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四百九十六話 使い方次第
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「優勝おめでとう。非常に素晴らしい戦いだった。お陰で何年か寿命が延びたよ」
「?? どうも、ありがとうございます」
闘技場の持ち主が何を言ってるのか解らないが、とりあえず感謝されたことだけは分かる。
「これが、優勝者に送られる槍だ」
手渡された三矛の槍は……ランク七の魔槍。
名はファーロウグ・シャールド。付与されている属性は勿論雷。
(……なるほどな。あの爺さんがあんな大金を出してまで、俺に八百長を仕掛けてきた理由も納得の逸品だ)
アラッドのエース武器、渦雷よりも現段階であればランクは上であり、クオリティも上。
優勝賞品として受け取った本人としてはエース武器を変えるつもりはないが、それでも自然と笑みを浮かべてしまう。
(さて、これから夜道を警戒しないとな)
授与式の終了後、アラッドはスティームとクロ、ファルたちと一緒にお疲れ会を開くため、レドルスの中でもトップファイブに入る店に向かっていた。
「こいつらにも料理を上げてくれ」
「かしこまりました!!!!」
店としては、本日そこそこ注目が集まっていた大会で優勝した有名人の頼みを断るわけがなく、急いでクロやファルのサイズに見合う料理を作り始めた。
「今更だけど、優勝者と準優勝者がその日に夕食を一緒に食べるって、なんか変だよな」
「言われてみればそうだね。でも、僕らはパーティーメンバーなんだから、別におかしくはないんじゃないかい」
「それもそうか」
全て出し切れたということもあり、悔しさ……特に後悔はなかった、なんてことはない。
新しい自身の可能性を感じることが出来たが、それでも負けは負け。
試合の中で狂化を使わせるという目的は一応達成したが、十秒と経たずに終わってしまった。
結局渦雷を抜かせることも出来なかったため、完全に目標を達成したとは言えない。
「にしても、赤雷を習得したか……とんでもないな、スティーム」
「そのとんでもない赤雷を纏った僕を即座に圧倒したんだ。アラッドこそとんでもない存在だよ」
「ふふ……そうか」
友に真っすぐ褒められれば、それはそれで悪い気はしない。
「それに、僕の赤雷はアラッドの狂化みたいに一定の時間を過ぎれば暴走したりはしないけど、体がボロボロになる可能性が高い」
「可能性が高いというか、三秒から五秒。それが無事でいられるタイムリミットだそうだ」
「ッ!!??」
目気覚めてから治癒師にそこら辺の話を聞いていなかったため、思った以上の短さに衝撃を受けるスティーム。
「三秒から五秒だけ、か」
「現段階ではって話だ。これから筋トレしたりレベルを上げて身体能力を上げていけば、自ずと持続時間を伸びていく」
「…………そうだね。悲観するにはちょっと早過ぎたね。現段階で使える武器が手に入ったと喜ぶべきだ」
いずれ、これから先……そういった考えを持つが故に、悲劇に遭遇した人物を知っている。
だからこそ、スティームはこれから伸びるんでは意味がない、と思いかけた。
「使えるってレベルの武器じゃない。紛れもない切り札だ」
「でも持続時間が三秒から五秒だしな~~」
赤雷を会得したと知ったスティームはその瞬間、遥か遠くを走っている友の背中が見えた気がした。
しかし、現実を知ってしまった今、その背中が幻だったと知り、やや意気消沈……しながらも美味な料理を口に運ぶ。
「ギーラス兄さんが使う黒炎もそうだが、一秒もあれば十分必殺技として使える。小分けすれば、相手の意表を突くことも出来るはずだ」
「……そうだね。赤雷だけに頼り過ぎるのは良くないね」
「簡単に言えばそういう事だな」
「やっぱり、アラッドの中身は三十過ぎ……もしくは五十過ぎなんじゃないかって何度も疑ってしまうよ」
「勘弁してくれ。まだ二十も越えてないピチピチの若造だ」
若造にしては強すぎであり、ふてぶてしさもかなりのもの。
「そういう部分に関しては……あれだ、人よりも実戦経験が多いから、ぱっと適当なアドバイスが出てくるんだ」
「なるほど。確かに戦闘面のアドバイスとなれば、実戦経験の数がものを言うという理屈は納得出来る。でも、アラッドの場合あまり苦戦とかはしたことないんじゃないの」
「命懸けの戦いならあった。ただ、苦戦となると……やっぱりあれだな。いざとなれば俺には糸があるから、何だかんだで苦戦したとは感じないかもしれない」
スティームはハッと思い出した。
エース武器である渦雷こそ使わせることが出来なかったが、それでも狂化を使わせることには成功。
ロングソードと体技を使わせ、アラッドの必死さを引き出すことが出来た。
ただ……渦雷よりも奥の手と本人が口にしている糸は、結局使わせることが出来なかった。
フローレンスとの戦いでアラッドが使用したことは知っているため、そこそこ大きいショックを受ける。
フローレンス・カルロストはライバルではない。
顔も知らない他国の令嬢だが、アラッドと激闘を演じた紛れもない強者。
アラッドに糸を使わせた同世代の中でも最強の強者……そんなフローレンスに対し、今初めて強い嫉妬心を持った。
「?? どうも、ありがとうございます」
闘技場の持ち主が何を言ってるのか解らないが、とりあえず感謝されたことだけは分かる。
「これが、優勝者に送られる槍だ」
手渡された三矛の槍は……ランク七の魔槍。
名はファーロウグ・シャールド。付与されている属性は勿論雷。
(……なるほどな。あの爺さんがあんな大金を出してまで、俺に八百長を仕掛けてきた理由も納得の逸品だ)
アラッドのエース武器、渦雷よりも現段階であればランクは上であり、クオリティも上。
優勝賞品として受け取った本人としてはエース武器を変えるつもりはないが、それでも自然と笑みを浮かべてしまう。
(さて、これから夜道を警戒しないとな)
授与式の終了後、アラッドはスティームとクロ、ファルたちと一緒にお疲れ会を開くため、レドルスの中でもトップファイブに入る店に向かっていた。
「こいつらにも料理を上げてくれ」
「かしこまりました!!!!」
店としては、本日そこそこ注目が集まっていた大会で優勝した有名人の頼みを断るわけがなく、急いでクロやファルのサイズに見合う料理を作り始めた。
「今更だけど、優勝者と準優勝者がその日に夕食を一緒に食べるって、なんか変だよな」
「言われてみればそうだね。でも、僕らはパーティーメンバーなんだから、別におかしくはないんじゃないかい」
「それもそうか」
全て出し切れたということもあり、悔しさ……特に後悔はなかった、なんてことはない。
新しい自身の可能性を感じることが出来たが、それでも負けは負け。
試合の中で狂化を使わせるという目的は一応達成したが、十秒と経たずに終わってしまった。
結局渦雷を抜かせることも出来なかったため、完全に目標を達成したとは言えない。
「にしても、赤雷を習得したか……とんでもないな、スティーム」
「そのとんでもない赤雷を纏った僕を即座に圧倒したんだ。アラッドこそとんでもない存在だよ」
「ふふ……そうか」
友に真っすぐ褒められれば、それはそれで悪い気はしない。
「それに、僕の赤雷はアラッドの狂化みたいに一定の時間を過ぎれば暴走したりはしないけど、体がボロボロになる可能性が高い」
「可能性が高いというか、三秒から五秒。それが無事でいられるタイムリミットだそうだ」
「ッ!!??」
目気覚めてから治癒師にそこら辺の話を聞いていなかったため、思った以上の短さに衝撃を受けるスティーム。
「三秒から五秒だけ、か」
「現段階ではって話だ。これから筋トレしたりレベルを上げて身体能力を上げていけば、自ずと持続時間を伸びていく」
「…………そうだね。悲観するにはちょっと早過ぎたね。現段階で使える武器が手に入ったと喜ぶべきだ」
いずれ、これから先……そういった考えを持つが故に、悲劇に遭遇した人物を知っている。
だからこそ、スティームはこれから伸びるんでは意味がない、と思いかけた。
「使えるってレベルの武器じゃない。紛れもない切り札だ」
「でも持続時間が三秒から五秒だしな~~」
赤雷を会得したと知ったスティームはその瞬間、遥か遠くを走っている友の背中が見えた気がした。
しかし、現実を知ってしまった今、その背中が幻だったと知り、やや意気消沈……しながらも美味な料理を口に運ぶ。
「ギーラス兄さんが使う黒炎もそうだが、一秒もあれば十分必殺技として使える。小分けすれば、相手の意表を突くことも出来るはずだ」
「……そうだね。赤雷だけに頼り過ぎるのは良くないね」
「簡単に言えばそういう事だな」
「やっぱり、アラッドの中身は三十過ぎ……もしくは五十過ぎなんじゃないかって何度も疑ってしまうよ」
「勘弁してくれ。まだ二十も越えてないピチピチの若造だ」
若造にしては強すぎであり、ふてぶてしさもかなりのもの。
「そういう部分に関しては……あれだ、人よりも実戦経験が多いから、ぱっと適当なアドバイスが出てくるんだ」
「なるほど。確かに戦闘面のアドバイスとなれば、実戦経験の数がものを言うという理屈は納得出来る。でも、アラッドの場合あまり苦戦とかはしたことないんじゃないの」
「命懸けの戦いならあった。ただ、苦戦となると……やっぱりあれだな。いざとなれば俺には糸があるから、何だかんだで苦戦したとは感じないかもしれない」
スティームはハッと思い出した。
エース武器である渦雷こそ使わせることが出来なかったが、それでも狂化を使わせることには成功。
ロングソードと体技を使わせ、アラッドの必死さを引き出すことが出来た。
ただ……渦雷よりも奥の手と本人が口にしている糸は、結局使わせることが出来なかった。
フローレンスとの戦いでアラッドが使用したことは知っているため、そこそこ大きいショックを受ける。
フローレンス・カルロストはライバルではない。
顔も知らない他国の令嬢だが、アラッドと激闘を演じた紛れもない強者。
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