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四百三十五話 今はどうか知らないが

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数日後、アラッドとスティームは従魔たちを騎士団に預け、集合場所へと向かう。

「アラッド君。今回の討伐の監督として言わせてもらうと、あまりがっつり盗賊たちを倒し過ぎないでほしいんだ」

「パロンたちの実力を正確に測れないから、ですよね」

「うん、その通り。ぶっちゃけ……アラッド君が本気を出したら、一人で終わらせられるよね」

スティームの言葉に、変に謙虚な態度を取ることなく頷く。

「そういう訳だから、なるべく四人が本当に危なくなったら、少し本気で動いてほしい」

「了解。任せてください」

二人の中で密約が結ばれたが、冒険者ギルドとしてもそうしてくれる方がありがたかった。

「お待たせ。全員時間内に来てるね……よし、それじゃあ行こう」

移動方法は歩き。
五人の経歴からして、野営などの技術は問題無いとギルドも把握しているが、一応念のためということで、馬車は使わない。

「なぁ、アラッド。やっぱり貴族の息子とか令息だったら、お前みたいに跳び抜けた化け物とかいるのか?」

「そうだなぁ……とりあえず二人はいるな」

ジョウグの化け物予備をスルーしながら、パッと思い付いた人物の名を上げる。

「レイ・イグリシアスとフローレンス・カルロストだな。フローレンス・カルロストは当然として、レイ嬢はジョウグ……俺と同じ十五歳だけど、身体能力はお前より高いぞ」

「ッ!!?? それは、冗談じゃなく、か?」

本来であればブチ切れている。
しかし、他の化け物について尋ねたのは自分。
そしてアラッドがどれだけ自分より優れた戦闘者なのか解っているからこそ、怒りをあらわにすることはなく、冷静に本当なのかと尋ねた。

「本当だ。まっ、あれは特異体質だからってのもあるが……本人も相当な努力を積んでるからの強さだ」

「ねぇ、フローレンス・カルロストって人は、アラッドが大会の決勝で戦った人なんだよね」

「あぁ、そうだな」

「どれぐらい強い人なの?」

ルイーゼの問いに、先程までとは違い……真剣な、少し渋い表情で答えた。

「あり得ないほど強い人だ」

「えっ…………えっと、でもアラッドはその人に勝ったんだよね?」

「ギリギリな……本当に、ギリギリってところだ」

クロを最後まで残していればアラッドの勝利は確実なのだが、本人はあまりクロを自身の実力と加算したくない。

「幸運が重なって、最後は気迫で俺が勝っていた。結果的に勝ちはしたが、後少し何かが違えば、俺が負けていてもおかしくなかった」

真面目な表情でフローレンス・カルロストの強さについて話すアラッド。
その話を聞いたジョウグたちは……スティームも含めて、表情に信じられないという思いが浮かんでいた。

「……アラッドは、もしかしてその人のこと嫌い、なのかしら?」

「嫌いって訳じゃないけど、好きではないな」

「なんだ、あんまり美人じゃねぇのか?」

パロンの的外れな言葉に、首を大袈裟に振って否定する。

「そういう話じゃない。ただ、俺とは少し考え方が違っただけだ」

今は彼女が愛についてどう考えてるかは知らない。
しかし、少なくともあの時は好きになれないと断言出来た。


「よし、今日はここまでだね」

夕日もくれた頃、監督の提案通り野営の準備を開始。

道中では数回ほどモンスターに襲われることがあったが、ジョウグたちがメインとなって討伐。
二人の密約について四人は知らずとも、これまでの経験からある程度は予測しており、アラッドがあまり戦闘に参加しなかったことについて、とやかく言うことはなかった。

アラッドのアイテムバッグの中に入っている食材等のお陰で、しっかり英気を養った四人。
翌日からも本来の実力を発揮し、順調に行進。

そして三日後には標的、山嵐が拠点としている場所付近に到着。

「それじゃ、予定通りに攻めよう」

監督の言葉が合図となり、エスティーナがコントロール抜群の矢を放った。
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