400 / 1,043
四百話 違う笑み
しおりを挟む
「来てくれてありがとう」
マジットに誘われた翌日、ギルド前で合流後……デートに行くことはなく、そのまま中へ入り、訓練場へ向かう。
「では、始める前に体を軽く動かそうか」
「あぁ、そうだな」
本日はデートや話し合い、食事がメインではなく、バチバチの模擬戦がメイン。
それはアラッドも理解しているため、浮かれた気持ちなど一切ない。
(……ちょっと、人数多くないか?)
マジリストンの訓練場には来たことがない。
そんなアラッドでも、周囲の同業者たちの数は、さすがに多過ぎないかと感じた。
その違和感は正しく、現在訓練場にはいつも以上の冒険者たちがいる。
一応訓練自体は行っているものの、正確にはデート? に誘われたアラッドの監視。
(構わないけど……あまり俺ばかりに視線を向けてたら、怪我するんじゃないか?)
アラッドの想像通り、目的の人物が訓練場に現れてから、ついよそ見に集中し過ぎてしまう者たちが、何度も不意にダメージを食らい、ダウンしていた。
「それじゃ、軽く始めようか」
「分かった」
「? 素手でやるのか」
マジットの中で、アラッドはロングソードを振るいながら、攻撃魔法も同時に発動する魔剣士のイメージが根付いている。
「あぁ、そうだけど……何か武器を使った方が良いか?」
素手で強い相手は、ガルシア以来。
己の五体のみを使って戦うのも得意なアラッドとしては、是非とも拳で戦いたいという思いがある。
(あいつ、マジットさん相手にマジか?)
(ロングソードの使い手、だろ?)
(あれ、でもあいつって確か……)
アラッドに嫉妬する多くのルーキーたちが忘れていた。
自分たちと同じルーキーをアラッドがオーガファイターを助けた時、決め手となったのは拳による攻撃ということを。
「なるほど。流石、という他ない、動きだ」
「マジットの方こそ、本当に現役を、引退してるのか?」
まだ魔力を纏う強化や、身体強化系のスキルは使用していない。
お互い素の状態で拳や蹴りを放つが、どちらも相手の攻撃を回避。
紙一重での回避もあるが、模擬戦が始まってから一分間は、お互いに掠りもしない攻避のやり取りが続いた。
そしてお互いに距離を取った瞬間、それが合図となり、身体強化のスキルを発動。
「「「「「「っ!!??」」」」」」
自分たちの訓練を忘れて観ていたルーキーたちは、思わず目を大きく見開く。
二人が行っている内容は先程までと大して変わらないが、明らかにスピード、パワーに攻撃のキレが格段に上がっている。
観戦中のルーキーたちの中にも己の五体を武器に戦う者がいるが、自身と違い過ぎるレベル差に……血が出ることなどお構いなしに握り拳に力を入れる。
(ガルシアの様な、荒々しさは、ない。ただ、元冒険者なのに、対人の格闘戦に、慣れ過ぎてる!)
(これほどまで、高いレベルで、格闘戦が行える、とは! 熱くなり過ぎないように、気を付けなければ!)
アラッドはアラッドで、そしてマジットはマジットで度々模擬戦ということを忘れそうになる。
マジットは今まで後輩との訓練で、闘争心に駆られたことは一度もない。
相手側が模擬戦ということを忘れ、マジットがその闘志に応えることはあったが、その逆はなかった。
だが、現在戦闘中の後輩は……確実に自身の闘争心に火を付ける実力を持っている。
手合わせしたことで、改めてその実力の高さ、練度を感じ取り……普段、後輩との模擬戦で浮かべる笑顔とは、全く違う笑顔を浮かべた。
そして先程の様に意図して距離を取ることなく、体に魔力を纏う。
「っ!」
アラッドは咄嗟に反応こそできたものの、模擬戦が始まってから発のヒット。
その場で威力を止めきることは出来ず、数メートルほど後方にとんだ。
「っ……要らない心配だったな」
先に魔力を纏うという戦闘力の強化を行ったことに対し、やってしまった感じ、アラッドの方に目を向けた……が、そこにはマジットと同じ笑みを浮かべる怪物がいた。
マジットに誘われた翌日、ギルド前で合流後……デートに行くことはなく、そのまま中へ入り、訓練場へ向かう。
「では、始める前に体を軽く動かそうか」
「あぁ、そうだな」
本日はデートや話し合い、食事がメインではなく、バチバチの模擬戦がメイン。
それはアラッドも理解しているため、浮かれた気持ちなど一切ない。
(……ちょっと、人数多くないか?)
マジリストンの訓練場には来たことがない。
そんなアラッドでも、周囲の同業者たちの数は、さすがに多過ぎないかと感じた。
その違和感は正しく、現在訓練場にはいつも以上の冒険者たちがいる。
一応訓練自体は行っているものの、正確にはデート? に誘われたアラッドの監視。
(構わないけど……あまり俺ばかりに視線を向けてたら、怪我するんじゃないか?)
アラッドの想像通り、目的の人物が訓練場に現れてから、ついよそ見に集中し過ぎてしまう者たちが、何度も不意にダメージを食らい、ダウンしていた。
「それじゃ、軽く始めようか」
「分かった」
「? 素手でやるのか」
マジットの中で、アラッドはロングソードを振るいながら、攻撃魔法も同時に発動する魔剣士のイメージが根付いている。
「あぁ、そうだけど……何か武器を使った方が良いか?」
素手で強い相手は、ガルシア以来。
己の五体のみを使って戦うのも得意なアラッドとしては、是非とも拳で戦いたいという思いがある。
(あいつ、マジットさん相手にマジか?)
(ロングソードの使い手、だろ?)
(あれ、でもあいつって確か……)
アラッドに嫉妬する多くのルーキーたちが忘れていた。
自分たちと同じルーキーをアラッドがオーガファイターを助けた時、決め手となったのは拳による攻撃ということを。
「なるほど。流石、という他ない、動きだ」
「マジットの方こそ、本当に現役を、引退してるのか?」
まだ魔力を纏う強化や、身体強化系のスキルは使用していない。
お互い素の状態で拳や蹴りを放つが、どちらも相手の攻撃を回避。
紙一重での回避もあるが、模擬戦が始まってから一分間は、お互いに掠りもしない攻避のやり取りが続いた。
そしてお互いに距離を取った瞬間、それが合図となり、身体強化のスキルを発動。
「「「「「「っ!!??」」」」」」
自分たちの訓練を忘れて観ていたルーキーたちは、思わず目を大きく見開く。
二人が行っている内容は先程までと大して変わらないが、明らかにスピード、パワーに攻撃のキレが格段に上がっている。
観戦中のルーキーたちの中にも己の五体を武器に戦う者がいるが、自身と違い過ぎるレベル差に……血が出ることなどお構いなしに握り拳に力を入れる。
(ガルシアの様な、荒々しさは、ない。ただ、元冒険者なのに、対人の格闘戦に、慣れ過ぎてる!)
(これほどまで、高いレベルで、格闘戦が行える、とは! 熱くなり過ぎないように、気を付けなければ!)
アラッドはアラッドで、そしてマジットはマジットで度々模擬戦ということを忘れそうになる。
マジットは今まで後輩との訓練で、闘争心に駆られたことは一度もない。
相手側が模擬戦ということを忘れ、マジットがその闘志に応えることはあったが、その逆はなかった。
だが、現在戦闘中の後輩は……確実に自身の闘争心に火を付ける実力を持っている。
手合わせしたことで、改めてその実力の高さ、練度を感じ取り……普段、後輩との模擬戦で浮かべる笑顔とは、全く違う笑顔を浮かべた。
そして先程の様に意図して距離を取ることなく、体に魔力を纏う。
「っ!」
アラッドは咄嗟に反応こそできたものの、模擬戦が始まってから発のヒット。
その場で威力を止めきることは出来ず、数メートルほど後方にとんだ。
「っ……要らない心配だったな」
先に魔力を纏うという戦闘力の強化を行ったことに対し、やってしまった感じ、アラッドの方に目を向けた……が、そこにはマジットと同じ笑みを浮かべる怪物がいた。
210
お気に入りに追加
6,130
あなたにおすすめの小説
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる