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四百二十八話 酔いが惑わす判断力
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両者ともに様子見であるものの、その戦闘速度は並以上。
アラッドはいつも通りロングソードを扱い、スティームは双剣で対抗。
武器は騎士団が用意した付与効果がないただの頑丈な一品。
とはいえ、刃引きされていないため……最悪死に至る可能性もあるが、そこは副団長からの言葉通り、頭に刻み込んでいた。
(……なるほど。ディックスさんって人が自慢するだけのことはある、って感じだな)
スティームの年齢は、現在十八歳。
アラッドより三つ歳上であるため、基本的に身体能力や魔力量、戦闘経験も含めて豊富なのだが……戦闘は拮抗状態。
(まだ全力は出してないけど、この感じ……ふぅーー、駄目だ。焦ったらそこで負けだ)
レベルは三十を越えており、双剣の扱いも一流に近い。
そして武器の扱いだけではなく、戦闘そのものの技術力も高い。
間違いなく、将来トップクラスに届く逸材。
それを本人も自覚しているが……アラッドの雰囲気、表情から不安を感じずにはいられなかった。
焦ったら負けだと自身に言い聞かせつつも、身体強化のスキルを使用。
(……一応、使った方が良いか)
それに応えるようにアラッドも身体強化を使い、戦は激しさこそ増すも、拮抗が崩れることはない。
両者が使用している武器を考えれば、双剣使いであるスティームの方が手数は有利……そう思うのが普通。
しかし、アラッドは防御と回避を駆使してノーダメージを継続。
一方でスティームも手数の多さ、優れた反応速度でアラッドの攻撃に対応。
今のところアラッドと同じくノーダメージ……ではあるが、徐々に攻撃への対応が厳しくなっていく。
(ッ!!! その表情……崩させてもらうよ!!!!)
「っ!?」
アラッドより練度が優れた疾風を発動し、スピードアップ。
珍しい体質によって同レベルの者たちよりも優れた身体能力を持つアラッドだが、予想を超えるスピードアップに数秒の間、防戦一方となる。
(さすがに、油断し過ぎてたな)
先程まではきた攻撃に反応し、隙などを考慮せずに攻撃を行っていた。
ぶっちゃけた話……スティームのことを嘗めていた。
長い間拳を合わせてきたエリナやガルシア、レオナやリン。フローレンスやマジットの様な多種多様な圧や、強者だけが持つ特有の空気などを感じなかったため……無意識の間に試す側の気持ちで戦っていた。
(従魔としてストームファルコンを従えてるんだ。弱い筈がないよな!)
疾風の発動によるスピードアップで数回ほど斬撃が掠るものの、反射速度に頼るような戦いを止めて全力で動きを読み始める。
(いくら、なんでも! 対応が早過ぎない、か!?)
もう少し押せる時間が続く予定だったのだが、アラッドはたった数秒で立て直し、形勢は数秒前へと戻る。
「……おい、お前の弟……何なんだ」
「何なんだって、もう少し詳しくいってくれないと答えらえないよ」
ディックスの表情から、数分前の余裕な笑みは完全に消えていた。
対して、ギーラスはニヤニヤと小バカにする様な笑みを浮かべ……てはおらず、ややスティームに憐れむような目を向けていた。
「どう考えてもおかしいだろ」
「あんまり家族にそういう言葉を使ってほしくないけど、思いっきり否定出来ないのが悲しいところだね。でも、そういう部分も含めて、僕は君に自慢したと思うけどね」
妄想、記憶の混濁などではなく、実際にギーラスはディックスにアラッドを自慢する際に、色々と普通ではないことも自慢気に伝えていた。
ただ、当時は両者ともそこそこ酒を呑んでおり、酔いが回っている状態。
本人の判断力の低下に加えて相手も酒を呑んでいる状態での発言ということもあり、ディックスは同僚の発言について大半はさすがに盛り過ぎだと信じていなかった。
「ついでに情報を追加すると、冒険者になってから一人でBランクモンスターを倒したみたいだよ」
「っ!?」
優しさでギリギリではあったものの、Aランクモンスターを倒したという情報については話さなかった。
アラッドはいつも通りロングソードを扱い、スティームは双剣で対抗。
武器は騎士団が用意した付与効果がないただの頑丈な一品。
とはいえ、刃引きされていないため……最悪死に至る可能性もあるが、そこは副団長からの言葉通り、頭に刻み込んでいた。
(……なるほど。ディックスさんって人が自慢するだけのことはある、って感じだな)
スティームの年齢は、現在十八歳。
アラッドより三つ歳上であるため、基本的に身体能力や魔力量、戦闘経験も含めて豊富なのだが……戦闘は拮抗状態。
(まだ全力は出してないけど、この感じ……ふぅーー、駄目だ。焦ったらそこで負けだ)
レベルは三十を越えており、双剣の扱いも一流に近い。
そして武器の扱いだけではなく、戦闘そのものの技術力も高い。
間違いなく、将来トップクラスに届く逸材。
それを本人も自覚しているが……アラッドの雰囲気、表情から不安を感じずにはいられなかった。
焦ったら負けだと自身に言い聞かせつつも、身体強化のスキルを使用。
(……一応、使った方が良いか)
それに応えるようにアラッドも身体強化を使い、戦は激しさこそ増すも、拮抗が崩れることはない。
両者が使用している武器を考えれば、双剣使いであるスティームの方が手数は有利……そう思うのが普通。
しかし、アラッドは防御と回避を駆使してノーダメージを継続。
一方でスティームも手数の多さ、優れた反応速度でアラッドの攻撃に対応。
今のところアラッドと同じくノーダメージ……ではあるが、徐々に攻撃への対応が厳しくなっていく。
(ッ!!! その表情……崩させてもらうよ!!!!)
「っ!?」
アラッドより練度が優れた疾風を発動し、スピードアップ。
珍しい体質によって同レベルの者たちよりも優れた身体能力を持つアラッドだが、予想を超えるスピードアップに数秒の間、防戦一方となる。
(さすがに、油断し過ぎてたな)
先程まではきた攻撃に反応し、隙などを考慮せずに攻撃を行っていた。
ぶっちゃけた話……スティームのことを嘗めていた。
長い間拳を合わせてきたエリナやガルシア、レオナやリン。フローレンスやマジットの様な多種多様な圧や、強者だけが持つ特有の空気などを感じなかったため……無意識の間に試す側の気持ちで戦っていた。
(従魔としてストームファルコンを従えてるんだ。弱い筈がないよな!)
疾風の発動によるスピードアップで数回ほど斬撃が掠るものの、反射速度に頼るような戦いを止めて全力で動きを読み始める。
(いくら、なんでも! 対応が早過ぎない、か!?)
もう少し押せる時間が続く予定だったのだが、アラッドはたった数秒で立て直し、形勢は数秒前へと戻る。
「……おい、お前の弟……何なんだ」
「何なんだって、もう少し詳しくいってくれないと答えらえないよ」
ディックスの表情から、数分前の余裕な笑みは完全に消えていた。
対して、ギーラスはニヤニヤと小バカにする様な笑みを浮かべ……てはおらず、ややスティームに憐れむような目を向けていた。
「どう考えてもおかしいだろ」
「あんまり家族にそういう言葉を使ってほしくないけど、思いっきり否定出来ないのが悲しいところだね。でも、そういう部分も含めて、僕は君に自慢したと思うけどね」
妄想、記憶の混濁などではなく、実際にギーラスはディックスにアラッドを自慢する際に、色々と普通ではないことも自慢気に伝えていた。
ただ、当時は両者ともそこそこ酒を呑んでおり、酔いが回っている状態。
本人の判断力の低下に加えて相手も酒を呑んでいる状態での発言ということもあり、ディックスは同僚の発言について大半はさすがに盛り過ぎだと信じていなかった。
「ついでに情報を追加すると、冒険者になってから一人でBランクモンスターを倒したみたいだよ」
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優しさでギリギリではあったものの、Aランクモンスターを倒したという情報については話さなかった。
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