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四百四十五話 逃亡は無駄
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「ギーラス兄さん。クロを貸します」
「えっと……あっ、なるほど」
唐突に弟から伝えられた言葉の意味を、数秒ほど考えて理解。
ギーラスの速さは決して遅くはなく、平均以上の速さを持っている。
しかし、暴風竜ボレアスの息子……ストールは今のところギーラスに嫌がらせをするだけで、誰かが気付いて現場に来る前には逃走。
偶々ギーラスが本当に現場付近に居れば問題無いが、そんな奇跡はそうそう起こらないと考えた結果、アラッドは相棒を兄に貸そうと決めた。
「既にクロには了承を取ってるので大丈夫です!!」
「それはありがたいね。でも、アラッドの方に支障は出たりしないかい?」
兄として、弟の気遣いは非常に嬉しい。
だが、その気遣いで弟の活動に支障が出ることは避けたい。
「大丈夫です。毎回全力で森の中を走ってるわけではないんで。それに、いざとなれば糸を使って素早く移動できるんで」
何か物が多くある場所であれば、脚を使わず駆け回ることが可能。
「はっはっは! そういえばそんな移動手段を持ってたね……解かった。ありがたく借りるよ」
翌日からクロの背中に乗り始めたギーラスは……騎乗していた時間はほんの少しではあるが、そのモフモフ感にやや溺れかけ、アラッドの様に従魔を相棒として手に入れようか……本気で悩んだ。
そして、知る者が知れば「流石クロ!!」と言いたくなる程、クロのお陰であっさりと事が進んだ。
「君が噂の僕に嫌がらせをする為だけに村を潰し回っている風竜、ストールだね」
「ふん、やけに早いな。人間」
流暢な人語を話す光景を見て、更に警戒心を高めるギーラス。
「ここは場所が良くない。もっと自由に動ける場所に移動しようか」
「はっはっは!!! 何故俺がわざわざお前の言うことに同意する必要がある。バカなのかお前は」
「……ふふ、それはこっちのセリフ、と言わせてもらおうかな」
「なにぃ?」
ギーラスの挑発的な笑みにイラつくストール。
そんな圧にビビることなく、淡々と事実を告げるギーラス。
もっと自由に動ける場所に移動しようという提案は、寧ろストールを気遣っての内容。
「君が俺とのタイマン勝負を避けるなら……申し訳ないけど、全力で殺しにいく。僕とこの非常に頼もしい弟の相棒がね」
「ワゥッ!!!!!」
「ッ!!!」
復讐のためとはいえ本当にドラゴン? と思われる様な行動を取っていたスティームだが、それでも危機感知能力などは優れており、出会って直ぐにクロの危険性には気付いていた。
気にせず傲慢で上から目線の態度を取っていたが、それは全て恐れを隠すためのカモフラージュ。
「因みに、今すぐ何処かに逃げようとしても無駄だからね」
「なに……ッ!! 貴様……」
ストールの存在を直ぐに感知し、スティームとファルが少しでも足止めをする為にギーラスの反対側に移動していた。
そしてアラッドはストールとギーラスから少し離れた場所に移動し、上空にフレイムランスを発射。
破壊された村の場所を巡回中の騎士団に知らせ、直ぐにスティームたちと合流予定。
仮に後方以外の場所へ逃げようとしても、本気の競争になれば、ストールはクロに勝てない。
「まぁ、逃げたければそれでも良いよ。ただ……戦闘が狩りに変わるだけだから」
「ッ!!!! ……良いだろう、その挑発に乗ってやろう」
当初の予定通り、開けた場所へと移動。
「なぁ、アラッド。本当にギーラスさん一人にやらせて良いのか?」
更に後方へ移動中のスティームは、今更ながらの質問を仲間に問うた。
「ギーラス兄さんが望んだことだしな」
「けどあの風竜のランクはファルと同じだけど、実力はBランクの中でも最上位だと思う」
「グルルゥ……」
同じBランクのストームファルコン、ファルとしてはストールのようなみみっちいドラゴンに負けたくないという思いが強い……が、それでも現時点の自分では勝てないと認めざるを得なかった。
みみっちくとも、ワイバーンやリザード、ワームなどとは違った本物のドラゴン。
正確がみみっちくて厭らしくとも、その強さが本物であることに変わりはない。
「限りなくAランクに近いBランクってことだよな……それでも、俺はギーラス兄さんが負けるとは思わない。なんて言うか……ギーラス兄さんには、ぱっと見じゃ分からない深い怖さ? があるんだよ」
先日の夜、夕食後に食後の運動という事で、再度対ストールをイメージした模擬戦を行った。
アラッドは更にイメージを重ね、完全に人ならざる動きでギーラスを追い詰めようとしたが……結果、数回攻撃を防御したギーラスを押し飛ばすだけで、決定的なダメージは与えられなかった。
(スキルに制限を掛けての模擬戦だからあれだけど、それでもギーラス兄さんは殆ど俺からの攻撃を適切に対応した……一瞬ではあるけど、マジの本気で寒気を感じた場面も何回かあった)
二回目の模擬戦では終始アラッドのスイッチが入ることはなかったが、それはギーラスも同じ……ではあったが、アラッドは確かに殺意以外の気迫に寒気を感じた。
「えっと……あっ、なるほど」
唐突に弟から伝えられた言葉の意味を、数秒ほど考えて理解。
ギーラスの速さは決して遅くはなく、平均以上の速さを持っている。
しかし、暴風竜ボレアスの息子……ストールは今のところギーラスに嫌がらせをするだけで、誰かが気付いて現場に来る前には逃走。
偶々ギーラスが本当に現場付近に居れば問題無いが、そんな奇跡はそうそう起こらないと考えた結果、アラッドは相棒を兄に貸そうと決めた。
「既にクロには了承を取ってるので大丈夫です!!」
「それはありがたいね。でも、アラッドの方に支障は出たりしないかい?」
兄として、弟の気遣いは非常に嬉しい。
だが、その気遣いで弟の活動に支障が出ることは避けたい。
「大丈夫です。毎回全力で森の中を走ってるわけではないんで。それに、いざとなれば糸を使って素早く移動できるんで」
何か物が多くある場所であれば、脚を使わず駆け回ることが可能。
「はっはっは! そういえばそんな移動手段を持ってたね……解かった。ありがたく借りるよ」
翌日からクロの背中に乗り始めたギーラスは……騎乗していた時間はほんの少しではあるが、そのモフモフ感にやや溺れかけ、アラッドの様に従魔を相棒として手に入れようか……本気で悩んだ。
そして、知る者が知れば「流石クロ!!」と言いたくなる程、クロのお陰であっさりと事が進んだ。
「君が噂の僕に嫌がらせをする為だけに村を潰し回っている風竜、ストールだね」
「ふん、やけに早いな。人間」
流暢な人語を話す光景を見て、更に警戒心を高めるギーラス。
「ここは場所が良くない。もっと自由に動ける場所に移動しようか」
「はっはっは!!! 何故俺がわざわざお前の言うことに同意する必要がある。バカなのかお前は」
「……ふふ、それはこっちのセリフ、と言わせてもらおうかな」
「なにぃ?」
ギーラスの挑発的な笑みにイラつくストール。
そんな圧にビビることなく、淡々と事実を告げるギーラス。
もっと自由に動ける場所に移動しようという提案は、寧ろストールを気遣っての内容。
「君が俺とのタイマン勝負を避けるなら……申し訳ないけど、全力で殺しにいく。僕とこの非常に頼もしい弟の相棒がね」
「ワゥッ!!!!!」
「ッ!!!」
復讐のためとはいえ本当にドラゴン? と思われる様な行動を取っていたスティームだが、それでも危機感知能力などは優れており、出会って直ぐにクロの危険性には気付いていた。
気にせず傲慢で上から目線の態度を取っていたが、それは全て恐れを隠すためのカモフラージュ。
「因みに、今すぐ何処かに逃げようとしても無駄だからね」
「なに……ッ!! 貴様……」
ストールの存在を直ぐに感知し、スティームとファルが少しでも足止めをする為にギーラスの反対側に移動していた。
そしてアラッドはストールとギーラスから少し離れた場所に移動し、上空にフレイムランスを発射。
破壊された村の場所を巡回中の騎士団に知らせ、直ぐにスティームたちと合流予定。
仮に後方以外の場所へ逃げようとしても、本気の競争になれば、ストールはクロに勝てない。
「まぁ、逃げたければそれでも良いよ。ただ……戦闘が狩りに変わるだけだから」
「ッ!!!! ……良いだろう、その挑発に乗ってやろう」
当初の予定通り、開けた場所へと移動。
「なぁ、アラッド。本当にギーラスさん一人にやらせて良いのか?」
更に後方へ移動中のスティームは、今更ながらの質問を仲間に問うた。
「ギーラス兄さんが望んだことだしな」
「けどあの風竜のランクはファルと同じだけど、実力はBランクの中でも最上位だと思う」
「グルルゥ……」
同じBランクのストームファルコン、ファルとしてはストールのようなみみっちいドラゴンに負けたくないという思いが強い……が、それでも現時点の自分では勝てないと認めざるを得なかった。
みみっちくとも、ワイバーンやリザード、ワームなどとは違った本物のドラゴン。
正確がみみっちくて厭らしくとも、その強さが本物であることに変わりはない。
「限りなくAランクに近いBランクってことだよな……それでも、俺はギーラス兄さんが負けるとは思わない。なんて言うか……ギーラス兄さんには、ぱっと見じゃ分からない深い怖さ? があるんだよ」
先日の夜、夕食後に食後の運動という事で、再度対ストールをイメージした模擬戦を行った。
アラッドは更にイメージを重ね、完全に人ならざる動きでギーラスを追い詰めようとしたが……結果、数回攻撃を防御したギーラスを押し飛ばすだけで、決定的なダメージは与えられなかった。
(スキルに制限を掛けての模擬戦だからあれだけど、それでもギーラス兄さんは殆ど俺からの攻撃を適切に対応した……一瞬ではあるけど、マジの本気で寒気を感じた場面も何回かあった)
二回目の模擬戦では終始アラッドのスイッチが入ることはなかったが、それはギーラスも同じ……ではあったが、アラッドは確かに殺意以外の気迫に寒気を感じた。
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