スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
502 / 1,046

五百二話 虐めでも拷問でもない

しおりを挟む
「スティーム、こいつは……多分貴族の令息、だよな」

「そうだね。この国に令息だと、思うよ」

「そうなると……いきなり殺しに掛かってきたとはいえ、殺すのは……不味いよな」

「冒険者らしいけど、多分不味い事になると、予想出来るね」

「ガァアアアアアアッ!!! アアッ!!!!」

いきなり自分たちを殺しに掛かってきた同世代の冒険者であるレイピア使い攻撃を躱しながら、どう対応すべきかを話し合う二人。

それに対し、レイピア使いの青年は獣の様な声を上げながらレイピアを振るい続ける。

(普通に考えれば、俺らはお咎めなしで済む筈。でも……こいつが何処の家の奴かは知らないけど……やっぱり、殺しは不味いか……そうなると、意識を失わせてレドルスの憲兵に渡すのがベストだな)

考えは纏まった。
後は実行に移すのみ。

「あがっ!!??」

「スティーム、適当に浴びせてくれ」

「なるほどね、了解」

ヤクブツを使用した影響で身体能力が大幅に上がっており、技術力も失っていないという割と完璧な状態に近くはあるが……やや自我を失っている状態であるため、判断力が鈍っていた。

アラッドはその隙を突いて糸で脚を絡み取り、転倒させた。
そしてスティームの雷が流され、レイピア使いは電流に悶え苦しむ。

因みに、アラッドの拘束している糸はスレッドチェンジで途中部分から絶縁体に変えてあるため、アラッドまで電流で痺れることはない。

「アバババババババババっ!!!???」

死なない程度の電流を十数秒ほど流したが……まだ意識があったため、更に追加。

「アガガガガガガガガガガガガっ!!!???」

これは決して拷問ではなく、暴走するレイピア使いの青年を殺さない様に気絶させるための対策。
そう……二人が行っている行動は、決して虐めや拷問などではない。

「…………」

「ようやく気絶したな」

「みたいだね。ん~~~~……あまり彼の事を深く知ってる訳じゃないけど、クスリに手を出す様なタイプには見えなかったんだよね」

「そうだな、俺も同じ感想だ」

直接話したどころか、アラッドはレイピア使いの青年と戦ってすらいない。
肉体言語で会話していないのであれば、全く彼の事を知らないと言っても過言ではない。

それでも、パッと見た限りでは道を外れる様な人間には思えなかった。

(……そうだな。いつだって道を外れる人間は、常にその部分が表に出てるとは限らない)

何となく解かるものの、まだ彼の口から自分たちを襲った理由は聞けていない。

だが、そんな自分たちの感情を優先するよりも、レドルスの兵に引き渡した。

「この冒険者に襲われました」

「っ!!?? そ、それは……本当、なのですか?」

目の前にいるのは先日のトーナメントで激闘を繰り広げた優勝者と準優勝者。
そして二人の後ろには彼らの相棒である巨狼と大鷹がいる。

兵士は自身が戦闘者ということもあり……仮に自分が二人に恨みを持っていようとも、アラッドとスティームを襲おうという気が一切起きない。

「信じられないという気持ちは解ります。ただ、こっちとしても同じ気持ちです」

「そ、そうですよね……その、彼に変わった部分とかはありましたか?」

兵士たちの詰め所で現在お話し中であるため、一般人に話が伝わる事は……一応ないので、アラッドは隠さず伝えた。

「彼はクスリを使っていました。調べれば解かると思います」

「ッ、なるほど」

「……これは一応極秘の内容なのですが」

ペンで洋紙の上に、学園で起こった一件について書き記し、兵士に伝えた。

「そんな事が、あったのですね」

「症状としては、この件と殆ど同じかと。なので、自分の母校に連絡を取れば、何かしらの手掛かりを掴めるかもしれません」

手紙はその場で燃やし、伝えたい事は伝え終えた二人。

その後、二人はそれ以降体を動かす気にはならず、カフェで中途半端な満腹感を満たすことにした。

「…………」

「…………」

メニューを頼み終えた二人は、一言も喋らない。
それは今だけではなく、レイピア使いの青年を取り押さえてから殆どそんな状態だった。

「ねぇ、アラッド。その……僕は、彼に失礼な事をしてしまったかな」

二人の中で直接的な関りがあるのはスティーム。

何かあるとすれば、スティームが要因である可能性は高い。

「……スティームの行動によって、あのレイピア使いの青年が失礼と感じたか否か、それに関しては相手による内容だ」

「やっぱり、わざと武器を捨てて徒手格闘に持ち込んだから、かな」

「後のスティームの戦闘光景を見れば、失礼というか……自分は下に見られていた、と思うかもしれないな」

あのトーナメントでスティームの目的は決勝戦でアラッドと戦い、自分が怪物と隣に立ってもおかしくない冒険者だと示すこと。

それは人によっては一回戦、準決勝は勝って当然、全力で戦うまでもない……そう捉えられてもおかしくない。

勿論、アラッドはスティームが一回戦のレイピア使いの青年を、準決勝のアバックを下に見ているとは思っていない。
だが……付き合いが殆どない者たちからすれば、現実は残酷だった。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...