511 / 1,058
五百十話 乱入厳禁
しおりを挟む
「そういえばアラッド、一応僕たち冒険者な訳だし、ギルドの依頼を受けておいた方が良いんじゃないかな」
「……それもそうだな。一つぐらいは受けておくか」
イスバーダンに到着してから数日後、二人はギルドで討伐依頼を受け、雷獣を探しながら討伐依頼のモンスターも同時に捜索。
「ねぇ、もしかしたらだけど、他の冒険者たちと喧嘩になったりするかな」
「喧嘩、か……そうなったら、赤雷を使うのか?」
「いやいやいや、さすがに使わないというか、そもそもまず喧嘩にならない努力をした方が良い気がするんだけど」
ごもっともな意見を否定する気はない。
だが、アラッドはそこまでして喧嘩にならない様に努力しようという気持ちが起こらない。
「そうだなぁ、多分だけど正義感が強い奴がいれば、俺たちに絡んでくるかもしれないな」
「正義感が強い人、か。冒険者にしては珍しいタイプの人たちだよね」
「冒険者の世間一般的なイメージを考えると、確かに珍しい部類だな」
職業的に荒くれ者なイメージが強く、実際のところ……強い正義感を持つ冒険者という存在は確かに珍しい。
「普通の冒険者であれば、俺たちの自分たちだけで倒して雷獣の素材を独占したいって気持ちは理解できるはずだ」
雷獣の素材、魔石は非常に高価な値段で取引される。
それこそ、五体満足の状態であれば、アラッドがこれまでに製作してきた赤龍帝や天魔の実際の値段と大差ない。
「スティームも、どうせなら自分たちだけで独占出来たらって思いはあるだろ」
「まぁ、そりゃ雷獣みたいな貴重なモンスターの素材となれば……ね」
「そうだろ。ぶっちゃけた話、それが普通だ。でも、世の中にはまるで騎士の如き振る舞いをする冒険者もいるらしい」
人伝に聞いた話……というには、あまりにも多くの冒険者から聞く機会があった。
「変な正義感に酔った連中だと、もしかしたら正面から衝突するかもな」
「衝突した場合、どうするつもりなんだい」
「雷獣と戦う前に変に消耗はしたくない。街中での衝突であれば、適当に言葉をぶつけ合って終わりだ。でもな……運良く俺たち雷獣が先に戦ってるところに身勝手な理由で割り込んできたら……うかっかり殺してしまうかもな」
「ッ……そ、その気持ちは解らなくもないけど、程々にしてよ」
その眼に冗談はなく、本物の殺気が宿っていた。
(他の冒険者と衝突なんて勘弁してほしいけど……でも、この前似たような事が、僕が原因で起こってしまったし、あんまり強く言えないな~)
とはいえ、スティームもお目当てのモンスターと戦っている最中に他の同業者が乱入してきたら、ブチ切れるのは間違いなかった。
結局その日は討伐依頼のモンスターこそ発見して討伐することが出来たが、お目当てである雷獣を発見することは出来なかった。
「それっぽい戦いの痕はあったんだけどな」
「クロの鼻で追えなかったってなると、雨が降った後なのかもしれないね」
「そうなってくると手掛かりを利用して追跡する手段は難しそうだな」
「クゥ~~~ン」
「おっと、すまんなクロ。別にお前を貶してるわけじゃないんだ」
自身の不甲斐なさに対して悲しそうな顔を浮かべるクロの頭を撫でるアラッド。
「そういばさ、僕たちが得た情報の時点で雷獣はBランク冒険者たちと戦って、重傷を負わせながらも雷獣自身も逃げたんだよね」
「そうらしいな……それがどうかしたか?」
「頭の中に逃げるって選択肢があるってことは、僕達を見た時に……戦うじゃなくて逃走を選ばないかって心配があって」
「…………」
全く予想していなかった雷獣の選択。
スティームの言葉に、絶対にそれはあり得ないと口に出来ず、がっつり固まってしまうアラッド。
「……可能性は、ゼロじゃなさそうだな」
「そうだよね~。見つけた瞬間、囲むように動いた方が良さそうだね」
かなり無茶したとはいえ、Aランクモンスターをソロで討伐出来る怪物と、赤雷を操る双剣士。
加えてBランクのモンスターとAランクのモンスターに囲われては……逃げ出そうと思っても致し方ない部分はある。
「でも、この前クスリを使った彼を捕らえた時みたいに、雷は意味をなさないね」
「そうだな。そうなると、俺の糸が逃がさない様に捉える武器になるかもしれないが……雷獣は凄い俊敏だって聞いたことがあるからな~」
とはいえ、あれよこれよろ不満や心配が零れたところで、自分たちだけで討伐して素材を手に入れようという気持ちは変わらない。
そして二人は討伐依頼の達成確認を行ってもらう為、ギルドの中へ入る。
「「「「「「ッ!?」」」」」」
既にアラッドとスティームの容姿に関する情報が出回っているため、鑑定を使わずとも今ギルドの中に入ってきた二人があの噂の人物だと解かる。
(うわぁ~~~、凄いピリピリしてるな~。もしかして、今日も僕達が知らないところで、雷獣による被害が出たのかな?)
ファルとだけ行動してた時よりも多くの視線が集まるため、少々おどおそした雰囲気が出ているスティームに対し、アラッドは慣れきった表情で列に並び、依頼達成の確認を行ってもらう。
「こちらが依頼達成の料金になります」
「ありがとうございます」
素材の売却もちゃちゃっと終わらせ、即座にギルドから出ようとしたが……そうは問屋が卸してくれなかった。
「……それもそうだな。一つぐらいは受けておくか」
イスバーダンに到着してから数日後、二人はギルドで討伐依頼を受け、雷獣を探しながら討伐依頼のモンスターも同時に捜索。
「ねぇ、もしかしたらだけど、他の冒険者たちと喧嘩になったりするかな」
「喧嘩、か……そうなったら、赤雷を使うのか?」
「いやいやいや、さすがに使わないというか、そもそもまず喧嘩にならない努力をした方が良い気がするんだけど」
ごもっともな意見を否定する気はない。
だが、アラッドはそこまでして喧嘩にならない様に努力しようという気持ちが起こらない。
「そうだなぁ、多分だけど正義感が強い奴がいれば、俺たちに絡んでくるかもしれないな」
「正義感が強い人、か。冒険者にしては珍しいタイプの人たちだよね」
「冒険者の世間一般的なイメージを考えると、確かに珍しい部類だな」
職業的に荒くれ者なイメージが強く、実際のところ……強い正義感を持つ冒険者という存在は確かに珍しい。
「普通の冒険者であれば、俺たちの自分たちだけで倒して雷獣の素材を独占したいって気持ちは理解できるはずだ」
雷獣の素材、魔石は非常に高価な値段で取引される。
それこそ、五体満足の状態であれば、アラッドがこれまでに製作してきた赤龍帝や天魔の実際の値段と大差ない。
「スティームも、どうせなら自分たちだけで独占出来たらって思いはあるだろ」
「まぁ、そりゃ雷獣みたいな貴重なモンスターの素材となれば……ね」
「そうだろ。ぶっちゃけた話、それが普通だ。でも、世の中にはまるで騎士の如き振る舞いをする冒険者もいるらしい」
人伝に聞いた話……というには、あまりにも多くの冒険者から聞く機会があった。
「変な正義感に酔った連中だと、もしかしたら正面から衝突するかもな」
「衝突した場合、どうするつもりなんだい」
「雷獣と戦う前に変に消耗はしたくない。街中での衝突であれば、適当に言葉をぶつけ合って終わりだ。でもな……運良く俺たち雷獣が先に戦ってるところに身勝手な理由で割り込んできたら……うかっかり殺してしまうかもな」
「ッ……そ、その気持ちは解らなくもないけど、程々にしてよ」
その眼に冗談はなく、本物の殺気が宿っていた。
(他の冒険者と衝突なんて勘弁してほしいけど……でも、この前似たような事が、僕が原因で起こってしまったし、あんまり強く言えないな~)
とはいえ、スティームもお目当てのモンスターと戦っている最中に他の同業者が乱入してきたら、ブチ切れるのは間違いなかった。
結局その日は討伐依頼のモンスターこそ発見して討伐することが出来たが、お目当てである雷獣を発見することは出来なかった。
「それっぽい戦いの痕はあったんだけどな」
「クロの鼻で追えなかったってなると、雨が降った後なのかもしれないね」
「そうなってくると手掛かりを利用して追跡する手段は難しそうだな」
「クゥ~~~ン」
「おっと、すまんなクロ。別にお前を貶してるわけじゃないんだ」
自身の不甲斐なさに対して悲しそうな顔を浮かべるクロの頭を撫でるアラッド。
「そういばさ、僕たちが得た情報の時点で雷獣はBランク冒険者たちと戦って、重傷を負わせながらも雷獣自身も逃げたんだよね」
「そうらしいな……それがどうかしたか?」
「頭の中に逃げるって選択肢があるってことは、僕達を見た時に……戦うじゃなくて逃走を選ばないかって心配があって」
「…………」
全く予想していなかった雷獣の選択。
スティームの言葉に、絶対にそれはあり得ないと口に出来ず、がっつり固まってしまうアラッド。
「……可能性は、ゼロじゃなさそうだな」
「そうだよね~。見つけた瞬間、囲むように動いた方が良さそうだね」
かなり無茶したとはいえ、Aランクモンスターをソロで討伐出来る怪物と、赤雷を操る双剣士。
加えてBランクのモンスターとAランクのモンスターに囲われては……逃げ出そうと思っても致し方ない部分はある。
「でも、この前クスリを使った彼を捕らえた時みたいに、雷は意味をなさないね」
「そうだな。そうなると、俺の糸が逃がさない様に捉える武器になるかもしれないが……雷獣は凄い俊敏だって聞いたことがあるからな~」
とはいえ、あれよこれよろ不満や心配が零れたところで、自分たちだけで討伐して素材を手に入れようという気持ちは変わらない。
そして二人は討伐依頼の達成確認を行ってもらう為、ギルドの中へ入る。
「「「「「「ッ!?」」」」」」
既にアラッドとスティームの容姿に関する情報が出回っているため、鑑定を使わずとも今ギルドの中に入ってきた二人があの噂の人物だと解かる。
(うわぁ~~~、凄いピリピリしてるな~。もしかして、今日も僕達が知らないところで、雷獣による被害が出たのかな?)
ファルとだけ行動してた時よりも多くの視線が集まるため、少々おどおそした雰囲気が出ているスティームに対し、アラッドは慣れきった表情で列に並び、依頼達成の確認を行ってもらう。
「こちらが依頼達成の料金になります」
「ありがとうございます」
素材の売却もちゃちゃっと終わらせ、即座にギルドから出ようとしたが……そうは問屋が卸してくれなかった。
169
お気に入りに追加
6,126
あなたにおすすめの小説


追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる