425 / 984
四百二十五話 報酬もその場で
しおりを挟む
「ところでギーラス兄さん、何用で俺をラダスに呼んだんですか」
「……あれ、手紙に書いてなかったか?」
「えぇ、書いてませんでした」
まさかの弟が、自分が何用で呼んだのかを知らない。
(そういえば、あの手紙を書いたときは……うん、確実に酔ってたな)
全ては思い出せないが、だからこそ酔っていた事だけは解る。
「そうか、すまん。恥ずかしいことに、あの手紙を書いていた時は酔っていた」
「なんか……珍しいですね」
「ふふ、俺だってそれなりに呑むぞ。騎士団で活動していれば、当然疲れることもある」
騎士団内でも優秀な存在であるため、上の者たちからは現場で隊長補佐を任されるだけではなく、任務の度合いによっては隊長を任されることもある。
加えて、他の騎士たちと比べて頭脳も優れているため……本人にとっては有難くないが、書類仕事を手伝わされることがある。
「っと、お前を呼んだ内容だったな…………あれだな、これまた酔ってたからこそ同僚と論争? になったんだよ」
「論争?」
簡潔に説明すると……ギーラスは同僚の騎士と、自分たちの弟……どっちが凄いのか論争を行い、どうせなら本人たちを呼んでどちらが上か、証明しようじゃないか!!! という結論に至り、両者とも弟へ即座に手紙を送った。
「ホットル王国って、そんな簡単に来れるんですか?」
隣国のホットル王国から交換騎士として現在ギーラスが所属する騎士団に配属されたディックス・バリアスティ―の弟は、アラッドと同じ冒険者。
ただ……隣国とはいえ、そう簡単にほいほい来れる距離ではない。
「普通は無理だと思うが……まぁ、あいつの弟はどうやらお前に似てるっぽくてな」
「俺に似てる……もしかして、ウルフ系の従魔がいるんですか」
背中に乗れて速度が速い、ウルフ系の従魔を連れているという自分との共通点がある……というアラッドの回答は、ニアピンだった。
「違うよ。ディックスの弟が連れている従魔は、鳥獣類だよ」
「鳥獣類、ですか」
頭の中に多数の翼を持つモンスターが思い浮かぶ。
「それにしても、本当にラダスに来るまで早かったな」
「クロですからね。普通に歩けば何日もかかる道でも、クロならあっという間ですよ」
「それもそうか。弟をいつも助けてくれてありがとな、クロ」
地面に寝転がるクロの頭を撫で、これまでの苦労を労う。
「……ワフ」
主人と似た匂い、同じ優しさを持つギーラスに友愛を表すように、もふもふの毛を擦り付ける。
「ん~~、良いフワフワだ」
「毎日ブラッシングしてますからね……えっと、とりあえずそのディックスさんの弟が来たら、戦えば良いんですね」
「安心してくれ。勝てば、ラダス一の高級料理店の食べ放題と、美味い酒を出してくれるバーで吞み放題だ!!」
「それは……良いですね、やる気が出ます」
ギーラスの弟であるアラッド、ディックスの弟であるスティーム。
二人とも冒険者なので、指名依頼を出せば良いのではと思わなくもないが、勝利報酬も酔った勢いで決めてしまった。
口約束だけなので、今から変更することも可能ではあるが……お互いに自分の弟の方が強い!!! という思いを譲らないため、却下。
「にしても、アラッド……お前、もしかして」
「ん? 何か顔に付いてる?」
「いや、そうじゃなくてもしかして……男になったのか」
好青年に見えるギーラス。
実際に好青年であるのだが、性別はやはり男であるため、そういった話題は嫌いではない。
「っ!!」
そしてまさかの質問に、思わず言葉が詰まってしまう。
兄からすれば、それだけで弟が男になったのだと解ってしまう。
「まぁ、その……色々あって」
やらかしてしまったと思った時には、既に時遅し。
アラッドは素直に男になったと認めた。
「そうかそうか。よっと、これで良し」
外部に音を伝えない風の結界を即座に展開。
兄としては、やはり弟のそういった話は気になって当然だった。
「……あれ、手紙に書いてなかったか?」
「えぇ、書いてませんでした」
まさかの弟が、自分が何用で呼んだのかを知らない。
(そういえば、あの手紙を書いたときは……うん、確実に酔ってたな)
全ては思い出せないが、だからこそ酔っていた事だけは解る。
「そうか、すまん。恥ずかしいことに、あの手紙を書いていた時は酔っていた」
「なんか……珍しいですね」
「ふふ、俺だってそれなりに呑むぞ。騎士団で活動していれば、当然疲れることもある」
騎士団内でも優秀な存在であるため、上の者たちからは現場で隊長補佐を任されるだけではなく、任務の度合いによっては隊長を任されることもある。
加えて、他の騎士たちと比べて頭脳も優れているため……本人にとっては有難くないが、書類仕事を手伝わされることがある。
「っと、お前を呼んだ内容だったな…………あれだな、これまた酔ってたからこそ同僚と論争? になったんだよ」
「論争?」
簡潔に説明すると……ギーラスは同僚の騎士と、自分たちの弟……どっちが凄いのか論争を行い、どうせなら本人たちを呼んでどちらが上か、証明しようじゃないか!!! という結論に至り、両者とも弟へ即座に手紙を送った。
「ホットル王国って、そんな簡単に来れるんですか?」
隣国のホットル王国から交換騎士として現在ギーラスが所属する騎士団に配属されたディックス・バリアスティ―の弟は、アラッドと同じ冒険者。
ただ……隣国とはいえ、そう簡単にほいほい来れる距離ではない。
「普通は無理だと思うが……まぁ、あいつの弟はどうやらお前に似てるっぽくてな」
「俺に似てる……もしかして、ウルフ系の従魔がいるんですか」
背中に乗れて速度が速い、ウルフ系の従魔を連れているという自分との共通点がある……というアラッドの回答は、ニアピンだった。
「違うよ。ディックスの弟が連れている従魔は、鳥獣類だよ」
「鳥獣類、ですか」
頭の中に多数の翼を持つモンスターが思い浮かぶ。
「それにしても、本当にラダスに来るまで早かったな」
「クロですからね。普通に歩けば何日もかかる道でも、クロならあっという間ですよ」
「それもそうか。弟をいつも助けてくれてありがとな、クロ」
地面に寝転がるクロの頭を撫で、これまでの苦労を労う。
「……ワフ」
主人と似た匂い、同じ優しさを持つギーラスに友愛を表すように、もふもふの毛を擦り付ける。
「ん~~、良いフワフワだ」
「毎日ブラッシングしてますからね……えっと、とりあえずそのディックスさんの弟が来たら、戦えば良いんですね」
「安心してくれ。勝てば、ラダス一の高級料理店の食べ放題と、美味い酒を出してくれるバーで吞み放題だ!!」
「それは……良いですね、やる気が出ます」
ギーラスの弟であるアラッド、ディックスの弟であるスティーム。
二人とも冒険者なので、指名依頼を出せば良いのではと思わなくもないが、勝利報酬も酔った勢いで決めてしまった。
口約束だけなので、今から変更することも可能ではあるが……お互いに自分の弟の方が強い!!! という思いを譲らないため、却下。
「にしても、アラッド……お前、もしかして」
「ん? 何か顔に付いてる?」
「いや、そうじゃなくてもしかして……男になったのか」
好青年に見えるギーラス。
実際に好青年であるのだが、性別はやはり男であるため、そういった話題は嫌いではない。
「っ!!」
そしてまさかの質問に、思わず言葉が詰まってしまう。
兄からすれば、それだけで弟が男になったのだと解ってしまう。
「まぁ、その……色々あって」
やらかしてしまったと思った時には、既に時遅し。
アラッドは素直に男になったと認めた。
「そうかそうか。よっと、これで良し」
外部に音を伝えない風の結界を即座に展開。
兄としては、やはり弟のそういった話は気になって当然だった。
183
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる