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四百八十八話 本当に悪いと思ってるなら
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時間となり、アラッドとロングソード使いの騎士はリングへと上がる。
(ふむ……なんだか、少々ダルそうな顔をしてるな。体調不良なのか?)
心配そうな表情を浮かべるアラッド。
そんな試合開始前とは思えない表情を浮かべている対戦相手に……青年騎士は声をかけた。
「あんた、なんでこの大会に出ようと思ったんだ?」
「理由か……面白そうだから。それだけで不満か」
「あぁ、そうだね。俺としちゃ、そこそこ不満だ」
アラッドという鬼才を目の前に、男は堂々と不満だと口にした。
(不満、と口にしながら、そこまで表情に……眼の奥に勝利への執着などは見えない。加えて、俺に対しての怒りや敵意も大して大きくない、な)
ポーカーフェイスが上手いから本心が解らないという可能性もある。
しかし……それでもアラッドは、目の前の青年騎士が本気で自分に対して不快な思いを持っている様には思えない。
「そうか、それなら……戦闘者だから、と答えよう。戦闘を生業とする者であれば、こういった大会に参加したいと思うのは至極当然だろ」
「……あぁ、そうだな。間違ってねぇよ。変なこと聞いて悪かった」
「いや、特に気にしてない。ただ、そうだな……もし本当に少しでも悪いと思ってるなら、勝負を適当に投げ出さないでほしい。勿論、強制ではないがな」
「…………解ったよ」
試合前のちょっとした話し合いが終わり、審判はいつも通り殺し合いはするなよと伝え、開始の合図を告げる。
(殺し合いをしてはならない? 残念なことに、この怪物は俺が殺そうとしても殺せねぇよ!!!)
殺意こそないものの、気だるげな雰囲気の青年騎士は躊躇なく急所などを狙ってロングソードを振るう。
彼は元々槍使いの騎士の従者によって雇われた人物だった。
年齢が十九ということもあり、トーナメントの年齢に適している。
そして彼自身、金に執着はあれど、名誉にはそこまで執着しないタイプという事もあり、槍使いの騎士が知らないところで、八百長の交渉が行われていた。
彼にとって優勝した褒美として手に入る物も魅力的ではあったが、八百長の報酬として渡された金額の方が魅力だと感じ、下手に実家より爵位が上の貴族と対立したくないという考えもあり、素直に秘密裏の依頼を受けた。
(やだやだ。噂は聞いていたけど、本当にバケモンだな)
得意の水の魔力をロングソードに纏い、並行して攻撃魔法も放つ。
その器用貧乏……と呼ぶには少々上等な戦闘技術を体感し、当然のことながら……無意識に笑みを浮かべてしまう。
(ったく、本気で殺すつもりはない、とはいえ! 結構マジで、本気でやってんだぞ!!!)
騎士らしい洗礼された剣技と、戦い勝つことを優先した剣技が上手く組み合わさっており、片方しかしらない者からすれば、非常に厄介な戦闘スタイル。
しかし……アラッドもまたその両方も扱う戦士であるため、嬉々としてその責めを受け止め、お返しとばかりカウンターを返す。
「どうだ、まだ戦れるか!!??」
「ッ……戦ってやるよ!!!!!」
普段の気ダルげ青年騎士であれば、適当に放り投げてもおかしくない場面なのだが……この時ばかりは戦闘を放棄することなく、更に一歩踏み込んで攻めた。
(なんだ、良い顔出来るじゃないか!!!!)
本当にこの大会に参加して良かったと再度思い。アラッドも一つギアを上げた。
「ぐっ!!!???」
そして試合が始まってから約四分後、アラッドの剛剣をガードすることに成功するものの、踏ん張りが効かず場外に押し出されてしまい、決着。
「楽しかったよ」
勝利したアラッドはリングを降り、尻もちを付いている気ダルげ青年騎士に手を差し伸べる。
特にプライドもない青年騎士は素直にアラッドの手を取り、起き上がった。
「あんたみたいな化け物にそう言っても得ると、真面目に戦った甲斐があるよ」
「はっはっは、そりゃどうも……なぁ、向こうが何か仕掛けてくると思うか?」
「決勝戦が始まるまでの時間を考えれば、無理だと思うぞ」
「そうか、ありがとな」
第一準決勝も大きく盛り上がり、約十分後には第二準決勝が始まる。
「ふぅ~~~。結構緊張するね」
「それは対戦相手の槍使いが割と強いからか?」
「まぁそうだね。全ての面において差があるとは思えないけど、それでもそれなりに緊張はするよ」
スティームの目標は決勝戦でアラッドと戦う事。
次の試合を勝てばそれが叶うが、対戦相手の騎士は当然ながら並みの騎士ではない。
元々家の人間が裏であれよこれよと動いていたことなど知らず、アラッドという中々のイレギュラーが決勝戦に上がってきてもモチベーションを落すことなく集中力を高めている。
「でも、準決勝を有利に進める為に、初戦であぁいう戦い方をしたんだろ。大した応援にならないとは思うけど、俺はスティームのこれまで積み重ねてきたものの方が、対戦相手の騎士より勝ってると思う」
「…………ふふ、本当に良い意味で追い詰めてくれるね、アラッド」
仲間から、友からの負けられない激励を貰い、いざ準決勝へと臨む。
(ふむ……なんだか、少々ダルそうな顔をしてるな。体調不良なのか?)
心配そうな表情を浮かべるアラッド。
そんな試合開始前とは思えない表情を浮かべている対戦相手に……青年騎士は声をかけた。
「あんた、なんでこの大会に出ようと思ったんだ?」
「理由か……面白そうだから。それだけで不満か」
「あぁ、そうだね。俺としちゃ、そこそこ不満だ」
アラッドという鬼才を目の前に、男は堂々と不満だと口にした。
(不満、と口にしながら、そこまで表情に……眼の奥に勝利への執着などは見えない。加えて、俺に対しての怒りや敵意も大して大きくない、な)
ポーカーフェイスが上手いから本心が解らないという可能性もある。
しかし……それでもアラッドは、目の前の青年騎士が本気で自分に対して不快な思いを持っている様には思えない。
「そうか、それなら……戦闘者だから、と答えよう。戦闘を生業とする者であれば、こういった大会に参加したいと思うのは至極当然だろ」
「……あぁ、そうだな。間違ってねぇよ。変なこと聞いて悪かった」
「いや、特に気にしてない。ただ、そうだな……もし本当に少しでも悪いと思ってるなら、勝負を適当に投げ出さないでほしい。勿論、強制ではないがな」
「…………解ったよ」
試合前のちょっとした話し合いが終わり、審判はいつも通り殺し合いはするなよと伝え、開始の合図を告げる。
(殺し合いをしてはならない? 残念なことに、この怪物は俺が殺そうとしても殺せねぇよ!!!)
殺意こそないものの、気だるげな雰囲気の青年騎士は躊躇なく急所などを狙ってロングソードを振るう。
彼は元々槍使いの騎士の従者によって雇われた人物だった。
年齢が十九ということもあり、トーナメントの年齢に適している。
そして彼自身、金に執着はあれど、名誉にはそこまで執着しないタイプという事もあり、槍使いの騎士が知らないところで、八百長の交渉が行われていた。
彼にとって優勝した褒美として手に入る物も魅力的ではあったが、八百長の報酬として渡された金額の方が魅力だと感じ、下手に実家より爵位が上の貴族と対立したくないという考えもあり、素直に秘密裏の依頼を受けた。
(やだやだ。噂は聞いていたけど、本当にバケモンだな)
得意の水の魔力をロングソードに纏い、並行して攻撃魔法も放つ。
その器用貧乏……と呼ぶには少々上等な戦闘技術を体感し、当然のことながら……無意識に笑みを浮かべてしまう。
(ったく、本気で殺すつもりはない、とはいえ! 結構マジで、本気でやってんだぞ!!!)
騎士らしい洗礼された剣技と、戦い勝つことを優先した剣技が上手く組み合わさっており、片方しかしらない者からすれば、非常に厄介な戦闘スタイル。
しかし……アラッドもまたその両方も扱う戦士であるため、嬉々としてその責めを受け止め、お返しとばかりカウンターを返す。
「どうだ、まだ戦れるか!!??」
「ッ……戦ってやるよ!!!!!」
普段の気ダルげ青年騎士であれば、適当に放り投げてもおかしくない場面なのだが……この時ばかりは戦闘を放棄することなく、更に一歩踏み込んで攻めた。
(なんだ、良い顔出来るじゃないか!!!!)
本当にこの大会に参加して良かったと再度思い。アラッドも一つギアを上げた。
「ぐっ!!!???」
そして試合が始まってから約四分後、アラッドの剛剣をガードすることに成功するものの、踏ん張りが効かず場外に押し出されてしまい、決着。
「楽しかったよ」
勝利したアラッドはリングを降り、尻もちを付いている気ダルげ青年騎士に手を差し伸べる。
特にプライドもない青年騎士は素直にアラッドの手を取り、起き上がった。
「あんたみたいな化け物にそう言っても得ると、真面目に戦った甲斐があるよ」
「はっはっは、そりゃどうも……なぁ、向こうが何か仕掛けてくると思うか?」
「決勝戦が始まるまでの時間を考えれば、無理だと思うぞ」
「そうか、ありがとな」
第一準決勝も大きく盛り上がり、約十分後には第二準決勝が始まる。
「ふぅ~~~。結構緊張するね」
「それは対戦相手の槍使いが割と強いからか?」
「まぁそうだね。全ての面において差があるとは思えないけど、それでもそれなりに緊張はするよ」
スティームの目標は決勝戦でアラッドと戦う事。
次の試合を勝てばそれが叶うが、対戦相手の騎士は当然ながら並みの騎士ではない。
元々家の人間が裏であれよこれよと動いていたことなど知らず、アラッドという中々のイレギュラーが決勝戦に上がってきてもモチベーションを落すことなく集中力を高めている。
「でも、準決勝を有利に進める為に、初戦であぁいう戦い方をしたんだろ。大した応援にならないとは思うけど、俺はスティームのこれまで積み重ねてきたものの方が、対戦相手の騎士より勝ってると思う」
「…………ふふ、本当に良い意味で追い詰めてくれるね、アラッド」
仲間から、友からの負けられない激励を貰い、いざ準決勝へと臨む。
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