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五百五話 俺じゃなくても、良くない?
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「……でも、そうなるとクロに付いて来れるだけのスピードだけじゃなく、スタミナも必要だ。そこに加えてある程度の梅雨払いが出来る強さまで含めると……注文に見合う面子を揃えるのは中々難しいと思うんだが」
アラッドの言葉は最もだった。
友のアイデアを否定したい訳ではない。
寧ろ自分をメインの案を考えてくれるのは……正直嬉しいところはある。
だが、実際問題として仮に十人アラッドとクロを守る梅雨払いの者たちを揃えるのは、非常に難しい。
当然のことながら、どんどん奥へ奥へと敵の陣地に進むという事は、死ぬ可能性が高まるのと同義。
しかし……アラッドは重要な事を忘れていた。
そう、アラッド自身が生み出した子のことを……。
「そこはほら……あれだよ。アラッドが造ったキャバリオンを自由自在に扱える人が十人ぐらいいれば、問題は解決するんじゃないかな」
「ッ……そう、だな。無理ではない、かもしれないな」
「キャバリオンって、確かアラッド君が錬金術で造りだした……馬の下半身? だっけ」
「その認識で合ってます。完璧に扱えるようになるまでにはそれなりの時間が必要になりますが、使いこなせるようになれば、スティームが提案してくれた案が実現出来る可能性がぐんと高まります」
正直なところ、絶対成功出来るとは断言出来ない。
少なくとも自身の梅雨払いを行う者たちの安全を考慮するのであれば、一定ライン以上の実力に加えて、高性能のキャバリオンを持っていることが条件。
(キャバリオンの質は……国王陛下に売った黄金のやつと、父さんに渡した赤龍帝。あと……ギーラス兄さんに渡した天魔もライン上ではある、か。後他にもそれレベルのキャバリオンを造った記憶はあるけど……いや、うん。無理だよな)
アラッドの父親であるフールと兄であるギーラスであれば、この頼みを二つ返事で了承する可能性が高い。
ただ……どう考えても、国王陛下は参加出来ない。
加えて、他の高品質のキャバリオン製作をアラッドに依頼した依頼者たちは、その殆どが領地を治める貴族の当主たち。
そう……既に後継者がいるとはいえ、そう簡単に戦場で死ぬことが出来ない者たちばかり。
これからアラッドが残りの約八機分造ったとしても、向かう場所は敵陣。
死ぬ可能性が圧倒的に高い場所に戦争とはいえ、誰が行きたい?
国の為なら死ねる精神を持つ騎士でも、心の中には微かに……どんなに小さくても、生き残りたいという思いがある。
というよりも、本気で国の為なら死ねると考えている騎士がいれば、アラッドは直接考え直すんだと伝える。
「……いや、スティーム。仮に……仮にだ、俺は大将がいる敵陣にまで連れて行ってくれたとしても……そもそもな話、質が高いキャバリオンを乗りこなせる者たちであれば、そもそも俺がメインではなくても良いのではと思うんだが」
「あっ」
しまったと言いたげな顔を浮かべるが、零してしまった言葉は戻せない。
ただ、アラッドはそんなスティームの失言を特に気にしてない。
「そういえば、アラッド君のお父さんは昔、一人でAランクのドラゴン……暴風竜、ボレアスを倒したんだっけ」
「えぇ、そうです」
「それでこの前、長男であるギーラス君がボレアスの子供の風竜、ストールを一人で倒したんだよね……それぐらいの実力者たちが集まるとしたら、確かにアラッド君が大将を倒さなくても良い、ということになるのかな」
「そうなんですよ。確かに俺は一応騎士の爵位を持ってますけど、本当に一応って感じです。冒険者になってまだ一年も経ってないし……実際に戦争が行われるのかがいつになるのか、そもそも本当に起きるのかは解りませんけど……とりあえず、そんな俺だけ美味しいところ貰うってのは、多分ダメだと思うんですよ」
戦争が起これば、勿論参加する。
だが、必ずしも自分が大将に挑む必要はない……その考えに、アラッドは大いに賛成だった。
一先ず騎士との話はこの辺りで終了し、二人は昼食を食べにカフェへと向かう。
「あれだね。本当に戦争に参加してくれそうな人にキャバリオンを造るってなったら、フローレンスさん専用のキャバリオンを造ることになるかもしれないね」
「ッ!!!!」
今回の一件が一件なため、そもそも表情は明るくなかった。
そこにスティームの余計な一言の影響で、非常に渋い顔になった。
「……ほら、あいつは公爵家の令嬢だぞ」
「公爵家の令嬢だとしても、少し前まで全力のアラッドとほぼ引き分けに持っていけるだけの実力者だよね」
「ぐっ……確かにそれはそうなんだが」
フローレンスの性格上、アラッドと最後に会ってから鍛錬を欠かすことはなく、戦争が起これば絶対に参加する。
たとえ……まだ学生という身分のタイミングで戦争が起こったとしても、彼女は間違いなく参加する。
アルバス王国の未来の為に参加させないという意見も出るだろうが、遊ばせておくには十分な戦闘力を有している認識は全員同じ。
それに加えて、フローレンスは人を殺した経験も備わっている為、戦争という名の戦場に立った瞬間、ポンコツになることはあり得なかった。
アラッドの言葉は最もだった。
友のアイデアを否定したい訳ではない。
寧ろ自分をメインの案を考えてくれるのは……正直嬉しいところはある。
だが、実際問題として仮に十人アラッドとクロを守る梅雨払いの者たちを揃えるのは、非常に難しい。
当然のことながら、どんどん奥へ奥へと敵の陣地に進むという事は、死ぬ可能性が高まるのと同義。
しかし……アラッドは重要な事を忘れていた。
そう、アラッド自身が生み出した子のことを……。
「そこはほら……あれだよ。アラッドが造ったキャバリオンを自由自在に扱える人が十人ぐらいいれば、問題は解決するんじゃないかな」
「ッ……そう、だな。無理ではない、かもしれないな」
「キャバリオンって、確かアラッド君が錬金術で造りだした……馬の下半身? だっけ」
「その認識で合ってます。完璧に扱えるようになるまでにはそれなりの時間が必要になりますが、使いこなせるようになれば、スティームが提案してくれた案が実現出来る可能性がぐんと高まります」
正直なところ、絶対成功出来るとは断言出来ない。
少なくとも自身の梅雨払いを行う者たちの安全を考慮するのであれば、一定ライン以上の実力に加えて、高性能のキャバリオンを持っていることが条件。
(キャバリオンの質は……国王陛下に売った黄金のやつと、父さんに渡した赤龍帝。あと……ギーラス兄さんに渡した天魔もライン上ではある、か。後他にもそれレベルのキャバリオンを造った記憶はあるけど……いや、うん。無理だよな)
アラッドの父親であるフールと兄であるギーラスであれば、この頼みを二つ返事で了承する可能性が高い。
ただ……どう考えても、国王陛下は参加出来ない。
加えて、他の高品質のキャバリオン製作をアラッドに依頼した依頼者たちは、その殆どが領地を治める貴族の当主たち。
そう……既に後継者がいるとはいえ、そう簡単に戦場で死ぬことが出来ない者たちばかり。
これからアラッドが残りの約八機分造ったとしても、向かう場所は敵陣。
死ぬ可能性が圧倒的に高い場所に戦争とはいえ、誰が行きたい?
国の為なら死ねる精神を持つ騎士でも、心の中には微かに……どんなに小さくても、生き残りたいという思いがある。
というよりも、本気で国の為なら死ねると考えている騎士がいれば、アラッドは直接考え直すんだと伝える。
「……いや、スティーム。仮に……仮にだ、俺は大将がいる敵陣にまで連れて行ってくれたとしても……そもそもな話、質が高いキャバリオンを乗りこなせる者たちであれば、そもそも俺がメインではなくても良いのではと思うんだが」
「あっ」
しまったと言いたげな顔を浮かべるが、零してしまった言葉は戻せない。
ただ、アラッドはそんなスティームの失言を特に気にしてない。
「そういえば、アラッド君のお父さんは昔、一人でAランクのドラゴン……暴風竜、ボレアスを倒したんだっけ」
「えぇ、そうです」
「それでこの前、長男であるギーラス君がボレアスの子供の風竜、ストールを一人で倒したんだよね……それぐらいの実力者たちが集まるとしたら、確かにアラッド君が大将を倒さなくても良い、ということになるのかな」
「そうなんですよ。確かに俺は一応騎士の爵位を持ってますけど、本当に一応って感じです。冒険者になってまだ一年も経ってないし……実際に戦争が行われるのかがいつになるのか、そもそも本当に起きるのかは解りませんけど……とりあえず、そんな俺だけ美味しいところ貰うってのは、多分ダメだと思うんですよ」
戦争が起これば、勿論参加する。
だが、必ずしも自分が大将に挑む必要はない……その考えに、アラッドは大いに賛成だった。
一先ず騎士との話はこの辺りで終了し、二人は昼食を食べにカフェへと向かう。
「あれだね。本当に戦争に参加してくれそうな人にキャバリオンを造るってなったら、フローレンスさん専用のキャバリオンを造ることになるかもしれないね」
「ッ!!!!」
今回の一件が一件なため、そもそも表情は明るくなかった。
そこにスティームの余計な一言の影響で、非常に渋い顔になった。
「……ほら、あいつは公爵家の令嬢だぞ」
「公爵家の令嬢だとしても、少し前まで全力のアラッドとほぼ引き分けに持っていけるだけの実力者だよね」
「ぐっ……確かにそれはそうなんだが」
フローレンスの性格上、アラッドと最後に会ってから鍛錬を欠かすことはなく、戦争が起これば絶対に参加する。
たとえ……まだ学生という身分のタイミングで戦争が起こったとしても、彼女は間違いなく参加する。
アルバス王国の未来の為に参加させないという意見も出るだろうが、遊ばせておくには十分な戦闘力を有している認識は全員同じ。
それに加えて、フローレンスは人を殺した経験も備わっている為、戦争という名の戦場に立った瞬間、ポンコツになることはあり得なかった。
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