501 / 984
五百一話 何故俺たちを?
しおりを挟む
「「ッ!!??」」
休憩中、いきなり襲って来た攻撃に対し、二人は殆ど同時に反応。
しかし、それよりも先にクロとファルが反応し、クロが襲撃者の刺突を防いだ。
「ふぅーーッ、ふぅーーーッ!!!!」
「ん? どっかで見たことある様な……」
襲撃者は明らかに「裏の人間です!!!」といったそれらしい恰好ではなく、冒険者らしい服装の青年。
「君は、一回戦で戦った……」
「あぁ~~、なるほど。だからっ、どこかで見た頃があるって! 思った訳だ!!!」
いきなり襲って来た襲撃者はニ十歳以下の者だけが参加出来るトーナメントに参加し、一回戦でスティームと激突した選手だった。
(この感じ……どっかで見たことがあるな)
襲撃者の青年はどう見ても勝機を失っており、二人は何故彼が自分たちを襲ってきたのか、その理由についてばかり考えていた。
クロとファルもそんな主人たちの反応を察し、とりあえず攻撃などを弾くだけで潰そうとはしない。
(ん~~~…………そうだ、あれか!!!)
アラッドはパロスト学園にいた時、夜中に自分を襲撃してきた学生を思い出した。
その時の襲撃者である学生はほんの少し理性を残していたが、今回襲撃してきたレイピア使いの青年は完全に正気を失っている。
二人はレイピア使いの青年が何かしらのクスリを服用し、身体能力を大幅に上げていることは即座に把握。
だが、どれだけ考えても自分たちが彼に襲撃される理由が思い付かない。
「スティーム、一応訊くんだが、彼にこう……暴言とか吐いたり、したか?」
「いや、全く。試合中はただただ全力で、戦ってたから……アラッドは?」
「俺はそもそも、彼と関わってないから、な。だから、本当になんで、俺たちを襲ってくるのか、理由がさっぱり、なんだよ」
二人は何度も何度も当日の出来事を振り返るが、やはり恨みを買うような何かをしているとは思えない。
(勝てる、勝てる!!! 勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる、こいつらにカテルッ!!!!!!!)
レイピア使いの青年が何故こんな状態になり、二人を襲うようになったのか……外的理由があれど、根本的な問題は彼の心の弱さだった。
先日のトーナメント戦……決勝戦のアラッドとスティームの激闘を見て、予選に参加した者たちや本選に戦った者たちは大なり小なり衝撃を受けており、大半はその衝撃が向上心への刺激に変わっていた。
エレインやアバックの様に高い向上心を持つ者がいれば、気ダルげ騎士の青年の様に二人の実力を素直に認めながら……それでも俺は俺だというスタンスを貫く者もいる。
レイピア使いの青年も……あの決勝戦を観た当初は、エレインやアバックといった面子と同じ心構えを持っていた。
しかし数日間、同僚とモンスターと戦い、模擬戦を行ったりするが……まるで自分が成長出来てるとは思えない。
実際問題、覚醒……もしくは爆発的な成長など起こらなければ、数日や十日そこらで目に見えて成長することはまずない。
とはいえ……さほど歳が変わらない、片方に至っては確実に自分よりも歳下の人物がハイレベルな戦闘を行っていた。
それを見て焦るなという方が、無理があるというもの。
そんな中、やや酒に酔っていたレイピア使いの青年の前に…………一人の男が現れた。
「これを飲めば、あの目障りな青年二人を潰すことも容易いぞ」
やや酔ってはいた。
それでもローブを着ている顔の見えない人物が、何を言っているのかだけは解かった。
青年は貴族の一員であり、クスリなど忌避すべき存在だという認識を持っていた。
「違法だから手を出さない、卑怯だ……そんなくだらない理由で、怪物二人に勝てるチャンスをみすみす逃すのか? お前が前に進もうとしている間に、奴らも前に進んでいるというのに」
「ッ!!!!!」
謎の男の言葉は確かに的を得ていた。
レイピア使いの青年は今日みたいに少々多めに酒を呑むことはあれど、毎日依頼を受けて休日には訓練も欠かしていない。
だが、それはアラッドとスティームも同じだった。
寧ろ二人は従魔の力を借り、よりハイレベルな訓練を積んでおり……そういった内容を考えると、逆に差が開いているとすら思える。
年齢は殆ど変わらない。寧ろ少し上。
その時点で大きな差があるのに、これからどれだけ頑張ったところで、真の強者たちに追い付けるか?
答えは…………ノーではない。
ノーではないが、強くなるという強い覚悟を背負い、強くなること以外を捨てる必要がある。
彼は本気を出せば怪物、鬼才の領域に足を踏み入れるようなポテンシャルはない。
年齢的にはまだギリギリ間に合う。
肉体的にもまだ全盛期、ピークが来るのは先なため、そこまで強くなることだけに身を投じれば……修羅道に落ちることが出来れば、可能性はある。
だが、人間百二十パーセントほど追い込めば結果を得られるかもしれないと解っていても、その目標以外の全てを投げ捨てるような判断は容易に選べない。
だからこそ……楽に手に入る方法に、駄目だと解っていても……甘い蜜の匂いがする劇物に手を出さずにはいられなかった。
休憩中、いきなり襲って来た攻撃に対し、二人は殆ど同時に反応。
しかし、それよりも先にクロとファルが反応し、クロが襲撃者の刺突を防いだ。
「ふぅーーッ、ふぅーーーッ!!!!」
「ん? どっかで見たことある様な……」
襲撃者は明らかに「裏の人間です!!!」といったそれらしい恰好ではなく、冒険者らしい服装の青年。
「君は、一回戦で戦った……」
「あぁ~~、なるほど。だからっ、どこかで見た頃があるって! 思った訳だ!!!」
いきなり襲って来た襲撃者はニ十歳以下の者だけが参加出来るトーナメントに参加し、一回戦でスティームと激突した選手だった。
(この感じ……どっかで見たことがあるな)
襲撃者の青年はどう見ても勝機を失っており、二人は何故彼が自分たちを襲ってきたのか、その理由についてばかり考えていた。
クロとファルもそんな主人たちの反応を察し、とりあえず攻撃などを弾くだけで潰そうとはしない。
(ん~~~…………そうだ、あれか!!!)
アラッドはパロスト学園にいた時、夜中に自分を襲撃してきた学生を思い出した。
その時の襲撃者である学生はほんの少し理性を残していたが、今回襲撃してきたレイピア使いの青年は完全に正気を失っている。
二人はレイピア使いの青年が何かしらのクスリを服用し、身体能力を大幅に上げていることは即座に把握。
だが、どれだけ考えても自分たちが彼に襲撃される理由が思い付かない。
「スティーム、一応訊くんだが、彼にこう……暴言とか吐いたり、したか?」
「いや、全く。試合中はただただ全力で、戦ってたから……アラッドは?」
「俺はそもそも、彼と関わってないから、な。だから、本当になんで、俺たちを襲ってくるのか、理由がさっぱり、なんだよ」
二人は何度も何度も当日の出来事を振り返るが、やはり恨みを買うような何かをしているとは思えない。
(勝てる、勝てる!!! 勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる勝てる、こいつらにカテルッ!!!!!!!)
レイピア使いの青年が何故こんな状態になり、二人を襲うようになったのか……外的理由があれど、根本的な問題は彼の心の弱さだった。
先日のトーナメント戦……決勝戦のアラッドとスティームの激闘を見て、予選に参加した者たちや本選に戦った者たちは大なり小なり衝撃を受けており、大半はその衝撃が向上心への刺激に変わっていた。
エレインやアバックの様に高い向上心を持つ者がいれば、気ダルげ騎士の青年の様に二人の実力を素直に認めながら……それでも俺は俺だというスタンスを貫く者もいる。
レイピア使いの青年も……あの決勝戦を観た当初は、エレインやアバックといった面子と同じ心構えを持っていた。
しかし数日間、同僚とモンスターと戦い、模擬戦を行ったりするが……まるで自分が成長出来てるとは思えない。
実際問題、覚醒……もしくは爆発的な成長など起こらなければ、数日や十日そこらで目に見えて成長することはまずない。
とはいえ……さほど歳が変わらない、片方に至っては確実に自分よりも歳下の人物がハイレベルな戦闘を行っていた。
それを見て焦るなという方が、無理があるというもの。
そんな中、やや酒に酔っていたレイピア使いの青年の前に…………一人の男が現れた。
「これを飲めば、あの目障りな青年二人を潰すことも容易いぞ」
やや酔ってはいた。
それでもローブを着ている顔の見えない人物が、何を言っているのかだけは解かった。
青年は貴族の一員であり、クスリなど忌避すべき存在だという認識を持っていた。
「違法だから手を出さない、卑怯だ……そんなくだらない理由で、怪物二人に勝てるチャンスをみすみす逃すのか? お前が前に進もうとしている間に、奴らも前に進んでいるというのに」
「ッ!!!!!」
謎の男の言葉は確かに的を得ていた。
レイピア使いの青年は今日みたいに少々多めに酒を呑むことはあれど、毎日依頼を受けて休日には訓練も欠かしていない。
だが、それはアラッドとスティームも同じだった。
寧ろ二人は従魔の力を借り、よりハイレベルな訓練を積んでおり……そういった内容を考えると、逆に差が開いているとすら思える。
年齢は殆ど変わらない。寧ろ少し上。
その時点で大きな差があるのに、これからどれだけ頑張ったところで、真の強者たちに追い付けるか?
答えは…………ノーではない。
ノーではないが、強くなるという強い覚悟を背負い、強くなること以外を捨てる必要がある。
彼は本気を出せば怪物、鬼才の領域に足を踏み入れるようなポテンシャルはない。
年齢的にはまだギリギリ間に合う。
肉体的にもまだ全盛期、ピークが来るのは先なため、そこまで強くなることだけに身を投じれば……修羅道に落ちることが出来れば、可能性はある。
だが、人間百二十パーセントほど追い込めば結果を得られるかもしれないと解っていても、その目標以外の全てを投げ捨てるような判断は容易に選べない。
だからこそ……楽に手に入る方法に、駄目だと解っていても……甘い蜜の匂いがする劇物に手を出さずにはいられなかった。
137
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる