スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
418 / 1,051

四百十八話 不運続きから……

しおりを挟む
「……頭痛ぇ」

遺伝的にアルコール耐性はそれなりに高いアラッドだが、注文された酒類を殆ど呑んでいき……吐く一歩寸前まで追い込まれた。

これは不味いと思い、一旦適当な理由を告げて宴会場から出て夜風に当たりに行った。

(自力で……まぁ、そうだな。自力と言っても良いか。不安は残るが、自力でドラゴンを倒せたんだよな)

アラッドとクロの二人だけの状態で遭遇したわけではなく、あの場には多くの証人がいた。

ドラゴンゾンビという超難敵であるAランクモンスターを、アラッドは本当に一人で倒してしまった。

(クロの声がなかったら危なかったけど、これで少しは父さんに近づけたと思っても良いのかもな)

通常では考えられない功績を打ち立てたアラッド。
そんな漢気溢れる超新星に、ベテラン冒険者たちや戦場にいた騎士、魔術師たちはアラッドの二つ名について考え始めている。

冒険者になって半年も経っていないルーキーに二つ名を付けることは、まずあり得ない。
ベテランが酔っ払ってルーキーの特徴をふざけて二つ名で呼ぶことはあるが、それは本当におふざけと言える呼び名。

冒険者歴はまだ半年も経っていないが、その間にアラッドは自身の力だけで特殊なオークシャーマン、闇属性の武器を持ったミノタウロスの二体……既にBランクモンスターを二体も倒している。
クロの功績も入れると、Bランクの黒い角を持つケルピーが合算され、合計Bランクモンスターを三体。

そして今回の討伐で運悪くではあれど、Aランクモンスターのドラゴンゾンビと限界ギリギリのバトルを行い、見事勝利。

「二つ名、か……」

チラッと耳に入っていたため、彼らがどんな二つ名を話していたか、少々気になる。
転生者としては恥ずかしい呼び名と感じてしまう部分はあるが、それなりにこの世界に染まりつつあるため、未来の二つ名がいったいどんな名なのか……楽しみな部分もあった。

「……っ」

「おや、アラッド君じゃない、か」

非常に……非常にタイミングが悪かった。

ギリギリ、表面張力のように抑え込んでいた吐き気が、一気に爆発。
呑みに吞んだ酒の量を考えれば、その日の内に吐いてしまうのも仕方ない。

そしてマジットは、アラッドと同じく少々酔いを感じ、夜風に当たりに来た。
ただそれだけなのだが……アラッドからすれば、非常に悪いタイミング。

「おいおい、大丈夫か」

とはいえ、長年冒険者として活動し、ギルドの職員として活動するようになってからも、ギルドに併設されている酒場で酔っ払い、その場で吐いてしまう輩は何人も見てきた。
そのため、開放する様子は非常に手慣れたもの。

「す、すまん」

「気にするな。全く、まだ十五の若者に呑ませ過ぎるからだ。祝いの席で英雄に酒を呑ませたがるのは解らなくもないが」

マジットにも過去に潰れた経験、逆にテンションが上がってしまし、グラスに注ぎに注いで潰してしまった両帆の経験がある。

「英雄って……あんまりそう呼ばれるのは、慣れないな」

「そうか。しかし、君は紛れもなく英雄だ。多くの者たちをサポートし、ドラゴンゾンビを単独で倒して……私に力を貸してくれた」

「…………どうも」

真正面から「決して自分の力だけではない」と返されてしまっているので、今更同じ真似は繰り返さない。

「君のお陰で……友に罪を背負わせずに済んだ。改めて、感謝する。ありがとう、アラッド」

酒を呑んでいることもあり、その頬は少し赤らんでいた。
だからか……アラッドは、今まで見てきた笑顔の中で、一番美しいと感じた。

(……っ!! まずい!!!!!)

次の瞬間、アラッドは自身のムスコが元気になったのを察知。

「ん? どうし……た」

一瞬、ほんの一瞬身をマジットとは逆の方に向けるのが遅れた。

言葉が詰まったのを察知し、アラッドは猛烈に死にたい……穴があったら入りたい感情に駆られる。
だが……マジットはそっとアラッドの手を握り、パーティー会場とは違う方向を指さした。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

処理中です...