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五百十二話 割とやってしまった
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「俺の戦闘スタイルは斬撃刃を使えば、攻撃魔法も使う。そんな戦闘の中で精々気を使えるのは仲間のスティームと従魔のクロ、ファルだけだ」
アラッドとしては目の前のクソイケメン優男だけが自分たちと一緒に戦うのであれば……条件付きではあるが、問題無いと思っている。
それ程目の前のクソイケメン優男はその他の冒険者とは違い、間違いなく強者としての実力を兼ね備えていると、視ずとも本能が告げている。
「…………」
「無理だろ。雷獣は確かに体のサイズが大きいタイプのモンスターだが、バカデカいって訳じゃないんだ。俺が今言った不運は十分起こりうる」
「……そ、それは」
「他の連中に対して気を使って戦えば良いなんてバカな事は言うなよ、そんな発言をすれば俺の怒りを買うだけじゃなく、あんたの格を落すことになる」
「ッ!?」
気に入ってる存在、もしくは偶々悲鳴が聞こえた場所に向かい、襲われている存在を助ける……そういったシチュエーションであれば、自分よりも弱い者たちに気を使って戦うのは当然。
しかし、そうではなく……自ら強敵に挑む際、何故わざわざ自分よりも弱い者たちに気を使わなければならない?
今回の討伐戦が急激に増えた大量のモンスターの討伐などであれば、アラッドも特に文句は言わない。
戦闘が始まって直ぐに離れた場所で戦えば、同業者を傷付けてしまうことなど、まずない。
だが、一体のモンスターを狙った戦闘となれば話は別。
「というか、今しがた言ったが結果として俺たちは二人と二体……計、四つの戦力で戦うんだ」
「あの~~~、先に説明しておきますと、僕の従魔は空を飛べてアラッドの従魔は地を縦横無尽に駆け回れます。あっ、攻撃力は言わずもがなって感じです」
ここでアラッドばかりに言わせるのは忍びないと思い、スティームも「正直なところ、あなた方と組む気はありません」と伝え始める。
「スティームの言う通りなんですよ。俺とスティームレベルの強さを持った戦力がもう二つあるなら、別に俺たちだけで動いても構いませんよね」
「っ…………あぁ。そう、だね。すまなかった」
これが最終警告だ。
言葉に出さずとも、そう言っているのが雰囲気から解り、これ以上話し合っても意味はないと判断。
「いえ、こちらこそ少々言い過ぎました。それでは」
「…………」
最後の最後に横柄、横暴、生意気な態度ではなく、軽く謝意の言葉を述べられて面を食らったクソイケメン優男。
二人が去った後、ギルドには何とも言えない空気が残った。
「アラッド、その……良かったの?」
「……割とやってしまったとは思ってる。せめて一目が多い場所じゃなかったら……あのクソイケメン優男も、もう少し場所を考えて……いや、そもそも俺から言って場所を変えるべきだったか? でも、あっちの方が先輩な訳だし……」
顔を見れば、がっつり後悔してるのが見て解かる。
(あちゃ~~~、やっぱりそこそこ後悔してるみたいだね。確かにあの先輩は間違った事言ってた訳じゃないけど、あの内容は……アッラッドからすれば自分の事を嘗めてるって思われても仕方ないよね~)
何だかんだで、強さに対してはそれなりにプライドを持っているアラッド。
その強さはある程度のプライドを持っていてもおかしくない戦闘力であり、アラッド本人がクソイケメン優男に伝えた問題点も決してあり得ない話ではない。
(正直、狂化を使ったアラッドと戦った時の感覚はあまり覚えていないけど……あまり覚えてないぐらい戦う、勝つことだけに集中出来ていなかったら、その圧に飲み込まれてただろうからな~……そう考えると、ずらずらと並んで戦うのはアラッドの性に合わないんだろうね)
アラッドは堂々と自身の考えをぶつけただけであり、何も悪いことはしていない。
冒険者という職業を考えれば、殴り合いなどに発展しなかっただけ十分大人な対応と言える。
「……なぁ、俺凄く嫌な奴に映ったよな」
「どうだろうね~~~……って、アラッドもそういう事気にするんだね」
「別にくだらない連中や、あぁいう勘違い面倒やろうや、こっちの逆鱗の隣をなぞってくるルーキーとかには興味ない。でもな、それ以外の同業者とは普通に仲良くなれたらなとは思ってるんだよ」
この先の人生、アラッドには多くの道が存在するも、本人は冒険者以外の道を選ぶ気はない。
これから先、何十年と冒険者としての人生を送る。
戦闘職である冒険者にとっては強さこそ正義という面はあるものの、本当に強さだけで繋がれる数は多くない。
「そっか……でも、僕はアラッドが間違ってるとは思わないよ」
「そう言ってくれると、心が軽くなるよ」
「慰めなんかじゃないよ。正直、僕たちに声を掛けてきた人は強いと思う。多分……僕よりは強い」
赤雷抜きで考えれば、確かにクソイケメン優男はスティームより上の戦闘力を持っている。
「でも、その他の面子があの人よりも上だとは思えなくてね。そうなってくると、やっぱりアラッドが考えてる事故が起きてもおかしくないよ」
相方のお陰で幾分楽になったアラッドだが……その日の夜は少々酒を呑み過ぎてしまい、翌日思いっきり二日酔い状態になった。
アラッドとしては目の前のクソイケメン優男だけが自分たちと一緒に戦うのであれば……条件付きではあるが、問題無いと思っている。
それ程目の前のクソイケメン優男はその他の冒険者とは違い、間違いなく強者としての実力を兼ね備えていると、視ずとも本能が告げている。
「…………」
「無理だろ。雷獣は確かに体のサイズが大きいタイプのモンスターだが、バカデカいって訳じゃないんだ。俺が今言った不運は十分起こりうる」
「……そ、それは」
「他の連中に対して気を使って戦えば良いなんてバカな事は言うなよ、そんな発言をすれば俺の怒りを買うだけじゃなく、あんたの格を落すことになる」
「ッ!?」
気に入ってる存在、もしくは偶々悲鳴が聞こえた場所に向かい、襲われている存在を助ける……そういったシチュエーションであれば、自分よりも弱い者たちに気を使って戦うのは当然。
しかし、そうではなく……自ら強敵に挑む際、何故わざわざ自分よりも弱い者たちに気を使わなければならない?
今回の討伐戦が急激に増えた大量のモンスターの討伐などであれば、アラッドも特に文句は言わない。
戦闘が始まって直ぐに離れた場所で戦えば、同業者を傷付けてしまうことなど、まずない。
だが、一体のモンスターを狙った戦闘となれば話は別。
「というか、今しがた言ったが結果として俺たちは二人と二体……計、四つの戦力で戦うんだ」
「あの~~~、先に説明しておきますと、僕の従魔は空を飛べてアラッドの従魔は地を縦横無尽に駆け回れます。あっ、攻撃力は言わずもがなって感じです」
ここでアラッドばかりに言わせるのは忍びないと思い、スティームも「正直なところ、あなた方と組む気はありません」と伝え始める。
「スティームの言う通りなんですよ。俺とスティームレベルの強さを持った戦力がもう二つあるなら、別に俺たちだけで動いても構いませんよね」
「っ…………あぁ。そう、だね。すまなかった」
これが最終警告だ。
言葉に出さずとも、そう言っているのが雰囲気から解り、これ以上話し合っても意味はないと判断。
「いえ、こちらこそ少々言い過ぎました。それでは」
「…………」
最後の最後に横柄、横暴、生意気な態度ではなく、軽く謝意の言葉を述べられて面を食らったクソイケメン優男。
二人が去った後、ギルドには何とも言えない空気が残った。
「アラッド、その……良かったの?」
「……割とやってしまったとは思ってる。せめて一目が多い場所じゃなかったら……あのクソイケメン優男も、もう少し場所を考えて……いや、そもそも俺から言って場所を変えるべきだったか? でも、あっちの方が先輩な訳だし……」
顔を見れば、がっつり後悔してるのが見て解かる。
(あちゃ~~~、やっぱりそこそこ後悔してるみたいだね。確かにあの先輩は間違った事言ってた訳じゃないけど、あの内容は……アッラッドからすれば自分の事を嘗めてるって思われても仕方ないよね~)
何だかんだで、強さに対してはそれなりにプライドを持っているアラッド。
その強さはある程度のプライドを持っていてもおかしくない戦闘力であり、アラッド本人がクソイケメン優男に伝えた問題点も決してあり得ない話ではない。
(正直、狂化を使ったアラッドと戦った時の感覚はあまり覚えていないけど……あまり覚えてないぐらい戦う、勝つことだけに集中出来ていなかったら、その圧に飲み込まれてただろうからな~……そう考えると、ずらずらと並んで戦うのはアラッドの性に合わないんだろうね)
アラッドは堂々と自身の考えをぶつけただけであり、何も悪いことはしていない。
冒険者という職業を考えれば、殴り合いなどに発展しなかっただけ十分大人な対応と言える。
「……なぁ、俺凄く嫌な奴に映ったよな」
「どうだろうね~~~……って、アラッドもそういう事気にするんだね」
「別にくだらない連中や、あぁいう勘違い面倒やろうや、こっちの逆鱗の隣をなぞってくるルーキーとかには興味ない。でもな、それ以外の同業者とは普通に仲良くなれたらなとは思ってるんだよ」
この先の人生、アラッドには多くの道が存在するも、本人は冒険者以外の道を選ぶ気はない。
これから先、何十年と冒険者としての人生を送る。
戦闘職である冒険者にとっては強さこそ正義という面はあるものの、本当に強さだけで繋がれる数は多くない。
「そっか……でも、僕はアラッドが間違ってるとは思わないよ」
「そう言ってくれると、心が軽くなるよ」
「慰めなんかじゃないよ。正直、僕たちに声を掛けてきた人は強いと思う。多分……僕よりは強い」
赤雷抜きで考えれば、確かにクソイケメン優男はスティームより上の戦闘力を持っている。
「でも、その他の面子があの人よりも上だとは思えなくてね。そうなってくると、やっぱりアラッドが考えてる事故が起きてもおかしくないよ」
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