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四百四話 確定ではないが、否定は出来ない

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(今の感覚は……なんだ?)

先程の違和感について考え始めたアラッド。
しかし……その違和感がどんな内容だったのか、中々思い出せない。

(…………ヤバい、考え始めて何分経った)

既にアラッドが違和感について考え始めてから数分が経過。

一般人であれば「もういいや」と諦めてしまうかもしれないが、状況が状況なこともあり、アラッドは諦めずに
考え続ける。

(何か……うん、そうだ。明確な違和感とか、薄いけど殺気に近い感情や目線を向けられたわけじゃない。逆に……そう、逆なんだよ)

考え始めてから五分後、ようやく先程自分が感じた違和感を思い出し始めた。

(そうだよ、確かあそこで……意識を、逸らされた?)

何かが自分の思考に入り込んだ、と言うにはあまり不快感がなかった。
ただ、まるでその場所を意識しない、興味を持たない。
そう思う様に仕向けられた……という違和感を感じてた。

「もしかして、意識や匂いとかの追跡を逸らす……もしくは、強制的に……駄目だ、上手く説明できる言葉が浮かんでこないな」

「ワゥ!」

アラッドだけではなく、その違和感にクロもだが微かに感じたことを思い出した。

「おっ、クロも俺と同じ違和感を感じたか?」

「ワフ」

「そうか、そうか。流石だな」

相棒をもふもふしながらも、先程自身がクロに伝えた内容を思い出しながら……自身の本能と判断速度を自画自賛していた。

(というか、よくあそこでクロに逆の命令が出せたな)

止まれ、という命令の直後、今度は走れという命令を出した。
命令を出されたクロとしては、頭が混乱しそうな命令ではあるが、優秀なクロは主人の命令通りに動いた。

(多分……あのまま違和感を感じた周辺に立っていたら、気付かれてたよな)

設置型のマジックアイテムには、気配を察知する効果が含まれている高ランクの物もある。

(うん、そうだな。そういうマジックアイテムを使ってなかったら、ここまで探して見つからなかった理由が説明できない)

確信を得たアラッドは、亜空間の中から洋紙とペンを取り出し、上空から見た光景を把握し、簡易的な地図を完成させた。

「よし、戻るぞクロ!」

「ワゥ!!!」

墓荒しの黒幕が潜んでいると思われる場所を発見し、気持ちが昂る。
そんな主人の高揚を察し、自然とクロの脚も速くなる。

途中で闘志を向けてきていないモンスターを撥ね飛ばしてしまうが、しっかりと人間を避けて走行。

夕日が沈む前に到着し、一直線に冒険者ギルドへ向かう。
討伐依頼達成の報告、素材買取を終えたアラッドは即座にギルド職員に要件があると伝えた。

まだDランク冒険者であるアラッドが個室で話したいと自ら伝えても、基本的に案内されることはない。
しかし、アラッドとクロの実力を理解しており、加えて墓荒しの件について独自に調査しているということもギルドは把握しているため、頼み通りアラッドを個室へ通した。

そして……もはやアラッドの担当? と一部の冒険者の間で囁かれている受付嬢、マジットとギルドの上役が入ってきた。

「こちらが、見せたい物です」

二人に簡易的な地図を渡し、アラッドはそれが何なのかを直ぐに説明。

アラッドが感じた違和感を聞き、二人は今まで墓荒しの黒幕について手掛かりが全く得られないという屈辱的な状況理由に納得。

絶対にそこが墓荒しの黒幕が拠点とするアジトだと断言するには、証拠が足りない。
足りないが、逆に現状ではそこ意外にどこがある? という状況であるため、アラッドの勘違いだと一蹴することは出来ない。

「気配感知などを使って、敵の数などは把握出来なかったのか?」

「そうしようかと思ったんですが、近づけば逆探知されかねないと思ったので」

上役としてはもう一歩踏み込んで欲しいところではある。

だが、元冒険者として、そういったマジックアイテムの恐ろしさを知っているマジットとしては、その場でナイス判断だとアラッドの警戒心を褒め称えた。
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