スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
394 / 1,124

三百九十四話 協力者?

しおりを挟む
ギルドに戻ったアラッドは上の者たちに伝えるべきであろう内容を伝えた。

そしてそれらの内容を伝えるとなると、あまり他の冒険者たちがいる前では話せない。
先日の暴走したオーガファイターとの一件についても再度話しながら、手掛かりになりそうな情報を伝える。

「ミノタウロスを一人で……さすがの一言だよ」

「ありがとうございます。ただ、今回は武器の力に頼った結果ですが」

自分の力だけで倒せたわけではない。
そう話すアラッドだが、冒険者にとっては武器も己の力の一つ。

上の連中たちもそれを理解しているため、言葉通りに受け取る者はいなかった。

「しかし、所有者の体に侵食するマジックアイテムか。どう考えても、市販の者ではないな」

「ダンジョンの宝箱に入っていた武器、ということですか」

「その可能性もある。墓荒しの被害にあった街には、ダンジョンを保有するところもある。だが……正直、君が戦ったミノタウロスが所有していた戦斧はダンジョン産の物ではないだろう」

ただの勘、されど勘とバカに出来ない感覚。

その街のダンジョンに関する情報が頭に入っているからこそ、口に出た内容でもある。

「最低でも、誰かが手を加えた……そう思える武器だ」

「つまり、墓荒しの黒幕。もしくは、黒幕に力を貸す人物の中にそういった事を行える錬金術師がいる、ということですね」

「そうなってしまうな」

ギルド職員とアラッドの間に、重苦しい空気が流れる。

(はぁ~~~……ますます一人でなんとかしたいな)

中々にヤバく、普通に考えれば一人では解決できない事態。

その普通を解らないアラッドではないが、それでもそんな事態を覆せる力を持っているからこそ、一人でなんとかしたいという、アホみたいな考えが湧いてしまう。

「しかし、本当に助かったよ。ミノタウロスが街の周辺をウロチョロしてれば、多大な被害が出たのは間違いない」

攻撃力や身体能力は言うまでもなく、攻撃魔法に対する耐性も決して低くない。
並みの攻撃ではダメージにならず、突き抜けた力を持たない者であれば、腐食の効果を持つ戦斧の餌食になるのは目に見えている。

「偶々運が良かっただけですよ」

決して被害がゼロであったわけではないが、アラッドが早々に遭遇したことで、被害が拡大しなかったのも事実。

「本当に謙虚だな。だが、これはしっかりと受け取ってもらうよ」

「……分かりました」

ミノタウロスの素材だけでもかなりの額になる。
報酬としてはそれで十分にも関わらず、ギルドからの特別報酬が渡された。

職員の表情を見て、今までの経験から絶対に断っても無駄な顔をしていると理解し、素直に受け取る。

「上の方に、直ぐにでもCランクへ昇格出来ないか掛け合っておくよ」

「えっと……その、無理なら無理で構わないので」

実力は申し分ない。
それは本人も自覚しているが、冒険者としての年数的にはまだまだ足りないことも自覚している。

「はっはっは! マジット君が気に入っているスーパールーキーをいつまでもDランクに居させる方が、無理というものだよ」

マジリストンの上役たちであっても、マジットの意見は無視出来ない。
暴論ではなく、マジットが見込みありと判断した人物は時間に差はあれど、同年代の冒険者たちと確実に差を広げている。

上役から有難い? 言葉を貰い、ロビーに戻れば素材の買取を頼む。

その際、道中で倒したミノタウロス以外の素材も提出。
そしてミノタウロスの素材に関しては全て売らず、いくつかはキャバリオンの素材として残した。

「こちらが買取金額になります」

「ありがとうございます」

マジットの同期である受付嬢は気を利かせ、驚きを表情に出さず査定と買取を行った。
それにより、アラッドがいつも以上に注目視される……ことはなかった。
ただ、出て行った後に実物を見たことがある者が気付き、ギルド内は再びアラッドの話題で埋め尽くされる。

そんな事も知らず、特別報酬を使って高級レストランで食欲を満たすアラッドだが……帰り道、不穏な気配を感じた。
しおりを挟む
感想 473

あなたにおすすめの小説

トップ冒険者の付与師、「もう不要」と言われ解雇。トップ2のパーティーに入り現実を知った。

ファンタジー
そこは、ダンジョンと呼ばれる地下迷宮を舞台にモンスターと人間が暮らす世界。 冒険者と呼ばれる、ダンジョン攻略とモンスター討伐を生業として者達がいる。 その中で、常にトップの成績を残している冒険者達がいた。 その内の一人である、付与師という少し特殊な職業を持つ、ライドという青年がいる。 ある日、ライドはその冒険者パーティーから、攻略が上手くいかない事を理由に、「もう不要」と言われ解雇された。 新しいパーティーを見つけるか、入るなりするため、冒険者ギルドに相談。 いつもお世話になっている受付嬢の助言によって、トップ2の冒険者パーティーに参加することになった。 これまでとの扱いの違いに戸惑うライド。 そして、この出来事を通して、本当の現実を知っていく。 そんな物語です。 多分それほど長くなる内容ではないと思うので、短編に設定しました。 内容としては、ざまぁ系になると思います。 気軽に読める内容だと思うので、ぜひ読んでやってください。

私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。 十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。 スキルによって、今後の人生が決まる。 当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。 聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。 少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。 一話辺りは約三千文字前後にしております。 更新は、毎週日曜日の十六時予定です。 『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!

クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』  自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。  最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

処理中です...