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五百二十話 あと一歩の遠さ
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「……えぇ、そうですよ」
嘘偽ることなく……自分たちが雷獣対エレムたちの激闘を離れた場所から観ていたことを認めた。
「ッ!!!!!!!!!!!!」
次の瞬間、あらん限りの激情がエレムの体を駆け巡り、拳を握る力が更に強まり、血が流れだす。
「おい、戦るってことで良いのか?」
「っ!!!???」
我に返るとはまさにこの事と言わんばかりの衝撃を受けるエレム、その他の討伐隊に参加したメンバーたち。
ほんの一瞬……ほんの一瞬ではあるが、アラッドは本気の戦意だけではなく、同時に狂化を発動した。
よっぽどの馬鹿でなければ……いや、バカであったとしても本能が恐怖を覚える。
気付いたときには、振りかざそうとしていた拳は自然と降りていた。
「……戦りたいなら、後で受けますよ」
「そうじゃない……違う。何故だ、何故なんだ!!!! 何故、君はあれを観ていて、ドミトルさんがやられるところを見ていて……なんでッ!!!!!!!」
一度は目の前の青年が発した最恐の圧によって拳を下げ、頭が冷えた。
冷えましたが……それでも不満が消えたわけではない。
「ドミトルさんって言うと、お前を雷獣の攻撃から守った人か。でも、まだギリギリ生きてただろ。回復魔法が使えたら、もしくはそれなりに上等なポーションがあれば直ぐに目は覚まさずとも、生きてる筈だろ」
「ッ!! そうじゃ、そうじゃないだろ!!! 君は、君たちは……何故!!!!」
自分の物語があり、アラッドにはアラッドの……ドミトルにはドミトルの物語がある。
自身の物語とアラッドの物語は、決して同じ世界ではない。
それは先日、先輩の有難く深いお言葉によって理解出来た。
だが……どうして目の前で同業者が死にそうになっていたにも関わらず、途中からでも戦闘に参加して助けようとしなかったのか。
自身の無力を棚に上げて叫びたい。お前に……人の心はないのかと。
「今回の雷獣をどっちが先に倒すかってのは、あんたが俺に絡んできた時に、もう協力することはあり得ないって明確に決まっただろ」
「ッ……」
「あんたらが先に雷獣と戦っていたら、俺は……俺たちは絶対に手を出さない。それが、俺があんたの信念に対する礼儀だと思っていた」
「それ、は……でも」
「それに、俺は言ったよな。俺たちは雷獣の素材が丸々欲しかったんだよ。あんな最後の最後、ほぼ終わりが見えてるところに俺らがあんたらがいる状況で割って入って雷獣を倒して……あんたらは雷獣の素材を全部俺らにくれたか?」
アラッドの言葉に、エレムだけではなく他の冒険者たちも完全に喉が詰まる。
「もう一度言うぞ。あれだけここで、俺とあんたは真っ向から対立した。だからこそ、あんたらの戦いが終わるまで例え途中であんたらが戦ってる場所が分かったとしても、手出しはしない。それが俺のあんたに対する礼儀、敬意だと思ってた」
「…………」
「まだ納得がいってなさそうな顔だな。だったら言ってやろうか。ドミトルさんって人が最後の最後に大怪我を負ったのは、お前が弱かったからだ」
「ッ!!!!」
目に見えてエレムの表情が悔しさで歪む。
彼のパーティーメンバーたちが非難の言葉を飛ばす目にアラッドの口が開く。
「確かにラストの一撃は見事な一撃だった。まさに会心の一撃だと言える一撃だった。でもな……それでも雷獣の命には届かなかった。あと一歩だっただろうな。けど、それは果てしない一歩だ」
「…………」
「根本的に強さが足りなかったんだよ。あんたにもう少し何か力が、速さがあれば結果は変わってたかもな。雷獣と遭遇するまでの間、あんたは探すこと……もしくは連携ばかりに気を取られてたんじゃないのか?」
まさにその通り過ぎる図んビ期間を言い当てられ、何故か体がびくりと震えた。
「ほんの少しでも最後は自分が決めるという意志が準備期間からあれば……覚悟が備わってれば、また結果は違ってたかもしれないんじゃないですか」
「それは……けど」
「こうしてタラればの話をするのは良くないって解ってますけど、結局のところあんたの力が足りなかった。俺らのやり方にケチ付ける前に、あんたは自分の足りなかった弱さを死ぬほど悔しむのが先なんじゃないんですか」
「ッ…………そんな事は、言われなくても……」
解っている。言われなくても解っている。
解っていても……外に、理由を探さずにはいられなかった。
「というか、どうやら雷獣は一匹だけじゃなかったみたいですよ」
「…………えっ」
「「「「「「「「「「はっ!!!!!?????」」」」」」」」」」
職員、冒険者関係無しに間抜けな声が零れた。
「どうやら、あんた達が先に戦ってた雷獣は多分子供か、若い個体だったんですよ。俺らがその雷獣を倒した後、一瞬で成体の雷獣が飛んできたんだ。もしかしたら、あんたらがやったの思いで雷獣を倒しても、その成体に襲われてたかもしれませんね」
案に、結局のところあんたらはあそこで死んでたかもしれないと伝えた。
「信じられないって顔をしてる人たちは、解体場に付いてきてください。ちゃんと証拠は見せますよ」
嘘偽ることなく……自分たちが雷獣対エレムたちの激闘を離れた場所から観ていたことを認めた。
「ッ!!!!!!!!!!!!」
次の瞬間、あらん限りの激情がエレムの体を駆け巡り、拳を握る力が更に強まり、血が流れだす。
「おい、戦るってことで良いのか?」
「っ!!!???」
我に返るとはまさにこの事と言わんばかりの衝撃を受けるエレム、その他の討伐隊に参加したメンバーたち。
ほんの一瞬……ほんの一瞬ではあるが、アラッドは本気の戦意だけではなく、同時に狂化を発動した。
よっぽどの馬鹿でなければ……いや、バカであったとしても本能が恐怖を覚える。
気付いたときには、振りかざそうとしていた拳は自然と降りていた。
「……戦りたいなら、後で受けますよ」
「そうじゃない……違う。何故だ、何故なんだ!!!! 何故、君はあれを観ていて、ドミトルさんがやられるところを見ていて……なんでッ!!!!!!!」
一度は目の前の青年が発した最恐の圧によって拳を下げ、頭が冷えた。
冷えましたが……それでも不満が消えたわけではない。
「ドミトルさんって言うと、お前を雷獣の攻撃から守った人か。でも、まだギリギリ生きてただろ。回復魔法が使えたら、もしくはそれなりに上等なポーションがあれば直ぐに目は覚まさずとも、生きてる筈だろ」
「ッ!! そうじゃ、そうじゃないだろ!!! 君は、君たちは……何故!!!!」
自分の物語があり、アラッドにはアラッドの……ドミトルにはドミトルの物語がある。
自身の物語とアラッドの物語は、決して同じ世界ではない。
それは先日、先輩の有難く深いお言葉によって理解出来た。
だが……どうして目の前で同業者が死にそうになっていたにも関わらず、途中からでも戦闘に参加して助けようとしなかったのか。
自身の無力を棚に上げて叫びたい。お前に……人の心はないのかと。
「今回の雷獣をどっちが先に倒すかってのは、あんたが俺に絡んできた時に、もう協力することはあり得ないって明確に決まっただろ」
「ッ……」
「あんたらが先に雷獣と戦っていたら、俺は……俺たちは絶対に手を出さない。それが、俺があんたの信念に対する礼儀だと思っていた」
「それ、は……でも」
「それに、俺は言ったよな。俺たちは雷獣の素材が丸々欲しかったんだよ。あんな最後の最後、ほぼ終わりが見えてるところに俺らがあんたらがいる状況で割って入って雷獣を倒して……あんたらは雷獣の素材を全部俺らにくれたか?」
アラッドの言葉に、エレムだけではなく他の冒険者たちも完全に喉が詰まる。
「もう一度言うぞ。あれだけここで、俺とあんたは真っ向から対立した。だからこそ、あんたらの戦いが終わるまで例え途中であんたらが戦ってる場所が分かったとしても、手出しはしない。それが俺のあんたに対する礼儀、敬意だと思ってた」
「…………」
「まだ納得がいってなさそうな顔だな。だったら言ってやろうか。ドミトルさんって人が最後の最後に大怪我を負ったのは、お前が弱かったからだ」
「ッ!!!!」
目に見えてエレムの表情が悔しさで歪む。
彼のパーティーメンバーたちが非難の言葉を飛ばす目にアラッドの口が開く。
「確かにラストの一撃は見事な一撃だった。まさに会心の一撃だと言える一撃だった。でもな……それでも雷獣の命には届かなかった。あと一歩だっただろうな。けど、それは果てしない一歩だ」
「…………」
「根本的に強さが足りなかったんだよ。あんたにもう少し何か力が、速さがあれば結果は変わってたかもな。雷獣と遭遇するまでの間、あんたは探すこと……もしくは連携ばかりに気を取られてたんじゃないのか?」
まさにその通り過ぎる図んビ期間を言い当てられ、何故か体がびくりと震えた。
「ほんの少しでも最後は自分が決めるという意志が準備期間からあれば……覚悟が備わってれば、また結果は違ってたかもしれないんじゃないですか」
「それは……けど」
「こうしてタラればの話をするのは良くないって解ってますけど、結局のところあんたの力が足りなかった。俺らのやり方にケチ付ける前に、あんたは自分の足りなかった弱さを死ぬほど悔しむのが先なんじゃないんですか」
「ッ…………そんな事は、言われなくても……」
解っている。言われなくても解っている。
解っていても……外に、理由を探さずにはいられなかった。
「というか、どうやら雷獣は一匹だけじゃなかったみたいですよ」
「…………えっ」
「「「「「「「「「「はっ!!!!!?????」」」」」」」」」」
職員、冒険者関係無しに間抜けな声が零れた。
「どうやら、あんた達が先に戦ってた雷獣は多分子供か、若い個体だったんですよ。俺らがその雷獣を倒した後、一瞬で成体の雷獣が飛んできたんだ。もしかしたら、あんたらがやったの思いで雷獣を倒しても、その成体に襲われてたかもしれませんね」
案に、結局のところあんたらはあそこで死んでたかもしれないと伝えた。
「信じられないって顔をしてる人たちは、解体場に付いてきてください。ちゃんと証拠は見せますよ」
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