スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
456 / 1,058

四百五十六話 そっちが心配になる

しおりを挟む
「ギーラス様、お客様がお見えです」

「? 分かりました」

宿屋の従業員から客が来ていると伝えられ、一回に降りると……そこには見覚えがある女性騎士がいた。

「ディーネさん、お久しぶりです」

「あぁ、久しぶりだな。ギーラス」

ギーラスの客とは……アルバース王国の第三王女、フィリアスの護衛騎士であるディーネだった。

「遂に父親と同じく、ドラゴンスレイヤーの称号を手に入れたな」

「自分としてはやや納得がいってない部分があるんですけど……そうですね。その点に関してだけは、一応父と並べられたかと思ってます」

互いに朝食を食べながら互いの近況報告などを軽く行い……約十分後、朝食が全てなくなった頃に、話は本題へと入る。

「ギーラス、今日は何か予定はあるか?」

「いえ、特にありませんが」

「それは良かった。それでは、是非ともフィリアス様に会って頂きたい」

「ふぃ、フィリアス様に、ですか?」

自分はアラッドではないのに何故? という疑問が浮かんだのは一瞬だけ。
直ぐに言葉の糸を汲み取った。

「アラッドから聞いた冒険譚を伝えれば良いんですね」

「その通りだ。頼まれてくれるか?」

「えぇ、お安い御用です」

歳下とはいえ、第三王女と面と向かって話すのは多少なりとも緊張感がある。

しかし、弟の武勇伝を自慢するのであれば話は別。
身支度を整えたギーラスは意気揚々と場所の前に停められていた馬車に乗り込み、とある喫茶店の前に到着。

そこは以前、フィリアスがアラッドと落ち着いて話すために選んだ喫茶店と同じ店だった。

「こちらでございます」

店員に案内された部屋には、既にフィリアスが椅子に座って待っていた。

挨拶もそこそこに済ませ、フィリアスは少々興奮した様子でギーラスにアラッドの冒険譚について、詳しい話を所望する。

「では、まずはアラッドがギルド内で体験した、衝撃に一件からお話ししますね」

最初の強敵とのバトルと言えば、ドーピングによって超強化を行える特殊なオークシャーマンとの戦闘なのだが……ギーラスとしては、その前に起こった一件に関して……決して小さくない衝撃を受けた。

その一件とは、アラッドがいきなりDランクからスタートして、年齢にそぐわない実力や装備を身に付けていることに嫉妬したルーキーが引き起こしたもの。

「まぁ! アラッドさんにそんな事を……その、その様な愚かな発言をした冒険者は、生きていますか?」

どう考えてもアラッドの逆鱗に触れる様な発言をした冒険者……ギルが悪い。
それはフィリアスも重々理解しており、アラッドに非があるとは全く思えない。

ただ……フィリアスも一学生として、今年の夏手前頃に行われた大会での戦いっぷりは、今でも鮮明に思い出せる。
全く起こった状態でなくとも、恐ろしい程強い。

感情が強く出ていた決勝戦では、自身が所属する学園のトップである、貴族でありながら女王の二つ名を持つフローレンス・カルロストを撃破。
その激闘の中でも……激しい怒りという感情は持っていなかった。

そこに逆鱗に触れられた怒りが加われば、どのような結末になるのか……容易に想像出来てしまい、喧嘩を売ってきたルーキーのギルをやや心配してしまう。

(その気持ち、解らなくもない)

ギーラスも本人から話を聞いたときは、その場で弟が冒険者を殴り殺さなかったのかと心配に思った。

「アラッドも大人ですからね。虐めが過ぎるような行動をしなかったようです。それに、そのルーキーは冒険者の資格を発動され、ギルドから追放されました」

「そうでしたか。アラッドさんを怒らせてそれでよく済んだと思うべきか、刑が軽いような気がしなくもありませんね」

狂化のスキルを使用した状態が、アラッドが最終的にブチ切れた時の姿と思う者が多く……それはあながち間違ってはない。

「働き口を失った事を考えれば、それ相応の罰が下ったと言えるでしょう。そしてその後なのですが……」

そしてようやく冒険譚らしい話が始まる。

オークに群れである特殊な自己強化術を行うオークシャーマンとの戦い。
非常に珍しいモンスターであるユニコーンとの遭遇、クロと黒いケルビーのバトル。
墓荒しの黒幕を倒すために何日も奔走し、その途中で闇属性の魔斧を使用するミノタウロスとの激闘。
そして遂に突き止めた黒幕との戦いで、正真正銘の化け物であるAランクモンスターを相手に大奮闘し、本当にギリギリのところで勝利を掴んだ。

「はぁ~~~! 是非とも、間近で観てみたかったです!!!」

絶対に無理。周囲の人物が何が何でも止める。
国王陛下と王妃も必死で止める。唯一、フローレンス・カルロストだけはフィリアスの味方をするかもしれないが、おそらく止められる。

しかし、そんなフィリアスの気持ちを、護衛騎士であるディーネと低身長、ロリ巨乳騎士であるモーナも解らなくはなかった。

「あの、ギーラスさんの竜退治についても、お聞きして良いですか」

「え、あぁ~~~……分かりました」

少々苦笑いをしながらも、ギーラスは先日の一件を鮮明に思い出しながら、自身の武勇伝についても話し始めた。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...