上 下
411 / 1,012

四百十一話 不安爆発

しおりを挟む
(サポートと、逃げだけに集中すれば、なんとかなりそうだ、な!)

最奥の部屋までやって来るまでと比べて、現在の戦場では広さはあれど、明確にそれ以上は移動できない壁がある。

故に、ある程度の距離までであればアラッドによる糸のサポートが届く。
例によって魔力を纏うゾンビが多いため、サポートする糸にも魔力を纏わせなければならず、討伐開始からかなりの魔力を消費。

しかし、マジックポーションの準備はバッチリなため、重要な場面で魔力切れになることはない。

(ただ……あの研究者兼魔術師の奴、何者だ? 実力だけならBランククラス……もしかしたら、Aランクに片足突っ込んでるか?)

戦闘中なこともあり、チラ見でしか確認できないが、未だに討伐隊の戦闘者たちは黒幕の男に対して、一撃も攻撃を当てられていない。

黒幕の男の傍にレベルが一味違うゾンビたちがいるからというのも一つの理由だが、闇魔法の発動速度、タイミングは実際に対峙している戦闘者たちも悔しくはあるが、認めざるを得ないレベル。

(黒幕の男も厄介みたいだが、周囲のゾンビもヤバいな。他のゾンビと比べて高ランクの冒険者か! ってツッコみたくなるぐらい良い装備を身に付けてやがる)

CランクからBランクレベルの冒険者が装備するような武器、防具を身に付けているため、マジットたちの様な精鋭冒険者たちであっても、さすがに瞬殺とはならない。

「気圧されるな!! 何が何でもここで殺すんだ!!!」

「火魔法、もしくは聖水をぶちまけろ!!!」

「何か、知らねぇけど! 偶に転んだり、腕が切れる! その隙を見逃すな!!!!」

まだアラッドの手札を良く知らない者たちからすれば、目の前で起こった光景に、理解が追い付かない。

しかしそこはプロの戦闘者であり、味方の援護なのだと把握。
その突然の攻撃によって生まれる隙にゾンビの弱点である火魔法、光魔法、聖水をぶち込んでいく。

(……このままいけば、数の力ではこっちが優位に立てる……ただ、不安が消えない)

戦闘者たちの執念、初対面である者たちが多い中、初対面とは思えないコンビネーション。
そこに万全の装備やアラッドのサポートが加わり、戦況は討伐者たちに傾いている……そう思える状況ではあるが、アラッドの心から僅かな不安が一向に消えない。

「ふむ……やむなしか」

黒幕の男がそう呟くと、どこからともなく微かな悲鳴が聞こえた。

「悲鳴!?」

「どうゆうことだ!!!」

現在の戦場から聞こえる悲鳴ではない。

後方の戦場でも戦闘者たちは押されておらず、寧ろクロが暴れ回っていることもあり、戦況は非常に優勢。
そんな中、聴覚に優れた獣人族やエルフはその微かな……心の底から絞り出される悲鳴を聞き取った。

「どれだけ数を揃えようが、貴様らはここで死に、俺の研究材料となる」

「ッ!!!!!!!」

今まで……一番強大な不安がアラッドに襲い掛かる。
先程まで頭から離れなかった小さな不安が超大爆発、全身破裂するかの様なエクスプロージョン。

無意識に……アラッドの闘争本能が強化や疾風、剛力などの強化スキルを発動させた。

「ガァアアアアアアアアッ!!!!」

理性は残っていれど、その姿はまさに獣。

しかし、その判断の速さもあり、ゾンビたちが黒幕の男によって超強化する前に十体ほど撃破。

(クソッ!!!! やっぱり、全部撃破するのは無理だったか!!!)

ナイス判断の速さではあったが、まだ並み以上のゾンビが数十体以上残っており……それらが命を代償とする技により、更に強化された。

(ッ!!!??? これは、ヤバい!!! ふざけるなよ!!!!!!)

聴覚が獣人やエルフ程優れていないアラッドには、黒幕の男がどんな方法を使って従えるゾンビたちを更に強化したのか分からない。

ただ……まだ残っているゾンビたちが、シャレにならない強さを得たことだけは理解出来た。
しおりを挟む
感想 465

あなたにおすすめの小説

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...