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四百四十九話 全員が本気
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「皆、なるべく街には被害を出さない様に戦ってね。それを守ってくれれば、特に言うことはない……全力で暴れてくれ」
「「「「「「「「「「ウォォォオオオオオオオオオッ!!!!!!」」」」」」」」」」
現場に立つ領主のフールが開戦を宣言し、騎士も冒険者たちも盛大に雄叫びを上げながら戦場に身を投じた。
騎士や領主といった存在を好まない冒険者は多いが、フールの絶対的な強さを知っている者たちは、寧ろ尊敬の念を抱いている為……フールの激励ほど背中を押される言葉はない。
「さて、僕もそれなりに仕事はしないとね」
そう軽く口にしながら、領主であるフール自身も戦場へ向かう。
グラストたち騎士からすれば、トップ……領主であるのだから、どんと後ろで構え、指示を出すだけでその場から動かないでほしい……というのが本音。
本音ではあるが、フールという存在がどれだけ強大で、モンスターたちには理解出来ない力を持っているのかも理解している。
故に……亜竜如きにどうこうされるフールの姿など、良い意味で想像できない。
「ふんっ!!! 温いッ!!!!!」
本来はフールと同じく騎士たちを纏める立場である騎士団長のグラストは……例に漏れず、最前線でその剛剣を存分に振るっていた。
「貴様らも、ドラゴンの端くれなら、吼えろッ!!!!!」
「キィィィイイアアアアアアアアアッ!!!!!」
まるでグラストの言葉に応えるように、ワイバーンたちはストールと違ってドラゴンらしい形相で敵に食い掛かる。
「グラストさん……騎士団のトップとして、あんな言葉を口にしてて、良いのか?」
「なんだかんだで、熱い人だから、ね。だって、立場的には、アラッド様の剣の師匠、だよ?」
「……そうえいば、そうだったな。それなら、あの剣鬼の如き暴れっぷりは、至極当然の姿、か」
少し離れた場所で暴れるグラストの姿を見て、普段通りの表情で話すガルシアとレオナ。
ワイバーンという、決して侮ることは出来ないモンスターを相手に、虎人族の兄妹は喋りながら爪撃やブレスを避け、的確にカウンターをぶち込んでいく。
「二人共、もう少し真面目に戦ってください」
「真面目に、戦ってはいる。だがな、俺たちが相手では……こいつらも可哀想というものだろ」
そんな言葉を口にしながらも、ワイバーンに負けじと劣らない爪撃を首に叩きこみ、息の根を止めていく。
ガルシアたちの実力はアラッドに変われた頃から既にCランク中位からBランク中位に食い込むほどのものだった。
それから五人の食事状況などは改善され、強くなる為の環境は文句なし。
メインの仕事が鍛冶であるリンですら、なだらかな線ではあるが、着実に実力を増している。
おどおど気味だったシーリアの表情には自信が付き、今では姉のエリナに負けない魔法の腕を身に付けた。
そんな彼らが本気で戦えば……ワイバーンがニ十体程一気に彼らを襲わなければ、到底死線にはなり得ない。
「冒険者たちも存分に戦ってる事だし、これは死者が出ることはなさそうだな」
「油断は禁物、と言いたいところですが、フール様の激励があってか……冒険者たちの気迫を鑑みるに、十分その最良の結果に終わりそうですね」
アラッドは自身が育った街の冒険者ギルドに……直接何かはしていない。
ただ、アラッドが父から買い取った庭の一部に孤児院を移動し、そこで育った何人かの孤児が無事に成長し、冒険者として現在活動中。
依頼に対して真摯に取り組むなどの基本的なことは勿論だが、元孤児たちは強くなることに対し、非常に貪欲。
そんな姿勢が他の冒険者たちに影響を及ぼし……ほんの少しずつではあるが、フールが治める街であるロッツを拠点として活動する冒険者の質が向上。
そして最近、将来は冒険者になると公言していたアラッドが学園のトーナメントで、学生最強と呼ばれていた女王、フローレンス・カルロストとの激闘を制し、見事勝利をもぎ取り、冒険者としての道を進み始めた。
いきなり武勇伝を残した後輩に負けてられないと、闘争心が爆発。
「うぉおおらああああッ!!!!」
「亜竜が、なんだごらぁあああッ!!!!」
「どけ、ぶっ放すぞ!!!!!」
「ほらほら、食えるもんなら咬みついてみな!!」
「ふんッ!!!! 温い、突進だな!!!!!」
今、この戦場にワイバーンという端くれとはいえ、ドラゴンという種族に対して怯える者は、誰一人としていない。
「冒険者たちばかりに、良い格好させるな!!!!」
「今は仲間だが、その精神には、賛成、だな!!!」
「それなら、きっちり戦果、上げないとね!!!!」
当然、ロッツの騎士団に所属する騎士や魔術師たちもワイバーンという強敵に対して怯えることはなく、その瞳は戦闘者を越え……獲物を狙う狩人。
ワイバーンも負けじと火炎を吐き散らし、鋭い牙や爪を突き立てようとするが……闘争心が一切衰えない猛者たちの攻撃により……徐々に徐々にその数を減らしていく。
「やっぱり、戦闘はこうでなきゃ、ねっ!!!!」
未だ現役バリバリ……と言うには、あまりにも鋭い斬撃がワイバーンの鱗を斬り裂く。
戦場に立った猛者たち全員が全員本気を出し、殲滅を実行出来る力を持っていたため……戦闘開始から十分と経たず、最終局面へと突入。
「「「「「「「「「「ウォォォオオオオオオオオオッ!!!!!!」」」」」」」」」」
現場に立つ領主のフールが開戦を宣言し、騎士も冒険者たちも盛大に雄叫びを上げながら戦場に身を投じた。
騎士や領主といった存在を好まない冒険者は多いが、フールの絶対的な強さを知っている者たちは、寧ろ尊敬の念を抱いている為……フールの激励ほど背中を押される言葉はない。
「さて、僕もそれなりに仕事はしないとね」
そう軽く口にしながら、領主であるフール自身も戦場へ向かう。
グラストたち騎士からすれば、トップ……領主であるのだから、どんと後ろで構え、指示を出すだけでその場から動かないでほしい……というのが本音。
本音ではあるが、フールという存在がどれだけ強大で、モンスターたちには理解出来ない力を持っているのかも理解している。
故に……亜竜如きにどうこうされるフールの姿など、良い意味で想像できない。
「ふんっ!!! 温いッ!!!!!」
本来はフールと同じく騎士たちを纏める立場である騎士団長のグラストは……例に漏れず、最前線でその剛剣を存分に振るっていた。
「貴様らも、ドラゴンの端くれなら、吼えろッ!!!!!」
「キィィィイイアアアアアアアアアッ!!!!!」
まるでグラストの言葉に応えるように、ワイバーンたちはストールと違ってドラゴンらしい形相で敵に食い掛かる。
「グラストさん……騎士団のトップとして、あんな言葉を口にしてて、良いのか?」
「なんだかんだで、熱い人だから、ね。だって、立場的には、アラッド様の剣の師匠、だよ?」
「……そうえいば、そうだったな。それなら、あの剣鬼の如き暴れっぷりは、至極当然の姿、か」
少し離れた場所で暴れるグラストの姿を見て、普段通りの表情で話すガルシアとレオナ。
ワイバーンという、決して侮ることは出来ないモンスターを相手に、虎人族の兄妹は喋りながら爪撃やブレスを避け、的確にカウンターをぶち込んでいく。
「二人共、もう少し真面目に戦ってください」
「真面目に、戦ってはいる。だがな、俺たちが相手では……こいつらも可哀想というものだろ」
そんな言葉を口にしながらも、ワイバーンに負けじと劣らない爪撃を首に叩きこみ、息の根を止めていく。
ガルシアたちの実力はアラッドに変われた頃から既にCランク中位からBランク中位に食い込むほどのものだった。
それから五人の食事状況などは改善され、強くなる為の環境は文句なし。
メインの仕事が鍛冶であるリンですら、なだらかな線ではあるが、着実に実力を増している。
おどおど気味だったシーリアの表情には自信が付き、今では姉のエリナに負けない魔法の腕を身に付けた。
そんな彼らが本気で戦えば……ワイバーンがニ十体程一気に彼らを襲わなければ、到底死線にはなり得ない。
「冒険者たちも存分に戦ってる事だし、これは死者が出ることはなさそうだな」
「油断は禁物、と言いたいところですが、フール様の激励があってか……冒険者たちの気迫を鑑みるに、十分その最良の結果に終わりそうですね」
アラッドは自身が育った街の冒険者ギルドに……直接何かはしていない。
ただ、アラッドが父から買い取った庭の一部に孤児院を移動し、そこで育った何人かの孤児が無事に成長し、冒険者として現在活動中。
依頼に対して真摯に取り組むなどの基本的なことは勿論だが、元孤児たちは強くなることに対し、非常に貪欲。
そんな姿勢が他の冒険者たちに影響を及ぼし……ほんの少しずつではあるが、フールが治める街であるロッツを拠点として活動する冒険者の質が向上。
そして最近、将来は冒険者になると公言していたアラッドが学園のトーナメントで、学生最強と呼ばれていた女王、フローレンス・カルロストとの激闘を制し、見事勝利をもぎ取り、冒険者としての道を進み始めた。
いきなり武勇伝を残した後輩に負けてられないと、闘争心が爆発。
「うぉおおらああああッ!!!!」
「亜竜が、なんだごらぁあああッ!!!!」
「どけ、ぶっ放すぞ!!!!!」
「ほらほら、食えるもんなら咬みついてみな!!」
「ふんッ!!!! 温い、突進だな!!!!!」
今、この戦場にワイバーンという端くれとはいえ、ドラゴンという種族に対して怯える者は、誰一人としていない。
「冒険者たちばかりに、良い格好させるな!!!!」
「今は仲間だが、その精神には、賛成、だな!!!」
「それなら、きっちり戦果、上げないとね!!!!」
当然、ロッツの騎士団に所属する騎士や魔術師たちもワイバーンという強敵に対して怯えることはなく、その瞳は戦闘者を越え……獲物を狙う狩人。
ワイバーンも負けじと火炎を吐き散らし、鋭い牙や爪を突き立てようとするが……闘争心が一切衰えない猛者たちの攻撃により……徐々に徐々にその数を減らしていく。
「やっぱり、戦闘はこうでなきゃ、ねっ!!!!」
未だ現役バリバリ……と言うには、あまりにも鋭い斬撃がワイバーンの鱗を斬り裂く。
戦場に立った猛者たち全員が全員本気を出し、殲滅を実行出来る力を持っていたため……戦闘開始から十分と経たず、最終局面へと突入。
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