489 / 1,043
四百八十九話 踏み出す力
しおりを挟む
(こいつがあのアラッドのパーティーメンバーの男か……ある程度強いのは解ってる。でも、こんなところで躓いてられない!!!!)
槍使いの騎士、アバックはスティームの試合をしっかりと観察していた。
その結果……まんまとスティームの術中にハマっていた。
先程の戦いで、双剣の底力は既に確認出来たと勘違いしてしまっている。
(おや……もしかしたら、本当に作戦が上手く言ってるのかもしれないね。でも、だからって油断は禁物)
余裕という名の油断が生まれていたアバックに対し、スティームは自身の作戦が上手くいってるかもしれないと思いつつ、心の底から油断はしていなかった。
「二人とも、これは殺し合いではなく試合だ。それを忘れない様に」
「「はい」」
「よろしい。それでは……始め!!!!」
審判の合図と共に、両者は……直ぐにその場から動かなかった。
(うん、やっぱり構えに殆ど隙が見当たらないね)
(ん? 一回戦を見る限り、最初からガンガン攻めるタイプに思えたけど……実は違うのか?)
アバックはスティームが攻めてこなかったことに少々驚いたが、それなら自分が攻めるまでと意識を切り替え、鋭い刺突を放つ。
(速度は……一回戦目のレイピア使いより、速い、かな! でも、連射力は、そこまでじゃない、けど……一撃の威力は、やっぱり彼の方が、上だね!!!)
冷静に分析しながら連続で繰り出される突きを捌き……隙を付いて小さな斬撃刃を放つ。
勿論……狙うは頭部と股間。
二人とも雷属性をメインに使うスタイルであるため、雷の斬撃刃を飛ばして当てても、本当に大したダメージにはならない。
しかし、当たる場所が頭部と股間であれば話は別。
(っ!? 優しそう顔して、随分とえげつない攻撃を、するんだね!!!)
アバックは直ぐにスティームの攻撃に反応はするものの、その攻撃に関して暴言を吐いたり非難することはなかった。
今回は命懸けの戦闘、実戦ではない。
しかし……騎士と騎士が互いのプライドをかけて戦う様な真剣勝負ではない。
真剣勝負ではあれど、ただ参加者のどちらかが強いのかを決めるためだけの試合。
そこには、試合前に何かするなどの反則行為を除けば、頭部や股間を狙った攻撃など、寧ろそこを攻めて当然まである。
(やはり、手数ではこっちがやや不利、だね)
槍には薙ぎ払いという、邪魔者を全て吹き飛ばす攻撃方法がある。
広範囲、高威力の攻撃ではあるが、使いどころを見誤れば諸刃の剣となる。
加えて……スティームの様なスピードに優れた戦闘者が相手であれば、尚更容易に使えない攻撃方法。
(……前後の距離感の調整が、上手いね。攻撃も、全然一定の、リズムじゃない)
苦戦という戦況を感じているのはアバックだけではなく、スティームも同じだった。
器用に片方でいなし、もう片方で斬撃刃を放って牽制。
上手く体勢が崩れたら一気に攻める……そう考えていたのだが、その場に陣取るのではなく上手く前後に動き、距離感を微妙に崩されてしまう。
(もう、彼の心に油断はないかもしれないね……仕方ない。ここからは、勇気を振り絞る時間だ)
心の中で宣言した通り、スティームは勇気を振り絞った。
アラッドであれば嬉々として障害を潜り抜けようとするが、それはアホみたいに期待上げた肉体とバカみたいに積み重ねてきた実戦があるからこその結果。
そんな鬼才に対し、スティームは勇気を振り絞らなければ、目の前の騎士に勝てる道筋が見えない。
ただ……アラッドとの初戦闘で見せた様な怒りはない。
冷静に、一歩ずつ、タイミングを見計らい……勇気を振り絞った。
「ッ!!!!」
勇気を振り絞り、完全に攻撃を見切った最高のスタートダッシュ。
しかし、アバックも並の戦闘者ではない。
首筋に迫る刃のイメージをリアルに感じ取り、大げさにステップバック。
リングの外に落ちなければ構わない。
そういった考えが見え透いて解るほどの緊急退避。
(魔力には余裕がある。少し、削ろうか)
手数では対戦相手の方が上……その事実を、背水の陣に追い詰められたアバックは再度思い知らされる。
幾重にも放たれる雷の斬撃刃への対応に追われる。
(この数は、さすがに、不味い!!!!!)
ここで斬撃だけではなく、刺突が解禁された。
斬撃刃だけであれば槍の中央を持ち、両端を使って弾けば手数の多さはカバー出来る。
だが、そこに刺突まで混ざると、槍で捌くだけでは限度がある。
(ここで……終わるのか?)
離れた場所からだた遠距離攻撃を放ち続けるだけではなく、徐々に徐々に近づき、その首を刈り取ろうと近づいてくる
(…………ふざけるな!!!! そんなの……いくらなんでも、ダサ過ぎるじゃないか!!!!!!)
何故、今回のトーナメントが開かれたのか。
その理由を思い出したアバックの表情が急激に変わった。
アバックもまた、アラッドの様に障害に対して嬉々とした表情で挑む様な、意図的に頭のネジを外したような人間の形をしたナニカではない。
それを本人も解ってるからこそ……スティームと同様に、勇気を振り絞った。
槍使いの騎士、アバックはスティームの試合をしっかりと観察していた。
その結果……まんまとスティームの術中にハマっていた。
先程の戦いで、双剣の底力は既に確認出来たと勘違いしてしまっている。
(おや……もしかしたら、本当に作戦が上手く言ってるのかもしれないね。でも、だからって油断は禁物)
余裕という名の油断が生まれていたアバックに対し、スティームは自身の作戦が上手くいってるかもしれないと思いつつ、心の底から油断はしていなかった。
「二人とも、これは殺し合いではなく試合だ。それを忘れない様に」
「「はい」」
「よろしい。それでは……始め!!!!」
審判の合図と共に、両者は……直ぐにその場から動かなかった。
(うん、やっぱり構えに殆ど隙が見当たらないね)
(ん? 一回戦を見る限り、最初からガンガン攻めるタイプに思えたけど……実は違うのか?)
アバックはスティームが攻めてこなかったことに少々驚いたが、それなら自分が攻めるまでと意識を切り替え、鋭い刺突を放つ。
(速度は……一回戦目のレイピア使いより、速い、かな! でも、連射力は、そこまでじゃない、けど……一撃の威力は、やっぱり彼の方が、上だね!!!)
冷静に分析しながら連続で繰り出される突きを捌き……隙を付いて小さな斬撃刃を放つ。
勿論……狙うは頭部と股間。
二人とも雷属性をメインに使うスタイルであるため、雷の斬撃刃を飛ばして当てても、本当に大したダメージにはならない。
しかし、当たる場所が頭部と股間であれば話は別。
(っ!? 優しそう顔して、随分とえげつない攻撃を、するんだね!!!)
アバックは直ぐにスティームの攻撃に反応はするものの、その攻撃に関して暴言を吐いたり非難することはなかった。
今回は命懸けの戦闘、実戦ではない。
しかし……騎士と騎士が互いのプライドをかけて戦う様な真剣勝負ではない。
真剣勝負ではあれど、ただ参加者のどちらかが強いのかを決めるためだけの試合。
そこには、試合前に何かするなどの反則行為を除けば、頭部や股間を狙った攻撃など、寧ろそこを攻めて当然まである。
(やはり、手数ではこっちがやや不利、だね)
槍には薙ぎ払いという、邪魔者を全て吹き飛ばす攻撃方法がある。
広範囲、高威力の攻撃ではあるが、使いどころを見誤れば諸刃の剣となる。
加えて……スティームの様なスピードに優れた戦闘者が相手であれば、尚更容易に使えない攻撃方法。
(……前後の距離感の調整が、上手いね。攻撃も、全然一定の、リズムじゃない)
苦戦という戦況を感じているのはアバックだけではなく、スティームも同じだった。
器用に片方でいなし、もう片方で斬撃刃を放って牽制。
上手く体勢が崩れたら一気に攻める……そう考えていたのだが、その場に陣取るのではなく上手く前後に動き、距離感を微妙に崩されてしまう。
(もう、彼の心に油断はないかもしれないね……仕方ない。ここからは、勇気を振り絞る時間だ)
心の中で宣言した通り、スティームは勇気を振り絞った。
アラッドであれば嬉々として障害を潜り抜けようとするが、それはアホみたいに期待上げた肉体とバカみたいに積み重ねてきた実戦があるからこその結果。
そんな鬼才に対し、スティームは勇気を振り絞らなければ、目の前の騎士に勝てる道筋が見えない。
ただ……アラッドとの初戦闘で見せた様な怒りはない。
冷静に、一歩ずつ、タイミングを見計らい……勇気を振り絞った。
「ッ!!!!」
勇気を振り絞り、完全に攻撃を見切った最高のスタートダッシュ。
しかし、アバックも並の戦闘者ではない。
首筋に迫る刃のイメージをリアルに感じ取り、大げさにステップバック。
リングの外に落ちなければ構わない。
そういった考えが見え透いて解るほどの緊急退避。
(魔力には余裕がある。少し、削ろうか)
手数では対戦相手の方が上……その事実を、背水の陣に追い詰められたアバックは再度思い知らされる。
幾重にも放たれる雷の斬撃刃への対応に追われる。
(この数は、さすがに、不味い!!!!!)
ここで斬撃だけではなく、刺突が解禁された。
斬撃刃だけであれば槍の中央を持ち、両端を使って弾けば手数の多さはカバー出来る。
だが、そこに刺突まで混ざると、槍で捌くだけでは限度がある。
(ここで……終わるのか?)
離れた場所からだた遠距離攻撃を放ち続けるだけではなく、徐々に徐々に近づき、その首を刈り取ろうと近づいてくる
(…………ふざけるな!!!! そんなの……いくらなんでも、ダサ過ぎるじゃないか!!!!!!)
何故、今回のトーナメントが開かれたのか。
その理由を思い出したアバックの表情が急激に変わった。
アバックもまた、アラッドの様に障害に対して嬉々とした表情で挑む様な、意図的に頭のネジを外したような人間の形をしたナニカではない。
それを本人も解ってるからこそ……スティームと同様に、勇気を振り絞った。
165
お気に入りに追加
6,127
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
逆行転生って胎児から!?
章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。
そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。
そう、胎児にまで。
別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。
長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる