402 / 1,012
四百二話 響き渡る轟音
しおりを挟む
空気が揺れる。
そう表現するのが一番正しい轟音が、訓練場に響き渡った。
思わず観戦していた者たちが耳を塞いでしまうほど、その轟音は重く激しく……訓練場を越え、ギルドのロビーにまで届いた。
そして轟音を生み出した二人の戦闘者たちは……どちらかがら吹き飛ぶことはなく、互いに譲らない結果となった。
「流石だ。本気で打ち込んだんだがな」
「それはこっちも同じだ」
最後の最後まで、制限を掛けた状態では、互いに一歩も譲らない戦況。
その結果が更に二人の闘争心を掻き立てることになるが、アラッドとマジットも今回の模擬戦がどういったものかは忘れておらず、その域を超えることはない。
「次はロングソードか槍か……それとも短剣にするか? 鞭とかはちょっと無理だが……あっ、ハルバードなら使えるぞ」
「私もそれなりに使えるが、どうやらアラッド君も同じ様だな」
「俺の才は武器の類ではないからな。一応拘りはあるが、それ以外の武器に関しても学ぼうって気持ちがあったんだ」
「ふむ、重要なことを幼い頃から理解していたんだな」
アラッドの強さの一端を知り、笑みを浮かべるマジット。
そんな笑みを向けられるアラッドに嫉妬する信者たちではあるが、現在目の前の見せ付けられた光景が頭から離れるわけがなく、ただ見るだけしか出来ない。
そして数分間休憩を挟んだのち、アラッドは槍を使ってマジットとの模擬戦に挑むが……今度は槍使いの信者が武道家信者と同じ衝撃を受けた。
(ろ、ロングソードと素手がメインの武器じゃないのか!?)
才能という面を考えれば、アラッドのメイン武器は糸。
故に、多種多様な武器を組み合わせることが出来るため、アラッドは時間が許す限り、多くの武器に震えていた。
リンが様々な武器を造ってくれることもあり、実戦での訓練に困ることもない。
そして槍の次は短剣の二刀流、戦斧にバトルアックス。
最後はロングソードと魔法……様々な武器を用いて戦うアラッドに対し、マジッとは最後まで己の五体と魔力、そして一部の強化スキルだけで戦い続けた。
「ふぅ、ふぅ……今日は、ここまでにしようか」
「はぁ~~、そうだな」
休憩を挟みながら約一時間半……ようやく二人の模擬戦は終了した。
「ありがとう。お陰で現役の時の勘が戻った」
「それは良かった。にしても……本当に凄いな」
「あの女王を倒した君にそう言ってもらえるのは光栄だよ」
アラッドが伝えた褒め言葉は、決してお世辞ではない。
(いや、本当に凄い。対刃であそこまで丁寧に対応出来るものか? 条件はかなり五分だと思うんだが……本当に
、なんで引退したのか解らないぐらい強いな)
模擬戦の最中、アラッドは何度か武器を盾にマジットの打撃をガードした。
そのチャンスを起点に戦況が崩れることはなかったが、それでも回避ではなくガードしたのは事実。
それに対し……マジットも一度アラッドが振った刃に触れた。
普段ほとんど使わない、ハルバードを使った模擬戦の最中に振った斬撃ではあるが……アラッド本人も会心の一撃と思える一級品だった。
そう思ったと同時に、この斬撃はさすがに不味いと予感。
タイミング的にマジットの回避は間に合わない。
ガードするにしても、会心の一撃はガードブレイク出来るほどの威力とキレを持っていた。
(俺もあれは練習しているけど、あんなに上手くやれる自信はない)
会心の一撃に対し、マジットが取った対処方法は受け流し。
両手に魔力を纏っているとはいえ、その防御を貫通するほどの威力をキレを持つ斬撃に対し、マジットは綺麗に受け流した。
当然、アラッドはその一撃に体重を乗せていたため、体勢を崩したが……体が崩れると同時に、本能で蹴りを放っていた。
まさに本能が放ったと言える一撃のお陰で戦況が崩れることはなかったが、間違いなく肝が冷えた瞬間であった。
そう表現するのが一番正しい轟音が、訓練場に響き渡った。
思わず観戦していた者たちが耳を塞いでしまうほど、その轟音は重く激しく……訓練場を越え、ギルドのロビーにまで届いた。
そして轟音を生み出した二人の戦闘者たちは……どちらかがら吹き飛ぶことはなく、互いに譲らない結果となった。
「流石だ。本気で打ち込んだんだがな」
「それはこっちも同じだ」
最後の最後まで、制限を掛けた状態では、互いに一歩も譲らない戦況。
その結果が更に二人の闘争心を掻き立てることになるが、アラッドとマジットも今回の模擬戦がどういったものかは忘れておらず、その域を超えることはない。
「次はロングソードか槍か……それとも短剣にするか? 鞭とかはちょっと無理だが……あっ、ハルバードなら使えるぞ」
「私もそれなりに使えるが、どうやらアラッド君も同じ様だな」
「俺の才は武器の類ではないからな。一応拘りはあるが、それ以外の武器に関しても学ぼうって気持ちがあったんだ」
「ふむ、重要なことを幼い頃から理解していたんだな」
アラッドの強さの一端を知り、笑みを浮かべるマジット。
そんな笑みを向けられるアラッドに嫉妬する信者たちではあるが、現在目の前の見せ付けられた光景が頭から離れるわけがなく、ただ見るだけしか出来ない。
そして数分間休憩を挟んだのち、アラッドは槍を使ってマジットとの模擬戦に挑むが……今度は槍使いの信者が武道家信者と同じ衝撃を受けた。
(ろ、ロングソードと素手がメインの武器じゃないのか!?)
才能という面を考えれば、アラッドのメイン武器は糸。
故に、多種多様な武器を組み合わせることが出来るため、アラッドは時間が許す限り、多くの武器に震えていた。
リンが様々な武器を造ってくれることもあり、実戦での訓練に困ることもない。
そして槍の次は短剣の二刀流、戦斧にバトルアックス。
最後はロングソードと魔法……様々な武器を用いて戦うアラッドに対し、マジッとは最後まで己の五体と魔力、そして一部の強化スキルだけで戦い続けた。
「ふぅ、ふぅ……今日は、ここまでにしようか」
「はぁ~~、そうだな」
休憩を挟みながら約一時間半……ようやく二人の模擬戦は終了した。
「ありがとう。お陰で現役の時の勘が戻った」
「それは良かった。にしても……本当に凄いな」
「あの女王を倒した君にそう言ってもらえるのは光栄だよ」
アラッドが伝えた褒め言葉は、決してお世辞ではない。
(いや、本当に凄い。対刃であそこまで丁寧に対応出来るものか? 条件はかなり五分だと思うんだが……本当に
、なんで引退したのか解らないぐらい強いな)
模擬戦の最中、アラッドは何度か武器を盾にマジットの打撃をガードした。
そのチャンスを起点に戦況が崩れることはなかったが、それでも回避ではなくガードしたのは事実。
それに対し……マジットも一度アラッドが振った刃に触れた。
普段ほとんど使わない、ハルバードを使った模擬戦の最中に振った斬撃ではあるが……アラッド本人も会心の一撃と思える一級品だった。
そう思ったと同時に、この斬撃はさすがに不味いと予感。
タイミング的にマジットの回避は間に合わない。
ガードするにしても、会心の一撃はガードブレイク出来るほどの威力とキレを持っていた。
(俺もあれは練習しているけど、あんなに上手くやれる自信はない)
会心の一撃に対し、マジットが取った対処方法は受け流し。
両手に魔力を纏っているとはいえ、その防御を貫通するほどの威力をキレを持つ斬撃に対し、マジットは綺麗に受け流した。
当然、アラッドはその一撃に体重を乗せていたため、体勢を崩したが……体が崩れると同時に、本能で蹴りを放っていた。
まさに本能が放ったと言える一撃のお陰で戦況が崩れることはなかったが、間違いなく肝が冷えた瞬間であった。
203
お気に入りに追加
6,106
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる