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四百八十三話 手加減はバレる
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『あ、圧倒……圧倒的過ぎる!!!! なんとなんと、アラッド選手!! 武器を使わないどころか、素手による格闘戦すら行わず……投げという隙が大きい攻撃だけで予選を通過してしまったあああああああああっ!!!!』
ただ圧倒するのではなく、本来戦いでは多用されることのない投げのみを攻撃に使っての勝利。
これには解説だけではなく……観客たちも大いに沸き上がった。
(次はスティームの番か? 多分、俺と同じグループの連中と同じぐらいの実力者しかいないなら、問題無く勝ち上がってくるだろ)
アラッドがスティームなら絶対に勝ち残って本選に上がってくると確信している頃……本人は先程までアラッドが体験していた状況と同じ空間にいた。
(はぁ~……お願いだから、そんなにギラギラとした視線を向けないでほしいな~~)
怪物には劣るものの、スティームも二十を越えていない若者の中では非常に実力が高く、本来であればもっと堂々とした態度で待機していてもおかしくない。
しかし……ここ最近、怪物や鬼才という言葉が真に相応しい歳下の冒険者と出会い、更には人族でありながら隔世遺伝によって獣心を解放出来るオルフェンという若者がいると知ってしまった。
それ故に、数か月前ほど体中にみなぎる自信は霧散していた。
「予選の第二回戦を始めます」
だとしても、予選を勝ち抜いて友と戦うまでは負けられない。
その思いを再度胸に刻み込み、リングへ上る。
「常識の範囲内で戦うんだぞ……すぅーーー、始め!!!!!!」
審判が開始の合図を行った瞬間、数名の冒険者たちがスティームに襲い掛かる。
(三人か、丁度良いね)
アラッドと一緒に行動している冒険者。
それだけでスティームは他の同僚たちから警戒される対象ではあるが……アラッドほど恐ろしい存在だとは認定されてはおらず。囲む数は少ない。
(ん~~~~……どうせならその考え、利用させてもらおうかな)
生憎と、スティームにはアラッドの様にメインウェポン以外で、彼らを圧倒する武器はない。
だが……ここ何日かの特訓の成果が現れており、アラッドとクロとファルの攻撃に比べれば彼らの攻撃は非常に優しく、対応しやすい。
(ふふ、やっぱりどう動かなければ、観客たちからどう思われる、非難されるか解ってるみたいだね)
スティーム以外の参加者たちは事前に話し合っていた訳ではないが、最初の数人で倒せなければ、もっと人数を投入して倒そうと考えていた。
しかし、スティームが現在三人と戦っている間に、誰一人として戦闘不能……もしくは場外に落ちて離脱ということが起きなければ、当然ながら観客たちから彼らはスティームをリンチする為に、わざと手加減して戦っていると思われる。
それが解からない程バカではなく、時間が長引けば長引くほど、戦わなければならなかった人数が徐々に減っていき……人数では圧倒的に有利な三人も、徐々に息が上がり始める。
(そろそろ終わらせても良さそうだね)
もう殆どリングの上に人が残っていないと確認すると、一気に動きを加速させて三人の脚を刈り取る。
「ふんっ!!!!」
「おげっ!!??」
「あがっ!!??」
地面に転がる三人の内、二人を蹴っ飛ばして場外に落とすことに成功。
アラッドの投げの様にある程度手加減はされていないため、とりあえず胸骨か肋骨は折れ、もしかしたら内臓も傷付いたかもしれない。
(残り二人だね)
ギリギリ蹴られずに回避した一人、他の戦場で戦っていたもう一人が合流。
二人は特に話し合うこともなくスティームに襲い掛かる。
片方はじっくりとスティームの戦いっぷりを観察していた訳ではないが、それでも冒険者としての本能が「まずはあいつを潰せ!!!!!」と全力で叫ぶ。
そして実際に武器を交え、本能だけでは頭も目の前の青年は自分より上だと理解してしまう。
「これ以上、もう何も出来ないと思うけど……どうする?」
「ぐっ……降参だ」
「ちっ、クソったれが」
「そこまでッ!!!!!!!」
残り二人が自身の敗北を認めたことで、試合終了。
見事勝ち残ったスティームに盛大な拍手が送られた。
「お疲れ、スティーム。予定通りに事が運んだって感じだったな」
「そうだね。他の選手たちが思った通り動いてくれて助かったよ。アラッドの時みたいに一斉に襲い掛かられたら、さすがに対応出来なかっただろうからね」
一対他全員ではさすがに勝てない。
そう口にする友を見て……アラッドは嘘だなと心の中で呟いた。
(スティームなら、それでも勝てない事はない筈だ。心配してる部分は……殺してしまうか否かのラインだろうな)
謙遜しながらも、やはり最初の模擬戦時に見せた野生は消えていないと確信し、薄っすらと笑みを零す。
その後、二人は残りの予選を観戦。
そして少しの休憩を挟んだ後……いよいよトーナメントが始まる。
(……トーナメントが始まるまで、結局あの二人は仕掛けてこなかったな。まっ、俺としてはトーナメントに集中できるから嬉しいんだが……)
僅かな不安を抱えながら、アラッドは二回戦目の対戦相手が決まる試合に意識を集中させた。
ただ圧倒するのではなく、本来戦いでは多用されることのない投げのみを攻撃に使っての勝利。
これには解説だけではなく……観客たちも大いに沸き上がった。
(次はスティームの番か? 多分、俺と同じグループの連中と同じぐらいの実力者しかいないなら、問題無く勝ち上がってくるだろ)
アラッドがスティームなら絶対に勝ち残って本選に上がってくると確信している頃……本人は先程までアラッドが体験していた状況と同じ空間にいた。
(はぁ~……お願いだから、そんなにギラギラとした視線を向けないでほしいな~~)
怪物には劣るものの、スティームも二十を越えていない若者の中では非常に実力が高く、本来であればもっと堂々とした態度で待機していてもおかしくない。
しかし……ここ最近、怪物や鬼才という言葉が真に相応しい歳下の冒険者と出会い、更には人族でありながら隔世遺伝によって獣心を解放出来るオルフェンという若者がいると知ってしまった。
それ故に、数か月前ほど体中にみなぎる自信は霧散していた。
「予選の第二回戦を始めます」
だとしても、予選を勝ち抜いて友と戦うまでは負けられない。
その思いを再度胸に刻み込み、リングへ上る。
「常識の範囲内で戦うんだぞ……すぅーーー、始め!!!!!!」
審判が開始の合図を行った瞬間、数名の冒険者たちがスティームに襲い掛かる。
(三人か、丁度良いね)
アラッドと一緒に行動している冒険者。
それだけでスティームは他の同僚たちから警戒される対象ではあるが……アラッドほど恐ろしい存在だとは認定されてはおらず。囲む数は少ない。
(ん~~~~……どうせならその考え、利用させてもらおうかな)
生憎と、スティームにはアラッドの様にメインウェポン以外で、彼らを圧倒する武器はない。
だが……ここ何日かの特訓の成果が現れており、アラッドとクロとファルの攻撃に比べれば彼らの攻撃は非常に優しく、対応しやすい。
(ふふ、やっぱりどう動かなければ、観客たちからどう思われる、非難されるか解ってるみたいだね)
スティーム以外の参加者たちは事前に話し合っていた訳ではないが、最初の数人で倒せなければ、もっと人数を投入して倒そうと考えていた。
しかし、スティームが現在三人と戦っている間に、誰一人として戦闘不能……もしくは場外に落ちて離脱ということが起きなければ、当然ながら観客たちから彼らはスティームをリンチする為に、わざと手加減して戦っていると思われる。
それが解からない程バカではなく、時間が長引けば長引くほど、戦わなければならなかった人数が徐々に減っていき……人数では圧倒的に有利な三人も、徐々に息が上がり始める。
(そろそろ終わらせても良さそうだね)
もう殆どリングの上に人が残っていないと確認すると、一気に動きを加速させて三人の脚を刈り取る。
「ふんっ!!!!」
「おげっ!!??」
「あがっ!!??」
地面に転がる三人の内、二人を蹴っ飛ばして場外に落とすことに成功。
アラッドの投げの様にある程度手加減はされていないため、とりあえず胸骨か肋骨は折れ、もしかしたら内臓も傷付いたかもしれない。
(残り二人だね)
ギリギリ蹴られずに回避した一人、他の戦場で戦っていたもう一人が合流。
二人は特に話し合うこともなくスティームに襲い掛かる。
片方はじっくりとスティームの戦いっぷりを観察していた訳ではないが、それでも冒険者としての本能が「まずはあいつを潰せ!!!!!」と全力で叫ぶ。
そして実際に武器を交え、本能だけでは頭も目の前の青年は自分より上だと理解してしまう。
「これ以上、もう何も出来ないと思うけど……どうする?」
「ぐっ……降参だ」
「ちっ、クソったれが」
「そこまでッ!!!!!!!」
残り二人が自身の敗北を認めたことで、試合終了。
見事勝ち残ったスティームに盛大な拍手が送られた。
「お疲れ、スティーム。予定通りに事が運んだって感じだったな」
「そうだね。他の選手たちが思った通り動いてくれて助かったよ。アラッドの時みたいに一斉に襲い掛かられたら、さすがに対応出来なかっただろうからね」
一対他全員ではさすがに勝てない。
そう口にする友を見て……アラッドは嘘だなと心の中で呟いた。
(スティームなら、それでも勝てない事はない筈だ。心配してる部分は……殺してしまうか否かのラインだろうな)
謙遜しながらも、やはり最初の模擬戦時に見せた野生は消えていないと確信し、薄っすらと笑みを零す。
その後、二人は残りの予選を観戦。
そして少しの休憩を挟んだ後……いよいよトーナメントが始まる。
(……トーナメントが始まるまで、結局あの二人は仕掛けてこなかったな。まっ、俺としてはトーナメントに集中できるから嬉しいんだが……)
僅かな不安を抱えながら、アラッドは二回戦目の対戦相手が決まる試合に意識を集中させた。
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