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四百五十七話 珍客
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ギーラスもアラッドと同じく、自身の武勇伝については驕ることなく謙虚さを持ちながら語る。
とはいえ、それでも第三王女であるフィリアスは英雄自ら話す激闘の内容に心を躍らせた。
「フィリアス様の我儘に付き合ってくれてありがとう」
話が終わった後、ディーネは感謝の言葉を伝えながら小さな袋を渡した。
渡された袋の中身は……当然、何十枚もの金貨。
ギーラスとしては弟の武勇伝を自慢し、こちらに関しては少々恥ずかしいものの、自身の武勇伝を語っただけ。
第三王女と対面して長々と話すことに関してはやや緊張したが、基本的に美味い紅茶や菓子を堪能でき、ストレスなど皆無。
そんな自分が報酬を受け取っても良いのか? という疑問がほんの一瞬だけ胸の内に生まれるが、それでも貴族の令息として……現在は騎士として生きているが故に、面子という物がどれだけ面倒で大変なのか解る。
ディーネから渡された物に対して何も言うことはなく、素直に受け取った。
(さて、どうやって過ごそうか……武器でも見に行くか、それともまた母校にお邪魔するのもありか……一先ず夕食時までぶらぶらしようか)
特に目的はなく、一人で王都を歩いては武器屋をメインに回る。
場所によっては王都と言えど、三下感丸出しの愚か者に絡まれる場合もあるが……ギーラスはササっと意識を刈り取り、周辺を巡回している兵士か騎士にパス。
そこら辺の三下如き……ある程度訓練を積み、実戦を経験してる者であってもギーラスには敵わない。
(そろそろ良さげな店を探そうかな)
腹の減り具合的に、ベストなタイミング。
そう思って一番良い匂いが漂う店を選ぼうと歩き始めた瞬間、後方から迫る気配を感じ取り、反射的に後方に振り向いた。
「ご機嫌よう、ギーラス・パーシブル様」
「その制服……パルディア学園の生徒、だね」
「はい、その通りです。私、フローレンス・カルロストと申します」
「ッ!! 君があの……そうか。ところで、こんな時間に声をかけてきたということは、もしかして夕食の誘いかな?」
「えぇ、その通りです。ギーラス様がよろしければですが」
冗談で言ったつもりが、まさかの正解。
(いやぁ~~、本当に予想外なお客さんだな)
断るという選択肢は当然あり、断られればフローレンスも大人しく引き下がる。
しかし、ギーラスとしては弟をあと一歩のところまで追い詰めた人物に興味があった。
「分かった。そのお誘い、是非受けさせてもらおう」
こうして二人は密会……という訳ではないが、ところどころ顔や服装を隠し、昼間に訪れたカフェに似たレストランへと訪れた。
食事の場所は、勿論個室。
早速料理を注文。
食事が始まると……フローレンスは早速、アラッドの兄であるギーラスを食事に誘った本題について話し始める。
「ギーラス様、もしよければアラッドさんの好みの女性のタイプなどを教えていただけませんか」
「ッ!!!!」
肉が気管に入り、本気で窒息死するかもと氏の危険を感じたギーラス。
(あ、危ない危ない……えっ、もしかしなくてもそういう事、なのかい?)
フローレンスの方へ顔を向けるが……予想に反して、そういった表情ではなく、ごく自然な……真面目な表情のまま。
「アラッドの好みのタイプ、か…………因みにだけど、何故その様なことを訊くんだい?」
公爵家の人間ということもあり、貴族界の事情を考えると……そうほいほいとプライベートな情報は話せない。
「私としてはもっとアラッドさんと話したいと思ってるのですが、どうやらあまりアラッドさんに好かれていないようなので……好みだけでも寄せてみようかと思いまして」
「な、なるほど。そうなんですね」
うちの弟はやはり凄い、と改めて思った。
ギーラスはフローレンス・カルロストのことを詳しく知らない。
ただ……誰かに言われたから、自分の何かを変える……そんな心が薄く細いような女性には思えない。
そんな初対面で抱いた感想は正しく、過去に自分に興味を持たせるために、確かに顔は良い男が貴族の令息がわざと当時のフローレンス・カルロストの髪形や雰囲気とは、違うタイプの女性が好みだと面と向かって発言をしたことがある。
しかし、当然の如くフローレンスは笑って受け流すだけで、自身の見た目や雰囲気を変えることは一切なかった。
まだ今のところ目の前の女子学生が弟に対して、恋心まで抱いているのか、真偽は解らない。
それでも、己の一部を変えてでもアラッドと親しい間柄になりと思う程の興味を持っていることだけは解った。
(とはいえ、アラッドの好みか……この子にそのまま伝えるのは、ちょっと難しいかな)
ギーラスはアラッドの雄として初めての相手であるマジットと対面したことがないため、詳しい見た目は解らない。
しかし噂話からある程度特徴は分っている。
歳上、そして戦闘者としての確かな実力。
この二つに関して、フローレンスは確実にクリアしている。
踏み込んだ話をすれば、公爵家の令嬢という点は婚約候補者としては十分過ぎるほど合格。
ただ……マジットの認めは、少々野性味があるクールな女性。
フローレンスには強者としてのオーラはあれど、美しさの部類がフローレンスとはかなり違っていた。
とはいえ、それでも第三王女であるフィリアスは英雄自ら話す激闘の内容に心を躍らせた。
「フィリアス様の我儘に付き合ってくれてありがとう」
話が終わった後、ディーネは感謝の言葉を伝えながら小さな袋を渡した。
渡された袋の中身は……当然、何十枚もの金貨。
ギーラスとしては弟の武勇伝を自慢し、こちらに関しては少々恥ずかしいものの、自身の武勇伝を語っただけ。
第三王女と対面して長々と話すことに関してはやや緊張したが、基本的に美味い紅茶や菓子を堪能でき、ストレスなど皆無。
そんな自分が報酬を受け取っても良いのか? という疑問がほんの一瞬だけ胸の内に生まれるが、それでも貴族の令息として……現在は騎士として生きているが故に、面子という物がどれだけ面倒で大変なのか解る。
ディーネから渡された物に対して何も言うことはなく、素直に受け取った。
(さて、どうやって過ごそうか……武器でも見に行くか、それともまた母校にお邪魔するのもありか……一先ず夕食時までぶらぶらしようか)
特に目的はなく、一人で王都を歩いては武器屋をメインに回る。
場所によっては王都と言えど、三下感丸出しの愚か者に絡まれる場合もあるが……ギーラスはササっと意識を刈り取り、周辺を巡回している兵士か騎士にパス。
そこら辺の三下如き……ある程度訓練を積み、実戦を経験してる者であってもギーラスには敵わない。
(そろそろ良さげな店を探そうかな)
腹の減り具合的に、ベストなタイミング。
そう思って一番良い匂いが漂う店を選ぼうと歩き始めた瞬間、後方から迫る気配を感じ取り、反射的に後方に振り向いた。
「ご機嫌よう、ギーラス・パーシブル様」
「その制服……パルディア学園の生徒、だね」
「はい、その通りです。私、フローレンス・カルロストと申します」
「ッ!! 君があの……そうか。ところで、こんな時間に声をかけてきたということは、もしかして夕食の誘いかな?」
「えぇ、その通りです。ギーラス様がよろしければですが」
冗談で言ったつもりが、まさかの正解。
(いやぁ~~、本当に予想外なお客さんだな)
断るという選択肢は当然あり、断られればフローレンスも大人しく引き下がる。
しかし、ギーラスとしては弟をあと一歩のところまで追い詰めた人物に興味があった。
「分かった。そのお誘い、是非受けさせてもらおう」
こうして二人は密会……という訳ではないが、ところどころ顔や服装を隠し、昼間に訪れたカフェに似たレストランへと訪れた。
食事の場所は、勿論個室。
早速料理を注文。
食事が始まると……フローレンスは早速、アラッドの兄であるギーラスを食事に誘った本題について話し始める。
「ギーラス様、もしよければアラッドさんの好みの女性のタイプなどを教えていただけませんか」
「ッ!!!!」
肉が気管に入り、本気で窒息死するかもと氏の危険を感じたギーラス。
(あ、危ない危ない……えっ、もしかしなくてもそういう事、なのかい?)
フローレンスの方へ顔を向けるが……予想に反して、そういった表情ではなく、ごく自然な……真面目な表情のまま。
「アラッドの好みのタイプ、か…………因みにだけど、何故その様なことを訊くんだい?」
公爵家の人間ということもあり、貴族界の事情を考えると……そうほいほいとプライベートな情報は話せない。
「私としてはもっとアラッドさんと話したいと思ってるのですが、どうやらあまりアラッドさんに好かれていないようなので……好みだけでも寄せてみようかと思いまして」
「な、なるほど。そうなんですね」
うちの弟はやはり凄い、と改めて思った。
ギーラスはフローレンス・カルロストのことを詳しく知らない。
ただ……誰かに言われたから、自分の何かを変える……そんな心が薄く細いような女性には思えない。
そんな初対面で抱いた感想は正しく、過去に自分に興味を持たせるために、確かに顔は良い男が貴族の令息がわざと当時のフローレンス・カルロストの髪形や雰囲気とは、違うタイプの女性が好みだと面と向かって発言をしたことがある。
しかし、当然の如くフローレンスは笑って受け流すだけで、自身の見た目や雰囲気を変えることは一切なかった。
まだ今のところ目の前の女子学生が弟に対して、恋心まで抱いているのか、真偽は解らない。
それでも、己の一部を変えてでもアラッドと親しい間柄になりと思う程の興味を持っていることだけは解った。
(とはいえ、アラッドの好みか……この子にそのまま伝えるのは、ちょっと難しいかな)
ギーラスはアラッドの雄として初めての相手であるマジットと対面したことがないため、詳しい見た目は解らない。
しかし噂話からある程度特徴は分っている。
歳上、そして戦闘者としての確かな実力。
この二つに関して、フローレンスは確実にクリアしている。
踏み込んだ話をすれば、公爵家の令嬢という点は婚約候補者としては十分過ぎるほど合格。
ただ……マジットの認めは、少々野性味があるクールな女性。
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