に心が折れても仕方なかった。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!

クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』  自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。  最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...