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四百二十一話 考える余地を残す

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「「「「「「「しゃぁあああっす!!!!!」」」」」」」

「おぅ、よろしく」

現在、アラッドの目の前には多くの同じルーキー枠の冒険者たちがいた。

マジットや他の冒険者から頼まれたわけではなく……ルーキーたちも自主的にアラッドに頭を下げ、金を払って教えを乞おうとした。

最初こそアラッドは戸惑ったものの、彼らの目に宿る熱意は本物だと感じ、頼みを受け入れた。

とはいえ、アラッドがやることと言えば……訓練場で、彼ら彼女たちを色んな方法でボコボコにすること。
これは決して虐めではなく、れっきとした訓練。

一人で挑む者がいれば、タッグ……もしくはスリーマンセルで攻めるチームもいる。
そんなルーキーたちの戦術に合わせ、アラッドもそれ相応の戦い方にチェンジ。

「ちょっと休憩するか」

「お、おぅ……」

全員との模擬戦を数周終え、ほぼ全員疲労困憊に近い。

ドラゴンゾンビを一人で倒す様な相手に手加減するなど、アホがすることと常識はしっかりと理解してるため、模擬戦範囲内ではあるが……ルーキーたちは殺すつもりでアラッドを倒そうとしていた。

ただ、結果は惨敗。
誰一人としてクリティカルヒットを与えることが出来ず、地面にケツを下ろしている。

(け、剣だけじゃねぇのは、解ってたけど……マジで、なんでも出来るん、だな)

(あれで、魔法使いじゃ……ないのね)

休憩時間の間、自分たちの反省点を話し合う者たちが多いが……その反面、改めてアラッドと自分たちとの差を明確に体感し、自分たちから頼んだにもかかわらず、やや心が折れかけていた。

「……俺は、ガキの頃から環境が整ってたからな」

ぽつりとアラッドが呟いた言葉に、ほぼ全員が注目を集める。

「そこは俺とお前たちとで、明確に違う点だ」

アラッドは彼らに、そこは冷静に仕方ないと諦めるべき点だと伝えた。

「だが、今は環境という点に関して……ここはかなり整っている。詳しくは知らねぇが、生活がそこまで苦って訳ではないだろ?」

本日アラッドに訓練を頼み込んだ者たちの中で、一番生活の質が低い者であっても、食べることに困るということはなかった。

「それは、そうだな……なぁ、だったらお前みたいに強くなるためには、どう頑張れば良い!」

ド直球な質問に、アラッドは迷うことなく答える。

「頑張って金を溜めろ」

「か、金?」

「おぅ、勿論だ。冒険者にとって……というか、人間が生きる上で金は切っても切れない物だ。仙人や野人みたいな生活を送るってなら話は別だが……さすがにそんな事しようとは思わねぇだろ」

ルーキーたちは全力で首を縦に振る。

強くなりたいという意欲はあれど、最低限の生活は手放したくない。

「貴族の令息である俺がこんなこと言うのはあれかもしれないが、やっぱり金が重要だ」

「それは……頑張って金を溜めて、良い武器や防具を買うのが一番ってこと?」

「それは結果として得られる財産の一部だな。重要なのは、その結果に辿り着くまでのプロセスだ……とりあえず、俺が言えるのはここまでだ。結果として得られる他の財産、辿り着くまでのプロセスを考えるのも強くなる為に必要なポイントだ」

休憩は終わりだと言わんばかりに、掛かって来いとジェスチャーを送る。

まだ完全に疲れは抜けきっていない……が、マジットからの教育によって、疲れている時に行うからこそ為になると理解しているため、多くのルーキーたちが率先して自分が先だと前に出る。

結果……ルーキーが超全力で挑めば、アラッドはあれよこれよと様々な手札を使い、完封。
翌日、普段から中々前日の疲れは抜けないのだが……彼らは見事に筋肉痛にやられ、ノックアウト。
その日はアラッドから伝えられたアドバイスを考える日として使った。

因みに、その日の夜にマジットから誘いを受けたアラッドは……変装のマジックアイテムを使用し、夜の街へと消え……ルーキーたちとは少々違った疲れが溜まった。
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